バナー広告の指標と作り方は今のままでいいのか? デジタル広告の詐欺の実態とは? 本間充氏が語った

ディスプレイ広告における詐欺の実態とディスプレイ広告ってそもそもどうなの? 本音トークを繰り広げた本間氏の講演セッションをレポートする。

アメリカではすでに明らかになっているディスプレイ広告のボット詐欺。ボット詐欺の実態を紹介しながら、本間氏は詐欺の裏に隠れているディスプレイ広告の現状に疑問を呈した。ディスプレイ広告の評価指標はCTRやCPAのままでいいのか、クリエイティブはこのままでいいのかといったことを語った。

2015年7月30日に行われた、スマートニュースとWeb担当者Forumのセミナーの第2部では、花王の本間充氏が登壇し、ディスプレイ広告における詐欺の実態とディスプレイ広告の今のあり方について疑問を投げかけた。

ディスプレイ広告における詐欺の実態とは?

本間充氏
花王 本間充氏

長らく、ディスプレイ広告では、CTR(クリックスルーレート)、CPA(コストパーアクイジション)などが広告の価値換算指標として定着してきました。

そもそもこの指標をこのままずっと使い続けていいのだろうか。

また、NHT(ノンヒューマントラフィック)と呼ばれる、ロボットが広告をクリックして、広告費を消費しているという事実がアメリカでは報告されている。この実態に対して、日本の広告業界全体としてどう考え、対処すべきか、話していこうと思います。

と登壇した本間氏は語り、ボット詐欺の実態を紹介した。

動画広告は23%、ディスプレイ広告は11%ボットによって消費されている

アメリカにおける広告主協会「ANA(Association of National Advertisers)」がボット詐欺の実態をまとめたレポート『ネット広告関係者必見「デジタル広告詐欺の実態:ボットの現状」』(全57ページ、Web担当者Forumが日本語版を作成)の調査報告によると、動画広告においては23%、ディスプレイ広告においては11%がボットによって消費されている。つまり、人による消費は、動画広告では77%、ディスプレイ広告では89%でしかない。

動画広告が23%、ディスプレイ広告が11%消費されている

もっとわかりやすくするために、たとえば、動画広告、ディスプレイ広告それぞれに100万円ずつ出稿し、クリック課金だとすると、動画広告では23万円分、ディスプレイ広告では11万円分、人以外に広告費として払っていることになると説明した本間氏は、この23%、11%とはどういう数字なのかといったことを花王の宣伝部と一緒に議論したという。

たとえば、この数値が50%ならば、誰しもが問題だと認識するが、23%ぐらいならば、「チューニングなどでなんとかならないの」といった意見や、そもそもテレビ広告も実は「人が見ていない率って25%くらいあるんじゃないのか」といった意見が出たという。

ここで問題なのは、テレビ広告の場合、テレビの前から離れて見てない率は乱数で確率論的に発生しているのに対して、ボットの場合は、確率論ではなく確実に垂れ流しているということだ。しかもこの状況を放置しておくと、ボットの割合がもっと増える可能性がある。

全米広告主協会の調査結果をさらに詳しく見ると、次のような報告が挙げられている。

2015年の全米全体の広告費438億ドルに対して、63億ドルがボットによって消費されていて、半数以上の媒体の広告でボット行為があり、プライベート・エクスチェンジなどのプレミアサービスを作っても意味がなく、プレミアサービスでも10%のボット被害があると報告されている。ただ、被害にあっていない媒体もあるという。

では、日本でも発生しているのか?

今まで紹介してきた結果はすべてアメリカにおけるもので、日本ではそもそも、調査をしていないし、調査すべきかいなかの議論さえもされていないのが現状であるという。

調査に対する議論はおろか、ボットが悪であるかという議論さえもされていません。悪意をもって広告費を盗むボットもあるが、ボットのなかには、ディスプレイ広告の成果を測るための正当なものがあることも事実です。

もしかすると、媒体事業者やプロバイダーなど、調査しなくてもいいだろうと思っているかもしれません。ですが、結論的に言うと調査はしたほうがいいでしょう。

ただし、調査を行ったとしても、広告主へしっかりと伝えなければいけないことは、「ボットがゼロになることはない」ということです。広告の結果をレポートする場合、人が作るモノと自動で作るモノがあって、自動で作るモノは残ります。つまり、精査のためのボットは残るということです。

と本間氏は強調した。

そもそもディスプレイ広告を出稿する意味って何だろう?

「広告詐欺のNHTだけならば、調査すべきか議論をして、しかるべき対策ができるが、実はその裏にディスプレイ広告自身の問題点があるのではないかと思っている」と本間氏は語り、ディスプレイ広告の価値を再確認するということで、世界初のディスプレイ広告を提示し、その歴史を振り返った。

このディスプレイ広告で書かれている意味は、「クリックしてみて」というだけ。米国大手の電話会社のAT&Tが出稿した広告で、1994年当時はディスプレイ広告をクリックすること自体が新しい体験であって、エンターテイメントであった。しかし、いつの頃からかディスプレイ広告は人から避けられる対象となってきている。

また本間氏は、世界最大の広告事業者であるグーグルが次のような発表をしたことにも触れた。

グーグルによれば、56%のデジタル広告は画面に表示すらされていないという。現在のディスプレイ広告は見られもしなければ、押されもしない時代に来ている。

ディスプレイ広告の広告モデルができてから20年経過し「過渡期に来ている」と言えるだろうと本間氏は指摘する。広告主にとってさらに、問題となって来ていることはCTRが低すぎることだ。クリック課金型だと、広告予算が全て消費されないという現状もあるという。

広告が見られていないことを体感する例として、本間氏は、先ほどのスライドで見せた記事ページにディスプレイ広告が入っていたことを示し、この「ディスプレイ広告はあなたの視界に入ってましたか?」と問うた。

記事のタイトルや文章は目に入っても、ディスプレイ広告は無意識のうちに避けていた人この読者のなかにも50%以上いたのではないでしょうか。

ディスプレイ広告が人から嫌われる存在になった3つの理由

ではなぜ、ディスプレイ広告が人から嫌われる存在になってしまったか。その問題は3つあると本間氏は指摘する。

  • ディスプレイ広告自体の質の低下
  • メディアが広告枠を乱発し、記事の内容とディスプレイ広告の関連性が低い
  • 広告主がメディアの広告枠のターゲットなどを把握せず出稿している

ディスプレイ広告自体の質の低下

問題の1つには、ディスプレイ広告自体の質の低下が挙げられるだろう。

ディスプレイ広告の作り方といった少し前の指南書には、「クリックができることがわかるように3Dにする」とか「ディスプレイ広告自体のメッセージ性を減らし、押させることに注視する」といったことを推奨してきた経緯がある。

その結果、何が起こったかというと、「記事内でのディスプレイ広告は異物だ」とユーザーが学んでしまい、ディスプレイ広告のエリアを見ない、スルーする能力が発達してしまった。そもそも人は、何かに注意を払うとその周辺への注意は散漫になるのが普通だ。デジタル、記事、ディスプレイ広告においてもすべてに注意を払ってもらいたいと考えるのは、おかしいのだ。

メディアが広告枠を乱発し、記事の内容とディスプレイ広告の関連性が低い

また、記事の内容とディスプレイ広告の関連性(レリバンシー)が低いことにも問題がある。本来は、記事の内容とディスプレイ広告に関連性があって、広告自身も記事をサポートし、インフォメーションの役割を担っていることが適切である。

記事や情報の信頼性の責任は、当然ながらメディアの編集長が負っているだろう。しかし、広告エリアも含めた画面上すべての責任を負っている編集長がどれだけいるだろうか。

広告を出稿する広告主とその広告を掲載するメディア媒体が、ユーザー属性やニーズ、広告主とメディアとの親和性などをもっと議論したうえで双方の価値を高めるような広告を作っていくことが望ましい。

広告主がメディアのターゲットなどを把握せず出稿している

最後の問題は、ディスプレイ広告を出稿している広告主がメディアの特性をどこまで把握して出稿しているかだろう。

本来、広告主はメディアの特徴を押さえたうえで、メディアごとにディスプレイ広告を作り分けて出稿することが望ましい

しかし、ディスプレイ広告を出稿する実情は、キャンペーンなどが始まれば、CMや雑誌で決まったキービジュアルをディスプレイ広告用にリサイズして同じ広告を一度に出稿し、その結果をCTRで比較し、どのメディアが効果的だったかという話をしているだろう。

クリック率だけでなく、クリエイディブとメディアの親和性や、キャンペーンとメディアのユーザー属性の親和性にも注意を払い、話し合う必要があるのではないだろうか。

ディスプレイ広告は永久に不滅なのか?

本間充氏

ディスプレイ広告の問題点を3つ解説した本間氏は、講演の最後に「ディスプレイ広告の今後のあり方についてNHTの事実とともに、広告主、メディア、広告業界で一度、確認するタイミングに来ているのかも知れない」と言い、次の4つを提言して締めくくった。

①ディスプレイ広告の実情を理解する

デジタル広告のなかで、ディスプレイ広告の歴史が一番古く、簡単にディスプレイ広告が衰退していくことはないし、広告主もすぐには離れられないだろうが、「このままのあり方でいいのだろうか」ということを広告主、メディア、業界としてもう一度考える必要がある。ディスプレイ広告ではないモデルを模索することは可能である。

②ディスプレイ広告の意味を再定義する

記事とディスプレイ広告のレリバンシーがかなり高くないとクリックされないという事実がすでにある以上、ディスプレイ広告の意味を考え直す必要がある。

たとえば、今までのように、クリックに頼ってCTRを追い続けるのか、または、表示されることに重きをおいて表示物としてディスプレイ広告をとらえるのか。ディスプレイ広告の意味をしっかりと考えなければならないだろう。

③必要な広告形式の検討をする

今まで、ディスプレイ広告はバナーサイズとファイルサイズの議論しかしていない。どういう広告形式だったら、ユーザーに刺さるのかといった議論をしていくべき。

④広告の作り方を確認する

商品パッケージやキャンペーンが決まった後にそれをディスプレイ広告に落とし込んで、キャッチコピーを書き加えて、さまざまなサイズにリサイズして、といったように単純作業の連続でディスプレイ広告が作られる。

テレビCMではあり得ないが、ディスプレイ広告では新人クリエイターがこの作業を担ったりする。もっとクリエイティブなバナーを作るためにどうすべきか議論をしていくべき

執筆者のコメント:

本間氏のセッションの中で印象に残ったフレーズが2つありました。1つ目は「新人クリエイターがテレビCMを作ることは絶対あり得ない。でもバナーを作るのは、大抵新人クリエイター」と「メディアの編集長は本来であれば、広告エリアまで表示責任を負うべき」という部分です。

正直、おっしゃる通りで耳が痛いです。

NHTも含めて、ディスプレイ広告の今のあり方をもう一度議論することはとても大事だと思います。

ユーザーの興味関心がある広告を優先的に出したり、記事内容と関連性の高い広告をユーザーごとに配信できたりするDMPの導入を検討することも視野に入れなければと考えさせられるセッションでした。

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