デザインとUXを企業活動に活かせる組織と、ダメな組織は、何が違うのか

UXと組織の専門家が来日し、「UXを推進できる組織へのイノベーション」に関する講演とハンズオンセミナーを都内で行います
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「我が社にもイノベーションを!」とトップが号令をかけているのに、いざあなたが改革をすすめようとしたとき、「出る杭」として打たれてはいませんか?

最高のアイデアが顧客まで届かないことがあまりにも頻繁に起こることから、「組織のイノベーションの邪魔をするのは『組織の文化』である」ということに、マーク・レティグさんは気づきました。

この課題に、レティグさんはFit Associates社としてハンナ・デュ・プレシさんとともに取り組み、デザインやUXを成功させるためにプロセスや文化の変化を伴うイノベーションを起こす方法を追求してきました。

UXと組織の専門家であるレティグ氏とプレシ氏が近く来日し、「UXを推進できる組織へのイノベーション」に関する講演(5月27日)とハンズオンセミナー(5月31日)を行います(詳細は記事末尾に記載)。来日に先立って、この「UXと組織」の課題とその解決策についてレティグ氏にインタビューしました。

マークさんの過去数年間の活動において、その中心をなしているテーマについて、教えていただけますか?

2009年に、私は何か新しいことをしたいと思い始めました。

それまでデザイン、戦略、そして戦略とデザインの両方をサポートするために文化人類学のメソッドを使うことに長く携わってきました。その仕事は大好きでしたし、それなりの成果も出せていました。しかし、2つのことを私は考えていました。

1つ目の悩みは、最高のアイデアが顧客まで届かないことがあまりにも頻繁に起こる、というものです。

こうなってしまうのには、さまざまな理由が考えられます。

  • 人々の生活をより良くし、社会にとって真の進歩を示すようなアイデアは、多くの場合、ビジネスリーダーには不快に思われることがあります。

  • また、組織内の政治が、技術革新を生み出すために必要なクリエイティブなコラボレーションを妨げることもあります。

  • そして、多くの組織では、その事業の「通常」とは異なるアイデアを推進しようと思ったらかなりの勇気が必要なのです。

つまり、私たちの組織の中でイノベーションの邪魔をしている最たるものは、「組織の文化」である、ということに気づいたわけです。

その「組織の文化」のせいで、私たちは昔から次のようなことをよく言っていました。

この人たちは、あの人たちとは話さない

ここではそういうやり方をしない

出る杭は打たれる

文化とは、私たちがコミュニケーションをとり、共同で何かをし、制作するその方法です。その文化こそが、私たちの最大の課題なのですが、私たちは技術やマーケティング、エンジニアリング、デザイン、販売、または品質に対してと同じように、文化に注目することはなかったのです。

私の経験では、ほとんどのマネジャーたちは他の部署との深い連携を模索したり新しい会議の仕方を試してみたりするより、新しいソフトウェアを使ってみたがる傾向にあります。

2つ目は、その「文化の問題」(コミュニケーションやコラボレーションにおいてイノベーションを避けるという問題)は、社会が直面している問題と同じであるということです。

私の住む町において、市議会において、大学、国家間で、企業の管理職と従業員との間で、私たちの家族の中でさえもこの問題が存在するのです。

ですから、私はこれについてもっと学ぼうと決意しました。6年以上もかけて、私は多くの異なる分野からさまざまな材料を研究しました。たとえば、次のようなことです。

  • 経営や文化の新しい思想
  • デザインマネジメントにおける新しいアイデア
  • 演劇家や他の芸術家はどのようにお互いに協力するのか
  • コミュニティの組織化について
  • セラピストが患者の家族とどのように接するのか
  • 紛争中の敵同士の間を取り持つ人物の働き
  • 生活システムの理論と社会や組織への適用

こう悩んでいるときに、私は今の同僚ハンナ・デュ・プレシに出会いました。彼女は同じ疑問を持っている人でした。私たちは共にこういった多くの異なるアイデアを整理したり織り合わせたりして事業を立ち上げました。

私たちのクライアントとは、彼らの技術革新だけでなく、イノベーションをどのように起こすかに焦点をあてて共に取り組んできました。UXやデザインにおいてだけではなく、人々が自由に新しいものを生み出し、そして作品が市場に到達するために備わっていなければならない条件について。私たちは企業以外にも、非営利団体や街の地域団体などとも仕事をしてきました。

このいきさつをお伝えしたところで、私の活動の中心的テーマが何であるか、回答しましょう。

  • 共によりよく創り出すためのチームや組織を整備する

    組織のなかでおくる日々の多くの側面として、次のようなものがあります。

    • キャリアの階層
    • 生産性や成果に対する期待
    • 失敗に対する恐れ
    • To-Do リストや時間に追われること
    • 会議のみのコミュニケーション
    • 電子メールや深夜の食事 など

    これらはのこと、クリエイティビティのための条件としては、まったくふさわしくありません。私たちは非創造的な渦にはまってしまい、それが多くの人を不幸にし、失敗したように感じさせているのです。

    私たちの経験では、組織のどの階層にいる人であっても、会ったり、話したり、共同で作業したり、コラボしたり、制作したりする新たな方法を試すとき、安堵と幸福感を味わいます。ですから私たちは、ビジネス界、アートスタジオ、そして遊び場の融合に大きな可能性を感じています。

  • チーム文化を他のプロセスと同様に管理しやすいものにする

    私たちは、仕事のことはよくわかっています。たとえば、マーケティング、製造、販売、在庫、品質や、事業の他の運営上の事柄の管理方法といったことです。

    しかし、「チームのコミュニケーションやコラボレーションの管理」となると、十分な知識を持っている関係者や技術者は、ほとんどいません。意見の相違や対立がある場合、多くの人はそれを避けようとするか、権力をもってそれを止めさせようとします。組織のさまざまな人たちが一緒に作業する必要があるとき、それを確実にうまくいくようにする、信頼できる方法を、多くの人は持っていません。

    ですからハナと私は、そういったチームがコミュニケーションとコラボレーションの文化を彼らの日々の仕事のなかでふつうに行うこととして取り組めるように、手助けをしています。

  • ユーザーエクスペリエンスとデザイン思考の文化的なチャレンジ

    
多くの企業がデザインとUXを競争上の優位性と革新の重要な源として見るようになってきています。しかし、デザインやUXの開発に投資するにあたって、多くの企業が困難に遭遇します。

    もちろん、デザイナーを雇い、デザイングループを形成し、チームにUXの専門家を加えることによってスキルを組織に付加することはできます。しかし、そこにプロセスや文化の変化が伴わなければ、デザインとUXは価値を提供できず、結果として成功しないのです。

    我々は、大規模の組織においてデザイン文化を育成することのさまざまな課題を探求するため、大企業のUXリーダーにインタビューをしたり、企業のUX&デザインのリーダーたちのための2日間のワークショップなどを開催したりしてきました。このことを探れるのは私にとってとても嬉しいことです。それは私のこれまでの活動と現在の関心が重なるところであり、戦略が、人々のコミュニケーションやコラボレーションや共同創作と出会うところだからです。

  • チームに「聞く・熟考する・創る」を教える

    最後に述べたいのはこのことです。すなわち、クリエイティビティとイノベーションは、チーム外の人々との接触にかかっているということです。

    クリエイティブプロセスには、必ず3つのアクティビティがあり、昔も今も変わっていません。それは、次のものです。

    1. 聞いたり観察する
    2. 熟考する
    3. 創る

    すべてのプロセスにおいて、まずは自分と、そしてチームと、さらにチーム外との接触や会話を伴います。

    しかしながらほとんどの企業は「聞いたり観察する」を「リサーチ」に集約してしまっています。たとえば、データ収集、調査、フォーカスグループ、ソーシャルメディアなどです。

    「熟考」とは、一歩下がって静かに検討するために時間を割くこと、私たちが観察したことを直感的な側面からも理解したりパターンを感知したりすることです。これが多くの企業では「分析」に代えられてしまっています。たとえば、データ・クラスタリング、可視化、ダイアグラム、「専門家」どうしの意見交換などです。

    そして最後は「創る」ですが、これが「聞く」と「熟考」を反映するものとして行われることは、あまりありません。また、それは材料や技術、および社会の可能性との真の会話とはなっていません。「創る」は残念ながら仕様に応じて1つのアイデアを実現するための、構築レースになってしまっているのです。陶芸家や画家がよく知っている「創る」ということをビジネスチームは見失ってしまっているのです。

もちろん、これらの活動は世界中で行われていて、業界内のいくつかのチームや専門家は実施しています。私たちは皆、クリエイティブプロセスの力を回復できるのです。

1つの例としてジャレッド・スプール氏をご紹介しましょう。米国で非常に尊敬されている、経験豊富なUXの専門家で、User Interface Engineering という会社を経営しています。彼と同僚たちは、さまざまな企業の数十のUXチームを相手に仕事をしています。

彼らは、ある研究を行いました。「チームがユーザーと過ごす時間の量」と「結果の品質」との相関性を探る研究です。

その結果はどうだったでしょうか。少なくとも6週間ごとに顧客との時間をとったチームは、開始時と終了時のみに顧客と時間を過ごしたチームと比べ、予想どおり優れた品質を創りだしました(詳細はFast Path to a Great UX: Increased Exposure Hoursを参照)。


これはクリエイティブプロセスの重要な部分である「聞いたり観察する」を示すほんの一例ですが、創造的な結果をもたらすことが期待されているどのチームのためにも、聞くことの大切さの証としておわかり頂けるのではと思います。

最高の結果を生み出す組織にするには、どういったことがポイントになるのでしょうか。

私たちは、私たちの仕事を遂行するために必要なスキルを向上させようと多くの時間を費やしています。そしてもちろん、仕事をすること自体に多くの時間を費やしています。しかし、私たちは誰も一人では最高の結果を生み出すことはできません。

私たちは、私たちの仕事の成果が世に出て行くために、組織の他の部分に依存しなければならないのです。私たちの仕事は、組織の他の部分との会話の一部なのです。

どのようにするべきかのポイントは、日本で行う5月27日のセミナー「ソシオメディア UX戦略フォーラム 2016 Spring – イノベーション組織の推進」で解説します。

我々のセミナーでは、次のような価値を得ていただくための場です。

  • あなたのチームと組織の他の部分とがより上手く会話できるようにする方法を学びます。

  • 顧客の話を聞くという機会をより多くの従業員に与えるための方法を学びます。

  • 会話を深める方法:単なる意見や視点の交換から、目的がはっきりとして、誠実で、クリエイティブな会話へとステップアップする方法を学びます。

  • 会話を変革するためのツールがぎっしりつまったポートフォリオを見ることができます。

セミナーでは、次のようなメソッドをご紹介します。

  • ワールドカフェ

    一度に部屋全体の声を聴くことができる方法です。グループ対話を進行するにあたってパワーダイナミクスを等しくし、恥ずかしがり屋の人や声の大きい人の問題に対処するのに役立ちます。また、1つの考え方が会話を支配することを不可能にします。結果は、部屋全体が考えていることのまとめです。

  • コレクティブ・ストーリー・ハーベスト

    研究やデザインチームよりも大きいグループが、重要な情報提供者に耳を傾け、複数のレンズを通して同時に注目し、その後、意味を解明するための会話を通して1つにまとめる方法です。

  • 状況モデリング

    多くの会話は、人々が自分の立場からしか話さないため上手く進みません。オープン/クリエイティブの逆と言えるような、議論モードの会話になってしまうのです。状況モデリングは、会話を深めるための系統立った方法です。

これらに加えて、5月31日のハンズオンセミナー「UXにおける組織的課題の解決方法 – UXリサーチの組織内影響力を高めるためのハンズオン」に参加した方には、次のものも紹介します

  • 資料図書館

    さらなる資料を閲覧できるオンライン・ライブラリーです。

    ワークショップで使用するスライドや材料、自分のチームで試せるメソッドの手順や記入フォームの入ったPDFファイル、メソッドのリンク、そして理論的な部分を説明する資料などをご覧いただけます。

今回の日本でのハンズオンセミナーでは、米国で行っている上記のようなワークショップの内容をコンパクトにまとめたサマリー版として特別にプログラムしたものです。

5月27日開催@池袋
ソシオメディアUX戦略フォーラム
「イノベーション組織の推進」

UXという観点で組織のあり方・マネジメント・イノベーションを解説するセミナーイベント「イノベーション組織の推進」を、5月27日(金)に池袋でソシオメディアが開催します。

この記事でインタビューに答えているレティグ氏や、同僚のプレシ氏、さらにはGEのCXO(チーフ・エクスペリエンス・オフィサー)グレッグ・ペトロフ氏、そしてそして国内からは日立、NEC、ソニーのUXリーダーが登壇し、UX戦略のあり方を「組織推進」の側面から探り、あるべきUX戦略の方向性を占うフォーラムです。

  • 「UXカンバセーションの変革:組織的なUXリーダーシップは対話力にあり」(レティグ氏)
  • 「管理を超えた信頼の選択 – 不確実性の時代におけるリーダーシップスキルとは」(プレシ氏)
  • 「GEにおけるイノベーションのためのUX組織戦略」(ペトロフ氏)

といった豪華な講演のほか、UX組織への取り組み、UX推進のための組織マネジメント、イノベーションのジレンマといった日本企業における取り組みなどの内容を予定しています。

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