感情で広告をターゲティング? 「幸せ」や「驚き」でユーザーを狙い撃つEQターゲティングとは

日本でも感情による動画広告のターゲティングが始まろうとしている。人の感情を分析する仕組みと、先駆けて施策を実施したニューバランスの国内事例を紹介する。

年齢や興味関心といった従来のデモグラフィックに加えて「感情」による広告のターゲティングが日本でも始まろうとしている。感情によるターゲティングは、ブランドへの好意度や購入意向を高めるブランドリフトに大きな効果があるという。

2016年12月、動画マーケティングのアンルーリーが同社が提供する「EQターゲティング」についての説明会を行い、マーケティングにおける感情の重要性と、先駆けて日本で施策を展開したニューバランスの事例を紹介した。

ここでは、動画を視聴したときの感情が人の行動にどう影響を与えるのか、そしてマーケティングの手法としてどのように活用できるのかという点をレポートする。

強い感情喚起は、ユーザーのアクションや広告の利益と相関がある

アンルーリー フィル・タウンエンド氏
アンルーリー アジア太平洋地域 チーフ・コマーシャル・オフィサー
フィル・タウンエンド氏

米アンルーリーのフィル・タウンエンド氏は、同社のミッションを次のように説明する。

われわれは動画広告で単にユーザーにリーチするだけではなく、ユーザーを感動させることを使命にしています。感情は「ブランド想起」「ブランド好意度」「購入意向」「アドボカシー(支持)」のすべてに効果を発揮します。

フィル氏は続けて同社の調査データを紹介した。調査は、同社が保有する3兆以上の動画視聴データと100万人以上のパネルによる消費者心理データをもとにしたものだ。

次の図は、視聴者の感情反応と口コミの相関性を表した図だ。動画を見て強い感情を示すほど、「誰かに話したい」という口コミの意欲が高まることがわかる。

強い感情反応と口コミの意欲は比例の関係が見られる(出典:Unruly EQ data, 2016)
強い感情反応と口コミの意欲は比例の関係が見られる(出典:Unruly EQ data, 2016)

同様に、強い感情喚起は口コミ以外にも次のような意欲と相関があることが示された。

  • 動画の再視聴(もう一度見たい)
  • 検索意欲(製品やサービスについて詳しく知りたい)
  • 購入意向(製品やサービスを買いたい)

また、ユーザーの感情と広告の利益の相関も紹介した。従来の広告戦略と感情をターゲットにした広告戦略を次のように定義し、それぞれのキャンペーンの成果を比較したのが下のグラフだ。

  • 合理的な広告戦略: 直接商品の良さを伝える従来の手法
  • 情緒的な広告戦略: 動画でストーリーを見せてその中で商品の良さを伝える手法
短期・中長期ともに「情緒的な広告戦略」が高い成果をあげている(出典:Binet & Field, Institute of Practitioners in Marketing, 2008, Marketing in the Era of Accountability / Institute of Practitioners in Marketing, 2013, The Long and the Short of It)
短期・中長期ともに「情緒的な広告戦略」が高い成果をあげている
(出典:Binet & Field, Institute of Practitioners in Marketing, 2008, Marketing in the Era of Accountability / Institute of Practitioners in Marketing, 2013, The Long and the Short of It)

第三者機関のBinet & Fieldの調査によると、短期的な広告施策において大きな利益増を得た広告主の比率が「合理的な戦略」では16%だったのに対し、「情緒的な戦略」では31%だった。同様に3年以上の長期的な広告施策においては、「合理的な戦略」では23%だったのに対して「情緒的な戦略」では43%と、短期・中長期ともに「情緒的な戦略」がより大きな広告利益をもたらしていることがわかる。

日本はまだこれから。感情伸びる余地が大きい

EQターゲティングは欧米で先行している取り組みだ。日本では、グローバルの平均に比べると「感情反応が小さめ」という調査結果が出ているという。フィル氏は「これには2つの理由が考えられる」と説明する。

オレンジが日本で、赤がグローバルの平均値。日本はグローバルと比べて「感情反応が小さめ」だ
オレンジが日本で、赤がグローバルの平均値。日本はグローバルと比べて「感情反応が小さめ」だ

1つは、日本人は感情反応をあまり大げさに出さない特徴があること。もう1つは、感情を揺さぶるような動画が日本のマーケットにまだ出てきていないこと。後者は「伸びしろが大きい」ととらえることができ、「日本は情緒的な動画広告のポテンシャルが高い」と説明する。

日本ではテレビCMを流用した15秒や30秒サイズの動画が主流だ。狙う感情の種類にもよるが、ストーリーを見せるならもっと長い尺が必要になる。

感情は「表情」「アンケート」「音声」の3つで分析する

アンルーリー 日本代表取締役 香川晴代氏
アンルーリー 日本代表取締役
香川晴代氏

EQターゲティングでは、その動画がターゲットユーザーの感情にどのような影響を与えたのかをパネル調査で分析する。

デジタルにあらわれにくい「感情」は、どうやって分析しているのだろうか? アンルーリー 日本代表取締役の香川氏は、次の3つのデータソースを使い科学的に分析していると説明する。

  • 表情の分析
  • アンケート調査の分析
  • 音声の分析

「表情の分析」は、動画を見るときにWebカメラをオンにしてもらい、動画を視聴している顔の表情を撮影して分析する。「アンケート調査」は、どんな感情を持ったか、ブランドを好きになったか、どのSNSを使うかなどさまざまな質問を行う。表情だけでは分析が難しい複雑な感情もこのアンケートで補完する。「音声の分析」は、視聴中の音声を録音してAIにより分析を行う。

こうした情報をもとに、ターゲットに近いパネルのユーザーが、その動画のどの部分で、どんな感情が発生したのかを分析するわけだ。

パネルは自宅やモバイルで動画視聴を行うため、テスト環境と実際の環境に大きな違いがなく、より精度の高いデータを取得できるという。

「望んだブランドリフト効果があると判断できた」
ニューバランスが配信した動画広告の国内事例

ニューバランス 鈴木健氏
ニューバランス
鈴木健氏

それでは、「感情」を実際にどのようにマーケティングに活用するのか。ニューバランスの鈴木健氏が、2016年20月からグローバルで展開している動画の事例を紹介した。グローバルの中には日本も含まれており、日本在住のユーザーに対して施策を行った結果だ。

ニューバランスでは、ブランドとしてユーザーとの関係性を強化したいという課題を抱えており、今回の感情をターゲットにした施策をグローバルでスタートした。その1つが、女性ボクサーのストーリーを描いた「UNTOLD ATHLETE STORIES: HELLCAT」だ。

まず、今回の動画広告のターゲットを「24~35歳の日常的にスポーツをする人」と定めました。そして、動画を視聴してパネルの方の感情がどう動いたのかということを見ていきました。

New Balance Presents UNTOLD ATHLETE STORIES: HELLCATYouTubeで見る

次の図は、動画を視聴した感情の動きを日本人のサンプル全体とターゲットユーザーで比較したものだ。全体の平均に比べて、ターゲットユーザーはどの項目も高い数値を見せた。

サンプルは18歳以上の日本在住者500人で、そのうちターゲットの「24歳~35歳の日常的にスポーツをする人」は100人。ターゲットが動画に強い反応を示していることがわかる
サンプルは18歳以上の日本在住者500人で、そのうちターゲットの「24歳~35歳の日常的にスポーツをする人」は100人。ターゲットが動画に強い反応を示していることがわかる

面白いことに、特別にニューバランスについて話しているわけではないのに、われわれがターゲットとしている人たちのブランドへの好意度や購入意向が上がっていました。「ターゲットに響いている」ということはポジティブに受け止めています。

普通はブランドリフトの評価って、施策のどの部分がどこに作用したのかまではわからないんですよね。それがわかることで、われわれが望んでいるようなブランドリフト効果があると判断できます。

また、「望ましい感情反応」を示したオーディエンスの特徴を見ていくと、当初は想定していなかった意外なユーザー像を発見したという。

「望ましい感情反応をした人」の特徴。「車が好き」「テクノロジー好き」などの属性を発見した
「望ましい感情反応をした人」の特徴。「車が好き」「テクノロジー好き」などの属性を発見した

鈴木氏は、「これはグローバルでも意外な発見だった」と語る。

「車が好き」とかは、年齢や性別、消費行動など通常のデモグラフィックでは想定しない特徴です。EQターゲティングでは、実際の視聴結果をもとに「どういう人が感情反応の相性がいいか」を選び出すことができる。より拡張性が高いターゲティング手法だと思います。

感情を分析すれば広告ターゲットの「中心部分」を狙い撃てる

アンルーリーの香川氏は、EQターゲティングの特徴は「広告ターゲットの中心部分に命中させられること」だと説明する。

従来の広告ターゲットが「24~35歳の日常的にスポーツをする人」だとしたら、さらにそのなかで「その動画広告に望ましい感情反応をする人」というより狭いセグメントに最適化して広告を配信できる。その結果、EQターゲティングを行った動画の視聴完了率は通常の約2倍になるという。

ターゲットのイメージ図。感情を分析すると主要ターゲットのさらに中心部を狙うことができる
ターゲットのイメージ図。感情を分析すると主要ターゲットのさらに中心部を狙うことができる"

また、「望ましい感情反応をする人」に動画を配信するので、ブランド認知や購入意向の向上についても効果が高い。動画接触者は動画接触者に比べてブランド認知で135%増、購入意向で20%増という結果だった。

動画の接触者100名と非接触者100名のブランド認知と購入意向を比較したグラフ(出典:Unruly BrandLift, Video Delevered in test en Vironment)
動画の接触者100名と非接触者100名のブランド認知と購入意向を比較したグラフ(出典:Unruly BrandLift, Video Delevered in test en Vironment)

鈴木氏は、ニューバランスではすでに2017年に向けた次の施策をスタートしていると語る。

「動画の何秒のシーンでどんな感情反応があったか」がわかるので、クリエイターにもプラスのフィードバックができます。通常、広告の配信はメディアプランナーや代理店が考えることですが、狙っているターゲットに対して「どうすれば響くだろうか」「どうやって届ければいいだろうか」ということを一貫して考えられることが非常に画期的だと思います。

今後アンルーリーでは、AIのマシンラーニングを使って感情とコンテンツを評価するシステムも計画している。そのシステムが完成すれば、たとえば1,000本の動画をAIが一気に分析するということも可能になるという。

今は「ユーザーデータ」があらゆるオンラインマーケティングにおいて重要な柱になりつつある。特にブランドリフト効果を狙う施策では、「ユーザーの感情」という新たな切り口も考慮に入れた方が良さそうだ。

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