企業ホームページ運営の心得

著者の思いをストレートに伝える電子書籍の神髄+お勧め作成ツール

個人で出版する電子書籍は出版社の方針などの制約がないのも特徴です。前回に続き現場のノウハウをお届け
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の315

感動の瞬間

2013年6月12日16時27分メールが届きます。差出人は、アマゾンの「キンドル ダイレクト・パブリッシング(KDP)」。キンドルストアから拙著が出版された旨が告げられます。アマゾンのサイトに陳列されている姿に感動します。お待たせしました電子書籍後編です(前編を読む)。

ある編集者から届いた出版を言祝ぐメールにこうありました。

(電子出版は)著者の思いをストレートに届けることができる。これから出版の裾野が拡がる。

紙ベースの商業出版では、編集者や出版社の思惑により方向性が変えられることがあります。これを否定しません。商業出版は著者と出版社のコラボレート作品だと考えるからです。しかし「電子書籍」に制約はありません。

開発秘話、社長の自慢話……もとい社史などやりたい放題。そして「書籍」のメリットを享受できます。昨今は、企業や個人ブログのコンテンツをもとに書籍化されることは珍しくありませんが、出版社の目に留まるのはほんの一握り。これからは電子書籍の登場で、出版の機会が広がるでしょう。

書籍のメリット

電子書籍を勧める理由を、ニコラス・G・カー著の『ネット・バカ』に見つけます。同書は、ネットの登場で人間の脳の情報処理体系が変化しているという説を、書籍の歴史と照らし合わせて展開していく名著です。

数々のリンクを瞬時に取捨選択しなければならないネットで求められる能力は「散漫な注意力」であり、対する書籍に求められるリテラシーを「深い思考」と区分します。つまり、1つのテーマを掘り下げて伝えるには、ネット媒体よりも書籍の方が向いているということです。もちろん、電子書籍もネット媒体ですが、読者が「書籍」と認識していれば、紙か電子情報かの違いはわずかであることを拙著の校正作業で体感します。

十分な書架がある自宅兼事務所で生活していると、タブレットやモバイルを利用する必然性がありません。しかし、読者の気持ちを知るために、校正を兼ねてキンドルで拙著を読んでみます。

散漫な注意力

昨年末に購入した「Kindle Fire HD(キンドル)」は、電源を入れずに文字を書ける新機能を搭載していました。まずホコリを落とすところから作業がはじまります。

実際に読み進めると、テキストエディタでは見落としていた誤字脱字、表現の違和感に気がつきます。また別の角度からのアプローチが閃くのです。そして修正するためにパソコンに向かいます。すると「散漫な注意力」が首をもたげます。

メーラーをチェックし、ブラウザを開き、つぶやきを拡散し、閃いたアプローチが遠ざかることもしばしば。電子書籍は技術区分ではネット媒体ですが、書籍の原材料が紙とインクから電子になったものだと痛感します。つまり、メルマガやブログ、ホームページといったネット媒体とは違う、客の深い思考へアプローチできるのが「電子書籍」なのです。

さらに「アマゾン」から発刊するメリットもあります。それは「箔付け」です。

アマゾンのブランドを冠する同人誌

各種ネット論壇やニュースサイトに記事が掲載されても、非IT系の一般人への影響力はほとんどありません。こうしたサイトの影響力を一般人は知らないからです。ネットサーフィンの果てに訪問したことはあっても、サイトの名前を覚えていないのです。ところが「アマゾン」は別格です。アマゾンで本を出す、というだけで畏敬の念を抱く人は実在します。アマゾンからの電子書籍発刊は、ささやかながら「ブランディング」となるのです。例えその実態が「同人誌」だとしても。

さて、そんな同人誌、もとい電子書籍は驚くほど簡単に発刊できます。電子書籍のフォーマットはいくつもありますが、アマゾンの「キンドル ダイレクト・パブリッシング」の入稿フォーマットはEPUB形式で、中身は圧縮されたXHTML。これを覚える必要はありません。「一太郎」を使います。

ジャパニーズスタンダード復権

今年の3月に発売された「一太郎2013 玄」ではEPUBはもちろん、キンドルのフォーマット「mobi」で書き出せます。印刷イメージで編集しても動作が軽く、書式の「大見出し」「中見出し」を指定するだけでEPUBの「目次」として出力してくれます。30日間の無料利用ができ、拙著はこの無料期間中に仕上げています。無事発刊後、ライセンスを購入しましたが、短期間で発刊できるということです。

マイクロソフト社の「ワード」のデータは、アマゾンへそのままアップロードできます。ただし現時点では「横書き」で「左綴じ」のみとなっています。拙著は「縦書き」。EPUBデータの内部にあるCSSファイルを書き換える方法もありますが、一太郎なら縦書きで原稿を作成し、EPUBで書き出しするだけなので手間いらずです。

EPUBデータを作ったあとの手続きは、もっと簡単です。アマゾンの専用サイトから書名や著者名、サマリーを入力し、データをアップロードするだけ。公開前に「mobi」のデータとしてダウンロードし、手持ちのタブレット端末で確認することもできます。公開手続きが完了してから、2~3日の「レビュー」という審査を経て、キンドルストアに書籍が並びます。私の場合は、おおよそ6時間ぐらいでアマゾンの店頭にならびました。簡単過ぎます。本稿規定の文字数が余るほど簡単に電子書籍は発刊できたのです。

取り分の多さに目がくらむ

最後に電子書籍発刊を通じて得た現場のノウハウを記しておきます。

電子書籍出版で最も必要となるのが「編集者」です。作品のすべてを知る著者は、文章を自動的に脳内補完してしまい、説明不足に気がつきません。誤字脱字にも同機能が作動します。そこで第三者の協力を仰ぐのです。私は、メルマガの読者に協力いただきました。そしてできればプロの「編集者」の意見も聞きたいところです。

編集者はその道のプロ。銀を金に変える技術をもっています。もし企画を温めているなら出版の前に一言、TwitterやFacebookでプロの編集者に声をかけてみてはいかがでしょうか。原稿を用意してから声をかければ、意外と気軽に応じてくれます。

ちなみに一般的な著者印税は書籍価格の一割前後。アマゾンでは「KDPセレクト」という契約で約70%。1000円の書籍に対して前者は100円で、アマゾンは700円。前者は編集者や出版社のノウハウが加味されたコラボ作品であり単純な比較はできませんが、私は今、タヌキの皮算用に追われています。

今回のポイント

手軽に出版できる時代が到来

第三者的視点の確保がポイント

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