売上向上のためのCRMデータ活用のコツ

この記事では、「顧客とのコミュニケーションの質を高める」ためのCRMの実践に必要な、正しい顧客データの活用方法について基本を解説する。

売上向上のためのCRMデータ活用のコツ
CV数を最大化する顧客視点の流入経路の評価方法、LTVアップに欠かせない顧客軸の視点/第3回

CV数を増やすためにチェックすべき「顧客軸」視点の指標と、算出するためのデータ活用方法を紹介する

「顧客軸」視点の指標を見ているか

目標だった1000件のCV数を無事達成した。獲得単価や広告費の回収率も問題ない。この調子なら、来月以降も右肩上がりで目標を達成していけるはずだ。

売上向上のためにCV(コンバージョン)数を獲得することは、Webマーケティング担当者にとって最大の関心事であると思う。そのために、効果的な流入経路を見つけようと、CV数、CVR、CPA、ROASなどの指標をチェックされていると思う。しかし、これらの「施策軸」視点の検証だけでは、より多くCV数を獲得できるはずの方法を見逃し、効率の悪いコスト配分の判断をしてしまっている可能性がある。短期的には成果を上げていても、後々の業績に重くのしかかってくることもあるのだ。

獲得した顧客を定着させること(リピーターの獲得)は商売の基本中の基本であるが、前述の指標だけでは、その顧客の定着状況という「顧客軸」の視点が抜けているのだ。

獲得顧客の定着率は次月の獲得CV数に大きく影響する。最も効果的な流入経路を見出すためには、必ず確認しなければならないポイントだ。そこで今回は、CV数を増やすためにチェックすべき「顧客軸」視点の指標と、それを算出するためのデータ活用方法を紹介する。

CV数を最大化する方法として、また前回紹介した正しい顧客管理の活用方法の1つとしても、参考にしてもらいたい。

コンバージョンの内訳から落とし穴に気づく

たとえば、今月の目標である100件のCVを獲得し、CPAやROASの費用対効果も悪くない結果が出ているとしよう。しかし、これだけでは大きな落とし穴があることに気づいていない場合がある。本当にすべてが順調に進んでいるかどうか、その100件について「顧客軸」でもう少し検証すべきだ。当然のことではあるが、「100件のCVには初回客もいれば、2回目客もいる」のだ。

たとえば、同じ100件のCVでも、次のように内訳によって意味合いが大きく異なるが、売上やCV数だけを指標としていては気づきにくい。

  1. 新規顧客:100人 リピーター:0人
  2. 新規顧客:20人 リピーター:80人

そして、この100件の内訳には、前月の獲得客(リピーターの割合)が定着しているかという結果も反映されている。継続的に売上を伸ばしていくためには、獲得した顧客が翌月以降に定着していくかどうかが非常に重要だ。

1回購入して終わりという一見客ばかりで顧客が定着しない店は、いつまでたっても売上が安定せず、顧客獲得コストがかかり続けるという苦しい状況が続く。一方、固定客が定着する店は、安定して売上が見込め、その上に新規顧客を積み増していくことができるため、効率よく売上を伸ばしていくことができる。

たとえ、事業立ち上げの時期で新規顧客の獲得に集中している状況だとしても、リピーターの割合があまりに少なければ要注意だ。マーケティングの世界では、新規顧客への販売コストは既存顧客の5倍という「1:5の法則」があるが、リピーターの割合が少ない状況は、いつまでたっても顧客獲得コストの負担が大きくかかり、CV数を積み増していくことができない負のスパイラルに陥る可能性を示している。

顧客定着のCV数へのインパクト

定着率が売上にどのように影響するか、具体的に考えてみよう。流入経路AとBがあり、同じ広告コストを投資した場合の月間新規獲得(顧客)CV数は、Aは1,000件、Bは800件の実績があるとする。これだけの情報では、より投資対効果の高い流入経路Aを選択することになる。

- 月間新規獲得CV数
流入経路A 1,000件
流入経路B 800件

しかし、各流入経路の正確な獲得効果を検証するには、獲得した顧客が優良顧客となりえるかどうか、リピートCVも含めて見ていく必要があるので、さらに「顧客軸」の視点で、顧客がリピート購入する割合(リピート率)を確認する。実際にはもう少し細かく考える必要があるが、まずはわかりやすいようにシンプルに考えてみよう。

たとえば、購入翌月のリピート率が流入経路Aは3%、流入経路Bは20%だとすると、次のようになる。

- 月間新規獲得CV数 購入翌月のリピート率 購入翌月の獲得CV数
流入経路A 1,000件 3% 30
流入経路B 800件 20% 160

また、毎月一定の新規獲得CV数を獲得し、3か月目以降のリピート率をA、Bともに80%(2回購入以降のリピート率はたいてい高い)とした場合、年間の獲得効果は下図(図1)の通りになる。

ちなみに、これらは仮の数値ではあるが、実際の化粧品や食料品などのネットショップの実績値を参考に設定した。なお、ここでは単純化するため、購入単価は同じとして考える。

図1 流入経路ごとの年間獲得効果をシミュレーションした結果
図1 流入経路ごとの年間獲得効果をシミュレーションした結果

初月CV数はAが1,000件、Bが800件でAが多い。しかし、初月の獲得客がリピート購入していくことになり、翌月以降のCV数にその積み上げが効いてくる。そして、3か月目には単月のCV数で流入経路BがAを上回り、6か月目には累積獲得数でもBが多くなる。1年後には単月で20%、年間累積で10%もBの獲得数が多くなってくるのだ。

つまり、単月の評価では流入経路Aの施策が多くとも、数か月後にはBが逆転することがある。単月のCV数ではなく、「リピート率」という顧客軸の視点でその後の効果を確認していくことで、より効率良くCV数を獲得する方法を見出すことができるのだ。

流入経路でリピート率に差が出るのはなぜか

「リピート率」というのは、既存顧客に対する施策の問題で、獲得経路の問題ではないと思われるかもしれない。しかし、リピート促進策は同じでも、定着しやすい客を獲得できている経路とそうではない経路があり、流入経路によってリピート率には差がある場合が多い。

なぜなら、「顧客との関係構築は、初回接点からはじまっている」からだ。いわゆる一般ワードでの検索と、自社の商品名・社名を特定したブランドワード検索で流入してくる場合や、メルマガ経由と、アフィリエイトで流入してくる場合などのように、流入経路が違えば、顧客のその商品に対する思いは異なり、企業から提供している情報や方法も異なる。つまり、初回接点ごとにさまざまな顧客関係が構築されており、その結果として流入経路がリピート率に差をもたらすのだ(図2)。

図2 初回流入経路ごとの顧客心理のイメージ
図2 初回流入経路ごとの顧客心理のイメージ

人が関係を構築するうえで、第一印象は極めて重要であることは言うまでもない。第一印象が悪ければ、後でそれを覆すのは大変困難だ。顧客との初回接点は、その後の顧客リレーション(関係構築)に大きな影響を与える。「とりあえずキャンペーンで数を集めて、それからゆっくり質を高めていこう」と思っても、「時すでに遅し」という状況なのだ。

たとえ、現状課題が「新規顧客の獲得」だとしても、目先の単月のCV数だけにとらわれ視野が狭くなってはいけない。顧客の定着(リピート率の高さ)は翌月のCV数に直結し、数か月後には大きな差を生み出していく。一見客として終わる顧客ではなく、定着する見込みの高い顧客を獲得できるのはどの顧客接点(流入経路)なのかを正確に把握することは、CV数を持続的に増やしていくうえで極めて重要になる。芽の出ない種を買ってしまい、半年後の実りがないということは、何としても避けなければならない。

顧客定着の状況を示す「リピート率」を算出するには

現状のリピート率はどれくらいですか?

このように聞かれ、その算出方法とともに正確に答えられる人は少ないだろう。「だいたい●●%くらい」と聞いていた数字も、実際に算出してみると異なる数値であることも珍しくない。誤った状況把握は、誤った判断につながってしまうので、正確に把握することが非常に重要だ。

なお、「リピート率」「リピーター率」「リピート売上率」などのさまざまな指標を、目的に応じて使い分けることも重要だ。これらの名称に決まりはないと思うが、顧客のリピート率に関しては、よく使われるいくつかの算出方法がある。それぞれ目的も異なるため、意識して使い分けられるように覚えておこう。

  • リピート率

    流入経路別のリピート率を算出する。そのためには、流入経路が含まれているアクセスログ(広告測定データなど)と購買データを顧客IDでひも付けて管理しておかなければならない(詳細は第1回を参照)。正しいデータ管理をしておけば、下記の通り流入経路別リピート率の算出できる。

    リピーター率(%)=2回以上購入会員数/全会員数×100
    リピート率の算出式

    この算出方法は、特定の顧客(例:ある経路で今月CVした顧客)がどれだけリピート購入したかを確認し、対策が必要な重点ポイントを見出すことなどによく使う。

  • リピーター率

    顧客分析の基本的な手法として「RFM分析(Recency、Frequency、Monetary)」があるが、リピーター率はこのF軸の分析の1つになる。5段階などでランク付けする方法が有名かもしれないが、まずはざっくりとリピーター率を算出することがおすすめだ。

    リピーター率によって、全体顧客に対する一見客の割合もわかる。リピーター率が30%であれば、顧客の70%を初回購入のまま眠らせてしまっているという状況だ。リピート強化や休眠対策の重要性の確認などに使うことができる。

    流入経路Aのkか月後リピート率(%)=n月流入経路A経由CV会員のkか月後までの再購入回数/n月流入経路A経由のCV会員数×100
    リピーター率の算出式
  • リピート売上率

    リピート売上率によって、全体売上に対するリピーターの影響度がわかる。新規獲得と既存維持の予算配分の目安などになる。

    リピート売上率(金額)=リピート会員による売上金額/売上金額×100
    リピート売上率の算出式

    また、RFMのM(monetary)軸での評価もある。業種にもよるが、ECの場合は購買単価のバラつきが小さく、F(購買回数)とM(購買金額)は正比例していることが多いため、F軸の分析だけで十分な場合がほとんどかもしれない。とはいっても、購買金額実績での評価もしておくことに越したことはない。

    ただ、リピート率もRFMランクも実績ベースでの評価になることは理解しておく必要がある。流入経路の効果をより正確に評価するために最も把握すべきことは、これまでの売上実績だけではなく、将来にわたってその顧客がどれだけ購入してくれるのかの予測だ。今後は過去実績だけではなく、「今後どれだけ購入してもらえる顧客なのか」というLTV(顧客生涯価値)を予測することも重要になってくる。

既存顧客への活動だけがCRMではない

今回紹介してきたように、CV数を増やすために、流入経路の評価方法に顧客軸の視点を入れることは有効な方法の1つだ。CRMの強化の第一歩は、初回購入時のアプローチから始まっている。「CRM」や「顧客コミュニケーションの質を高める」ことは、決して既存顧客に対してだけの活動ではない。むしろ顧客との関係がスタートする新規獲得時にこそ必要な考え方であり、それはCV獲得数の大きな差を生み出すことにつながるのだ。

また、Webマーケティングおいて、データを正しく蓄積し、それをどのように活用していくかは重要なテーマである。より良い顧客との出会いを創出し、売上を向上させていくためのデータ活用方法として参考にしていただければ幸いである。

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