マーク・ザッカーバーグ氏など歴々がMWCで語った「モバイルの進化が社会にもたらす本当の変革」

インターネットは「道具」から「考える道具」になり、その先はクラウドで「頭脳をもった存在」(AI)になるでしょう。

Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏、GSMA事務局長のマッツ・グランリド氏、ボーダーフォングループCEOのビットリオ・コラオ氏、ファーウエイの郭平氏などが、MWC 2016で語った「モバイルの進化が社会や生活にもたらす、本当の変化と影響」とは。

「モバイルテクノロジー」は、モバイル社会創出のためのグローバル接続を推進し続ける、巨大な存在になっています。

インターネットは「道具」から「考える道具」になり、その先はクラウドで「頭脳をもった存在」(AI)になるでしょう。

私たちは、モバイルにより、従来とは異なる関係をもつ機会を見つけました。こうしたことは、イノベーションをし続けることで達成される。これこそ進化の鍵です。

MWCというモバイルの見本市が、なぜこんなにも注目されるのでしょうか? 今年のテーマやメッセージは? モバイルの未来はどこへつながるのでしょうか?

MWCは、単なる「新しいモバイルデバイスの展示会」ではありません。いま最も進化が早く、社会に変革をもたらす「モバイル」によって、近い将来がどう変わるのか、ビジネスがどう進むのかを肌で感じる場でした。

全部で12行われたキーノート。メッセージは、Mobile is everything

MWCには、空気を吸うために行くんです

2016年のモバイルワールドコングレス(MWC 2016)に参加してきました。このMWCは、モバイルの世界最大の見本市ということで、毎年スペイン・バルセロナで開催されています。今年の来場者数は有料入場にもかかわらず、ついに10万人を突破し、さらに規模を拡大しています。

あるベンチャー企業の社長は言います。

MWCには、空気を吸うために行くんです

アクアビットスパイラルの社長 萩原智啓氏は、NFCを使った自社ツールを世界に送りだそうと、過去5年間ほどMWCに参加しています。ファンドやパートナー探しのためのネットワーキングが目的ですが、モバイルを中心とした生活の変化、世界経済へのダイナミックな変化を感じるために参加するといいます。

なぜ新しいモバイル社会への期待が、ここMWCに集約されるのでしょうか?

増え続け、拡大するMWC

MWCの存在と意味について、ここで少しおさらいしてみましょう。

MWCは、GSMA(GSMアソシエーション)が開催するモバイル関連の大規模セミナー&展示会イベントです。1987年にスタートし、2007年以来スペイン・バルセロナに会場を変更し、「今後の通信業界を占う重要な場所」とされる携帯電話関連の世界最大の見本市として開催されてきました(バルセロナ市はモバイル推進都市を宣言し、2023年までの開催を延長しています)。

エントランス正面には、バルセロナのロゴのモニュメントが

しかし、スマートフォンの急激な普及ともに、近年は携帯電話だけでなく、家電をはじめ、自動車、ヘルスケアなどあらゆる分野が対象になってきています。

このイベントへの参加はすべて有料です。参加費は、展示会場だけでも約15万円。カンファレンスに参加すると、シルバーでも約28万円、ネットワーキングパーティ参加などのゴールドとなると約40万円以上と、かなり高額です。

にもかかわらず今年は、参加者数が10万人を突破しました(昨年9万4000人)。10万人以上の参加はイベントがはじまって以来初めてとのことで、「この参加費で10万人はありえません」と日本のイベント会社は言います。

会場はフィラ・グランビアとフィラ・モンジュイクの2か所。全部で9つのホールが用意され、2200以上の企業が出展しました。

12のキーノート。48のセッションが用意され、204か国から5000人のCEO、3600人以上のプレスとアナリストたちが参加しました。

トピックカテゴリとしては、

  • VR(バーチヤルリアリティ)
  • IoTを中心としたハンドセットやヘルスケア
  • 3Dプリンティング
  • セキュリティ
  • 認証システム
  • 5Gなどのバックエンドソリューション
  • 自動車
  • 広告・分析ソリューション

など、まさにモバイルに関連するすべてが用意されました。

すべてがモバイルファーストで再設計される時代

スマートフォンの普及が急速に拡大し、今後はPCではなくモバイルを中心としたコミュニケーションになると言われたのは、わずか3~4年前のことです。

2015年には、日本や韓国をはじめ、モバイルのトラフィックがPCのトラフィックを完全に逆転する状況があっとういう間に訪れてしまいました。プロダクトやコミュニケーションがモバイルファーストで設計され、再構築される時代に一気に突入した状態です。

この流れの中から、世界のモバイル対応の方向は、「面」と「深掘り」の両方で展開が進みます。

1つは、モバイルでの未接続の国々を「コネクト」していくという流れ。もう1つは、IoTを含めてすべての製品をネットにつないで新しいサービスを行うという発想です。

マーク・ザッカーバーグ氏「70億人をつなげ。世界中をコネクトしていく」

3年連続でキーノートに登場したFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ氏は言います。

世界人口のうち、まだ30億人しかインターネットにつながっていない。まだネットワークされる恩恵さえ受けていない人が、40億人もいる。

こうしたデジタルデバイドをつなぐことにこそ、価値がある。

残りの40億人がインターネットを利用できるようになれば、教育や医療や職業のチャンスを平等に提供できる一方、そこには新しい商圏が生まれ、新しい経済が生まれてきます。

グローバルはつながり続ける。そして、それをつなぐのは、もはやPCではなくモバイルだというのです。

未接続地域はグレーで表示されたエリア。アジアは非接続続人口が多い。
右図の「CEPT」はヨーロッパ、「APT」はアジアパシフィックの、通信関連の団体

しかし、「グローバルでのインターネット接続」というテーマは2015年のMWCでも言われていたテーマでした。今年のMWC 2016では、その方向はどう進化したのでしょうか?

Mobile is Everything ~モバイルがすべて

Mobile is Everything ~モバイルがすべて」――これは、MWC 2016の会場やパンフレットなどいたるところに飾られていたメッセージです。

このキーワードは、2015年のサブテーマとして、オープニングムービーなどで語られていたものです。では、昨年と何が違うのでしょうか?

2015年までは、モバイルを中心とした「面の拡大」でした。

それに対して2016年は、「すべてのプロダクトやサービスがモバイルを中心として接続され、さらに『ギガビット』(高速ワイヤレス)としてさらに深く動いていく、そして、モバイルファーストであらゆるものをとらえ、組み立てていく」という意思の表れのようにも思えます。実際に、家電製品、住宅、健康医療、自動車などあらゆるプロダクトが、モバイルを軸にネットにつながっていっています。

頭打ちのスマートフォン普及の伸び

開催中の2月23日には、英調査会社のカンター・ワールドパネルから、刺激的なニュースが流れました。

同社のスマートフォン市場に関するレポートによると、「世界のスマートフォン市場は今後、かつてのような2桁成長は見込めない」というものです。

スマートフォンの普及率は、米国で65%、欧州5か国は74%、中国(都市部)では72%となっており、いずれの市場もスマートフォン購入者が、初めて減少しはじめるというものです。

スマートフォンの買い換え周期は先進国で長くなっており、出荷台数の伸び率は鈍化していく
※欧州5か国は英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン

IoTとギガビット経済圏への注力

そうなってくると、先進国で、今後「モバイルによるインターネット接続」の伸びが期待できるのは、IoT(モノのインターネット)です。

IoTが進むと、いままで「製品(プロダクト)」にすぎなかったものが、ネットに接続されることにより「サービス」に変わります。そうすると無限のサービスの可能性がまっています。

IoTによるネット接続は、2020年までに300億~10兆件と信じられない数になる可能性があると言われています。

ブラウンのオーラルBは、スマホアプリと連動し、歯磨きのログを取り健康管理を行う。単なるプロダクトがサービスそのものへと変化しはじめている。
2020年までに、IoTによる莫大なネット接続がうまれていくことを示した図。それまでの接続数の比ではない

一方で、IoT接続と同時に、高速無線通信の5Gの時代がやってきます。5Gは4Gに比べて1000倍近い転送速度と1/10以下のレイテンシー(遅延)です。これは、クイックなレスポンスで大容量転送が可能になることを表します。

こうした高速通信は、何をもたらすのでしょうか?

LG UplusのCEO兼副会長である李氏が、2015年7月のMWC上海で語った言葉がわかりやすいでしょう。

IoT(モノのインターネット接続)の次に来るのは、IoTh(思考のインターネット接続、Internet of Thinking)であり、その次はIoB(脳のインターネット接続、Internet of Brain)になるでしょう。

インターネットは「道具」から「考える道具」になり、その先はクラウドで「頭脳をもった存在」(AI)になるでしょう。

映画『ターミネーター』のスカイネット計画ではありませんが、高速化とコネクトされたコンピュータが変える世界を、李氏は説いています。

つまりモバイルはクラウドとつながり、新しいアプリケーションが動きだし、今とは考えられないほどの新しいサービスが生まれてくる世界に突入しつつあるということです。

インダストリー4.0につながるMWC

MWCで語られている内容は、もはやモバイルだけの問題ではありません。経済そのもの、生活のあり方そのものがモバイルとIoTと高速回線によって変わるというのです。

これは2011年にドイツが国家戦略として提唱した「インダストリー4.0」(第4次産業革命)にもつながってきます。インダストリー4.0は10年後の実現を目指すもので、人工知能(AI)とITによる考える工場、つながる産業を生み出そうと計画されているものです。

「モバイル」は、現時点ではあくまで人々が使う端末です。しかし未来には、その「人」というユーザーすら少数になり、モバイルでインターネットそしてクラウドにつながっている大多数は人ではないのかもしれません。

MWCという場は、そうした動きを探る場でもあるのです。

生活の中のモバイルをあらわすもの

MWCでは、各カンファレンスの前にオープニングムービーが流れるのですが、そこでは、次のようなメッセージが示されています。

  • Mobile is Connectivity(接続)
  • Mobile is Identity(アイデンティティ)
  • Mobile is Internet(インターネット)
  • Mobile is Utility(ユーティリティ)
  • Mobile is Money(お金)
  • Mobile is Aoutomotive(自動車)
  • Mobile is Health(健康)
  • Mobile is Commerce(商取引)
  • Mobile is Education(教育)
  • Mobile is Everything(すべて)

これらのメッセージは、モバイルによって変わること、そしてモバイルによって生まれる生活の変化を示していて魅力的です。

こうした生活、経済、働き方、仕事の仕方すべてが、モバイルとその周辺のテクノロジーによって、一気に様相を変えていく、そんなことが予感されます。

ギガビット経済では、企業間で競争している場合ではない?

GSMAの事務局長マッツ・グランリド氏は、2月22日最初のキーノートで言っています。

「モバイルテクノロジー」は、モバイル社会創出のためのグローバル接続を推進し続ける、巨大な存在になっています。

しかし、従来の産業も安心はできません。いままで得たものを守り続けられないほどの変化がはじまるのですから。

ボーダーフォングループのグループCEOであるビットリオ・コラオ氏も、同様のメッセージを伝えています。

社会における大きな変化は、今後5年間でより現実のものとなるでしょう。

それが「ギガビット経済」です。

ネットワークはさらに高速になり、低いレイテンシーとなると同時に、高いセキュリティレベルが求められてきます。

テレフォニカ(スペインの通信事業者)CEOのセサール・アリエルタ氏は加えます。

私たちは、モバイルにより、従来とは異なる関係をもつ機会を見つけました。こうしたことは、イノベーションをし続けることで達成される。これこそ進化の鍵だ。

GSMAの事務局長マッツ・グランリド氏によってはじまったキーノート。

さらにGSMAのマッツ・グランリド氏は続けます。

そのためには、革新的な協力関係が必要です。

これが、「United」というメッセージなのではないしょうか。

もはや企業間で標準化を争っている場合ではありません。同業・異業を含めて新しい協力関係を探り、いち早くデファクトスタンダードを目指すような動きがはじまっています(表面では満面の笑みで握手をしながら、テーブルの下では足を蹴飛ばしているかの動きではありますが)。

しかし、実際に5Gの統一規格が求められているのに、ファーウエイ輪番CEO兼取締役副会長である郭平(グォ・ピン)氏は、「5G時代を待たずに、我々がいま取り組むべきこと」というスピーチで次のようにいいます。

5Gが大規模に商用展開されるまでには長い時間がかかる。それを前提に、業界関係者は、それまでに生まれるビジネスチャンスを見逃さないようにしなければならない。

公然のフライング宣言のようにも聞こえるこの発言に、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏は反論します。

ギガビット社会は、「すでにネット接続している先進国」のための恩恵だ。むしろ、ネットにつながっていない人々にインターネットの環境を提供するほうが大切ではないか。

MWCは、こうした社会の変化を先読みする大きなイベントへと変わってきています。

冒頭の「MWCに空気を吸いにいく」という意味は、こうした時代への期待感と先読みを探りに行く場だからでしょう。

残念ながら、日本でのMWC関連の報道は、コンシューマー向けには、サムソンやLGの新型端末やVR製品の紹介などに終始していました。こうした大局的な動きはほとんど報じられていなかったのではないでしょうか。

また、日本からの出展は、ソニー、富士通、NEC、日立、ドコモなどのごく一部のみでした。展示会場も荘厳なパビリオンを生み出すファーウエイやサムソンなどの中国・韓国勢やエリクソン、ノキアなどに比べて、ずいぶん印象の薄い規模の小さなものでした。各国がベンチャー企業を支援して国別ブースを用意しているのに対して、日本からの参加はありませんでした。

カンファレンスでも、キーノートへの日本人スピーカーはゼロ、他のセッションでもモデレータとしての日本人の登壇はゼロというのも、残念なものです。

こうした状況では、日本からの世界に対するメッセージはほとんど届かないでしょう。

モバイル社会という夢の先

MWCで語られること・展示されるものはあまりにも多く、とてもこの記事で全体を紹介するのは不可能です。

しかし、MWC全体に共通しているものがあります。それは、「モバイル中心の社会がまもなく訪れ、いままでとは違った働き方や生活がその先にある」という期待感です。

はたして、2025年に実現すると言われている「第4次産業革命」につながるのか、そんな大きな変化を感じた今回のMWC 2016でした。

もう1つ、今年のMWCで象徴的だったものを、最後に紹介しておきましょう。

オープニングムービーの前後で紹介された、不運の天才科学者ニコラ・テスラ氏が1926年に語ったメッセージです。

ワイヤレスが地球全体で完全に実用化されると、巨大な脳に変換されるでしょう。それは、現実とリズミカルなものを併せた粒子となるでしょう。

あらゆることを行える道具は、上着のポケットに入るほどのものになることでしょう。

この言葉にある「ワイヤレス」を「5Gとクラウド」に、「巨大な脳」を「AI」に、「道具」を「モバイル」に置き換えると、おわかりになるでしょうか。

When wireless is perfectly applied the whole earth will be converted into a huge brain, which in fact it is, all things being particles of a real and rhythmic whole. 
instruments through which we shall be able to do all this, will fit in our vest pocket.
オーストリアの天才科学者ニコラ・テスラ氏のメッセージ。1926年

90年も前に、テスラ氏がモバイル社会のあり方を予言していたとは信じられないことではありますが、モバイルが変えていく社会や経済のあり方をもっと追い続けたいものです。

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