Web広告研究会セミナーレポート

テレビCM×ネット広告の相乗効果は本当? 共通のKPIは必要? テレビ局発の動画広告活用を徹底議論

テレビ局発の動画広告の活用方法について議論
Web広告研究会セミナーレポート

この記事は、公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が開催およびレポートしたセミナー記事を、クリエイティブ・コモンズライセンスのもと一部編集して転載したものです。オリジナルの記事はWeb広告研究会のサイトでご覧ください。

広告主が動画広告の出稿先として、テレビ局発のインストリーム広告やアウトストリーム広告を検討するとき、何を見て、何に注意すべきなのか。月例セミナー第二部では、日本テレビとテレビ朝日の動画広告の紹介を受けたパネルディスカッションを実施。広告主の立場としてコーセー 宣伝部の小林祐樹氏をゲストに迎え、ライオンの中村大亮氏をモデレーターに、テレビ局発の動画広告の活用方法について議論を交わした。

モデレーター
ライオン株式会社
宣伝部
デジタルコミュニケーション推進室
中村 大亮 氏
株式会社コーセー
宣伝部
Web広告研究会 動画活用委員会
委員長
小林 祐樹 氏
日本テレビ放送網株式会社
営業局 営業戦略部
高橋 秀明 氏
株式会社テレビ朝日
総合ビジネス局
デジタル事業センター
渕 勇二 氏

テレビCMと動画広告で共通の指標を作れるのか

中村氏: 動画広告を(民放公式ポータルの)TVerに出稿するときには、どの局のコンテンツに出稿するかを選ぶ流れになるのか。

高橋氏: TVerは、民放各局のコンテンツを集めるポータルサイトとして利用されている。動画広告を出すコンテンツやセールスの形態は各局で異なるため、それぞれの局に相談することになる。

中村氏: 動画広告のKPIをどこに置いて利用するべきなのかが気になる。たとえば、日本テレビの番組であれば、日テレ無料、GYAO!、番組公式ホームページ、TVerでコンテンツ視聴できるが、取れるデータがバラバラになってしまうのではないか。

高橋氏: 現状は、視聴者のIDを取っておらずCookieベースの計測のため、きちんとしたデモグラフィック属性などがあるわけではない。ただし、5社共通でビデオリサーチの計測タグを実験的に使っている。要望があれば、ビデオリサーチのパネルを通じて、インプレッション以外の属性を取ることはできる。それ以外の方法も、各社がそれぞれ進めている状況にある。

小林氏: それは、各社がクライアント側の求める指標を取るために、第三者配信タグなど、さまざまな計測タグをこれから受け付けるという取り組みなのか。

高橋氏: 各社の方針によるが、今後、第三者配信タグを受け付けることはあり得ると思う。広告主がオーディエンスターゲティングをやりたいということは理解しているので、方法論については日々話している。

中村氏: 高橋さんは、海外のモデルなどにも詳しいが、日本テレビとしてどこに重きを置いているのか。

高橋氏: 個人的な意見だが、民放各局が行っているインストリーム広告は、テレビの補完の役割が強く、テキストベースのバナーから始まっているWebの世界と、CMなどのテレビの世界の狭間にあると思っている。同じ動画広告であっても、コンバージョンを狙って数値的な部分で測ろうとしているものと、テレビの延長でブランディングやマーケティングファネルの上層を狙って認知を取るもの、2つのトレンドに分かれてきている。

日本テレビのインストリームはテレビの延長にあるので、どちらかといえばブランディングや認知に適している。強いコンテンツに人が集まる傾向にあり、必ずしも1インプレッションの価値がすべて同じというわけではない。

小林氏: 1インプレッションとテレビ視聴率の1%は、そのままでは比較できないが、テレビ局側で共通の指標で比べられるように取り組んではくれないだろうか。

高橋氏: 今まさに、我々が直面しているのはその課題。個人の意見では答え切れない大きな課題なので、ぜひ一緒に相談させてほしい。

アウトストリームに取り組むテレビ朝日の狙い

中村氏: 一方で、テレビ朝日のアウトストリームのモデルは、他のアドネットワークなど、すでにある動画プラットフォームに出稿するのと違いがないように見える。

渕氏: 指摘の通り、これまで広告主が出稿しているアドネットワークとも連携しているので、何が違うのかという疑問はあると思う。しかし今は、テレビ局がこれに取り組む必要がある。テレビ局が広告のバリエーションを増やすことで、広告主のさまざまな課題を解決する可能性が広がると考えている。

テレビに出稿しているのであれば、Webも含めてどこまで統合的にKPIを管理するのかといった部分から、一緒に解決できるような土壌を作っていると考えてほしい。我々がアドネットワークとのハブとなって、テレビとの結び付きを試してみることも重要だと感じている。

中村氏: TBSがオープンエイト※1と共同で、放送コンテンツをWebで二次利用できるサービスをしているが、同じようなイメージだと考えていいのか。

渕氏: 非常に近いモデルだと思う。

※1 TBSとオープンエイトは、スマートフォン向けの動画広告「VIDEO TAP」において、テレビ放送コンテンツを二次利用できるサービスを2016年3月に開始している。

中村氏: テレビ放送のコンテンツとアドネットワークのコンテンツがどんどんシームレスになると、コミュニケーションのコンテキストが一本化されていく。そのようなプラットフォーム上で、テレビとネットを融合させるのがテレビ朝日の目指す方向なのか。

渕氏: そうだと思う。僕自身が8年間くらい動画配信事業の担当をやってきたが、自社メディアを育てるだけでは狭く、もっと広いことをやろうと考えていた。今は、アウトストリームをテキストメディアに出しているが、テキストメディア上の動画でプリロールやミッドロールをやってもいい。バリエーション豊かにやっていきたいという思いがある。

中村氏: 何をKPIとして広告主と向き合うのか、複雑で難しい気がする。

小林氏: そもそもKPIは、メディア側に求めるものなのか。

中村氏: 場合によると思うが、テレビ朝日のようなコンテンツやテレビのオンエアまで含めたプランニングは、誤解を恐れずに言うと、ほぼメディアプランニングだと言っていいと思う。まだ、具体的なことは決まっていないと思うが、渕さんとして、広告主と何を話していくのかを教えてほしい。

渕氏: テレビ局のなかでインターネットに取り組んでいると、広くリーチを取るにはコストがかかり、手間やデータも膨大になるため、どう整理して向き合っていくかが難しい。広告主や代理店のみなさんに話を聞いて、普段の商品を売るまでのKPIの過程などを教授いただきたいと考えている。

企業が持っているKPIを我々が知らなさすぎることを感じている。多くを知れば、自分たちが向かう方向はどこにあるのか、メディアとしてどのようにインターネット側を構築していくかが見えてくると思う。

テレビ局との窓口になるべき担当者は

中村氏: 小林さんはコーセーでテレビとWebの両方を担当しているが、ライオンの場合は、テレビとWebの担当が異なる。高橋さんや渕さんとは、社内のどのようなレイヤーの人が話をすればいいのだろうか。

高橋氏: 場合によってさまざま。テレビとWebの中間地点にいるが、我々もこの商品を誰が売るのか議論したし、広告会社のセクションも定まっていなかった。我々としては、インストリームはテレビ放送の補完なので、テレビ局の営業局が売るべきだと考えたが、この先もずっと同じままである必要はないと考えている。どの窓口から来ても、一番詳しいやつを出せと言って自分や渕さんを呼び出してもらえればいいと思う(笑)。

渕氏: 7月からデジタル側の人間の一部が営業局と兼務しており、テレビの提案中にデジタルの話が出てきたときに対応できる体制が整ってきている。広告主も我々も、テレビとデジタル、両方の人間が一緒になって話せるようになることが重要だと思う。

中村氏: 私は、以前にテレビ局と仕事をしていて直接話せる人がいるので、テレビとデジタルを絡めるときには直接話したほうが早く、的確な答えが迅速に返ってくると考えている。小林さんはどのようにしているのか。

小林氏: 初期段階ではテレビ局の担当者と直接話すことが多いが、詳細を詰めるときには、代理店を使って調整したほうがうまくいくと考えている。Webでは、メディアと直接話すことで積極的な提案をもらえるが、テレビは慣例的に広告代理店を通じて話すほうが強いと思う。

テレビCMと見逃し配信の相乗効果はあるのか

中村氏: 高橋さんも渕さんも、異口同音にテレビCMとネット広告を組み合わせることで効果が高くなると言っていた(第一部講演を参照)

まず、高橋さんに聞きたいが、たとえば、同じ番組のテレビ放送と見逃し配信で、同じ広告を流すといいなどの知見があるのか教えてほしい。まだオーディエンスターゲティングはできないという話だったが、どうなのか。

高橋氏: 我々のインストリームでは、コンテンツにランダムに広告を配信しているので、今の質問に正確に答えられないが、仮にテレビとインストリームの両方で同じ番組に広告が出ても、意味があると考えている。

海外の事例を見ると、放送と配信の単価が違っていて、イギリスでは配信の単価が上回っている。これは、テレビから受動的に入ってきた情報を、もう一度配信で能動的に専念視聴しながら見ると印象に残りやすいため。個人的にも、テレビで一度見たCMを距離の近いスマホでもう一度見ると親しみが沸くので、効果が出ると考えている。

中村氏:バラエティやドラマで違うとは思うが、テレビ放送を見ている人は見逃し配信も見ているといったデータはあるのか。または、テレビを見ていないからこそ見逃し配信を見ているなど、どれくらいの視聴者がいるのか取れているのか。

高橋氏: 我々もその数値は非常に気になるので、それを一生懸命探しているのが現状。ビデオリサーチのタグなどを使って調査を進めているが、まだ明確な数値はどこの局も出せていないと思う。世代による傾向の違いもあると思うので、今後の宿題にさせてほしい。

中村氏: 小林さんが動画配信を検討する際に、テレビの提供番組との組み合わせを意識することはあるのか。

小林氏: 意識している。日本テレビは、ランダム配信だから提供番組に必ず配信されるわけではないし、提供以外の番組で効果を出そうと狙ったフジテレビでは提供番組でないと配信できないと言われ、なかなかうまくいかないと感じていた。

中村氏: そのあたりは、柔軟に対応するようになっていくのか。

高橋氏: そのような話はしている。現状では、オーディエンスターゲティングを行うまでにはボリュームが足りない。コンテンツを増やして認知を上げ、海外のように放送と配信の両輪でやっていくという状況まで日本が追いついて、非常に多くの人が配信を見るようになれば、柔軟な対応も考えられるようになると思う。どのような方向がいいのかを探っていきたい。

テレビ局発の動画広告の選択肢を拡大していく

中村氏: 渕さんは、テレビCMとアウトストリームの動画配信をどのように最適なものにしていくと考えているのか。

渕氏: 今日はアウトストリームを中心に話したが、テレビ朝日としては、動画広告の手段を増やす取り組みをしている。企業のみなさんが、どのようにテレビとネットの広告を展開していきたいのか、一社一社と話しながら、我々ができることをやっていくしかないと考えているので、手数を増やしているところ。企業ごとの要望を聞きながら中長期的にやっていきたい。

今、企業にお願いしているのは、何でもいいので、テレビとネットで感じている悩みを教えてほしいということ。それに対して、我々でできる提案を戻している。「提供番組をもっと広めたい」「テレビを見てない人に認知させたい」など、なんでも相談してほしい。

僕は、スマホがあるからテレビ離れが起きたという論調が嫌い。娯楽が増えたり、家に帰らなくてもいい環境が整ったりしたことも、テレビ離れの一因だと思っている。重要なのは、屋内以外の場所でも接触して情報を伝えたり、Webの記事で知ってもらったりして、テレビや見逃し配信を見てもらうこと。一社提供している広告主には、テレビやインターネットの誘導施策としてアウトストリームなどを提案している。

目的がなければデータに振り回されてしまう

中村氏: 今日の話のなかで、テレビ局発の動画は完全視聴率が高いなど、いろいろな指標がでてきたが、広告主として小林さんは、何を重視しているのか。

小林氏: 認知のあるブランドでは、ブランドリフトにつなげるために完全視聴率を重視したり、まだ認知されていないブランドではリンクの量も重視したりするなど、それぞれのKPIがあるが、実際にやってみると、他のプラットフォームと比較して、すごくいいと思う。ただ、今はなかなか買えない(笑)。

中村氏: 我々も同じ感覚を持っている。キー局の見逃し配信をやってきたが、他の動画プラットフォームと比較して明らかにパフォーマンスが高い。詳細に見ていくと、各局のデモグラフィックの特色も見えてきて、他のプラットフォームとの違いを実感している。

小林氏: テレビは、やったらやりっぱなし的なところが多かったが、見逃し配信はコンテンツの力を分析できることがいい。たとえば、Webだとどういう世代がどこで離脱しているのか分析して教えてくれる。視聴率の良し悪しもあるが、今期の番組は、その他の世代にどう響いているのか、地上波のテレビよりも細かく分析できる。

中村氏: 分析のレベルは、どんどん進化していくイメージでいいのか。

高橋氏: データが重要だということは、すごく理解している。真摯にできることをやっていきたい。一方、デジタルの世界は数字で測れることを前提に語られることが多いが、いろいろなデータを組み合わせることが目的化していて、データを扱い切れなくなっているのではないか、とも感じている。

小林氏: 商品開発などでは、ビッグデータ活用はどんどん進むと思うが、広告の分野は、「このコンテンツにはこういう人がいるだろう」と、業界的にコンテンツ回帰していると思う。

広告配信データは、どれだけ正確なのか探り出したら切りがないが、コンテンツは裏切らない。少なくとも、僕ら宣伝部はコンテンツ重視になっていくと思う。取り組んだ後にデータがついてくるものであって、データを見て先に決めすぎては、新しい取り組みができなくなってしまう。

中村氏: 打ち合わせでも話したのが、シンプルが一番だということ。業界がビッグデータ協奏曲から始まり、DMPやマーケティングオートメーションに移り、結果的に人間が振り回されてしまったが、Content is Kingという方向に業界自体が向いているので、心配しなくていいと感じている。

日本テレビとテレビ朝日が目指す方向性

中村氏: 最後に、高橋さんと渕さんに今後の目指す方向について聞きたい。

高橋氏: 日本テレビとしての総意というより個人的な見解だが、テレビ局としては、ひたすら良いコンテンツを作って世の中に届けていく。そのうえで、明確な結果を届けて、広告主に納得してもらうことが重要だと思っている。

渕氏: 会社としては、ネットだけでなく、イベントまでも含めた総合メディア企業を目指している。人が集まるプラットフォームにコンテンツをのせて、メディアとしてさまざまな取り組みができるようにしていきたい。

小林氏: Web広告研究会の動画活用委員会は広告主が少ないので、もっと広告主に来てもらいたい。こういった公式の場では話せない議論もしているので、ぜひ参加してほしい。

Web広告研究会サイト掲載のオリジナル版はこちら:「テレビCM×ネット広告の相乗効果は本当? 共通のKPIは必要? テレビ局発の動画広告活用を徹底議論」2016年8月23日開催 月例セミナー 第2部(2016/11/10)

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