一人でできるWebサイト収益UP術-ウェブ解析士事例集
「アクセス解析データなし」「デザイン変更なし」でもユーザー行動観察で問い合わせを10倍にした方法

ウェブ経由問い合わせ数を10倍に伸ばした自動車保険代理店のホームページ改善プロジェクトの裏側を大公開

Google アナリティクスも入っていない。改善に向けた手元データもない。このような状況からサイトのデザインは一切変えずに、ユーザー行動観察による仮説検証で、ウェブ経由の問い合わせ数を10倍にした自動車保険代理店のホームーページ改善プロジェクトの裏側を大公開!

ホームページ改善の背景:ネット系損保の台頭で、新規営業に苦戦

本記事では、社員数30名程度の官公庁向けの保険代理店が、徹底したユーザー視点でのホームページ改善により、自動車保険のウェブ経由問い合わせ数を10倍に伸ばした取り組みをご紹介します。まずは、この保険代理店が置かれていた背景を簡単に整理します。

背景1:対面営業がないビジネスモデル

この保険代理店は官公庁に特化していることで、「団体扱保険」という制度があり、それがサービス上の強みとなっていました。また、官公庁内の情報誌に広告を出すなどの地道なプロモーションを継続していたため、社名の認知はすでにありました。

このような強みから、営業マン・営業レディによる対面営業は一切行わず、電話対応と郵送のみで契約を完結させるビジネスモデルを築いていました。いままでは広告を見たユーザーから電話相談を受けるケースが多かったのですが、購入する前に「まずホームページを調べる」という行動パターンが一般的になってきたことで、説明・説得チャネルとして、ホームページの重要性が増していました。

※保険料が通常より20%程度割引できるもの。特定の代理店だけに認められているボリュームディスカウント制度。

背景2:新しい競合、ネット系損保の台頭

「自動車保険」のキーワードの検索結果
「自動車保険」のキーワードの検索結果。ネット系損保がほとんど

自動車保険は、車ディーラーや保険代理店経由での間接販売が主流であり、代理店における競争は「いかに他代理店に勝つか」がテーマでした。

しかし近年、インターネット活用によるコスト削減をうたったネット系損保(ソニー損保や三井ダイレクトなど)が台頭し、マス広告をはじめとした大々的なプロモーションで大きく認知を上げ、自動車保険契約における存在感が高まっています。

このような新しい競合の登場により、この保険代理店の場合も、自動車保険の新規契約数が年々減少する傾向にありました。

背景3:アクセス解析すら入っていない、昔ながらのホームページ

ホームページは、8年前にパンフレット・広告チラシをそのまま張り付けたサイトで、説明・説得機能を全く果たしていませんでした。

このようなサイトでは、せっかく会社ホームページに訪れてくれた潜在顧客の疑問や課題を解決できるものではなく、「非常にわかりにくいので、別の代理店を見よう」「よくわからないし、ネット損保の方が安そう」と取り逃していただろうことは、想像に難くない状況でした。

また、Google アナリティクスは導入されておらず、解析データはトップページに掲載されている訪問者数などを計測できる「アクセスカウンター」のみでした。

解析データがないためユーザー理解を軸にしたホームページ改善を行う

アクセス解析データが全くないなかでのホームページ改善のため、ホームページを利用する潜在顧客(ユーザー)を理解するためのデータを集める必要があります。

クライアントの問い合わせ電話担当者にヒアリングを行ったり、過去の契約者アンケートなどの既存データをもらい受けたりしたものの、「ホームページを見て問い合わせをしない本質的な理由」がなかなか見えてきませんでした。

そこで、ホームページに訪れるユーザー(お客様)の心理・行動を理解するための分析手法として、官公庁に勤めている方5人を対象に、ユーザー行動観察調査を実施しました。

ユーザー行動観察調査とは?

ユーザーにホームページやアプリなどの調査したいサービスや商品を実際に利用してもらい、その行動を観察したり、行動後にヒアリングしたりすることを通じて、ユーザー心理やホームページやアプリなどの課題を見つける手法です。

ただし、ユーザーに黙々と利用されても「利用中に何を思ってその行動を行ったのか」がわからないため、利用中は考えていることを独り言として話してもらう(思考発話)ことにより、心理や課題を具体的に把握しやすくする特徴的な手法です。

ユーザー行動観察調査の様子

なぜインタビューではなく、ユーザー行動観察調査なのか?

数人で行う「グループインタビュー」や1対1で行う「デプスインタビュー」とユーザー行動観察調査と何が違うのか。という質問をよく受けます。

最も大きな違いは、実際のホームページやアプリを使う様子を観察し、記憶が鮮明なうちにヒアリングすることで、言語化しづらいユーザーの心理や思い出せない感情をユーザー行動観察調査では明らかにできるからです。

たとえば、「1か月前に行ったレストランで、不満や気になることはありましたか?」と質問されたと考えてみてください。よほど印象的なことがあった場合をのぞいて、細かなことは思い出せないと思います。

しかし、実際にそのレストランに行き、入店から注文・退店までの流れを体験しながらであれば、1か月前に感じたことや考えたことをかなり高い精度で思い出せるでしょう。これが、インタビューと行動観察の大きな違いです。

どうやって調査対象(ユーザー)を見つけるか?

ユーザー行動観察調査を行うためには、対象となるユーザーを見つける必要があります。行動観察の対象ユーザーは、ビジネス上のターゲットであり、実際にウェブサイトやアプリを利用する方や利用する可能性が高い方を対象にするのが一般的です。ビジネスターゲットであっても、そもそもウェブサイトやアプリを使わない方などは対象外となります。

対象ユーザーの集め方としては、「調査会社に依頼する(1人1万円~)」「知人経由で集める」という方法があります。今回のターゲットは、官公庁勤めというレアな属性のため、知人経由で集めることが難しいことから、調査会社に依頼しました。

ユーザー行動観察調査でわかったユーザー心理

ユーザー行動観察調査を行うことで、自動車保険を検討するユーザー心理や前提意識について、さまざまな発見がありました。いくつかホームページを改善していくうえで重要となったポイントをご紹介します。

調査結果1「代理店 = 保険会社」と誤解している

●●●は保険会社だと思っていた。あまり小さな保険会社は不安なので、大手損保の保険に入りたいと思っていた。

保険にあまり詳しくないユーザーは、「代理店 = 保険会社」と誤解してしまうケースがあることがわかりました。

ご存じの方がほとんどかと思いますが、自動車保険は通常、損害保険会社が提供し、代理店が販売するという構造になっています。どの代理店から買っても、通常は損害保険会社が提供している保険を契約することになります。

当然ながら、テレビCMやマス広告で知名度が高い損害保険会社に比べて、代理店は「よく知らない、怪しい会社なのでは?」とユーザーに強い不安を持たれてしまいます。

調査結果2団体扱割引でどのくらい安くなるか想像しづらい

20%割引ってあっても、結局ネット損保の方がお得なんじゃないかな……いまいちイメージがつかないな。

「団体扱で20%割引」という記載はあるのですが、どれぐらい安くなるのかが直感的にユーザーに伝わっていませんでした。

ネット系損保であれば、ホームページ上で見積もりを出すことができますが、損害保険の提供している保険を扱っている代理店ホームページの場合、リアルタイムの見積もり算出はできません。そのため、「ネット系損保の方が安そう」という印象をユーザーにもたれてしまう状況でした。

調査結果3「割引 = サービス内容劣化」という誤解がある

割引されるってことは、サービス無い世も悪くなりそうな気がしますね……自動車保険は事故が起こったときの対応が一番大事なので、不安ですね。

値段が割引されることで、サービス内容そのものが悪くなるのではないか? という不安をユーザーが感じていました。

団体扱割引は「代理店単位でのボリュームディスカウント」で、提供される保険サービスは当然全く同じなのですが、この仕組みが伝わらないと「安かろう悪かろうの保険ではないか」という悪印象につながってしまいます。

保険の場合は、事故が発生したときの対応の良し悪しへの不安が非常に大きいため、「値段の安さ = サポート品質の低下」という誤解が発生してしまうと、検討意欲が大きく下がってしまいます。

調査結果4更新までに間に合うかわからない

昨年も乗り換えようかなと思ったんですが、考え始めたのがギリギリになって、結局間に合わなさそうでやめてしまいました。いつまでなら間に合うんでしょうか?

自動車保険の新規獲得機会は、大きく分けると「車購入時の保険加入」「他社からの乗り換え」の2つがあります。

他社乗り換えの場合検討期間は、更新の1か月程度前に更新通知が来てから更新日までの短い間です。

乗り換えユーザーの傾向として、「もっと安くなるのでは」という期待はありつつも、乗り換えを行う必然性はないため、検討を先延ばしにし、ぎりぎりになってから検討を始めるというパターンがあります。更新日まで時間がないため「もう間に合わないかも」という不安があり、この不安を解消できないと、乗り換えを諦めてしまいます。

調査結果を踏まえた改善施策

上述のようなユーザー行動観察調査での結果をもとに、以下のような3つの改善策を取ることにしました。

改善施策1代理店と保険会社の違いを明確にする

大手保険会社の社名を並べ「ここから最適な保険をご提案します」という見せ方をすることで、あくまで保険は大手のものであり代理販売であることを明確にしました。

代理店と保険会社の違いを明確にする

改善施策2具体的な割引事例で「自分でも安くなる」という印象形成

割引20%という抽象的な数値でなく、具体的な車種や保険金額を出し、「●万円の保険が●万円に」という具体的な事例を掲載し、自分が申し込んだ場合どのくらい割引が受けられるのかを印象付けることにしました。

事例として掲載する場合、検討しているユーザーから遠すぎる事例だと「自分とは関係ない」と思われてしまうため、代表的なパターンをピックアップし、複数の事例を掲載することにしました。

保険料お見積もりの例

改善施策3Q&Aにより不安や疑問を徹底解消

調査結果3~4にあげたような「割引 = サービス内容劣化」、「更新までに間に合うかわからない」といった、ユーザーが保険を検討しているときに感じるさまざまな不安や先入観を解消するために、Q&Aコンテンツを作りこみました。

団体扱自動車保険のよくある質問

今回の改善で実施しなかったデザイン変更と集客施策

今回の改善施策では、次の2つは実施しませんでした。

  • 改善時に行わなかったこと①:デザイン変更
    このプロジェクトでは、ホームページのデザインやテイストは一切いじらずに、コンテンツのみを改善することにしました。

    デザイン変更を伴うと、自動車保険以外の領域を含むホームページ全体を変える必要があり、制作コスト・スケジュールを考慮して、あくまでも自動車保険ページに絞って改善を行うことにしました。

  • 改善時に行わなかったこと②:集客施策
    リニューアルに合わせる形で、リスティングやDSPなどの集客施策を行うケースも多いと思いますが、今回のプロジェクトでは、そもそも指名検索が多く、ネット広告が不向きであるという判断から、集客施策は一切行いませんでした。

改善後、問い合わせ数が毎月10倍に

これらの改善施策を行ったホームページを2013年1月にリリースしたところ、改善直後から問い合わせ数が一気に10倍近くを記録し、その後も毎月同じペースで推移しています。

自動車保険のウェブ問い合わせ数の推移
自動車保険のウェブ問い合わせ数の推移

ユーザー行動観察によるユーザー理解がビジネス成果を生む

ウェブマーケティング・ウェブ解析というと、ホームページをはじめとしたデジタルチャネルと極めて相性が良く、また近年のビッグデータ流行もあり、得てして「定量データや数値をいかに分析するか」という発想になりがちです。

しかし、今回の事例でご紹介した通り、ユーザー行動観察というアナログな手法の方がむしろ、ユーザー心理の理解に非常に効果的で、大きなビジネス成果につながるヒントやアイデアを得られます。

また、定量データ分析は統計などの非日常的なスキルを必要とする行為ですが、ユーザー行動観察は誰しもが日常的に行っている対人コミュニケーションスキルの延長線上にあるもので、万人にとって習得しやすいスキルであると思っています。

ウェブ解析士協会では、このような背景から、「ユーザ行動観察士」という資格制度を立ち上げ、この手法がよりウェブマーケティングの現場で当たり前に使われる状況を実現していきたいと思っています。ぜひウェブマーケティングに携わる方々は、ご検討頂ければ幸いです。

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