生田昌弘の「Web担当者に喝!」

やりたいことや予算が決まっていないのに見積もりを求めるWeb担当者に喝!

あいまいな依頼内容では、制作会社はまっとうな見積もりができない。まずはRFP(提案依頼書)でやりたいことを明確にすべし

RFP(提案依頼書)に予算金額を書かず、やることも決めていなのに概算見積もりを求めてくる担当者に喝!

何を作るかわからないのに、見積もりを提供できるわけがない!

「予算は決まってないんです」とWeb担当者は言うけれど

プロジェクトを立ち上げる前の段階であれば、予算が決まっていなくても何の問題もない。

しかし、外部の制作会社やシステムベンダー、アプリケーションベンダーなどに声をかけるときには、少なくとも決めておかなければいけないことがある。次の3つだ。

  • やること
  • やりたいこと
  • 求める成果や目標

なぜこの3つを決めておかなければいけないのか。これらがなければ見積もりが書けないからだ。

仕事であれば、「予算ありき」が宿命のはず。それが決まってないということは、まだ仕事といえる状況になっていないからだろう。

そもそも、「仕事」「ビジネス」というからには、こんな風に考えるはずだ。

これだけの成果を上げるから、直接的にこれくらい利益が出て、間接的にもこのくらい利益に換算できるメリットがあり、経費もこのくらい削減できる。

だから、このプロジェクトにこのくらい投資をしよう。

こんな当たり前のロジックが、なぜWeb制作には適用されないのだろうか?

制作会社やアプリケーションベンダーは、なぜ「おかしい」と教えてあげないのか?

たしかに、制作会社は「自分たちに何ができるか」を、アプリケーションベンダーは「アプリの機能」を説明はするが、「ここまで決めてきてくれないと有効かどうかわからない」などとはあまり言わない。

成果が見込めなくても、必要なWebサイトも存在する。その場合は、いかにローコストで制作できるかを検討することが有効だろう。

一方、成果や効果が十分に予測できるサイトには、そこで得られる成果を上限として、投資金額を検討するべきだろう。

建築にたとえて言うならば、マンションを建設するのか、それとも一軒家を建設するのか。これを決めないで「家を建てたいので、見積もりを下さい」とは、誰も言わないと思うのだが……。

やることは決まってないんですけど、概算見積もりをください。
Web担当者A
自由に提案してもらうために、あえて金額提示はしていません。
Web担当者B
予算は決めてないので、そこも考えて提案していただけますか。
Web担当者C

「プレゼン前に、御社の予算最適化をしろとでも?」的な困惑を覚えてしまう。

しかも、このような場合は、頑張ってすごい提案をしても「予算がねぇ……」などと言われてしまうのがオチだ。

予算は関係なかったんじゃないのかい!

しかし、Web担当者がこんなことを言うのは、制作会社や業者側の対応にも原因がある。

今のサイトを参考に、見積もりすぐお持ちします!
制作会社A
弊社の価格表をお持ちしますね。
制作会社B
ひとまず、お勧めするツールの機能リストと価格表をお持ちします!
アプリケーションベンダー

これからはWeb担当者もRFPを書こう!

「RFP」(Request For Proposal)とは、提案依頼書のこと。

多くの場合は、情報システム導入時に、発注先選定のために用意される資料を指す。これを何社かの開発ベンダーに渡して、提案書と見積書を提出してもらうことになる。

そろそろ、このRFPをWeb制作でも必須とすべき時代がきたのではないだろうか?

Webサイトが、企業の事業活動に有効な成果をもたらすツールやメディアであることは、すでに十分認知されている。

成果を上げるためには、長期的な運用も視野に入れた構築が必要なことはもちろんのこと、企業が持つ顧客情報や技術情報との連動が必要とされることも多くなっている。

情報システムと同じように、きちんとしたRFPが必要になってしかるべきだ。

とはいえ、いきなりRFPを書くのは敷居が高いと感じる人も多いだろう。

情報システムのRFPのように機能がすべて入っている必要はないし、なんなら制作会社にRFPそのものから依頼するのも悪いアイデアではないと思う。

もしあなたが、プロジェクトを効率的に立ち上げて成功させたい、またWebサイトで成果を出したいと考えるのであれば、RFP制作にチャレンジすべきだ。

Web構築におけるRFPとは?――「目的・目標」「予算」「納期」は忘れずに

同じ発注でも、Web制作会社とシステム開発会社では、それぞれ求めるものが違う。

システム開発を依頼するためのRFPは、やりたいことが記載されていることはもちろんのこと、必要な機能もすべからく明記されている必要がある。しかしWeb制作においては、そこまで詳細なRFPを要求してくる制作会社は少ないはずだ。

以下の3つが、Web制作におけるRFPの最低限度の項目になる。

  1. 成し得たいこと(目的・目標)
  2. 予算
  3. 納期

特に「1. 成し得たいこと(目的・目標)」は重要で、より具体的に、たとえば定量的な成果(コンバージョン数/率、制約数/率など)や定性的な成果(ブランド価値向上、お客さま満足度向上など)を明確にすれば、その手法自体を提案してもらうことが可能になる。

RFPを作成する前の段階で予算や納期を決めるのは、難しいかもしれない。あなたがWeb制作に詳しくなければなおさらだ。でも、自分の会社のことなのだから、多少はわかるだろう。

こう考えてみるのはどうだろう。

会社に「これだけの成果を出します」(「1. 成し得たいこと(目的・目標)」で決めた成果)と宣言したら、その企画に会社はどの程度の予算を付けてくれそうか。

つまり、いくらかかるかではなく、いくら払えるかという発想だ。

2. 納期」に関しても同様で、「この成果のために、自分の会社はどのくらいの時間を与えてくれるだろうか?」と考える。

納期がわからないからWeb制作会社に聞くのではなく、自社のかけられる時間を提示するのだ。それが、とんでもない納期であれば、普通の制作会社であればRFPを見た瞬間、やんわりと教えてくれるはずだ。これは、「3. 予算」についても同様だ。

RFPに書かれているのがプロジェクトの納期や予算ではなく自社の都合だとしても、制作会社の人は少しも気にしない(たぶん)。むしろ、予算や納期なしに提案を求められるほうが辛い

そもそも、依頼する側としても、予算と納期がない提案書では定量的な比較ができないだろう。

Web担当者の皆さまへ

お互い楽になる方法を模索しませんか?

皆さまからの明確な情報提供があればあるほど、制作側は頑張れます。

漠然とした、雲をつかむような話をされても、混乱して時間とコストを無駄に費やすことになるだけです。

採用される可能性のある提案なら、もしくはそう思える提案なら、制作会社は頑張れるのです。

わからなければ、無理しないでそのタイミングで相談してください。

一緒にRFPを作りましょう。

ただし、コンペに10社も集めるのは不毛です。

2~3社くらいまで絞り込んだうえで選定すると、お互いにハッピーだと思います。

(制作会社の心の叫び)

より良い提案を引き出すRFPの書き方

より良い提案を引き出すために、RFPに記載すべき内容と構成例を示すので、RFPを書く際の参考にしてほしい。

RFPに記載すべき内容

まず、RFPに記載すべき内容を具体的に明記しておく。

ポイントは、「より良い提案を引き出すための必要情報」をまとめること。必要な要素は、以下とおりだ。

RFPに記載すべき内容

  1. 現状を明確にする(現状サイトの定量的な定義)

    • サイト構成、コンテンツボリューム
    • 利用しているアプリケーション/ASPとその範囲
    • 現状の訪問者数、他アクセス状況
    • 現状の編集者数、更新頻度、運用スタッフのスキルレベル
    • 実施されているSEOなど、集客施策
    • 外注の有無と量、範囲、年間発注金額
    • サーバー構成、インフラ環境
    • 現在の公開までの業務フロー(ワークフロー) など
  2. 構築するWebサイトの規模感を明確にする(スケーラビリティの定義)

    • 対象ページ、閲覧者の規模
    • 運用者、承認者の人数
    • ドメインの数、ドメイン間でのデータ一元化の有無
    • 共通化するデータの量
    • 多数のデバイスへの動的出し分けの有無
  3. データ移行の有無と内容を明確にする(種類、内容、量と重要性の定義)

    リニューアルは、多くの場合、現状ページの棚卸しも兼ねて行う。現在あるページのうち、リニューアルで不要なページや、逆に拡充したいページ(コンテンツ)を明確にしておくと、見積もりの精度もより高まる。

  4. 個別要望を明確にする(具体的な要望/要求の定義)

    例:
    • 多言語対応(フロント、管理)
    • データベース連動、基幹連動
    • アクセス解析
    • SNS利用
    • 対象ブラウザ、対象機種
    • セキュリティ
    • 教育、導入サポート
    • 体制(構築時、サポート時) など

RFPの構成例

次に、RFPの構成例を示す。可能な部分だけ拾って、制作してみてほしい。

RFPの構成例

  1. 前提項目

    1. NDA
    2. 提供資料
    3. 提案にかかる費用
  2. プロジェクト概要

    1. リニューアルの目的
    2. 背景・理由
    3. 求める成果
    4. 予算
    5. 納期
  3. 現状のWebサイトについて

    1. 管理サイトとサイト規模
    2. アクセス等現状データ
    3. サイト運用体制・フロー
    4. 外注範囲
    5. インフラ構成
    6. 保守費用
  4. 提案依頼事項

    1. 対象範囲
    2. ターゲット
    3. コンテンツ要件
    4. 機能要件
    5. インフラ要件
    6. セキュリティ要件
    7. 移行要件
    8. 導入・保守要件
    9. その他要望
  5. 提案と選定

    1. 提案手続き・スケジュール
    2. 提案に関する問い合わせ先
  6. 契約事項

    1. 発注形態
    2. 検収
    3. 支払条件
    4. 保証年数(瑕疵担保責任期間)
    5. 機密保持
    6. 再委託
    7. 著作権等
    8. その他

本日のまとめ

Webサイト構築は、お客様へのサービス提供。

「成し得たいこと(目的・目標)を明確に!」それが最初の一歩。

予算と納期は、そこからしか導き出せない。

すべては、お客さまの問題解決のために!

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