UX最優先がベストなマーケティングとは限らない/SEO土居氏×UX枌谷氏(前編)

「SEOとUX」をテーマにベイジの枌谷氏とナイルの土居氏が縦横無尽に語りつくす。(前編)
枌谷 力氏、土居健太郎氏

SEOでもUXの重要性が高まっている。しかしUX最優先で、ユーザーにとって使いやすく、優れているWebサイトだからといって、それがビジネスに貢献するマーケティングとは限らない。

業務提携を行った、株式会社ベイジのUXスペシャリスト枌谷(そぎたに)氏とナイル株式会社のSEOスペシャリスト土居氏に、「SEOとUX」をテーマに縦横無尽に語りつくしてもらった。(前編)

SEOの「検索体験」もUXのひとつ

枌谷: 最近、「SEOでもUXの重要性が高まってきている」ということを耳にします。具体的にはどういうことを指しているのでしょうか。

土居: 「検索エンジンで検索してサイトに訪れたユーザーが、そのページをどのように利用したかを、Googleが評価するようになって来ているようだ」ということです。

たとえば、検索結果をクリックしたページで、ユーザーがその情報をちゃんと読んで消化したのであれば、その結果が「滞在時間」や「離脱率」のような指標に現れます。また、検索結果をクリックしてからページが表示されるまでの時間も短いほうが、ユーザーにとってはストレスがありません。

Googleは、「検索ニーズ」を満たし、より良いユーザー体験を提供するページを検索結果に出したいわけです。そして、実際にそうしたデータを集めてページの評価に使っているようだと判断しています。ここでいうUXとは、そういう「狭義のUX」のことです。

枌谷: なるほど、「検索体験」としてのUXということですね。

僕がSEOとUXの相関としてイメージしていたのは、もう少し大きなユーザー行動プロセスへの最適化でした。

たとえば、人が何かを購入するとき、課題形成、情報収集、比較検討というプロセスを踏むとすると、「課題形成」と「情報収集」では検索キーワードが違ったり、「検索結果は何位がいい」という条件も違っていたりすると思うんです。そういう観点からSEOをやりましょうというイメージだったんですが、それは違いますか?

土居: 今おっしゃったのは、おそらく「カスタマージャーニーにおけるタッチポイントをどうするか」という話ですね。僕が言ったのはそれとはちょっと違った意味合いで、各検索ユーザーの検索セッションにおける検索体験、すなわち「サーチエクスペリエンス」といったほうが適切です。

ただ、最近は「UXとSEO」みたいに大きなくくりで語られることが多いので、そういう風にとらえている方も多いと思います。でも、枌谷さんが言う意味でのUXも、SEOをマーケティングとして考えるうえで欠かせない考え方です。

土居 健太郎氏

枌谷: UXという言葉は広範な概念を含んでいますよね。たとえば、CX(顧客体験)的な観点から「顧客は購買前にどんな体験をして、購買がどのように発生して、購買後にどういう行動をするか」ということをカスタマージャーニーで考え、どのようにコミュニケーションすればいいのかを考えるのもUXです。

ユーザーがサイトに来たときに「訪問者のコンテキスト(脈絡)に応じて、良い体験を提供する」という意味のUXもあります。その時々の文脈を理解して使わないと、関係者間での認識がずれてしまうという一面はあります。

一方で、必ずしもUXを追求することが、ビジネスにつながるとは言いがたい場面もあります

「ベストなUX = ベストなマーケティング手法」ではない

枌谷: もちろん、ユーザーファーストの考え方は大切です。しかし、ユーザーファーストの一点張りでは、うまくマーケティングとして機能しない場合もあります

たとえば、「お問い合わせフォーム」をUX視点で考えると、ユーザーにとって入力フォームは、すぐに問い合わせが完了できる極限にシンプルなものであるべきです。しかし、ビジネス的には、「データベースに溜まるノイズは少なくしたい」とか、「決裁権限者を把握するため、役職名も入れてもらいたい」といった、UXとはある意味相反する要求が出てきます。

そこで、入力フォームには、たくさんの情報を入力させ、悪くいえば使いにくくして、「本気の問い合わせ以外を遠ざける」という考え方も大切なときがあります。

ベストなUXがベストなマーケティング手法ではないということです。我々が優先しているのはマーケティングですので、UXは大切にしますが、場合によってはUX最優先で考えるとは限らないのです。

土居: そのバランスをどうとるかは、難しいのでは?

枌谷: 「クライアントの利益がどこにあるのか、このビジネスが何で成り立っているのか」を忘れなければ大丈夫です。

「これまでのWebサイトは、ユーザーよりも企業側の都合やエゴを優先したコンテンツが主流でした。しかし、歪みが生じてきた。だから、ユーザーのことを考えて、UXから設計し直そう」という風潮になり、UXという考え方が広まって来たと思っています。

しかし、「ユーザーにとって、良い体験を提供することは重要だけど、マーケティングにおいて、ユーザーサイドに偏り過ぎることは必ずしも吉ではない」ということです。

実際のビジネスは、そんなきれい事が通用する世界ではありません。現場で求められることは、アカデミックなUXよりも、クライアントの課題に合わせて取捨選択できてビジネスに貢献するUXなのです。

枌谷 力氏

UXのトレンドは「表面的なデザインから構造としてのデザインへ」

土居: 前編の終わりに、トレンドに触れておきましょう。UXのトレンドについて教えてください。

枌谷: やはり、「デザインのディテールも考慮しつつ、UXを考えてデザインしないといけない」というのがメインストリームです。

有名な「UXの5階層モデル※1」でいうと、今までは表層(ビジュアルデザイン)とその次の骨格(ナビゲーションデザイン・インターフェースデザイン・情報デザイン)くらいまでしかやっていなかったです。しかし、現在は「デザインとは、本来構造以下まで掘り下げるべきものだ」という考え方になってきました。

UXの5階層モデル

※1 UXの5階層モデル…UXを抽象的な階層から具体的な階層まで5階層に分けて考えるというフレームワーク。

SEOのトレンドは「モバイル」

土居: SEOのトレンドは、「モバイル」に尽きます。モバイルファーストインデックス※2もそうですし、AMP※3とPWA※4の話もそう。「行動指標がSEOに直結する」といった話も含めて、基本的にWebページがモバイルでどう検索され、どう見え、どう使われるかといった話がトレンドになってきていると思います。

※2 モバイルファーストインデックス(MFI)…モバイル向けページの評価に主に基づいて検索順位を決定する仕組み。
※3 AMP…モバイルページのページ表示を高速化する仕組み。
※4 PWA…WebのモバイルページにネイティブアプリのようなUIを実現する仕組み。

「PCからの閲覧が多い」という企業であっても、「モバイルなんて関係ない」とは言えません。当社のデジタルマーケティング事業部が運営している自社メディアでは、いまだに「閲覧の8割がPC」です。

しかし、「最初のタッチポイントが通勤中にスマートフォンで見ていたFacebookで、改めてPCからアクセスしてきてコンバージョン」という流れもあります。会社の意思決定権を持った人がモバイルからアクセスしている可能性も否定できません

枌谷: BtoBの場合でも、会社の意思決定権を持った人に気に入られるかどうかは重要です。

意思決定を任されている人というのは、多くの場合、仕事に熱意を持っている人が多いです。そういう人は、通勤時間や移動時間に、モバイルで仕事関連の情報を収集していることが想定されます。

そう考えると、単純にアクセス対比だけで判断するのではなく、PCとモバイル両方を準備しておかないといけません。

中編は、「なぜSEO、UXを考えないとサイトリニューアルは失敗するのか?」という内容を紹介します。

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