Web制作・運用現場のための「課題解決」の教科書
Web制作会社との付き合い方、発注前に知っておくべきタイプごとの違い

Web制作会社にはいくつかのタイプがあることを知っておくと、選ぶ際の参考になります

この記事は、書籍『Web制作・運用現場のための「課題解決」の教科書』の内容の一部を、Web担向けに特別にオンラインで公開しているものです。

書籍から、4-3. 「Web制作会社との付き合い方」の内容をお届けします。

4-3-1 制作会社のタイプを意識する

Web制作会社を探す前に、まず、Web制作会社にはいくつかのタイプがあることを知っておくと、選ぶ際の参考になります。

Web制作会社には、Web制作が本業の会社もあれば、もともとDTPなど他の本業があり、その本業に付随する形でWeb制作を行っているという会社も数多くあります。例えば、広告代理店やコンサルティング会社がWeb制作を受注しているような場合です。本業で制作しているから良いとか、小さな会社だから駄目だ、ということでは決してありませんが、各社はそれぞれ個性があり、得意とする分野があるということを理解しておきましょう。

企業サイトのような統合的なWebサイトの制作は、家を建てることになぞらえることができます。みなさん自身が家を建てるときを想像してみてください。落ち着いた和風の家を作りたい場合は、和風建築を得意としている住宅メーカーに見積もりを頼むのではないでしょうか。同じように、Webサイトを制作する場合も、依頼を検討するWeb制作会社がどの方面を得意としているかは、選び方の基準の1つになります。ということは、選ぶ前に、自社の制作したいWebサイトの目的や方針が決まっていることが前提になります。それが明確であれば、どの分野に強いWeb制作会社に依頼すればよいか、おのずと絞られてくるのではないでしょうか。

ここでは、Web制作業務を行っている会社を、Web制作以外に本業がある会社(あった会社)とない会社に分類し、さらにその中でいくつかのタイプに分類してみました。事前知識として知っておくと、制作会社を選ぶ際や面談の際に役立つかと思います。ただし、ここに記した分類はあくまで“傾向”に過ぎず、例外も数多くあるということを予めご了承ください。

4-3-2 Web制作以外に本業がある会社

システム系の会社

元々、ソフトウェアや、データベース、ネットワークなどのシステム開発を行っているシステム会社、あるいはコンピュータ会社などが、Web制作も行っている場合があります。システム開発だけを行っていたこのような会社が、1990年代半ば、「マルチメディア」という言葉(ブーム?)に敏感に反応し、インターネットの存在を重視するようになりました。

これらの会社は、システム開発という強みを活かして、大規模なバックエンドシステムやロジスティクスシステムと連動する形でのWeb制作を得意とし、各社競ってインターネット業界に進出してきました。このようなシステム系の開発会社は、Web制作を本業としている会社より企業規模が大きな会社が多いです。

大規模ECショップや決済が絡むような会員サイト、基幹システムとの連携が必要なWebを考えているのであれば、こういった開発会社から見積もりを取ってみることができるかもしれません。

大企業なSIベンダーになると、Web制作のビジュアル面については、デザイン会社に下請け発注することがほとんどです。そのため、バックエンドシステム、デザインなどそれぞれを、専門の人が受け持つことになるので、良質のものができるかもしれません。ただしその場合、関係者が増えることでデザインに関する希望が直接デザイナーに届かなくなるなどで、ハンドリングに手間がかかることがあります。また、一概にはいえませんが、Web制作だけを頼む場合には、他のタイプのWeb制作会社に比べてコストパフォーマンスが良くない場合があります。

印刷系の会社

インターネット登場前は、デザイナーやクリエイターと呼ばれる人たちの多くは、雑誌や会社案内、製品パンフレットなどの印刷物を扱う仕事をしていました。Web制作という仕事が誕生したばかりのころは、デザイナーやクリエイターたちが、そのデザイン能力を活かし、企業から印刷物(会社案内など)などを受注して、その付随物としてWebも一緒に制作する、という方向へ移行してきました。

会社案内と全く同じようなWebを制作したいのなら、会社案内を作成した制作会社に、同じように依頼するのがよいかもしれません。全く新規の依頼と比べれば、料金交渉も有利に進めやすくなります。

しかし、会社案内のパンフレットとは違い、企業の多くはWebでのマーケティング成果を期待しています。それには、Webに多くの人が訪問してくれることが大前提になります。そのため、Webには、お客様が欲しがっている情報(コンテンツ)がたくさん必要となり、また、Web自体の使い勝手のよさ(ユーザビリティ)も求められます。そういった要望に対して、印刷系のWeb制作会社がどこまで技術的・知識的に対応できるか、きちんと見極めることが必要です。なぜなら、Web制作に関する技術は年々高度化し、制作者が覚えないといけないことが格段に増えてきたからです。

そのため、印刷系のWeb制作会社は、印刷物のデザイナーとは別にWeb専任のデザイナーやプログラマーを置いたり、外注したり、という場合が多くなってきたようです。例えば、大手印刷会社などは、グループ会社にWeb開発が可能な制作会社や専門の開発部門をもって対応しています。発注を検討する際は、デザインの良し悪しだけでなく、SEOやユーザビリティといったWeb特有の対応ができるかどうか見極めが大切です。

映像系の会社

ブロードバンドの普及によって、テキストと静止画が中心だったWebの世界も、だいぶ様変わりしてきました。以前にも増して、視覚的に訴え、インパクトを与えるようなWebを希望する企業が増えています。

そういった状況で活躍し始めたのが、これまで多数のCM制作などを手がけてきたような、映像系の制作会社です。彼らは当然ながら、ユーザビリティやSEOを重視するWebよりも、テレビCMと連動したようなキャンペーンサイト制作や、画面いっぱいにFlashをフル活用して、どちらかというとインタラクティブなテレビといった趣のWebを作る際に、その力を大きく発揮します。

アニメーション制作は、通常のWeb制作とは全く違う演出と制作能力が求められます。シナリオからキャラクターの設定、絵コンテ、スキャニング、撮影、編集、アフレコというような過程は、Web制作の過程とは、だいぶ異なるのです。その辺のノウハウが、映像系の制作会社の強みです。

またこういった制作会社が活躍し始めた要因に、ブロードバンドの普及とともに、動画コンテンツの進化もあげられます。少し前に流行ったFlashでの動画コンテンツから、企業独自の動画配信システムの導入、YouTubeなどの動画共有サイトや、動画配信ASPとの連動など、以前では考えられなかったような動画コンテンツの活用が頻繁に見られるようになっています。

4-3-3 Web制作が本業の会社

ここで言うWeb制作が本業の会社というのは、Web制作をするために興された会社のことを指しています。したがって、本業がWeb制作です。またこのタイプの制作会社の特長としては、どんなに長くても社歴が15~20年程度ということです。企業がWebを持ち始めてから、その程度の年月しか経っていないのですから、当たり前のことです。さらに、このWeb制作の業界は、良くも悪くも、他の業界に比べて参入障壁が低いため、簡単なWebの知識や、ちょっとしたデザイン能力があるだけで「Web制作会社でもやるか」と起業する者も多いのが現状です。もちろんノウハウを有しているしっかりした会社も多数ありますが、他の業界に比べて、小規模な会社が本当にたくさんあるというのがこの業界の大きな特徴です。しかしそのような状況は、選ぶほうからするとどこに頼んでよいのか、頭を悩ませる原因にもなります。

1人で営業しているフリーランスの人から、上場しているような会社まで、ここで一まとめに話をすることはできませんので、ここでは、規模別の“傾向”として、次の表で簡単に紹介します。

規模(従業員数)によるタイプ
SOHO(フリーランス)

“Small Office Home Office”の略で、いわゆる個人事業所です。SOHOの語源は、ニューヨークSOHO街のアーチストたちが、自分たちでサーバーを確保し、大企業と同等のマーケティング活動を開始したことに由来します。日本ではインターネットの普及ということもありますが、平成に入っての不況も手伝って、SOHOという仕事形態を選ぶ人が増えたとも言われています。仕事場は自宅あるいは、小さな事務所で、1人で受注し制作します。もともとは制作会社のデザイナーだったというような人が比較的多いようです。また、大手のWeb制作会社に勤めていたWebディレクターが同じように独立し、SOHOでいろいろな得意分野の仕事を請け負っている仲間を集め、1つのプロジェクトを完成させるということもあります。

小規模なWeb制作会社

10~30人程度の規模の企業が、Web制作会社には一番多いのではないでしょうか。Web制作の仕事内容の分担から考えると、この程度の規模が制作会社では一番適正な大きさかもしれません。

中・大規模のWeb制作会社

30人以上の規模のWeb制作会社は、この業界においては大きな企業といえます。このような中・大規模のWeb制作会社は、Web制作以外にもリスティング広告の運用やクリエイターの人材派遣など、事業の柱をいくつか持っていることが多いです。

ここまで、

  1. 目標と成果の管理(もっとサイトをよくするために)
  2. Web運用のPDCAについて
  3. Web制作会社の付き合い方

という3つの視点について、前職での経験を基にお話ししてきました。

すぐには実践できない方法論もあったかと思いますが、比較的歴史の浅いWebという仕事やそれを担当するWebチームにとって有効な施策かも……と思っていただき、みなさまのWebのお仕事をより楽しく効果的なものにする一助になれば幸いです。

◇◇◇

会社に戻ってきたあさみは、自分の席にも戻らずに山田の元へ一目散で向かった。

あさみ「部長! ご紹介ありがとうございました! もう目から鱗のお話ばかりでズドンズドンと心に入ってくる言葉ばかりでした。

特に『Webチームは自らが企業の存在までを支えていることを意識する』とか『“やらされる仕事”から“やるべき仕事”への発想転換を行う』といった言葉には、Webディレクターとしてとても勇気づけられましたし、どこかで自分は『やれることは全部やっている』なんて考えていたことにも気づきました」

山田「そうか、それは良かったな。増井さんも言っていたと思うけど、この世界は日進月歩で、まだ産業としてできてからも日が浅い。だから未知数の領域があって当たり前だし、その成果は?ということに明確な答えがなくてもある意味当然だ。だからこそ自律的で……」

あさみ「自律的で、しっかりとPDCAを回していけるWeb運用チームをつくることがもっと重要になってきますよね!」

山田「その通り! そして、継続的に改善していけるチームがお客さんにも喜ばれるはずだ」

あさみ「さあ、もっともっとビジネス成果に貢献できるWeb運用チームになるように頑張るぞ! 早速みんなを集めて、どんな成果指標に私達Webチームが貢献できるか考えます」

すっかりディレクターとしてたくましくなったあさみの“改善”は、これからも続いていきます。

この瞬間も、みなさんのWeb制作・運用現場ではたくさんの課題や取り組まなければならないことが、目の前にあると思います。

それらの課題の1つや2つでも本書でご紹介したノウハウや考え方が、解決の役に立つのであればこんなに嬉しいことはありません。

また、あなたのそばにも新米ディレクターの“あさみ”がいるかもしれませんので、そんなときはこの本をすすめていただければと思います。

少しでも多くのWeb制作・運用現場がいきいきとした改善の場になることを願って、この本の締めくくりにいたします。

ご精読ありがとうございました。

  • 著:雨宮秀仁、神尾武志、神保直樹、和田直美、増井達巳(特別寄稿)
  • 価格:2,380円
  • ISBN:978-4-8399-5350-8
  • 発行:マイナビ

『Web制作・運用現場のための「課題解決」の教科書』

円滑に制作・運用し、成果を出していくための現場の「見える化」、「改善」、「チーム運営」、「ルール作成」テクニック!

Web制作・運用の現場で、チームを円滑に運営し、成果を出していくための「課題解決」「改善」ノウハウをまとめた決定版書籍の登場です。

Webサイトの種類や目的が多様化し、売上向上やブランド好感度の向上など、より会社のビジネスへの貢献を求めることが強くなっています。しかし実際のサイト構築・運用の前に、それらを実現するためのベースとなる高品質で生産性の高いWeb運用のチームと基盤の構築が、重要になってきます。よって、本書では、具体的なWebサイトのマーケティング活用の前提・前段となるWeb運用づくりの実践方法を中心に構成しています。

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