10社の事例でわかるオウンドメディア運営の「企画」「構築」「成果」ノウハウ
オウンドメディア企画を社内で通すためにすべき6つのこと+上司説得の想定問答9パターン #02

オウンドメディアの立ち上げでは、企画骨子を整理し、しかるべきルートで承認をとっていくことが重要です
鈴木 健介 2015/7/22(水) 7:00 tweet78このエントリーをはてなブックマークに追加 印刷用

オウンドメディアの立ち上げにあたり、「社内で企画を通すこと」は避けて通れません。上司の鶴の一声でプロジェクトが発進するケースもあるかもしれませんが、いざというときに初心に戻れるよう「なぜ、だれに向けて、なんのために、どのように……」という企画骨子を整理し、しかるべきルートで承認をとっていくことが重要です。

AISCEASをベースに背景・目的の洗い出しをする

社内で企画を通すにあたり、「なぜオウンドメディアなの?」という質問は必ず受けると想定しておきましょう。その質問の裏側には、さまざまなニュアンスが含まれています。

  • なぜ、既存のウェブウサイト運営のままではいけないの?
  • なぜ、純広告ではいけないの?
  • なぜ、ネイティブ広告(タイアップ記事)ではいけないの?
  • なぜ、ソーシャルメディアの活用だけではいけないの?
  • なぜ、他社がやってないのに(やっているのに)ウチはやるの?

こうした1つひとつの問いに答えることが「背景」の整理につながります。

筆者オススメの背景整理の手法は、インターネット時代の購買行動プロセスを説明するモデルとして有名な「AISCEAS(アイシーズ)理論」に落とし込んでみることです。

オウンドメディアの役割をAISCEAS(アイシーズ)で整理する
アンヴィコミュニケーションズが提唱した購買モデル

この図式を活用し、オウンドメディアが自社のマーケティング戦略において、どの部分を担当するものなのかを明確にしておくとよいでしょう。

筆者が担当したオウンドメディアの場合、既存のWebサイトが主に担っていたのは検討(Examination)と購買(Action)の領域であり、オウンドメディアで強化したいのは興味(Interest)と検索(Search)の領域でした。従来、その領域を担当していたタイアップ広告やリスティング広告はCPC改善策が頭打ちとなっていて、新たな施策を実施する必要があったのです。

想定FAQ 1
  • Q. なぜオウンドメディアをやる必要があるの?
  • A. 当社のマーケティング戦略において、○○と○○を強化する必要があるからです!

読者ターゲットのヒントは営業マン、カスタマーサービスが持っている

価値のあるオウンドメディアを立ち上げるには、想定する読者の立場になってコンテンツを企画、制作しなくてはなりません。では「想定する読者 = ターゲット」はどのように設定するべきでしょうか。

最も理想的な方法は「ペルソナ」といわれる、代表的な架空の読者像を明確化することです。

年齢、性別、職業、居住地、趣味、ITリテラシー、利用デバイス、ネット利用時間帯、興味・関心のあるキーワード……といった属性イメージを設定してみましょう。

ペルソナはメイン1名とサブ2名など、複数設定してもかまいませんが、たくさん(10名とか)設定しすぎてしまったり、「20代以上の男女オール」のように大まかになりすぎないように注意してください。本格的にペルソナを作ろうとすると大きなコストがかかりますが、簡易的なものであっても読者イメージを明確にすることができます。ただし、想像だけで作ってはいけません(参考:[体験レポート]やってみましたペルソナ作り)。

手っ取り早く、ターゲットのイメージをつかむには、普段からお客様と接している自社の営業マンや、カスタマーサービス担当者にインタビューする方法がオススメです。

現場の営業マンのヒアリングをヒントにペルソナを設定する
aarrows/iStock/thinkstock

実際に営業同行してみたり、カスタマーサービス部が持っているお問い合わせ記録のデータに目を通すと、非常に多くのヒントが得られます。また、上司を説得する際に自信をもってアピールできるようになります。

想定FAQ 2
  • Q. 当社のオウンドメディアのターゲットは、どういうイメージなの?
  • A. ペルソナを設定しました。年齢は28歳、性別は男性、職業はWebディレクター。仕事に対する責任感は強く、情報収集はWebメディアやソーシャルメディアを使い、プライベートでは家族との時間を大切にしています。
想定FAQ 3
  • Q. そのペルソナって何を根拠に決めたの?
  • A. 営業の○○さん、カスタマーサービスの○○さんにインタビューして、実際のお客様イメージを設計しました!

成果指標はどう定める? 設定してよいKPIとダメなKPI

オウンドメディア施策が成功しているのか、あるいはうまくいっていないのか、成果を測るためには、必ず立ち上げ前に数値目標を定めましょう。主な指標としてKGIとKPIがあります。

  • KGI(Key Goal Indicator)

    重要目標達成指標であるKGIは、ゴール(目標)に対する達成度を定量的に表します。短期間で成果を出しづらいオウンドメディアの場合は、1年後など、中長期の達成目標を定めるとよいでしょう。

  • KPI(Key Performance Indicator)

    重要業績評価指標であるKPIは、目標のKGI達成に向けたプロセスの実行度合い(パフォーマンス)を定量的に表します。4半期ごと、1か月ごと、あるいはウィークリーの数値をウォッチするようにしましょう。

たとえば、サイトの目的が「新規ユーザー層へのリーチ&認知拡大」だと想定すると、KPIは「新規訪問数○○件/月」や「新規のキーワード流入数○○件/月」といった指標になります。

オウンドメディアの成長に見合ったKPIを設定する
nickylarson974/istock/thinkstock

なお、年間目標を「累計100万PV」に定めたとして、12か月で等分した約8.4万PV/月を月間KPIに定めてしまうと、「初月度、ぜんぜん未達です……」という悲しい状況になりかねないので注意しましょう。

オウンドメディアはコンテンツ数が増えるにつれて、検索流入数も増えていきます。右肩上がりで月間PV数が伸びていくことを見越して、KPIを定めるとよいでしょう。

  • 初月:1万PV/月
  • 翌月:2万PV/月
  • 半年後:7万PV/月
  • 1年後:15万PV/月

このように、現実的なメディア成長に見合ったKPIを見定めましょう。

また、季節要因(クリスマスやバレンタイン、ボーナス商戦、自社サービスの繁忙期など)に応じて、ターゲットの動向が上下するケースもあり得ます。これらもある程度計算に入れつつ、オウンドメディアの目的やターゲットに応じて設定してください。

KPIの一例
  • ページビュー数(PV数)
  • ユニークユーザー数(UU数)
  • 訪問数(セッション数)
  • SNSでの反響数(Facebookのいいね!数、TwitterのRT数、はてなブックマーク数など)
  • 製品・サービスサイトへの誘導数
  • コンバージョン数(売上、予約、資料請求、問い合わせなど)
  • アシストコンバージョン数
  • 特定キーワードの検索トラフィック量

簡単に書きましたが、「目的やターゲットに応じて成果指標を定める」という作業は、実はけっこう奥が深いのです。一概にページビューが多ければ多いほど、あるいはSNS反響数が多いほど良いメディアだとは言えない、ということを覚えていてください。

たとえば、ターゲットを「ITリテラシーの高い30代のエンジニア」、利用シーンを「業務時間にPCで見てもらう」と想定しているにもかかわらず、ページビューやシェアが稼げるからといって「ぜったい当たる!○○占い~」のようなコンテンツを作っても、オウンドメディアの目的に合致していなければ意味がありません。

逆に、明確なペルソナが設定できていて、そのターゲット読者にリーチできていれば、数値は少なくてもよいという考え方もありなのです。

Google Analyticsなどの効果測定ツールを活用し、ユーザーの流入経路、利用ブラウザ、時間帯、地域などをチェックすることで、ターゲットの「質」もチェックできます。自社のオウンドメディアにとって最適なKPIを設定しましょう。

※Google Analyticsなどを使ったKPIの評価・改善法は、当連載の9章で、SEOの考え方については4章で詳しく説明する予定です。

想定FAQ 4
  • Q. オウンドメディアの効果って、ちゃんと測定できるの?
  • A. KGIとKPIを設定し、継続的に動向をウォッチすることで、読者の「質」も含めて効果を確認できます。
想定FAQ 5
  • Q. 成果指標はどうする? とりあえず月間1万PVはほしいよね?
  • A. 当社の読者ターゲット、キーワード検索数を考慮すると、4か月後には、そのPV数に到達できると思います。

業務内容をリストアップし、各部署のボスを巻き込んで協力者を募る

大きな予算をつけないスモールスタートの場合、オウンドメディア専門の部署、あるいは専任の担当者がつくケースは少ないです。広報、マーケティング、営業、企画、開発、カスタマーサービス……といった、社内複数の部署から協力者を募り、プロジェクトチーム式の兼務体制をとるか、あるいはワンポイント協力という形で進めることになります。実質的なコアメンバーは1名~2名というケースが大半でしょう。

オウンドメディア担当者がやるべきことは、多岐にわたります。大きく分けると「初期構築」「コンテンツ制作」「運営」の3つになります。

  • 初期構築

    いわゆるメディアの「器」づくりです。CMS選定、サーバー選定、ドメイン選定・取得、デザイン、コーディングなどの作業です。いわゆる、Web担当者の人が任されることが多いでしょう。これについては次回の第3章で詳しく説明予定です。

  • コンテンツ制作

    オウンドメディアの肝となるパートで、記事テーマ・アイデア出し、構成案(企画案)作成、指示書作成、取材・インタビュー、写真撮影、図版作成といった作業です。個人ブロガーは、これらの作業をすべて1人で担当しているわけですが、企業オウンドメディアの場合は複数人、複数部署で役割分担していくことになります。

    メディアとしての統一感をもたせるために、トーン&マナーや、表記・表現方法をまとめたガイドラインを用意するとよいでしょう。具体的な記事の書き方については、本連載の第6章で詳しく説明予定です。

    コンテンツ制作は、オウンドメディア開設後もずっと継続していくため、役割分担やガイドラインをきちんと整備することが大切です。

  • 運営

    スケジュール管理、執筆者のリクルーティング、公開した記事のSNSによる拡散対応、効果測定・レポーティングといった編集部としての作業です。オウンドメディアのコアメンバーが担うことになります。メディア運営の経験者がいない会社にとっては、最も大きなチャレンジとなるパートです。詳細は本連載の第7章~第9章で説明予定です。

社内で協力してくれそうな人、協力を仰ぎたい人は、ある程度、事前に自分でめどをつけておくわけですが、業務としてオウンドメディアに協力してもらうことになるため、自分の上司だけでなく、関係する各部署のボスには、どのような作業を協力者にお願いすることになるのか、あらかじめきちんと説明しておくことが賢明です。他部署のボスを頼ると、自分では気づいていない、強力助っ人をアサインしてもらえることもあります。

想定FAQ 6
  • Q. オウンドメディアを実施するのに、どんな業務が発生するの?
  • A. 大きく分けて「初期構築」「コンテンツ制作」「運用」の3つです。
想定FAQ 7
  • Q. オウンドメディアの運営を社内で頼める人はいるかな?
  • A. 初期構築はWebチームの○○さん、コンテンツ制作には△△部の△△さんと、□□部の□□さん、運用は私と××さんとで担当したいと思います。

自社の市況ピークのタイミングから逆算してスケジュールを立てる

オウンドメディアは自社で手掛けるものなので、やるもやらぬも自分たち次第。企画発足からローンチまで数週間で一挙に進むこともあれば、半年~1年以上を要するプロジェクトになることも多々あります。当連載の筆者陣が参加している「オウンドメディア勉強会」でも、ローンチまでの道のりはケースバイケースですし、ローンチ後に運営が一時停滞し、しばらくしてから改めて注力したというメディアの事例もあります。

筆者の体験談でいうと、前任者が構想段階に半年を要し、ローンチ目標日から8週間前に主担当が私にバトンチェンジ。企画書のまとめなおしから初期構築作業一式、運営体制の整備までを一挙に進行して間に合わせるというケースもありました。

ただ、オウンドメディア勉強会の参加各社に共通している話としては、オウンドメディアが一定のパフォーマンスを発揮するまで、少なくともローンチから数か月~半年は時間を要するものであるということです。

競合他社が現時点でオウンドメディアを立ち上げていないからといって、油断していると数か月のうちに先手を打たれてしまう可能性もあります。また、たとえば年末に市況がピークを迎える商材に関するメディアを立ち上げるのであれば、その数か月前から周辺キーワードを的確に押えたコンテンツを事前にリリースしておく戦術が有効となります。

想定FAQ 8
  • Q. オウンドメディアを始めるとしたらいつから?
  • A. 当社の業界のサービス繁忙期から逆算して、○月にはローンチし、コンテンツを運営していきたいと思います。

費用対効果は、他のWebマーケティング施策と比較して判断する

オウンドメディアの運営で、上司から必ず質問されるのが予算のことです。

いくらのコストをかければ適正で、費用対効果(ROI)をどこで判断すべきなのか。その基準は、現在実施しているWebマーケティング予算と比較するのが最も説得力のある方法となります。

たとえば、次のような数字を改めて算出してみましょう。

  • 直近の1年間でSEOに投じた予算と、その結果獲得できたトラフィック数は?
  • 直近の1年間でリスティング広告に投じた予算と、その結果獲得できたトラフィック数は?
  • 直近の1年間で出稿したタイアップ広告の費用と、その記事の閲覧数と自社サイトへの誘導数は?

できれば、過去2年分あるいは3年分までさかのぼって集計し、それぞれのROIの推移をグラフにまとめましょう。すると効果が伸び悩んでいる施策が浮き彫りになるかもしれません。

もともと、オウンドメディア用の予算取りができていなかったとしても、そうした既存の予算の一部をオウンドメディア構築にあててみるという提案は有効な方法です。

オウンドメディアの場合は、作成したコンテンツを自社に蓄積できることがメリットです。ユーザーにとって価値のあるコンテンツを継続して作り続けるほど、それらの記事が検索でヒットし、その検索ユーザーが流入する可能性が広まっていきます。人気記事を積み重ねていければ、それらは資産となり、コストパフォーマンスを向上していける性質をもっているということも、上司にアピールしたい要素です。

単純な例えですが、オウンドメディアの初期構築費に100万円を投じて、きちんと内製で1年間運営したとします。50万の訪問数を獲得できたとなれば、1訪問数あたりのROIは2円です(人件費は除く)。さらに運営を続けて、100万訪問数を突破すれば、1訪問数あたり1円のROIで獲得できたことになります。

実際には毎月の運営コストもかかりますが、筆者の体験談としても、初期構築費に加えて、外部ライターへのコンテンツ制作委託費や、メディアのメンテナンス費や小規模リニューアル費を計上しても、既存のWebマーケティング施策と比べて2倍~3倍のROIを初年度で発揮したことがあります。

想定FAQ 9
  • Q. オウンドメディアのROIの判断基準は?
  • A. 既存のWebマーケティング施策と比べてみます。○○施策は、ここ最近効果が頭打ちになっていますから、そのコストをオウンドメディアに割いてみたいと思います。
◇◇◇

第2回では、オウンドメディアの企画立案で押えるべき6つのポイントと、それぞれの想定問答をまとめました。社内プレゼンの際にお役に立てていただけると幸いです。

オウンドメディアの企画立案で押えるべき6つのポイント
  1. なぜやるのか?
  2. 誰に向けてやるのか?
  3. 成果指標をどう定めるか?
  4. 誰に担当・協力してもらうか?
  5. スケジュールの立て方は?
  6. コストと費用対効果は?
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