企業ホームページ運営の心得

楽天市場に年間1万件以上のランキング1位が生まれる理由

セグメント化によってランキングを作りだす
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の368

売れる仕組みとは

「品質」だけがランキングの順位を決めるものではないとは、前回のおさらいであり、「ランキングを作る」という発想の基本です。ランキングとは「良い商品の順番」の同義語ではないということです。たとえば、次の2つの商品があったとします。

  • 1本:1万円のエナジードリンク
  • 1本:100円のエナジードリンク

それぞれの「品質(中身)」を比較したならば、1万円の商品に軍配が上がることでしょう。しかし、コンビニで数多く売れるのは100円の商品です。売価が購買意欲に大きく影響するからです。

また、価格が同じ100円のエナジードリンクだとしても、

  • ドリンクA:仕入れ値50円
  • ドリンクB:仕入れ値70円

なら、ドリンクAの売上が伸びると考えられます。売り手は、陳列に工夫を凝らすなどして、利益率の高い商品を売ろうとするからです。こうした「さじ加減」が「ランキングを作る」のです。

本稿におけるランキングとは、マーケティングのための方便、あるいは「お客を楽しませるための技術」と位置づけています。

セグメント化で作りだす

ランキングを作るためのアプローチを、Web業界が好きなカタカナ言葉にすると「セグメント化」になります。

ランキングとは「相対評価」で、「評価基準」が変われば順位は変動します。同様の商品群で比較する「種別(ジャンル)」、価格帯による「価格別」、さらに「顧客(属性)別」では所得層や住所・所在地、性年齢別で「セグメント化(細分化)」します。そのセグメントを組み合わせた「評価基準」によって、望み通りのランキングを生みだすことができます。

具体的には、

足立区在住40才独身男性が購入した5,000円台の生活家電ランキング

というように、セグメントの組み合わせ次第で、希望通りの序列を作りだすことができます。本稿ではわかりやすくするため、かなり恣意的な例としていますが、広く利用されているテクニックです。

ランキングを量産する方法

さらに便利なセグメントは「時間」です。オリコンが「デイリー」「ウィークリー」とランキングを発表しているように、期間を区切った順位です。この使い方は大きく分けて2つあります。

まず、「特定の期間を切り取る」方法です。売上データの一部を切り取り、あるいは「仕掛け」により跳ね上がった数字をピックアップします。どうしても売りたい商品があるメーカーや、新商品のイメージ戦術などで効果を発揮する方法で、これについては次回「数字の作り方」で深掘りします。

もう1つが「ランキングの量産」です。こちらは流通や小売りのように、特定の商品にこだわりがなく、全体的に売上を伸ばしたいときに利用します。ランキングが販促効果を高めるのは「順位」を「説得力」と錯覚するからです。善良な日本人の多くは、提示された順位(情報)のなかだけで理解しようとします。総勢1,000アイテムにおける「ベスト10」と、11品中の10品の違いに気がつく消費者は少数派です。

楽天市場に見つける効果

楽天市場は、ランキングによる錯覚を最大限に利用しています。「デイリー」「ウィークリー」「年間」という「時間」に、「家電」「健康食品」「コスメ」と「種別(ジャンル)」を組み合わせます。すると以下の式が成り立ちます。

種別×(365日+52週+12か月+1年)=年間のランキング数

つまり、1年間で1つの商品種別に430のランキングが作れるのです。執筆時点で、「ランキング市場」の「ジャンル別一覧」には31項目あるので、最低でも年間13,330種類のランキングとチャンピオンを生み出すことができます。

実際のジャンルはさらに細分化されており、「レディースファッション」という大項目の下には、「ワンピース」「ドレス」などの中項目が存在し、その下には「ショート」「ロング」などがあり、もう1つ下には……と、それぞれにランキング1位が存在します。これが、楽天市場に「1位!」と喧伝するショップが多い理由です。

このモールのランキングを丹念に見ると、マンスリーランキング上位の店が、年間ランキングでは選外である例を多数発見します。そこでランキングの説明をよく見ると、売上などに加えて「独自の審査」とありました。これもまた「さじ加減」です。

エスキモーに売る冷蔵庫

さらに「さじ加減」を発揮すれば、どんな商品でもほめ称えるランキングを作り出せます。冒頭の「1万円のエナジードリンク」は常識的に考えれば、そうそう売れるものではありません。しかし、販売実績しかランキングにならないというのは固定観念。その発想ではエスキモーに冷蔵庫は売れません。

当店のイチオシ エナジードリンク!

一番に推している「イチオシ」とはランキングの一種。イチオシの理由は「価格」と「売れない」ことで、「当店」だけの思いこみであり、それは「さじ加減」なのですが、同様に「2推し」「3推し」を表示すれば「さじ加減100%」のランキングが完成します。繰り返しになりますが、表示された情報だけを判断し、序列の根拠を求めない日本人は少なくありません。

また、1万円の商品が1本だけ売れ、100円のエナジードリンクが99本の販売ならこうなります。

当店売上(高)ナンバーワン

金額ベースに換算すると1万円の方が上。評価基準のすり替えは販促における常套手段です。

本当に売れている商品とは

「さじ加減」の是非はここでは論じません。しかし、実際の商品より良くみせる販促方法は「優良誤認」という、消費者保護のための法律に触れる可能性もあります。そして「ランキング商法」ともいえる実態を見るに、どこかで司法の介入もあるのではと見ています。くれぐれも「やり過ぎ」にはご注意ください。

それでも「ランキングの作り方」を紹介した理由は、ランキング好きの日本人にとって、ランキングはお客を楽しませるツールでもあるからです。先日、実際に私が喝采したランキングはこれ。

雨の日売上ランキング1位

集計期間や方法が明記されておらず、統計学的な信憑性はまったくない情報です。しかし、ビニール傘だったか、ハンドタオルだったか失念しましたが、「だよね」と思わず頷く1位はまるで「あるあるネタ」。POPにあしらわれた「てるてる坊主」イラストからも、お客を楽しませようとする努力が見え、頬が緩んだのでした。

今回のポイント

ランキングの基本はセグメント化

期間の区切りで量産できる

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