Web広告研究会セミナーレポート
PVやUUにとらわれない図解でわかる分析手法「ビジュアルWeb解析」の活用3ステップ

効果的にWebサイトを改善する手法として、清水誠氏が「ビジュアルWeb解析」を解説
Web広告研究会セミナーレポート

この記事は、公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が開催およびレポートしたセミナー記事を、クリエイティブ・コモンズライセンスのもと一部編集して転載したものです。オリジナルの記事はWeb広告研究会のサイトでご覧ください。

WebサイトのPDCAサイクルを回していても、改善につながらなくては意味がない。限られた予算とスタッフで、ページビューやユニークユーザーといった既存の指標にとらわれることなく、効果的にWebサイトを改善する手法として、楽天やアドビでWeb解析に取り組んできた清水誠氏が、Web広告研究会の第9回東北セミボラで「ビジュアルWeb解析」を提案した。

戦略を具体化するコンセプトダイアグラム

清水 誠氏

東北セミボラの第一部では、電通iXのCAOである清水 誠氏が、「低予算でも実現できるコンセプトダイアグラムによるWEBとデータの活用術」と題したテーマで、低予算でも手軽に実現できるWeb解析手法「ビジュアルWeb解析」の活用法を紹介した。

大きな予算で大規模なマーケティングを行えば成功するのは当たり前だが、ビジュアルWeb解析の手法を使えば、低予算でもある程度の成功を得ることができると、清水氏が実践してきた事例とともに解説された。

ビジュアルWeb解析とは、グラフやビジュアライズのテクニックを使い、直感的に理解できる形で分析し、レポートを作成する手法だ。Web解析は、数字が並んだレポートで議論しがちだが、図解して見える化する。また、発想の転換も重要な要素で、Webで得られる解析データを顧客視点で取得して解釈することが必要になる。

ビジュアルWeb解析は、次の3つのステップで進める。

  1. 顧客をビジュアライズ

    まず、どんな顧客がいて、その顧客にどうなってほしいのか、企業として、顧客にどのような変化を起こしたいのかを見える化する。

  2. 施策をビジュアライズ

    1番で定めた顧客に起こしたい変化をもとに、どんな施策に取り組むかを考える。カスタマーサポートやメールといった大きなチャネルの他、コンテンツの単位の取り組みもある。

  3. 効果をビジュアライズ

    Webサイトを見て納得してから資料請求してもらうなど、ビジネスで顧客に起こしたい変化と、それによって得られる効果を見える化する。

ビジュアルWeb解析の3ステップ

このビジュアルWeb解析のステップで重要になるのが、講演テーマにもある「コンセプトダイアグラム」だ。コンセプトダイアグラムとは、企業が望む顧客の行動や態度の変化をステップに分解し、その変化を促進するために行う施策の位置づけや関係性を具体化するための図解(ダイアグラム)手法で、Webの位置づけを整理し、追うべきデータを明確にすることにつながる。

コンセプトダイアグラムに似た手法として、カスタマージャーニーマップがあるが、コンセプトダイアグラムはタッチポイントではなく、戦略を具体化する。また、コンセプトダイアグラムでは、全体を描くこともあるが、重要な部分にフォーカスすることもできるという。

コンセプトダイアグラムとカスタマージャーニーマップの違い

実例:地ビールメーカーのコンセプトダイアグラム

実際にコンセプトダイアグラムを活用した事例として、清水氏がCMOを務める地ビールメーカー「サンクトガーレン」の取り組みが紹介された。

清水氏は、同社のWebサイトのリニューアルの際に、ビジュアルWeb解析をもとに他社との差別化について議論し、データを使ってデジタルマーケティングを行い、持つべきコンテンツを持って、コンテンツのビジネス貢献効果を数字で追いながら改善することを提案したという。ビジュアルWeb解析のステップ1である「顧客に起こしたい変化」は、次の3つに決められた。

  1. 不便でも貫くこだわりを理解してほしい

    こだわりを理解してもらい、作り立ての味と香りを直送したい。

  2. 店で買って、飲んでほしい

    ECサイトはおためしの場所。店頭で買ってくれる顧客はリピートしやすく、ビジネス的にもインパクトが大きい。バーやイベントでも体験してもらい、店舗での購入につなげたい。

  3. 定期的に買ってほしい

    年に一度のぜいたく、珍しいビールを一度ためして終わりではなく、定期的に買ってもらいたい。

さらに起こしたい変化をより明確にするために、顧客視点でゴールとステップをビジュアル化していく。ゴールは、ラガービールが主流の市場で、サンクトガーレンの特徴であるエールビールの「ファンになってもらうこと」とし、ビジネス視点を踏まえつつ顧客視点でストーリー化を行い、ゴールに至るまでのステップを設定した。

ゴールとステップを見える化する

次に、Webサイトの入口と循環を考えてビジュアライズする。エールビールを初めて飲む人は、図解したステップの「1. 納得する」から循環していくが、リピーターは「3. 思い出す」から循環するなど、入口を明確にし、各ステップの循環を表現する。その上で、これらのステップを顧客が移行してくような施策を考え、コンセプトダイアグラムを描いていった。

サンクトガーレンのコンセプトダイアグラム。変化を起こすための施策を矢印に重ねる

たとえば、これまでソーシャルメディアやブログをやっていたとしても、他社がやっているからという理由では、目的が明確にならない。コンセプトダイアグラムで入り口と循環を考えていけば、ソーシャルメディアやブログが、顧客を次のステップへ移行させるための施策として、どんな役割があるのか明確にできる。同じ「ブログ」であっても、図解によって目的が2つあると明確になった場合は、2種類のブログに分割した方がよいこともある。

必要なデータを定め、顧客視点で分析していく

続いて、商品購入、読み物コンテンツの読了、店舗の検索など、各ステップの到達(通過)点をコンバージョンとしてWeb解析ツールで設定し、レポートを作成する。これらのレポートから、「図解した流れの現状や達成度」「集客の直接効果と間接効果」「コンテンツの意義や貢献度」を把握していく。

図解したなかから全体の流れを見る場合には、前述の入口と循環の図解に数字を載せてみるとわかりやすくなると清水氏は説明する。入口に何人の訪問者が来て、各ステップのコンバージョン率はいくつか、コンセプトダイアグラムに書き込めば一目で全体を確認できる。

Excelを使ってコンセプトダイアグラムとWeb解析データを組み合わた例

このような図は、高額なBIツールを使わなくてもExcelで簡単にビジュアライズできる。上図の事例では、PowerPointからExcelにコピー&ペーストしたコンセプトダイアグラム上に、他のシートで計算したWeb解析データの数値を表示させ、Excelのグラフ機能「スパークライン」や「データバー」なども活用して直感的にわかりやすくしている。このようにビジュアライズすることで、全体の流れからボトルネックとなる部分を明確にし、絞り込んだゴールを容易に設定できるだけでなく、レポートのデータ更新も半自動化できる。

顧客視点で変化を追いかける

バナーの効果検証も、これまでのように入口と出口だけを見るのではなく、中間的な指標となる各ステップのコンバージョンをベースに、どのような流れが起きているかを見ることが重要だ。商品購入率が高いバナー、読み物系のコンテンツへ流入させやすいバナーなど、バナーにもさまざまな目的があるため、個々のバナーがどんな変化を狙ったもので、どこに効果が表れているか数値で評価する必要がある。

また、分析の軸(ディメンション)の区分をモノ(ページ、バナー、流入経路など)ではなく、人(バナーをクリックした人)にして長期間追いかけ、顧客の視点でデータを見ることも重要だ。

同様に、ブログなどの記事コンテンツの評価も人を軸にし、コンテンツを見た人にどのような変化が起きているか長期間で見ていく。目的によってコンテンツの評価は変わり、新規獲得や認知度アップが目的であれば閲覧者数が評価されるが、ブランドや商品理解を深めることが目的であれば、商品ページへの誘導率などを評価することもある。

このように、サンクトガーレンでは、ビジュアルWeb解析を用いた分析と改善アクションを3年間続けることで、オンラインとオフラインで大きく売り上げを伸ばすことができたという。

日本ではよく、PDCAサイクルを回すことが大切だといわれるが、結果を報告するだけで終わってしまうことがある。データドリブンで確実にデータを使って改善していくための方法論として、コンセプトダイアグラムをおすすめしたい(清水氏)

コンセプトダイアグラムを描く5つの手順

Web解析では、ページビュー、ユニークユーザー数、セッション数、滞在時間、直帰率といった指標が使われているが、清水氏は「ユーザーの気持ちの変化は、工夫することでデータとして取得できる」と話し、既存の指標にとらわれることなく、知りたい数字を自分で定義し、それをどのように取るのかを考えて必要な指標を具体化することが重要だと説明する。

たとえば、テクノロジーの進化によって、「Webページをどこまでスクロールしたか」「特定の画像の表示時間」「マウスカーソルが置かれた領域と時間」「テキストのコピー」などを確認できる。これらの行動の意味を考えることで改善に役立てることができ、従来の指標よりも有効に活用できるという。

ビジュアルWeb解析の核となるコンセプトダイアグラムの描き方について、清水氏は5つ手順を次のようにまとめる。

  1. ビジネス課題を明確にする
  2. ユーザー視点のゴールをビジネス課題とともに決める
  3. ユーザーの気持ちや行動の変化を分解し、ゴールまでのステップを決める
  4. ステップ間の矢印の上に施策を重ねる(現状+理想)
  5. 縦と横の軸は何を表すのかを考える

このなかで難しいのは、2番目の「ユーザー視点のゴールをビジネス課題とともに決める」ことだ。たとえば、スポーツクラブのサイトでは、入会をゴールとしてしまいがちだが、ユーザーにとっては入会がゴールではなく、入会後に運動して痩せたり、健康になったりすることがゴールのはずだ。オフラインも含めた顧客視点で、先を見据えたゴールを設定することを清水氏は勧める。視点を広く持つことで、オンラインは全体の一部でしかないことも明確になる。

3番でゴールまでのステップを定義する場合は、単純な手順ではなく、越えてほしいハードルを設定するのがコツだ。また、「認知」や「商品閲覧」といった各ステップの評価を、「気になる」「覚える」「候補をみつける」などユーザーを主語とした動詞に置き換えることで、ユーザーの行動を具体化できると清水氏は説明する。

さらに、5番では、縦軸だけでなく横軸も活用することで、気持ちの変化と起こすべき変化の順番が見えてくるという。前述のコンセプトダイアグラムも、次の図のように変更することができ、さまざまなユーザーの変化を表すことができる。

縦と横の軸が何を表すのかを考える
気持ちの変化を取り入れたサンクトガーレンのコンセプトダイアグラム

コンセプトダイアグラムを使うことによって、ビジネス全体を俯瞰して整理し、ユーザー視点で考えられる(清水氏)

講演の最後、清水氏はみんなでコンセプトダイアグラムを描くことで議論が広がり、ビジネス全体を網羅した意識の合った議論を行うことができると話す。3~5人でコンセプトダイアグラムを描き、はじめから制限を設けるのではなく、まず全員にアイデアを拡散し、次に集約していくのがコツだという。

また、社内のさまざまな役割の人を集め、図を元に意識を合わせていくことも重要で、起こしたい変化を見るためにも、Web解析ツールでコンバージョンを設定してほしいと清水氏は語った。

Web広告研究会サイト掲載のオリジナル版はこちら:
『PVやUUにとらわれない図解でわかる分析手法「ビジュアルWeb解析」の活用3ステップ』2015年10月2日開催 第9回東北セミナー 第1部(2015/11/18)

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