僕と彼女と著作権

建物内での写真撮影――家具は著作物なの?

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建物内での写真撮影――家具は著作物なの?

うーん、八瀬さんは暴走してるけど、今日の写真撮影、ちょっと気をつけといた方がいいわね。

建物の内部を写真に撮ってWebサイトなどで利用する際、法的には、何が問題になるんですか? 今回は、「建物の内装」と「デザイナー家具」が写真に写っています。

敷地内や建物内で撮影するときは、まず、管理者の「管理権」が問題になるわよ第9話「建物や公園を無断撮影すると、著作権侵害になるの?」を参照)。今回は、管理者の撮影許可は得ていたのね?

はい。この建物を管理している会社から、建物内部の撮影について、事前に了解をもらっていました。

わかったわ。それなら、結論から言うわよ!

  1. 「建物と家具は別」
  2. 「建物はOK」
  3. 「家具には注意」

建物はOK、家具には注意、ですか。メモメモ…。あ、念のため、もう少し詳しく教えてください。理由とか。

ふふん、じゃあ、わかりやすく教えてあげるわ。心して聞くのよ。

「建物と家具は別」って?

「建物と家具は別」って、どういうことですか?

仮に著作物になる場合でも、写真に撮っていいかどうかなど、許されている利用方法の広さが違うの。著作物の種類が違うからよ。

著作物の種類が違う?

そう。著作物には種類があってね。建物は「建築の著作物」、家具は「美術の著作物」になる場合があるわ。

ふむふむ。「建物」は「建築の著作物」、「家具」は「美術の著作物」、と。

もっとも、建物も家具も、すべてが著作物になるわけじゃないんだけど。

そういえば建物については以前に聞いたことがありますね(第9話参照)。家具にも、著作物になるものとならないものがあるんですか?

そうなの。ちょっとややこしいから、他の話から先に話すわ。

わかりました。とりあえず、「建物と家具は別」とだけ、覚えときます。

建築の著作物は写真に撮ってよい

で、「建築の著作物」は、外も中も、写真に撮ってもいいのよ。

「建築の著作物」は写真に撮っていいんですね。著作物を写真に撮るのはダメ、みたいなイメージがありますが、建築の著作物は例外、ってことですか?

まあ、そんなかんじ。「建築の著作物」は、自由に、写真やイラストにしたり、ミニチュア模型を作ったりといった利用ができるわ。

へえ~。

というのも、著作権法によって「建築の著作物」、つまり、創作性ある建物のデザイン、は保護されているんだけど、保護される範囲は、美術の著作物などと比べると限定的なの。禁止されているのはこれだけよ。

  1. 建築による複製(同じデザインで建築すること)
  2. 複製された建物を譲渡して公衆に提供(複製建物を販売する等)

なるほど、禁止行為は、ふつう、Web制作とは関係ないものだけですね。まとめると、建物は、著作物になるものもならないものも、外から写真に撮るのも、内側から写真に撮るのも、著作権法上はOK!!ってことですか。

そのとおりよ。なお、補足すると、立ち入りと撮影についての管理権者の許可はもちろん、人や物が写る場合にはそれらへの配慮(著作権・肖像権・プライバシーの問題のクリア)が必要だからね。念のため。

家具は美術の著作物になる可能性がある

では、家具は、写真に撮ってもいいんでしょうか。

まず、写り込みの場合、つまり、ふつうに写真を見た場合に、端っこにちょっと写ってるような場合には著作権侵害になるおそれは低いわ。心配しなくて良い程度よ。

そうですか。

一方、家具をメインの被写体にした写真に撮ったり、その写真をWebサイトに載せる際には、注意が必要ね。

というと?

家具は「美術の著作物」、つまり、彫刻やオブジェなどと同じ種類の著作物だと考えられる可能性があるの。一般に、純粋な鑑賞目的の「美術の著作物」をメインの被写体にして写真に撮ると、著作権(の一つである複製権)侵害になるおそれが高いわ

ええっ!

でも、家具は、実用品であって、鑑賞を主目的とする純粋美術品とは違うから、写真撮影によって複製権侵害が成立する範囲を同じように考えるべきではないと思う。純粋美術品と同じ程度にまで鑑賞の対象として保護すべきかというと、疑問だから。

そ、そうですよね!

でも、ズバリの先例は見あたらないし、これは単なるイチ弁護士である私の私見にすぎないのよね。

ええっ、何ですって…!つまり、どういうことですか!?

…つまり、家具をメインにした写真を無許可で使うと「本当に著作権侵害かどうかは、裁判になってみないとわからない」けど「著作権侵害だとクレームを言おうと思えば言える」状態になってるのよ。

げげ、そうなんですか!? 家具の写真がまずいとかって、そういえばあまり考えたことありませんでした。

そうでしょうね。……これまでずっと実用品の家具は著作物にあたりにくいと考えられていたのだけど、2015年に、知財高裁で、わりと広く家具の著作物性を認める(美術の著作物にあたるとする)、という判決が出たのよね。それで気になっちゃって。

さっき「ズバリの先例がない」って言ってましたけど、そんなのではクレームとかにならないからじゃないですか? 家具を写真に撮られるだけなら実害ないし。むしろ宣伝になっていいじゃないですか。ちょっと心配しすぎなのでは…。

そうかもしれないけど、それはわからないわ。ブランドイメージにこだわるところもあるでしょうし。まあ、一つ言えるのは、結論がはっきりしない、というのは家具の製造側にとっても同じよ。それに、著作権侵害であるかどうかは裁判にならないとわからない、と言ったけど、立証責任は著作権侵害であることを主張する側にあるわ。著作権侵害の成立要件(つまり家具が著作物にあたることや、写真撮影が複製権侵害になること)を立証できなかったら負けてしまうわけだから、訴えるにはハードルがあるわけよ。

うーん、なるほど……。

あと、海外(イタリア、ドイツ、フランスなど)の著作権法では家具が著作物になると明確に規定しているのもあるらしいから、海外のデザイナー家具の写真をWebで使う場合は特に注意した方がいいわ。ストックフォトのサービスで、そういった海外デザイナー家具が写り込んだ写真は、リリースが確認できない限りアップしないよう注意を呼びかけているところもあるわ。

わかりました。今回の企画は、上司とも協議して方針を決めることにします。僕的には大丈夫と思いたいところですが、リスクの判断はできないので。

そうね。仮に結論は「GO」であっても、リスクを把握せずにするのと、把握した上でするのでは、違うと思うわ。

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