企業ホームページ運営の心得
価格誤表記でまさかの99%引き、どうする? トラブルを避ける営業マンとしての鉄則

価格誤表記をしてしまった際の顧客対応の心得について、ヒントは営業の鉄則にあります
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の332

浮かれ気分からの急降下

楽天が、他球団が優勝しても便乗セールを行う「何でもあり」であることはよく知られたこと。節操がないというか、機をみるに敏とするかは価値観の仕事です。そして事件は起きます。球団が史上初めて優勝をするか否かというとき、同モールに出店する食料品販売店が、通常売価1万9,800円の商品を95%オフにあたる、

1,000円セール

を打ち出します。いわゆる高級食材の贅沢品。噂はネットを駆け巡り、注文を呼びかけるツイートが拡散されます。ところが、セールが打ち出された翌日の夕方、注文は一斉にキャンセルされました。10,000円と入力するところの「0」を1つ忘れていたことが理由です。「レビュー」は炎上し、クレームで埋め尽くされます。いわゆる「価格誤表記」です。

実は私も経験がある「価格誤表記」。さて、どう対処するか。必読です。

伝説の丸紅事件

価格誤表記の事例として、ネット業界では伝説となっているのが「丸紅ダイレクト事件」。今から10年前の2003年10月31日に起こりました。19万8,000円と表記すべき、NECのデスクトップPC「VALUESTAR F VF500/7D」の価格を、1万9,800円で登録してしまったのです。Twitterのない時代ですが、ネット掲示板を中心に大盛り上がり。約1000人の注文者から1500台の注文があったので、複数台の注文もあったのでしょう。

当初キャンセルを打ち出した丸紅は、ユーザーの反発を受けて誤表示の価格での販売を決定しましたが、その損失は単純計算で2億円以上に上ります。そして翌年の2月29日をもって、同サイトを閉鎖します。丸紅ダイレクトの運営は以前から苦しい状況にあったようですが、価格誤表記が発端となり、サイトが消滅した事例です。

こうした事案は、法的には「錯誤に基づく契約無効」として処理されるものです。錯誤とは勘違いや間違いを含みます。

異常値の判断は難しい

商取引とは互いの信頼の上に立つもので、一方的に不利益な取引は解除できると考えられています。ただし、この一方的と不利益は解釈により、大きく異なります。たとえば、本当に「赤字」だとしても、広告費の一環として開き直った売り出しは日常的で、スーパーマーケットにおける「玉子」の特売が代表例です。1パック100円を切る特売は仕入れ値以下で、売るたびに損する計算です。これは他の商品の購入を期待したマーケティングであり、意図的な赤字で一方的に不利な取引とはいえません。

法的な見解を知るには、一般社団法人ECネットワークの「価格誤表記に関する考え方」が参考になるでしょう。このなかでは「錯誤による契約無効」という項があり、異常な価格についてはこれに当たるという見解があります。

ただし、冒頭の食料品店の「1,000円」は「異常値」ですが、このショッピングモールでは、スーパーマーケットにおける玉子のように「客寄せ」目的での異常な安値は珍しくなく、声高にこれを主張するのは危険です。

99.9%オフでの販売

冒頭の食料品店の例では、お客様理由によるキャンセルを不可としていることも顧客感情を刺激しました。たとえば食肉などの場合、枝肉から切り出してしまうと、長期保存が難しく、キャンセルを許せば廃品ロスが高まるので、客都合によるキャンセル不可は当然の規定です。しかし、錯誤とはいえ、店舗側の都合による一方的なキャンセルが行われたことは不平等だという主張です。

私も価格誤表記をやったことがあります。血の気が引くとはあの瞬間をいうのでしょう。比喩表現ではなく目眩がしました。

まずは初期対応から。「もしハッキングされたとしたら」で紹介したように、プログラムを停止し(メンテナンス中と表記)対策を講じます。そして「損害」を特定します。幸い不具合は数時間のことで、価格誤表記による注文は1件だけでした。本来2,800円の商品が2円と表記され、6個の購入があり12円でのお買い上げ。割引率でいえば99.9%オフでの特売です。

対応策は3つ

対応策は3つありました。まず、注文のキャンセルです。先のECネットワークの説明では、不具合も含む「錯誤」を、お客が認識できたかを争点の1つとしています。このときはプログラムの誤作動で、単価は2円ながら、小計額は正規の価格で計算されていました。最終的な合計額は誤表記価格となっていましたが、錯誤は明らかです。だからといって、高圧的な態度は優しい客すら修羅に変えるので注意が必要です。

次が誤表記のまま販売する、いわば「丸紅方式」です。幸いにして1件の注文だけですから、0円だったとしても最大で1万6,800円の損失。これぐらいで抑えられたとすれば安いものですが、これを「前例」とすれば誤表記狙いの「ハンター」たちへの呼び水になります。

そこで第三の方法、「通常売価でご案内」をとります。

客に投げるという解決方法

まず、メールです。お客様に誤表記のお詫びを告げます。誤表記に至った経緯を簡単に説明し、その価格で販売させていただくことも可能だと告げます。ただし、会社名での注文であることから、あまりに異常な価格での販売は、かえってお客様のご迷惑になるのではないかと、お客の事情をおもんばかります。次に注文のキャンセルに応じる旨も記します。最後に、重ねて迷惑を詫びたうえで、

お客様の一番望む方法で対処します。

とお客に判断を投げてしまったのです。そして通常売価で落着しました。

トラブルは千差万別、ここで紹介した方法が、すべての事例に通じるとは言いません。しかし、販売者側のミスによるトラブルを、販売者側の一方的な決定で推し進めると、お客の感情を刺激するのは確実です。価格誤表記に限らず、営業マンとしての経験則から、こちらの落ち度があきらかなトラブルの場合、選択肢を提示したうえで、お客の決定に委ねるほうが良い結果に落ち着きやすいのです。事実、丸紅ダイレクト事件では、一方的に支払いをキャンセルした初期対応に対し、不満の声が上がります。

私の事例では被害額が少なかったことで、「丸紅方式」も選択肢となりましたが、丸紅ダイレクトはサイト消滅の憂き目となりました。直販サイトが潰れるほどなら「重大な錯誤」にあたると私は考えます。

今回のポイント

選択肢を用意し、決定をお客に委ねる

ただし、サイトが潰れるほどのフォローは不用

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