各社の事例でわかるオウンドメディア運営の「企画」「構築」「成果」ノウハウ

歴戦のプロ編集者が語る、インタビューで本音を引き出す相づち・会話のテクニックとは?【後編】

インタビューで本音を引き出せるかは取材者の技量にかかっている。多くの取材をこなす中山氏と鈴木(アミケン)氏が心がけていることとは?
左:鈴木健介氏/→:中山順司氏

「オウンドメディアの取材は質が低い――」と言われることに危機感を覚える「経営ハッカー」編集長の中山氏と、フリーランス編集者の鈴木(アミケン)氏。取材記事を作るノウハウを語る対談の後編をお伝えする。

後編は、取材中に本音を引き出すノウハウ、記事公開までのスケジュールや謝礼の注意点について。本音を引き出せるかどうかは、取材者の技量にかかっている。

>>前編の「事前準備」「当日の心構え」から読む

中山順司氏(経営ハッカー編集長)

中山順司(経営ハッカー編集長)
2016年にfreee株式会社に入社。経営ハッカー編集長。24時間365日、オンオフの境界線なく常にコンテンツのことを考えては執筆する生活を送る。趣味はロードバイク。

鈴木健介氏(アミケン)

鈴木健介(アミケン)
1977年 大阪生まれ。合同会社GX代表 / アミケン編集塾 塾長 / リクナビNEXTジャーナル編集デスクetc / オウンドメディア勉強会幹事 / PRSJ認定PRプランナー / 趣味:旅とサルサ

相づちは短く。相手の話を復唱して理解していることを示す

中山氏

中山実際に取材するときの話に移りましょうか。僕は、「話を聞く&引き出す」という点で、相づちはとにかく短く心がけるようにしています。長く話すのではなく、「それでそれで?」というように。

鈴木でも、復唱はしませんか? 相手がひと通り話し終わった後に、要点をもう1回こっちでかみ砕いて「つまりこういうことですか」と復唱する。これは大事だと思っています。お互い確認にもなりますし。

中山それはやります。「理解していますよ」というのも伝わりますし。僕は会話のリズム感を大事にしたいので、もちつき感を延々と出すような感じでいきます。相手が疲れたかなというときには、1回話を切って水を飲む時間を作る。しゃべり疲れる瞬間ってありますからね。

あと、相づちのワンパターン化は避けたい。ただ驚くのでも「すごーい」「やばーい」だけだとキャバクラっぽくなっちゃうので、何だったら擬音語、擬態語も織り交ぜながら反応を返します。話を聞いているときに気を付けていることってありますか?

鈴木ワンパターン化を避けるというのはそうですね。「はやり言葉」を入れるとか。ひと昔前なら「どんだけ~!」ってツッコミ風の驚きを表現したりとか。

中山……古い。

鈴木ルー大柴さんにインタビューしたときは、ルー語で返しました。ルーさんがルー語でしゃべっていないくだりでも、こっちがルー語で返すという。すると「そう!そういうことだよ!ザッツ・ライト!」みたいな空気になって(笑)。相手の言葉を用意しておいて、それで返すというのはたまにします。

中山上級テクニックですね。

鈴木インタビューとして引き出したいキーワードってあるじゃないですか。でもインタビュー中になかなかその言葉が出てこないこともたまにあります。そういうときはこっちから出しちゃう。すると「そういうことです」ってなるので。

中山若干誘導気味ではあるけど、「やばい、このキーワードがないと記事が成立しない」みたいなときはありますね。

「会話のリズム感を大事にしたい」

理想はマツコ・デラックス。敬語はほどほどで距離感を詰める

中山あと、敬語はほどほどにとどめるようにしています。もちろん失礼にならない程度に。たとえば携帯電話会社のサポートセンターに電話すると、すべてのフレーズに「ございます」「いただきます」「ありがとうございます」と付けられて、「ていねいなのはいいけど早く話を進めてほしい」と思うことはありませんか?

鈴木敬語を駆使しすぎると、わけがわからなくなりますよね。私の理想はマツコ・デラックスさんのコミュニケーションです。最初はていねいに入るんだけど、だんだんタメ口になっていく。あれはもう名人芸なんでしょうが、あそこまでいけたらすごいインタビュアーです。

中山あとは、ところどころでちょっと失礼なことを言うとか。「それはばかですねー」と茶々を入れたり。その後に「いい意味で」って添えると、わりとすべてが丸く収まる。

鈴木「いい意味で」は魔法のフレーズ。

中山でもツッコミがあった方が、向こうも「いや違うんだよ」っていう、聞いていないことまで一歩踏み込んで話をしてくれるんです。

鈴木それは大事な話で、取材中に場を和ませようとボケてくれる方っていて、それをインタビュアーがツッコまないでシーンとなるのって最悪だと思います。「いやいやいや」とか「んなワケないでしょう」とか、それぐらいでもいいから返してあげないと成立しないですからね。関西の人だと「なんでやねん!」の万能感がすごいです。

中山先方の気遣いはしっかりと汲まなければ。多分、インタビュアーが緊張しすぎているんでしょうね。余裕がないとできない。

鈴木ボケを拾えなかったときのすべりっぷりが失礼極まりない。隣で聞いているカメラマンは気付いているけど、立場上会話に入っていけないなんてこともあります。

「『いい意味で』は魔法のフレーズ」

自分から語るのはNG。知らない体で相手に語ってもらう

鈴木氏

中山たまに自分語りをやってしまうインタビュアーがいるんです。自分の知識を披露しちゃうのはNGですね。知っていても知らないふりをすること。僕は知っていることでも無知を装います

鈴木それは結局、準備不足が原因じゃないですか? ちゃんと準備をしていれば、相手が語るだけで1時間はあっという間なはず。そこが足りていないから「尺を埋めなきゃ」という強迫観念で語ってしまう。

私は「何も知らない読者の代弁者として来ています」ということを伝えます。「私は知っているんですけど、読者の人は知らないので教えてもらえますか」という体で。

中山読者の代弁者というのは有効ですよね。「でも世間はそう思っていないかも」とか「批判されているけど」と反論したいときは、僕の意見としてではなく「ネットでこんな風に言われていますが、それに対して反論することはありますか?」と聞いたりします。

本音の引き出し方って、取材者の技量というか、独学スキルのような気がするんですけれど、僕はわりとストレートに聞いちゃう方です。「非常に聞きにくいんですけど……」とか枕を付けて、遠回しに聞くと言うよりはストレートに聞く。

鈴木私は、聞きにくい質問があるとき、あえてその質問を最初にもってくるテクニックを使うことがあります。

中山聞きにくい話を、インタビューの最初でするんですか?

鈴木序盤で1回聞いておいて、後半にも同じ質問をするんです。1回目はうまくごまかして当たり障りのない答えが返ってくるんですけど、ある程度話を進めてからもう1回同じ質問をすると、本音が出てくることがよくあるんです。「同じ質問を複数回する」のって、本音を引き出すパターンとして使えます

中山ボディーブローのように効きそうです。

鈴木ロールプレイングゲームやミステリーゲームでも、同じ質問を2~3回やるとゲームが進行することってあるじゃないですか。あれってインタビューでもあると思うんです。

あとは、キャリアのインタビューをするときは、その人の子ども時代や学生時代のことを聞いたりもします。何か事を成している人って、ルーツに根ざしている思いがあることが多いですから。「昔は不良で」とか「学業はからきしダメで」とか。自己分析をしたうえで、話せる範囲でさらけ出してくれることもありますね。

「序盤で1回聞いておいて、後半にも同じ質問をする」

沈黙は我慢比べ。同席者に話を振って相手に息継ぎしてもらうのも手

中山氏

中山慣れていない人は取材中の沈黙が怖いみたいですね。僕は沈黙は恐れないようにしています。一瞬我慢比べみたいになるんですけど。長いときは30秒くらい。

鈴木30秒ってずいぶん長いですね。

中山相当我慢強くないと、10秒すら待てません。耐えきれずにフォローの質問をしちゃったり、別の話題に移っちゃったりするでしょうね。でも、相手が「うーん」と考え込むときもあるじゃないですか。

鈴木矢継ぎ早すぎる質問で自滅しちゃうことはありますよね。沈黙している間って何をしているんですか? 相手の目をじっと見てる?

中山あんまり見ないようにしています。窓の外の風景に目をやったり。相手にプレッシャーを与えないようにします。

鈴木私もそうです。資料に目をやったりとか。「こっちはメモを取ってますからゆっくりで大丈夫ですよ」という感じを出します。

中山待つと大体向こうが折れてくれて、続きの話を聞けるパターンが多い。相手が長考に入ってしまうときは、同席している編集者に質問を振ったりとか。場の空気にもよりますが、「カメラマンさんってどうでした?」とかも言います。インタビュイー(取材を受ける人)に1回息継ぎしてもらう間を作るために。

「相手にプレッシャーを与えないようにします」

鈴木沈黙とは逆に、取材されることに慣れている方で、頭の回転がすごく速くて話が止まらず暴走されてしまうのはまずいパターン。

中山「時間をオーバーしてしまうのでは」という恐怖があります。延長しそうだぞと思ったら、僕は途中で「お時間大丈夫ですか?」と確認します

鈴木はい、相手を心配する風にですね。

中山「1時間のお約束でしたけれど、このペースだと1時間半になりそうです」と伝えると、「ああ、大丈夫ですよ」って言ってくれることが多い。でも、お尻が固定されていたら強引に話を戻しにかかります。こちらの都合という感じではなく、「延長してしまうとご迷惑でしょうから」というようなトーンで頼みます。

取材が終わったときに編集権とスケジュールの話は必ずしておく

中山取材が終わってすぐ帰るのではなく、その場で確認しておく作業も大事です。「ほかにオフレコがあったら教えてください」とか「公開前にチェックをお願いします。ただ、最終的な編集権はこちらに持たせていただきますね」ということをしっかり伝えておくとスムーズに進みやすい。

鈴木後の広報チェックで「これはダメ」「それもダメ」と言われてまるごと内容が変わってしまう危険もありますからね。「背後に読者がいる」ということを伝え忘れているインタビュアーも多い。私の場合、インタビューに臨むときに「自分たちが何者で、どんな読者がいて、どんな信念を持ってメディアを運営しているのか」を念押しで伝えることはあります。

中山僕は「読まれる表現や刺さるタイトルに関しては、安心して任せてください。読者のために編集します」ということを伝えます。これは取材の場で顔を合わせて伝えた方がいい。帰ってからメールで伝えると、後出しのようで悪印象を与えてしまいます。

鈴木記事の公開までのスケジュールはどのタイミングで伝えます?

中山スケジュールもその場で伝えます。「初稿が1週間後。再校のキャッチボールは2回ぐらいあるでしょうから最終稿がFIXするのが2~3週間後。なので公開は今月末です」のように、ざっくりお伝えします。

鈴木私も必ず取材現場で言います。それがいわゆるエンディングトークというか、「これで取材を終わります。ありがとうございました」という役割も兼ねています。

「『読者のために編集します』ということを伝えます」

PV数が少なくても卑下しない。しっかりした企画があれば大丈夫!

鈴木氏

中山こんな噂を耳にしたことがあります。「オウンドメディアの取材はコンテンツの質が低いので、取材を受けたがらない企業もある」と。オウンドメディアに限らず、低品質の取材が続けば「取材受けるの、もうやめようか」ってなってしまう。これは悲しいですね。オファー時の話になりますが、取材を依頼するときの注意点って何かありますか?

鈴木やっぱり企画がしっかりしているってことが大前提じゃないですか。「何のために、何のお話を聞きたいんです」という。取材を依頼するときは、「相手は基本忙しいのだから、断られて当然」くらいの気持ちでいます。取材依頼書は読みやすく1枚にまとめて、イエスかノーのお返事をよろしくお願いしますという感じです。

中山多くを語りすぎない感じですか?

鈴木はい。でも、ちゃんとした取材だということが伝わるようには心がけています。仮に誇れるようなPV数がないオウンドメディアでも、そのことを卑下する必要はありません。ちゃんと企画を伝えてメディアとして取材を申し込めば、相手も嫌な気はしません。むしろ「うちはPVも少ない弱小のオウンドメディアで恐縮ですが……」という態度の方が相手に失礼です。

中山相手に「ノー」と断る理由を与えているようなものですね。仮にPVが少なくても、メディアの信念や哲学を伝えられれば問題ない。数は少なくても、こういう非常に濃いセグメントの読者が読んでくれています、とか。あとは、過去にインタビューに登場してくださった方の事例を添えるのは完成イメージを伝えるのにも都合がいいですね。

鈴木取材を申し込むときに気を付けるポイントなら、「余計なことは言わない」こと。情報を詰め込みすぎると逆に不安を与えます。肩に力を入れすぎて長文メールを書いたり、卑下してへりくだったりせず、簡潔かつ手短かにお願いをすることです。

私は前の会社で広報もしていたので、取材依頼を受けるか否かをジャッジする側だったんです。基本的には、「そのインタビューを受けることによって、自社にどんなメリットがあるのか」が判定基準になります。裏を返すと「このインタビューに出ると、あなたのこういう面を引き出せます」とか「こういう人たちにあなたの会社の情報を伝えられます」という要素をオファーに含めておくと「イエス」を得られやすいと思います。

「ちゃんとした取材だということが伝わるように」

中山あと大切なこととして、オファー時には、謝礼の話も最初に伝えます。過去に一度、テレビ業界の方に取材をしたときにえらいミスをやらかしまして。Webメディアでは取材で謝礼が出ないことがほとんどですが、テレビ業界的にはギャラを出すのが当たり前らしく、それを知らなかったんですね。そのまま先に取材を済ませました。

鈴木嫌な予感がする……。

中山それで初校を確認してもらうくらいのタイミングで、「振込先をお伝えしたいんですが、そういえばギャラってどうなってますか?」って聞かれて。「やっちまった!」ってなりました。そのときは平謝りして大きなトラブルにはなりませんでしたが、お互い少しだけ後味の悪い取材になりました。

鈴木大抵のことはリカバリーが利きますが、お金の話だけはどうしてもモヤッとしたものが残ってしまいますね。

中山しかも、すでに記事が完成していましたから。その失敗から、謝礼の話は必ず最初にすることを心がけるようになりました。2年前のことです。

鈴木最近の話じゃないですか(笑)。

◇◇◇

独自の取材記事は、オウンドメディアにとって非常に価値があるものだ。しかし、ろくに準備もせずただ取材するだけの質の低い記事では誰も得をせず、読者のためにもならない。中山氏と鈴木氏は、準備不足のメディアの取材が続くと「取材を受けること自体やめようと思われてしまう」と心配する。

「PV数が少ないオウンドメディアだから」とへりくだる必要はない。自メディアの信念や企画に自信を持ち、相手のことをしっかり考えて取材に臨むことが大切だ。そういう真摯な取材の積み重ねが、メディアの成長にもつながっていくはずだ。

取材のポイント
  • 企画が定まっていることが大前提
  • 大事な質問は3つまで
  • 「準備不足」「準備させ不足」「根回し不足」が失敗の原因
  • アイスブレイクは相手のことを考える
  • 相手の話を復唱してリズムよく
  • 敬語はほどほどにして距離を詰める
  • 編集権とスケジュールの話は必ずその場で伝える
  • オファー時には卑下せず信念を伝える
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