企業ホームページ運営の心得

ネットショップの増税は0時ぴったりにすべきか、Web担当者にとっての増税の備え

増税にともなう価格変更などの対応タイミングを考える
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の352

考えれば嫌になるが

近所の大型ホームセンターにでかけると、平日の昼間だというのに黒山の人だかり。レジはお客で溢れかえり、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、洗濯洗剤に台所用洗剤、さらにラップやアルミホイルの陳列棚は虫食い状態です。人気商品はすでに「品切れ」と手描きの案内が貼られ、スタッフが端から補充しても間に合わず、配送用のカゴのまま通路に陳列されていました。

増税前の駆け込み購入です。奇しくもこの日は、東日本大震災から3年目にあたり、商品のないガランとした棚に、あの日のコンビニを思い出します。そして簡易コンロ用のガスボンベを、いつもより多めに買いこんだのは「震災の備えは日頃から」。あの日からの教訓です。

さて、増税前の駆け込み需要は、本稿が公開された週末の3連休がピークでしょう。それではその後、つまり「増税」への備えは十分でしょうか。

税率の切り替えタイミングは4月1日の0時ぴったり? ネットショップは一時停止すべきか……

3%から5%へと増税されたときにも、各社がさまざまな工夫を凝らしています。

このタイミングで変更する

まず直面するのが価格の「表記」です。すでにスーパーマーケットなどでは「税抜き価格」の表記が目立つようになりました。そしてこれは正解です。4月1日から、新税率での「税込み価格」で更新を依頼するクライアントもいるのですが、できるかぎり「税抜き価格」に変更するように促しています。その理由は2つ。

まず、税込み価格で表示すると、増税後に「値上げ」した印象が強くなります。頭では「増税」が理由だとわかっていても、目の前の値札の数字が上がっていれば「便乗値上げ」と不審がる感情は、どれだけ説明を尽くしても抑えることはできません。その点、増税前から税抜き価格に変更しておけば、お客は混乱しますが、それは社会全体で起こっていることで、語弊を怖れずに言うならば、

混乱ブーム

に紛れることができます。

次もその次もある

税抜き価格を推奨するもう1つの理由は「次の増税」です。順当にいけば年内に、消費税率を10%に引き上げる決定が下されます。税込み価格を維持し続けると、次の増税のときも同じ懸念が再現されるということです。さらに最低でも消費税率は18%になると断言する識者もいます。

税込み価格では、増税のたびにすべての価格を変更する労力をかけて、お客の不興を買うリスクを背負い続けなければならないのです。だからこの機会に「税抜き価格(本体価格)」のみの表記に切り替えるべきと考えるのです。

そもそも「税込み価格」を強制した総務省に無理があります。消費税は店のコストではなく、消費者が広く負担する税金だからです。今回は「特例」として、税抜き価格の表記を容認するとしていますが、消費税の性質からみたとき「特例」とする発想が「本末転倒」なのです。

価格変更するなら“いま”

税抜き価格表示に切り替えたとしても、原材料費に加算される消費税の増税分から、価格そのものの値上げが必要になることもあります。宅配便大手のヤマト運輸は4月から料金を一斉に値上げすると発表しましたし、牛丼の吉野家も並盛りを20円値上げして300円にします。

価格変更も「混乱に便乗」するため4月1日がベストです。ただし、幾分の選択肢が残されるのは、3月31日までの仕入れに支払った消費税は5%分です。仮にこの仕入れで一定の「在庫」を用意できるなら、店の負担がないまま「価格据え置き」と銘打つキャンペーンを展開できるからです。同様に旧価格のままで「売り尽くしセール」も実施できます。これは増税後の消費落ち込みに備える一手となります。

コンビニはどうする?

定石に従い4月1日に価格を変更するとします。そこで問題となるのが24時間、365日営業している「ネット支店」においての価格更新のタイミングです。「税率」の変更も同じく。そこで日頃から、日付をまたぐ営業をしている、コンビニとファミレスを見てみます。

大手コンビニは午前0時を境に、税率を自動変更するようですが、多くのレジは最初に商品を登録した日時の税率を採用するので、会計の途中に増税されるということはありません。ただし、日付またぎにレジの行列ができていた場合は、前後で税率が変わるケースも想定されます。

ちなみに97年の増税時、レジが2台以上あるコンビニでは、客が途切れるまでは「旧税率のレジ」で会計し、その間にもう1台を「新税率」に更新(簡単なコマンド入力)しておき、落ち着いたところで「新税率レジ」に誘導することで混乱の回避を目指すと報じられていました。

日付が変わった直後の税率変更は、もちろんネットでも可能です。ただし、ネットショッピングモールなどで、各運営者が同時にそれを行えばサーバー負荷が増大し、更新できない可能性があることを考慮する必要があります。

役務の提供が大切

混乱を避ける参考となるのがファミレスです。こちらのレジも、理論上は午前0時に変更できますが、「締め」をもって切り替える企業が多いようです。消費税の適用には「営業日」という考え方があり、深夜2時に閉店する場合、その時刻まで旧税率が認められるケースがあるのです。

24時間営業でも、1日単位の売上を「締める」時刻は社内で規定されており、このタイミングで更新します。詳しくは税務署や税理士に相談していただくとして、必ずしも午前0時の更新にこだわる必要はないということです。

さらに「臨時休業」という方法もあります。増税前後の混乱によるトラブルを避けるために、3月31日の午後11時など適当な時間で一度閉店し、更新作業を完了させます。そして更新作業が完了したのを見計らい、翌日の4月1日から「再開」するのです。

最後にもう1つ、最も注意すべきなのが「代引き」です。商品が届いたときに現金を支払う「代引き(代金引換)」の場合、商品到着時を取引成立(これを役務の提供と呼びます)とする場合もあれば、売掛のように注文時点で取引成立とみなす場合もあり、企業によってケースバイケース。

インターネットでの情報公開が当たり前となった現在、増税への対応はWeb担当者にとっても重要な業務の1つ。ネットショップがなかったとしても、取引にかかわる税の告知は欠かせません。これらの告知準備、増税直前になって慌てないための内部体制作りがWeb担当者にとっての「増税への備え」です。

今回のポイント

取引が完了した日時の税率が適用される

増税は一度だけではない、いざというときの内部体制作りを

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