Web制作・運用現場のための「課題解決」の教科書

2-6-7 はじめてのグローバルサイト運用Q&A

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2-6-7 はじめてのグローバルサイト運用Q&A

さて、ここからは、あさみと鈴木先輩がはじめてグローバルサイトを運用する際の心構えや体制について、Q&A形式でお答えします。

Q. どの程度英語ができる制作者を配置すればよいか分からない

あさみ「先輩、A社のグローバルサイト運用の体制ですが、ご存じの通り、私、英語が全くできないです……海外担当者との業務連絡も発生するので、英語ができる人をアサインしたいのですが、デザイナーもコーダーも英語ができないとダメですかね?」

鈴木「サイトの原稿をネイティブレベルの翻訳者や翻訳会社に依頼するという前提であれば、海外の担当者との業務が発生する際に、電話などで英語で会話のできるディレクターが1人いれば大丈夫だね。他のスタッフは中学校程度の英語レベルか、それ以下の英語力でも十分だよ。むしろ、Webの専門性が高く、きっちりとディレクションできる人材をアサインしたほうがいいと思う。グローバルWebサイトといっても結局はWebサイトの制作だからね」

Q. 海外担当者とのコミュニケーション方法は?

あさみ「海外の担当者とは何を使って業務連絡やコミュニケーションをしたらいいのですか?」

鈴木「僕の経験では海外の担当者とは基本的にメールを使っているよ。電話で連絡をした後にも内容確認のためにメールを送るほうが、お互いの勘違いなどはなくなるね」

あさみ「そうか。メールのほうが、後で何かあったときに見直しできますね」

鈴木「本当は顔を合わせてコミュニケーションできたほうがいいけど、海外だと距離的に難しいから、時々はテレビ会議で顔を合わせたり、一度現地に会いに行くとかは、関係を深めるためにも重要だ」

あさみ「そうですね。そういえば、別の会社の友だちが海外担当者とやりとりをしていて、海外担当者が何も言わずに1カ月のバケーションに入っちゃって、連絡がとれずに困っていました。日本人なら前々から休暇の連絡はしておくし、そんなに長く休暇をとらないから問題にならないですよね。そういうのもコミュニケーションが円滑にできていれば問題にならないでしょうか?」

鈴木「言ってくれるのを待つだけじゃなくて、海外担当者の夏休みや年末年始の予定は事前に聞いておいて、それを前提にスケジュールを立てたほうがいいよ。海外は祝日も日本とは違うからね。海外のカレンダーや海外の時刻に合わせた時計も用意しておくと便利だよ」

Q. 各国によってデザインや情報整理の仕方がバラバラです

あさみ「A社のグローバルWebサイトですが、各国によってWebサイトのデザインや・情報整理の仕方がバラバラで困っています。ロゴのレギュレーションも守られていないし……」

鈴木「今までは特に統一していなかったのかな。そうなると、共通のデザインガイドラインを作って、ガイドラインに合わせて制作をするように、各国に普及活動をしたほうがいいな」

あさみ「実は、日本のサイトを基準に簡単にガイドラインを作って、その通りにリニューアルをするようにお願いしたのですが、日本仕様で作ったデザインだと、ナビゲーションや配置するコンテンツに言語が合わないようで、変なデザインになってしまいます」

鈴木「国ごとの言語や嗜好に配慮したデザインコントロールが必要だね。少し大変だけど、日本仕様でデザインテンプレートを作るなら、言語に合わせてレイアウトしてあげたものを渡したほうがスムーズだね。ただ、日本の負担が増えるから、どこまでを日本でやって、どこから現地の担当者に担当してもらうか最初に決めておいたほうがいいよ。日本であまり制作できないのであれば、デザインガイドラインに合わせて制作するように、根気強く言う必要があるね」

Q. 緊急事態発生! なのに海外担当者と連絡がとれない

あさみ「先週、A社の5ヶ国分のサイトを緊急で更新しなければいけなかったのですが、どうしても連絡がつかない海外の担当者がいて、とてもあせりました……」

鈴木「海外とのやりとりは時差もあるから、緊急の場合の体制も考えておいたほうがいいね。いつもは現地で更新しているサイトも、緊急の場合は、日本の担当者に代理承認をしてもらって、日本側で更新する体制を準備しておくとかね」

Q. 思わぬつまずきで、制作スケジュールが遅延!

あさみ「日本語サイトだと、デザインやコーディング時に誤字脱字に気がつけるし、改行位置で困らないのですが、グローバルWebサイトだと単純ミスに気が付くことができなくて、何度も修正が発生してしまいます」

鈴木「確かに母国語じゃないと、正確に翻訳されていても、そういうミスには気が付きにくいよな。現地にチェックしてもらい、正解のテキストをメールで送ってもらってコピー&ペーストして修正することで文字入力のミスをなくすとかね。あと、言語が違うと改行をどこに入れていいか分からないから、翻訳者に改行位置で『/(スラッシュ)』を入れてもらうとか。テキスト修正1つとっても日本のWebサイトでは当たり前にすぐにできることが、グローバルWebサイトの運用では時間がかかるよね」

あさみ「翻訳も、英語を含む数ヶ国語に翻訳する場合は、まず英語に翻訳して、それをベースに他の言語にも翻訳するから倍のスケジュールがかかります」

鈴木「時差もあるし、色々な時間のコントロールが必要になるよな」

あさみ「あと、日本の常識が通じないことがありますよね。この前グローバルでキャンペーンサイトを立ち上げたときも、ある国ではキャンペーンをするときには政府の承認番号が必要だということを知らなくて、もう少しでスケジュール遅延になりそうでした」

鈴木「グローバルで新しいことをはじめるときは、企画段階で現地の担当者に現地独自のルールがないか確認することが必須だな」

Q. グローバルサイトのリニューアル時の注意点は?

あさみ「A社からグローバルWebサイトのリニューアルをしたいと言われていて、気をつけたほうがいい点はありますか?」

鈴木「まずは、日本語サイトと同様に、現行サイトのログ解析や、競合企業サイトの調査を行って、良い点と課題を出すことをしないとね。

現地の担当者にサイトに求められているニーズについて調査しておいてもらうのも有効だね。それから、国によってスマートフォンの普及率や、モバイル端末の回線状況が異なるから、まずは対象国のインターネットの利用状況を調べたほうがいいな

あさみ「なるほど。日本基準のスマートフォン対応サイトを作っても、モバイル端末の通信規格によって速度が遅かったり、そもそもスマートフォンの普及率が低いと利用されないですよね」

鈴木「あとは、普及しているソーシャルメディアの種類も国によって違うから、各ソーシャルメディアの利用率も調べて、ソーシャルメディアにサイト情報をシェアするプラグインを何にするか決めたりしたほうがいいね」

あさみ「調べてみます。あと、コンテンツ内容を決めるときに注意する点はありますか?」

鈴木「サイトのコンテンツ内容については、できるのであれば現地の担当者にもどんなコンテンツにするかヒアリングしたほうがいいよ。現地の人の知りたい情報がなかったり分かりづらいサイトになっても困るからね」

あさみ「本社としての視点だけでなく、現地の視点を忘れてはいけないということですよね」

鈴木「それから、リニューアル後の運用について、検討しておかなければいけないね。目的と役割分担をはっきりさせておくことで、更新もスムーズに進むから」

Q. 海外向けにソーシャルメディア運用をはじめるときに気をつける点は?

あさみ「A社では、海外向けのソーシャルメディアのアカウント開設も検討しているようですが、はじめるときに気をつける点はありますか?」

鈴木「国によって、普及しているソーシャルメディアの種類が違うから、各ソーシャルメディアの利用率を調べて、どのソーシャルメディアを開設したらよいか提案したほうがいいよ。日本では当たり前のサービスも使われていない場合だってあるから」

あさみ「分かりました。それから、開設後の運用のポイントはありますか?」

鈴木「運用で大切なのは、国ごとにどのようにソーシャルメディアが活用されているかを調べることだな。ソーシャルメディアで流行っている投稿や、どのような投稿がシェアされやすいのかを調べることだ。日本だけであれば、投稿記事の文章量が多くても読んでくれることもあるけど、複数の国や地域の人に見てもらうのであれば、写真が大事になってくるから、印象的な写真だけの投稿とか、写真と簡単なキャプションだけの投稿が良かったりするよ」

あさみ「要は、言葉の問題ではなくて、現地の人々の嗜好や動向を理解して、どうコミュニケーションを取るか考えることが大事だということですね」

Q. できるだけタイムリーに運用するには?

あさみ「ソーシャルメディアはタイムリーな投稿が命なのに、投稿原稿を翻訳するのに時間がかかることが多くて困っています。できるだけタイムリーに海外のソーシャルメディアを運用するにはどうしたらいいですか?」

鈴木「まずは、原稿の承認フローを簡素化して確認時間を短縮することが大事だね。例えば、簡単な投稿については現地の担当者の承認をスキップして短くするとか。あとは、予約投稿を使えば、各国のユーザーがアクティブな時間に投稿できるよね」

あさみ「なるほど、日本時間で投稿しても時差の関係で海外では夜中で誰も見ていない場合もありますよね」

鈴木「他に、写真と簡単なキャプションだけの投稿にすれば、翻訳の必要がなくなるよね」

あさみ「写真中心の投稿であれば、言語に関係なく投稿できるから、数カ国語の運用もタイムリーにできそうです」

Q. ファンがなかなか集まらない…

あさみ「開設したA社のグローバルFacebookページですが、なかなかファンが集まらず盛り上がらなくて困っています」

鈴木Facebook広告を使うのがいいよ。海外の企業も積極的にFacebook広告を活用しているね」

あさみ「Facebook広告か。複数国のFacebookページを運用しているから、全てに広告を出すとなると、予算が足りないかもしれません」

鈴木「Facebook広告の出稿単価は国によって違うから、国ごとにシミュレーションしたほうがいいね。予算がない場合は、まずは企業のマーケティング注力国を中心に出稿して、効果が良ければ他の国でも出稿することで対応していくといいよ」

2-6-8 グローバルWebサイト運用のまとめ

  • 目的の設定と本社のリーダーシップが一番重要!
  • 距離や時間の問題があるからこそ、マメなコミュニケーションを!
  • 緊急事態の備えは、日本以上に念入りに!
  • 理想の運用体制は企業の数だけある!「本社」と「現地」の良い関係を

あさみ「お兄ちゃん、前に相談したグローバルサイト運用を支援しているA社のグローバルサイトからの問い合わせが3倍になったって担当者からお褒めの言葉をもらったの!」

「おめでとう! すごいじゃないか」

あさみ「はじめはどうしようか困ったけど、ガイドラインや体制やルールを作って、海外の担当者とこまめなコミュニケーションを築くことで、日本語サイトと同じように運用できることが分かったわ!」

「安心するのはまだ早い。これから日本企業の海外進出が本格化してくれば、グローバルサイトに力を入れてくる企業も増えて、競争が激化してくるからな。他のWeb制作会社との差別化も必要になってくるぞ」

あさみ「えー。そうか……。でも“世界のWebディレクターあさみ”になれるように頑張るわ!」

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  • 著:雨宮秀仁、神尾武志、神保直樹、和田直美、増井達巳(特別寄稿)
  • 価格:2,380円
  • ISBN:978-4-8399-5350-8
  • 発行:マイナビ

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