成果につなげる! コンテンツマーケティング最前線

検索順位が急落したコンテンツ施策を半年で立て直し! Web経験ゼロだったガリバーの担当者は何をしたのか?

IDOMが運営するクルマ買取販売店舗「ガリバー」のコンテンツ施策に起用されたのは、Web経験ゼロの三井氏だった。いったいどのようにコンテンツを立て直したのか?
(左から)IDOMマーケティングチーム 三井紀子氏、Faber Companyコンテンツチーム 白砂ゆき子、岡村眞友子
(左から)株式会社IDOM マーケティングチーム 三井紀子氏、株式会社Faber Company コンテンツチーム 白砂ゆき子、岡村眞友子

Googleのアルゴリズム変更により、中古車市場で圧倒的な実績を持つ「Gulliver(以下、ガリバー)」のコンテンツ戦略は、2015年末から苦境に立たされていた。売り上げに直結するいくつものキーワードで検索順位が急落したのだ。さまざまな選択肢のなかで、ガリバーを運営するIDOMが選んだのは「ユーザーニーズに応えたコンテンツを、社内で地道に作る」という直球勝負の道だった。

アサインされたのは三井紀子氏。彼女はWeb未経験だったにもかかわらず、たった半年で流入数を対前年比32%回復させることに成功した。その道のりを、「コンテンツ制作の指導者」として伴走してきた当社の白砂ゆき子、岡村眞友子(Faber Company)とともに振り返る。

2015年末に検索順位が急落。原因はGoogleのアルゴリズム変更

――「ガリバー」のコンテンツマーケティングのテコ入れは、どんなきっかけで始まったのですか?

三井紀子氏(以下、三井)2015年時点で、ガリバーのサイト全体で約1,000のコンテンツが投入されていました。12月ごろにその検索順位が乱高下して、社内がざわついたんです。それでも繁忙期にあたる翌年1~3月はまだ現状維持できていたのですが、「車の買取り」に関するキーワード群が5月には軒並み検索7位や8位に下がってしまいました。「え!? 今日の数字、間違ってない?」というほど急でした。原因はGoogleのアルゴリズム変更。コンテンツ品質がより厳しく評価されるようになり、対策で出遅れていた当社のサイトは、その影響をもろに受けてしまったのです。

IDOMマーケティングチーム 三井紀子氏
IDOMマーケティングチーム 三井紀子氏

白砂ゆき子(以下、白砂)Googleが高く評価するのは、ユーザーにとって質の良い情報が多く含まれ、読んで役に立つコンテンツです。逆に情報が薄いコンテンツは評価しません。ご相談いただいて調べたら、全体的にユーザーに熟読されているコンテンツが少なかったのを覚えています。

三井そうなんです。直帰率や滞在時間を見ると、そもそもあまり読まれていなかった。車の買取り事業自体は、2014年から2015年を比較すると1.2倍ほど利益が上がっていました。ビジネス的に調子が良かったときだけに、この順位下落事件は大打撃でした。

――何がGoogleの評価を下げたのでしょう?

三井今思えば、カスタマージャーニーの最後の部分である「コンバージョン」だけに力を入れ過ぎていたんですね。白砂さんにも、最初に「ユーザーに向き合っていない」とご指摘いただきました。

当社は「全国のあらゆる街に店舗がある」というビジネスモデルに強みがあります。「ガリバーは車を高く買取ります」というメッセージも、CMの影響もあって広く認知されていました。2015年前半まで作っていたのは、このメッセージをキャッチーに面白く伝えるコンテンツばかり。

ユーザーが流入するとすぐに「車売りませんか?」「ガリバーなら高く買取りますよ」と査定申込み(コンバージョン)に誘導する、ランティングページのようなコンテンツを大量に投入してきたのです。でも一括査定サイトなども増え、ユーザーの検索行動が変わるなかで、皆さんの目が肥えてきます。事前の情報収集もしっかりされる。当社はこの「情報収集段階のニーズに答えるコンテンツ」が手薄でした

従来は「比較検討」と「コンバージョン」ばかりに偏り、「情報収集」のニーズに応えられていなかった
従来は「比較検討」と「コンバージョン」ばかりに偏り、「情報収集」のニーズに応えられていなかった

白砂サイト構造から精査してみたら、内容が似通ったコンテンツも多かったですよね。

三井そうでしたね。投入済みの1,000本のうち「車の買取り」に関するコンテンツは約600本ありました。似たようなページを統合して、ちゃんとユーザーの検索意図に応えた内容に絞っていったら、約50本まで減ることがわかったんです。

白砂文章とか内容はすごく面白かったんですよ。ただ、ユーザーの検索意図に答えられていないコンテンツが結構あって。まずはそこを整理し直しましょうと、提案しました。

まったくの未経験で突然のアサイン。理由は「向いているから」

――そもそも、なぜコンテンツの「制作」でなく「指導」を依頼したのでしょう?

三井順位下落問題に直面したとき、当社ではたくさんのSEO関連ツールを比較しました。当然ながら、専門のSEO会社にコンテンツ制作を任せてしまって、社内でディレクションだけする手もありました。また、時代の流れもあってソーシャルやアプリ戦略へのシフトを勧める提案も受けていました。

でも当社は、あくまで「自社でのコンテンツ制作」にこだわったんです。「大変かもしれないけど、地道に学んで、質の高いコンテンツの作り方を自分たちにインストールしよう。スキルを身に付けて社内に横展開できる環境を作らなければ、成果を上げ続けることはできないから」と。

その方針でさまざまな提案を検討していくなかで、「MIERUCA(ミエルカ)」を使えば「自分たちでもできる」と直感しました。

ミエルカの使い方だけでなく、コンテンツ制作の考え方を学んでいった
ミエルカの使い方だけでなく、コンテンツ制作の考え方を学んでいった

白砂ありがとうございます。ツールは使いこなせて初めて意味がありますから、お客様がインハウスでしっかり自走できるように、サポートは惜しみません。でも三井さんはコンテンツチームの担当になられたとき、きっと焦りましたよね。SEOもWebもご経験がまったくないと当時伺ったので……

三井そうなんです。本当に経験ゼロからだったんですよね。すごく覚えてるのが、導入してすぐに参加したミエルカのセミナーです。他社ユーザーさんがミエルカを実務でどう使っているのか解説してくださったのですが、もう何を話しているのかさっぱりわからなくて……。「どうしよう、この登壇者に『教えてください』って言いに行こうかな」と思ったぐらい、知識がなかったんです(笑)。白砂さんや岡村さんに教わり始めても、やっぱり1回や2回じゃ覚えられない。「これで合ってるのかな」「作り上げたコンテンツが本当に効くかな」と不安で、常にお2人に相談しながら進めていました。

――なぜ未経験の三井さんがアサインされたのでしょう?

三井上司からは、「向いているから」のひとことでした(笑)。

白砂私、わかるような気がします。コンテンツマーケティングって、数字の分析力より、ユーザーの気持ちでモノを見る「なり切り力」とか「察し力」が必要なんです。三井さんは、この資質がずば抜けていらっしゃいますよね。細部にまで心を配らなければいけないマーケティング手法なので、相手のことをどこまで想えるか、おもてなしに似た感覚に優れた人が向いているんですよ。

Faber Companyコンテンツ部 部長 白砂ゆき子
Faber Companyコンテンツ部 部長 白砂ゆき子

三井自分では全然そんな力があると思わなかったです。でも、コンテンツ制作を始めて、どんどん楽しくなって。達成しなければいけない数字のプレッシャーより、「面白い」のほうが強くなっていきました。

――コンテンツ制作のレクチャーは、具体的にどのように受けていましたか?

三井進捗管理ツールのプロジェクト名を「ブートキャンプ」に設定しました。白砂さんを「隊長」、岡村さんを「先生」と呼んで(笑)。まず私が構成案を作ってみて、お2人に見てもらう形でスタートします。すると岡村先生から「意図がバラバラのキーワードを無理に詰め込んでも、ユーザーの知りたい内容にはなりません。それよりも重要テーマにフォーカスして、この内容の方がユーザーが知りたい答えに近いのでは?」と冷静に戻していただいて、それで構成案を直して……。最後に白砂隊長からOKが出るまで、何度も何度も添削していただきました。

岡村眞友子(以下、岡村)ミエルカはヒントを提案してくれますが、最終的には人間が判断します。ユーザーの想いにどこまで寄り添えるかが判断の軸ですが、慣れるまでは難しいんですよね。

三井そうなんです。最初の3か月は、定例ミーティングのたびに「次までにここを分析してきてくださいね」と宿題をもらって、みっちり鍛えていただきました。

「ユーザーの疑問にはっきり答えること」が何よりも大事

――どのようなコンテンツを投入していますか?

三井白砂さんと岡村さんのご指導で、これまで取れていなかったキーワードで検索10位以内に上がった例が増えています。その一つが、お得な車の買い替え時期を教えるコンテンツです。当初はターゲットキーワードで20位近かったのに、2か月で5位まで上がってきました(2017年3月時点)。

車の買い替え時期を教えるコンテンツ。20位から5位まで順位を上げた
車の買い替え時期を教えるコンテンツ。20位から5位まで順位を上げたサイトで見る

白砂見出しや構成をかなり変えましたよね。もともと、「狙い目は決算、特に納車日は注意……」といった具体的ではない文章でした。これを当社の岡村が「ユーザーの検索意図を見ると、とにかく『いつ乗り換えるべきか』を知りたがっているので、先に結論を述べてから、理由を書きましょう」と指摘して、第1セクションのh2見出しを「乗り換え検討のサイクルは、3年/5年/7年」と提案したのです。

岡村サジェストキーワードを分析すると、「何年」「いつ」「タイミング」「税金 3月」「平均」といったワードが出てくるので、自分がユーザーなら、まずはっきり「時期」を言ってほしいなと。調べたところ、車の価値がガクッと下がるタイミングがあるとわかったので、テーマに「リセールバリュー(再販価格)」の変動についても追加するよう提案しました。

Faber Companyコンテンツディレクター 岡村眞友子
Faber Companyコンテンツディレクター 岡村眞友子
Googleの「車 買い替え」に関するサジェストキーワードをミエルカで分析したネットワーク図。ユーザーの検索意図が自動でグルーピング、色分けされる
Googleの「車 買い替え」に関するサジェストキーワードをミエルカで分析したネットワーク図。ユーザーの検索意図が自動でグルーピング、色分けされる(ミエルカで作成)

タイトルはシンプルで短いほうがいい

三井大きな学びの一つには、「ユーザーに端的に伝えるために、タイトルを短くする」というポイントもありました。タイトルを工夫すると、成果が全然違うんです。

白砂タイトルには「驚きの」とか、「簡単これだけ!」とか入れようとしがちです。でも調べてみると、不思議なことにシンプルで短く、色気がないタイトルのほうがCTRは高いんですよね。当社の別プロジェクトを見ても、同じ傾向です。

三井最初はターゲットキーワードで検索24位だった別のコンテンツも、お2人の指導で一度構成を見直した後、「クルマ買い替えの手続きと流れ」というシンプルなタイトルに変更したら、1位にポンと上がりました(2017年3月時点)。

クルマ買い替えの手続きと流れ
クルマ買い替えの手続きと流れサイトで見る

岡村飾り言葉より、知りたいことがパッと目に入るほうが、ユーザーにとってわかりやすいということですよね。

三井もう一つ、「迷ったときは必ずSERPs(検索結果画面)を見る」という教えも、自分のなかで軸になっています。コンテンツって1~2か月しないと成果が表れないので、コンバージョン部隊からはいつも「三井さん、流入が全然増えてないんだけど」「順位、何位から動いてない。これ、いつ上がるの?」と急かされるわけです。そうすると「流入の多いキーワードを追加すれば……」と気持ちがブレることがありました。

でもそこで脳裏によぎるのが白砂さんの教えです(笑)。「SERPsを見て、ユーザーの気持ちになり切って、『この言葉で検索した人には、本当にこの答えで合っているのか』を突き詰めてから、コンテンツに取り組む」。この姿勢を、何度も粘り強く刷り込んでいただいたので、ブレずに済みました。

「読まれるコンテンツ」になり、流入数が32%改善!

――全体的な数字の動きはいかがですか?

三井施策開始後半年で、直帰率は全体平均で10ポイント減、滞在時間は3割増し以上になりました。「じっくり読まれるコンテンツ」が大幅に増えた証拠です。キーワードの検索順位をスコア化した「ファインダビリティスコア(検索エンジンでの「見つけやすさ」を表す数字)」も上がっています。

車買取り系のキーワード群で計測したファインダビリティスコア。右肩上がりに数値が改善している(スコアはミエルカで算出)
車買取り系のキーワード群で計測したファインダビリティスコア。右肩上がりに数値が改善している(スコアはミエルカで算出)

――意外だったアドバイスはありますか?

三井システム改修を提案されたことです。「ユーザーが知りたい答えを基幹システムからデータとして取り出し、コンテンツの一部として表示する」という提案でした。「ここまで徹底してユーザーに寄り添うのが、コンテンツマーケティングなんだな」と、あらためて実感しました。

白砂検索意図を読み解くと、コンバージョンの一歩手前で「この情報が知りたいのに……」ともどかしく思っているユーザーの気持ちがわかることがあります。これを解消するには、文章や写真でなく、ときにはシステムで答えることが必要なケースもあるんですよね。

三井これは本当にやってよかったなと。施策から半年で、ビッグワードからの流入数も、当初の目標に限りなく近づいています。繁忙期の3月には、順位下落事件のときから対前年比32%も改善しました。しかもシステム実装後、売り上げもかなり上がりました。

白砂それはよかったです! ユーザーのニーズに応えられたという結果ですから、うれしいですね。

施策を始めた2016年9月から半年で流入数が32%改善(前年を1としたときの指数実績)
施策を始めた2016年9月から半年で流入数が32%改善(前年を1としたときの指数実績)

次は「教える側」としてコンテンツ制作の手法を全国の店舗に広めたい

――半年後の現在、コンテンツ制作の指導はどのような状況ですか?

三井今はFaber Companyのセミナーや、ワーク中心でミエルカの操作を教わる「ミエルカ大学」で学んでいます。他社さんの実例からもヒントがもらえますし、復習だけでなく知識のアップデートもできるので、すごくためになります。

岡村最初のころは一度の添削の戻しでドカッと量がありました。それがだんだん減ってきて、回数も少なくなり、最近「なんか寂しいな」って思うんです(笑)。

三井あの3か月みっちり個別指導の期間があったから、自信がついたんですよ。お2人が毎回宿題を出して、本当に寄り添って、前に前に進むような設計をちゃんとしてくださったのが大きかったです。

――現在取り組んでいる施策や、将来の目標を教えてください。

三井今は「非直帰ユーザーのコンバージョン率」に注目しています。実は、新規流入はまだ2015年前半の水準には追い付いていませんが、コンバージョンに至るユーザーの数は、ほぼ変わらずに保てています。ということは、じっくりコンテンツを読んで、ちゃんと有益な情報が得られたユーザーは、戻ってきてくれるのではないか。車を乗り換えるタイミングが来たときに、ガリバーを選んでくれるのでは……と想定しています。

もう一つ、まだ案ですけど、コンテンツ制作のメソッドをほかのチームや全国の店舗にも広められればと思っています。会社全体で、ユーザー視点に立ったコンテンツ作りに取り組めば、地域によって違う車のニーズにもきめ細かくしっかり寄り添えます。白砂さんたちから学んだように、今度は私が「コンテンツ制作はこんなに面白い」「ユーザーの気持ちとつながるのはこれだけの意味がある」と、ちゃんと伝えられたら、みんな楽しんで工夫してくれると思うんですよね。

白砂すごい施策になりそうですね。私たちも楽しみにしています。

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