【レポート】Web担当者Forumミーティング 2013 Autumn

Web担当者はWeb脳を捨てよ! 会社に貢献するためのマインドセットをKDDIウェブの高畑哲平氏が伝授

KDDIウェブコミュニケーションズ 取締役副社長の高畑氏が、Webマーケティングの心得を語る

Web担当者が企業の業績に貢献するためのマインドセットとはどのようなものか。入社当時、マーケティング担当者として会社でくすぶっていたという、KDDIウェブコミュニケーションズ 取締役副社長の高畑哲平氏が、「Web担当者さん、あなたの仕事は会社の業績にホントに役立ってますか?」をテーマに、従来のWeb担当者やWebマーケッターの概念を取り払い、会社により貢献するための考え方を語った。

会社に貢献できるWeb担当者・マーケッターに

株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ
取締役副社長
高畑 哲平氏

まず高畑氏は、2006年にKDDIウェブコミュニケーションズ(当時は株式会社CPI)にWebマーケティング担当者として入社した当時の様子を語った。当時は業績に役立つことができなかったことを明かし、どのように会社に貢献できるようになっていったかを話していく。

また高畑氏は、理想のWeb担当者の姿として、Web担当者Forumの連載マンガで掲載された「うさぎ薬局の事例」を紹介し、興味のある人はぜひ読んでほしいと語った(高畑氏も同マンガに登場している)。

入社直後の高畑氏はマーケティング担当として活動するが、実際の業務はリスティング担当として代理店とミーティングすることで、時間を持て余した状態だったという。また、会社が右肩上がりで成長する一方、「自分自身が赤字だった」と高畑氏は話す。同世代の活躍を目にするようになり、このままではいけないと感じた高畑氏が、会社に貢献できるようなWebマーケティング担当となり、副社長にまでなった経験が今回の基調講演の趣旨だ。

入社から約半年、会社に貢献するには「永続的な事業にかかわる仕事やタスクを行わなければならない」と気づいた高畑氏が目指したのは、昨年ごろから米国で急増している「Growth Hacker(事業成長をハックする人)」に近い役割だ。事業を成長させるように働くために、ベースとなっていた数十件のリスティング広告を見直し、受注数を右肩にに増やし続けることを考え、これまでやってきたWebマーケティングの概念を取り払って事業成長だけにコミットし、そのために何をやって顧客をハッピーにできるかを考えたという。

サービスのファンが潜在客や見込客を連れてくる

高畑氏のマーケティングの考え方は「1:n」が前提となっており、2006年からその考え方は変わっていない。投資したら「n分」だけ無限大に増えていく戦略を採用するのが高畑氏の言う「1:n」の基本的な考え方だ。たとえば、「10万円の投資で20ユーザー獲得できる施策」と「100万円の投資で不確定だが100万ユーザー獲得できる可能性がある施策」がある場合は、後者を選択するという。その理由は、「投資対効果が見えてしまうものは成長の限界が見える」からだ。

また、経営者は常にコストを抑えたいと考えているため、マーケティング担当者は比較的数字の追いやすいリスティング広告だけを行うのではなく、一定のコストで売上を右肩上がりにすることをベースに考える必要がある、と高畑氏は話す。

実際に右肩上がりで成長させた事例として、高畑氏は同社が運営するクラウドCMS「Jimdo(ジンドゥー)」のユーザー獲得施策を解説する。まず高畑氏は、顧客を5段階に分類した基本思想を示す。

  1. 潜在客
  2. 見込み客
  3. 利用客
  4. 顧客
  5. 得意客
高畑氏の考える基本思想は、3~5番の利用客から得意客までが、1~2番の潜在客と見込み客を連れてきてくれるというもの。

乱暴な言い方をすれば、全力で施策を行うのは利用客以降の顧客で、これらの顧客をファンにすれば、潜在客と見込み客を連れてきてくれるというのが私の基本的な思想(高畑氏)

そのため、「Jimdo」のトップページは商品説明ではなく、ログインボックスをメインに配置したランディングページ型になっている。サービスサイトに来る人は、すでにオフラインで説明を受けていることが前提で、「非常にリスキーではあるが、頑張って会社を回していくと効率がよい」と高畑氏は説明する。

実際に訪問するユーザーは「Jimdo」という検索ワードで入ってくることがほとんどで、「ホームページ制作」などのキーワードで入ってきて、説明を読んでからサービスを始める人は少ないという。Webサイトに着地する前に勝負を決める施策を行い、サービスを利用する気になっている人がWebサイトに来るというのが、Jimdoにおけるマーケティングの考え方だ。

Jimdoのトップページでは、登録フォームが目立つように設置されている。サイト訪問者の多くは、すでにサービスの概要をオフラインなどで理解しているという前提だ。

Web脳を捨て、オフラインの施策も考える

次に高畑氏は、「Webマーケティングとは何か? と聞かれて、リスティング広告やアクセス解析と答える人は多い。正解ではあるが、もっと広義に考えてみてはどうか、というのが今日の提案の1つ」と、Webマーケティングの認識をより広義に考えれば、仕事の幅が広がり、事業に貢献できると話す。

Webマーケティングにかかわらず、Webの仕事をしている人は、すべてのアクションや施策をWebで行おうとする“Web脳”になっている。Webを利用しない層もいるし、電車の中でスマートフォンを触っている人はほとんどゲームをやっていて、インターネットにはつながっていない。どんなにSEOやSEMをやっても、これらの人たちには届くはずがないという事実に、意外と気づかない(高畑氏)

このように“Web脳”がWebマーケティングの大敵となることを高畑氏は示す。固定概念に縛られず、自分の生活リズムを考えれば、Webに触れていない時間が多いことに気づくはずだ。そしてWebだけにとらわれず、消費者の行動プロセス全体を設計すべきだと高畑氏は述べる。

AISASモデルのうち、Search(Search Engine)とAction(Website)がWebマーケティングの仕事だと考えている人は多いが、自分はAISAS全体がWebマーケティングの領域であり、これらすべてを設計できなければ、会社としてはWeb担当者をおそらく評価できないと思う。Search EngineとWebsiteだけをやっても購買は完結しないため、購買に関るすべての設計を行う必要がある(高畑氏)

高畑氏が考えるWebマーケティングの領域。「OFF(オフラインの領域)」でも、Web担当者として貢献できることを考える。

もちろん、AISASのうち、ユーザーの状況がオフラインにあることも多いが、オフラインの状況でも気づいてもらえることはある。一般的に、オフラインの施策はWebマーケティングの仕事ではないと思われるかもしれないが、購買活動につながるのであれば設計を行う必要があり、駅の広告などにも関る必要がある。Webの強みと弱みを理解することも必要だ。

オフラインの設計が最終的なコンバージョンに貢献するのであれば、Web担当者の仕事にしてもよいということを提唱したい。Webでは、検索エンジンのキーワードでトップになることを目指すかもしれないが、検索するユーザーはかなり能動的なユーザーで、インターネットは興味を持っていない人を振り向かせるのには向いていない(高畑氏)

事例として高畑氏は、ブランドにまったく興味がない人が、あるブランドの財布を購入するまでを自身の経験を含めて説明する。興味がなければ、そのブランドを検索することがなく、Webサイトを見ることもない。しかし、そのブランドと高畑氏が好きなアーティストがコラボレーションしていることをショーウィンドウで知った高畑氏は、商品に気づき、興味を持ち、初めてそのブランドのWebサイトを訪問し、実店舗で財布を購入するまでにいたった。

そして購入した財布をFacebookで共有すると、2人の友人が同じ財布を購入した。「現在の生活はオンラインとオフラインの明確な境目がなくシームレス。オンラインだけでなく、オフラインも設計する必要がある」と、高畑氏はオフラインとオンラインが入り組んだ例を示した。

柔軟に考えて5W2Hを最適化していく

続いて高畑氏は、新潟県燕三条市の「米山工業株式会社」がJimdoで制作したWebサイトによって、売上を伸ばした事例を示す。

チタン製の精巧なiPhoneケースを販売するページをJimdoで制作した米山工業だが、1万円のiPhoneケースを8か月で1,000個販売したという。特別にユーザービリティやデザインに優れたWebサイトだというわけではないが、フリーのWeb制作サービスを使って作り、購買につなげているこのケースを示した高畑氏は「本当に良い物であれば、Webは最後の購入のポイントにしかならないのかもしれない」と話す。

業績を上げた米山工業は、現在は独自ドメインのホームページを展開している。Webで施策を行わなくても、良い物としてクチコミで伝播することが示された事例として興味深い。

この米山工業の事例を5W2H(Why、Who、What、When、Where、How、How Much)で分析する高畑氏は、「Why」については単純にiPhoneが好きでケースを作っただけとする。これまでB2Bで金属加工を行っていて、消費者に物を売ったことがない米山工業は、チタン製のiPhoneケースを作ったことで初めてWebサイトを作ったが、逆から考えれば、Webサイトで売るためにはどのような商品を作ればよいかという最適化ができていると高畑氏は言う。

少し強引ではあるが、と高畑氏は前置きしながら、優れた金属加工技術という「What」を「How」でiPhoneケースに切り替えて物を作り、インターネットに詳しい購入者が伝播し合い、人気商品になったと説明する。Webサイトや広告で金属加工をアピールするのも1つの考え方だが、インターネットに合わせて商品を変えて成功した例である。

Web担当者としてインターネットに最適なビジネスを考える

高畑 哲平氏

また、最適化の事例として、高畑氏が関っている宮古島のプロジェクトも紹介された。宮古島は、観光面では石垣島に負けている状況だが、トリップアドバイザーがクチコミコミで選んだ「人気ビーチ トップ10」のうち8つが沖縄県から選ばれ、宮古島のビーチは2つランクインしている。一方の石垣島はランク圏外だが、観光面では勝っている。

宮古島はキレイな海があっても観光業が発展せず、公共事業に経済を頼っている状態だという。そこで創られたプロジェクトが「Re:Charge」。ITやクリエイティブの「新しいはたらきかた」を実現し、IT技術者やクリエーターが幸せを感じながら働き、地域を活性化させていくというものだ。

ITは場所を選ばず、PCと無線LANさえあれば仕事ができ、観光業に比べて環境を破壊することがないため「都市問題と島問題を融合し、非常に最適化された事例」と話す高畑氏は、「会社においてWeb担当者が存在価値を示して業績に貢献したいなら、インターネットの本質を捉えながら会社の事業を最適化することが最も重要」だと説明する。会社の技術を使って、インターネットに最適な商品をWeb担当者が考えることも求められていると考え、会社を変えるようなことをすることも重要な1つの選択肢だ。

もう1つの事例として、高畑氏は石川県能登地方で地域活性活動を行っている知人に「沿岸部の人は地元の魚が一番おいしいと思っているため能登の魚は売れないが、たとえば海無し県の長野では売れる」と言われたことを紹介する。

非常に当たり前の言葉だが、Web担当者は忘れがちではないだろうか。自分の商品をWebにあげるだけでなく、だれが欲しがっているのかということをもっと考えれば何かが起こるはず(高畑氏)

インターネットで長野の人に自然に告知することは難しいため、柔軟に考えてインターネットだけでなく、長野のフリーペーパーで紹介してもらうなどのオフラインの活動をWeb担当者がやってもいいのではないか、というのだ。

最後に高畑氏は、「Webマーケティングとは」という課題の回答を示す。

オンラインやオフラインで何でもできてしまうが、線を引くこともできるはず。線引きをして、横文字などで経営者をごまかすことは簡単だが、その能力を広げて線引きし直し、これまでやってきていない領域を考えてみてもよいと思う。そのほうが絶対に楽しいし、得るものが多い。改めて、電車に乗っている間に周りを見て、インターネットやWebがどの時間にどうやって見られているかを考えるだけでも、大変勉強になるはずだ(高畑氏)

Web担当者として会社の業績により広く貢献するためのポイントを、高畑氏は「Web脳を捨てよう」「ON/OFFの境目なし」「5W2Hの最適化」の3つにまとめて強調し、基調講演を終えた。

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