【レポート】アナリティクス サミット2017

何が足りないのかを見極める――LIFULL HOME’Sのマーケティング戦略部長が語ったデータで事業を加速させるポイント

カスタマージャーニーマップによる一貫性のあるコミュニケーション施策
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事業領域ごとにサイト開発、集客、ツール、運用が分かれていては、マーケティングを最適化することはできない。物件数No.1の不動産ポータルサイト「LIFULL HOME’S」を運営するLIFULLでは、マーケティングを統合するためにどのような課題があり、どのように解決していったのだろうか。

久松 洋祐 氏
株式会社LIFULL
取締役執行役員
LIFULL HOME’S事業本部 マーケティング戦略部長
久松 洋祐 氏

「アナリティクス サミット2017」の基調講演は、LIFULLの久松氏が「アナリティクスとデータで事業を加速させる」と題し、不動産ポータルサイト「LIFULL HOME’S」の課題とその解決方法について解説した。

一貫性のあるコミュニケーション施策を目指す

LIFULLでは、全国の住まい探しができる不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」を運営している。同サイトでは、統合した顧客体験を目指しているが、賃貸、不動産媒介、新築分譲、注文住宅、リフォームなどの事業に分かれているなかで、統合したコミュニケーションのために一貫してデータを分析する環境を構築することが求められていた。

不動産関連のさまざまな事業で60以上のドメイン名があったLIFULLでは、2007年に全サイトに共通の解析ツールを導入を目指し、賃貸、中古、新築戸建、分譲マンションに絞って導入を行った。しかし当初は解析ツールに不慣れでサイト内構造をどのように決めていくかもわからず、導入に1年半以上かかってしまい、社内の理解も得にくかったという。

「社内での勉強会や啓蒙活動を行っていった」という久松氏は、次のように振り返る。

ツールを使って社内で共通のコミュニケーションが取れるようになったのは、導入完了後1年くらい経ってからだ

続けて、久松氏は次のように話す。

解析ツールの導入によって、事業間で顧客が重複していることが明確になり、定量調査でサイトを認知しているユーザー数と実際に利用しているユーザー数に大きな隔たりがあることが判明した

この原因として、サービスごとの使い勝手がバラバラで、使いにくいサイト構造となっているのではないかと仮説を立てたLIFULLは、2009年に顧客体験を統合するための新たなサイトとして「HOME’S」を構築して運用や使い勝手を改善。

どのようなサービスを提供するべきかを考えてコミュニケーション戦略の枠組みを作っていき、クリエイティブの方向性を明確にして、カスタマージャーニーマップを作成し、一貫性のあるコミュニケーション施策を行うためのデザイン原則や基準を構築していった。

久松氏は次のように説明する。

カスタマージャーニーは、ZMET(Zaltman Metaphor Elicitation Technique)を活用し、潜在ニーズを明らかにしながら作成していった

さまざまな部署から集まったメンバーで調査からアウトプットまで半年かけたプロジェクトでは、ユーザーが住まいに対して描いているイメージを集めてインタビューを行い、インタビューから導き出されたキーワードを分析して仮説を作り、シナリオを設計していったという。

アウトプットは、住み替えに対して満たされていない欲求や苦悩、決断などのユーザーが変移するシグナルやインサイトを文字で示す形で1枚のシートにしていった。

カスタマージャーニーマップの活用

2011年から2012年にかけて、オフラインまで含めた広告のアトリビューション評価を行った

という久松氏は、2011年に導入したMMM(Marketing Mix Modeling)について説明する。

スマートフォンが普及しだした当時は、PC、フィーチャーフォン、スマートフォンなどの流入経路別にどのように広告を投入していくかが課題だった。しかしその評価はというと、従来から広告のKPIがCPAをベースに考えられていたため、広告に対してのコンバージョン数や売り上げが評価の対象となっていた。

MMMを導入することによって、短期獲得(フロー)コンバージョンと中長期獲得(ストック)のコンバージョンの2つの概念が社内で共通言語化され、費用と投資の棲み分けができるようになった

「MMMは、すでに予算化されているものに対する未来予測の側面が強く、マス広告に適していたが、広告費全体や年間広告量の最適化までは導くことができなかった」という久松氏は、「2012年に顧客接点ごとの相関モデルを構築していった」といい、顧客接点を構造化して、各顧客接点の相関を可視化し、投資配分を最適化することを目指した。

各顧客接点からコンバージョンに至るまでをモデル化し、それぞれの広告が他の広告に与える影響を考えて、投下配分を変えることで得られるリターンの変化を図式化して最適な配分を導き出していった

LIFULLでは、年に1回この相関モデルによる分析を行って年間予算の方針を決めているが、現在は年に1回ではなく、毎月行うことも検討している。

2013年からLIFULLは、すべてのユーザーに同じコンテンツを見せるのではなく、ユーザーの好みに合わせてコンテンツを出し分けるワントゥーワンマーケティングの実現を目指している。

2009年に作られたカスタマージャーニーマップは、既存サイトに手を加える数字的な根拠を示すことができていなかった。それに加えて2012年までは「HOME’S」のリニューアルプロジェクトや既存サイトの運用に開発リソースが取られていたため、カスタマージャーニーマップは活用されていなかった。

しかし2013年からは、カスタマージャーニーマップを活用しながら住み替えのステージに合わせたコンテンツを作成するようになり、共通言語として活用されるようになった。

とはいうものの久松氏は次のように振り返る。

データ分析によるコンテンツ評価については明確なアウトプットが出せなかった

当時はルールベースで行っていたアプローチを、現在は機械学習などを活用しながらシグナルを把握するようにして、より良い顧客体験を提供できるようにすすめていることを明かす。

「データ分析によるコンテンツ評価や行動トラッキングの成果は出せなかったものの、カスタマージャーニーマップによって、さまざまな顧客接点の開発が行えた」という久松氏は、「CMのクリエイティブ開発やオウンドメディア開発などを行え、アプリでタッチポイントを増やす仕組みなどを作ることができた」と話す。

何を追加すれば事業が加速するかを考える

2016年以降、LIFULLでは、オンライン広告のインハウス化、アトリビューションモデルによるポートフォリオ見直し、オムニチャネルへの展開などの施策を進めている。

久松氏は次のように話す。

クラウドを活用して各システムを統合し、BIからリアルタイムに情報を更新できるようにし、CRMや各種データを機械学習で自動的に処理できるようにプロセスや決定サイクルを見直して、迅速な新規サービスの提供やユーザーのシグナルのビジネスでの活用を目指した

これによって、従来は非効率だと思われていた市場に参入でき、満たされない需要を発掘することができるため、カスタマージャーニーを実現させるテクノロジーを活用するために、社内の体制や意識を変える必要がある

広告運用に関しても「これまでは、パートナーとともに課題を共有し、膨大なデータを整理しながら課題をあぶり出してレポートを出し、ミーティングを重ねていた」し、その課題については「高い成果を出せた一方で、データを把握してから手を打つのに10日かかるという課題があり、事業が立ち上がるたびに運用広告担当を割り当てるのが難しかった」と説明する。

しかし現在では「大半のシステムがクラウドに移行し、リアルタイムにどこでもBIで情報を取得できるようになっている」とし、「広告運用を自動化することで、最終的には『物件がほしい人』『ほしいと思っているけど自覚していない人』に向けてピンポイントでタイミングよく広告やコンテンツ、サービスを提供することを目指している」という。

また、久松氏が顧客体験として大切にしているのはオンラインサービスだけではない。「コールセンターを強化して、関東を中心に新たに5店舗の対面カウンターを展開している」と説明する久松氏は、次のように話す。

コールセンターや対面カウンターから得られる顧客の反応やニーズは、物件探しに慣れていない方からの問い合わせなどが多く、サイトでは得られないものが多い

「コールセンターや対面カウンターの情報とサイトでの情報を統合させながら理想の住まいを見つけるサポートを行って続けたい」というのが、オンラインとオフラインを通じて顧客体験を改善していくHOME’Sの考え方だ。

また、2016年は、社名をNEXTからLIFULLに変更し、マスターブランド戦略を実行して経営資源を統合している。さらに、全社DMPの構築と運用も行い、ターゲットユーザーのセグメント化とステージ別管理を行い、データ活用のルール決めと整備を行っていった。

最後に、久松氏はアナリティクスとデータで事業を加速させるポイントを次のように説明する。

現状だけを見て考えるのではなく、足りないものが何かを考えることが重要

「現状に何が足りないかを考え、進む方向や方針、目標、未来を見据えて足りないものをあぶり出し、ゴールを理解して、何を追加すれば事業が加速するのかを考えることが重要」なのだという。

我々は、設立20周年の節目を迎え、より多くのみなさまの暮らしを安心と喜びで満たす住生活情報サービス企業へと進化するため、すべての資産をLIFULLに集約しました。これによって、ブランド価値を最大化し、よりよいサービス提供に注力していきます

と久松氏は話した。

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