企業ホームページ運営の心得

ネット予約は当たり前? 思考停止せずに考えるメリット&デメリット

予約サービスはあって当たり前と思考停止せずに、店と客のメリット&デメリットを考えます
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の492

飲食店業界の最前線

BrianAJackson/Thinkstock

今、最も熱いネットビジネスの最前線は「飲食店予約」かもしれません。

昨秋に物議を醸した「食べログ」のステマ騒動は、有料予約サービスの営業が拡散のきっかけでした。また、この1月から「ぐるなび」は、中国や台湾のオンライン旅行大手と提携し、事前決済型の飲食予約サービスを展開していくと発表しています。訪日観光客を受け入れる飲食店が怖れるのは「ドタキャン」ですが、事前に決済することでこのリスクを軽減するというものです。

その他にも送客手数料を不要とするレストラン予約サイトも登場しています。送客手数料とは、ネット予約を通じて来店したお客ごとに支払う費用です。

背景には「外出先」からも予約ができる「スマホ」の普及があるのでしょう。ビジネスチャンスを広げるなら「予約対応は必須だ」とあおりたいところですが、しばし冷静になり「予約」のメリット、デメリットについて考えてみます。

本稿では「飲食店」を中心に説明しますが、ネット予約を検討するすべての業種に通じます。

予約客と当日客の差

ネットで予約してから来店という顧客動線は確実に浸透しています。ある日曜日、とあるステーキハウスに開店5分前に到着すると一番乗りでした。以前は土日祝日になると、開店前からお客が溢れていたファミリー利用の人気店だったはずが誰もいません。

少し待つと、開店時間と同時に予約していた7人の団体客が来店します。元店員とその家族らしく、店員と雑談に華を咲かせて数分が経過。予約客が先に案内されるのは仕方がありませんが、数分間の雑談の果てに案内された席は「末席」。外が見える窓際の席や、ソファーのボックス席といった「良い席」はすべて予約されていたのです。

しかもこの時点の来客は2組だけ。人通りの多い席は「落ち着かない」ことから、あまり良い席とは言えません。あえて「末席」とまでしたのは「良い席」の空白をまざまざと見せつけられる席だったからです。

優越感という得点

すべての予約席が埋まったのは開店から40分後。いつの間にか「ネットで予約」が浸透していたということでしょう(電話予約も可能ですが、ネット上では空席を見てリアルタイムで予約できます)。

お客の側から見た予約のメリットは、確実に来店できることと、それにともなう優越感にあります。予約優先を採用している店舗では、来店しているお客がいたとしても、後からやってきた予約客が案内され、ちょっとした「VIP」気分を味わうことができます。

お店のメリットもあります。予約数に応じた人員や食材を適切に手配できますし、仕入れや仕込みなどの対応もできます。完全予約制とすれば、よりコントロールしやすくなります。

こうした予約の仕組みは双方にメリットをもたらしますが、デメリットについても考えておく必要があります

待たされる誰か

先のステーキハウスでは、開店前から待っていたとしても後回しにされます。これは仕方がないとはいえ、主のいない予約されたソファー席を眺めながら、人通りの気忙しさに追われて食事する風様子を想像してみてください。

仕方がないと割り切ったつもりでも、お客はできれば特別扱いを望み、そうでなくてもフェアな接客を望みます。粗末に扱われたと感じれば、嫌悪が芽生えるものです。完全予約制の店ならともかく、予約客とそうでないお客の対応によっては、客離れをおこしかねないデメリットがあるということです。

別の「しゃぶしゃぶ」店でも、予約客は奥にある「上座」があてがわれます。ただし、当日客と席は離されており、互いに見えないレイアウトになっているため、まざまざと席の格差を見せつけられることはありません。ネット予約を導入した際、こうした気配りが求められることでしょう。

また、予約を一切受け付けないことでも有名な人気の飲食店は今、「予約できますか?」という電話攻撃に悩まされています。Webサイトを開設した理由の何割かは、あらかじめこうした問い合わせに回答するためでしたが、「ぐるなび」が予約サービスを始めたあたりから、再び予約を求める電話がかかってくるようになります。

ぐるなびの店舗紹介を見ると、ファーストビューに「ネット予約サービス」の案内リンクと店舗の電話番号が並びます。公式サイトなど見ないお客が、あわよくばと電話をかけてくるようで、今どきの習慣を確認します。

予約を取らないという流儀

この人気店が予約を一切取らなくなった理由はシンプルです。

わざわざ足を運んでくれたお客さんを大切にする

「せっかく来たのに食べられなかった」などのリスクもありますが、来店順がもっとも公平だという考えです。

予約の時間に遅れるお客は少なくありません。先のステーキハウスでも「遅刻」を確認しています。団体の場合、人数が揃っていないことや、人身御供のように「1人」しか来店していないケースもあります。すると予約なしで来店したお客は、空腹を抱えて空席を眺めることになります。そして後から来た予約客が店内に通され、美味に嬌声を上げる姿をまざまざと見せつけられます。

予約時間の「遅刻」を咎めることは困難ですし、何分経過で「撤去(キャンセル扱い)」とするかも揉める原因になります。無人のまま、座席が占有されていたことによる逸失利益を請求することも困難です。さらに連絡もなく1時間以上の遅刻をしたとしても、「来た」ことを理由に席を空けろと騒ぐ客もいます。だから、一切予約を受けないのです。

どちらが正解かという話ではありません。「LINE グルメ予約」など、新たな仕組みが登場した今、ネット予約のトレンドはより定着していくことでしょう。ただし、ネット予約を導入するとき、被予約客との折り合いをどうつけるかということを、予め考えておくべきです。

ちなみに、こうした「課題」が浮かぶのは今のネット予約の大半が「席だけ予約」に対応しているからです。昭和時代に予約を取る際は、コースメニューや宴会オーダーが必須。場合によっては「内金」も必要でしたが、予約客は応分の負担をしているもので、この手の議論はありませんでした。

今回のポイント

お客は最低でも公平を求める

「オモテナシ」をどう考えるか

この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

Python
「Python」(パイソン)は、プログラミング言語の1つ。プログラマのグイド・ヴ ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]