編集長ブログ―安田英久
インバウンドマーケティングはコンセプト。狩猟型マーケからマインドセットを変え、愛されるマーケに

「INBOUND MKTG 2013 TOKYO」で語られた、「インバウンドマーケティング」の本質
「インバウンドマーケティング」はコンセプト。手法やツールではない
オールドエコノミーのマインドセットからニューエコノミーのマインドセットに変えること、それがインバウンドマーケティングで大切なこと
狙ったターゲットを狩りに行く「狩猟型」のマーケティングから、求められる情報を提供することでターゲットに見つけてもらうマーケティングへ
いまやマーケターはデータを見るだけでなく、コンテンツを提供するPublisherにならなければいけない
キーワードは「愛される」マーケティング

そんなメッセージを「インバウンドマーケティング」という切り口で来場者250名に伝えたイベント「INBOUND MKTG 2013 TOKYO」が、2月25日に恵比寿ザ・ガーデンルームで開催されました。

米国ではインバウンドマーケティングに関するイベントに3000名の参加者が集まる状況になっているなか、大規模なインバウンドマーケティング関連のイベントが開催されるのは日本で初めてでしたが、早々に満席となり、当日も250名が参加する熱気あふれるイベントとなりました。

イベント「INBOUND MKTG 2013 TOKYO」で語られた、「インバウンドマーケティングの本質とは? インバウンドマーケティングで大切なこと」を、レポート形式でお届けします。

「インバウンドマーケティング」はシンプルな考え方。
大切なのはマインドセットを変えること

このイベントを主催した株式会社マーケティングエンジンの高広 伯彦 氏は、オープニングでそう語ります。

従来のマーケティングでは、第三者から購入したリードに対して、いきなり営業したりメールしたりしていましたが、そういったマーケティングに対して人々は嫌気がさしてきており、そうしたメッセージをブロックする仕組みが増えています。

そのいっぽうユーザーは必要ならば検索を活用して情報を得に行くのが一般的になっていますし、ソーシャルメディアやブログも普及して利用されています。

顧客がこうした状況にあるいま、「人をひきつけるマーケティングに進まなければいけない」これがインバウンドマーケティングの考え方です。

ではインバウンドマーケティングとはどんなものなのでしょうか。高広氏は「その答はシンプルだ」として次のように説明します。

これまでのマーケティングは、潜在顧客に対して企業からメッセージを発信してリーチしていく「アウトバウンド(外向き)」の行動でした。インバウンドマーケティングではアクションの方向が逆で、顧客が企業を見つけて情報を得に来る「インバウンド(内向き)」になります(インバウンド・アウトバウンドの方向は企業から見た方向)。

インバウンドマーケティングの話題になると、こんな意見が出ることがあります。

SEOもブログもソーシャルもLPOも、以前からやっている。特に新しい話ではない。「インバウンドマーケティング」というのは単なるバズワードだろう。

しかし、そうではないのだと高広氏は言います。インバウンドマーケティングで大切なのはSEOやブログやソーシャルメディアといった個々の手法を使うかどうかではないのです。前述のようにユーザーに自社のことを見つけてもらい、知ってもらうという「考え方」こそが、インバウンドマーケティングの本質なのです。

従来のマーケティングのような「自分たちが狙っているタイプの人が集まっている場所を見つけ、獲物を狩る“狩猟型”」という考え方ではなく、耕して育て獲得する“農耕型”のマインドセットになること、それがインバウンドマーケティングを理解する要点なのであり、SEOやブログは、それを実現するための手段に過ぎません。

そして、農耕型のマーケティングを成功させるのに大切なのは、「Authentic(オーセンティック)であること」だといいます。この言葉を日本語にそのままするのは少し難しいのですが、「嘘偽りない本物であり、信頼できるホンモノ」というイメージです。

インバウンドマーケティングの手法に「コンテンツを増やす」というものがありますが、どんなコンテンツでもいいからただ作ればいいというものではありません。ユーザーの知りたい情報をオーセンティックで価値あるものとして嘘なく作る、それが「inboundy(インバウンディー、インバウンド的)」な進め方なのです。

オールドエコノミーのマインドセット「マーケターや企業の都合でマーケティングを行う」から、ニューエコノミーのマインドセット「受け手の人々の都合に合わせて、求められ愛されるマーケティングをする」への変化。それがインバウンドマーケティングを理解するのに大切な考え方なのです。

イベントでは、高広氏によるこうしたインバウンドマーケティングの解説に続いて、インバウンドマーケティングを実践している人たちの事例、見込み客育成のためのクリエイティブ、人を惹きつけ、愛されるためのマーケティングに必要なクリエイティビティなどのパネルディスカッションが繰り広げられたほか、インバウンドマーケティングに役立つサービスを提供している協賛社によるプレゼンテーションが行われました。

当日のセッション内容と登壇者は次のとおり。

当日のプログラム
  • オープニングノート
    ・高広 伯彦 氏(株式会社マーケティングエンジン)
  • パネルディスカッション1「インバウンドなコンテンツづくり。ブログ、ソーシャル、SEOの活用と課題」
    ・関 信浩 氏(シックス・アパート株式会社)
    ・清水 昌浩 氏(Ginzamarkets株式会社)
    ・栗原 康太 氏(株式会社ガイアックス)
  • ニュースリリースの活用によるインバウンドマーケティング
    ・株式会社ニューズ・ツー・ユー
  • リレーションシップ・ファースト ――顧客と向き合うためのマーケティングとは
    ・レスポンシス合同会社
  • あっち向いてるお客に、こっちを振り向いてもらうためのコミュニケーションデザイン
    ・株式会社ネクスウェイ
  • パネルディスカッション2「見込み客育成のためのクリエイティブ、その手法と課題」
    ・谷井 等 氏(シナジーマーケティング株式会社)
    ・四家 正紀 氏(株式会社ニューズ・ツー・ユー)
    ・鈴木 望 氏(レスポンシス合同会社)
    ・上田 代里子 氏(株式会社ネクスウェイ )
  • 「インバウンドマーケティング+CRM」を実現する、マーケティングナビゲーターSynergy!360
    ・シナジーマーケティング株式会社
  • インバウンドマーケティングを実現するHubSpotユーザー事例
    ・株式会社マーケティングエンジン+Fringe81株式会社
  • パネルディスカッション3「人を惹きつけ、愛されるためのマーケティングとは? そのためにマーケターが身につけるべきクリエイティビティとは?」
    ・水野 学 氏(good design company)
    ・増田 隆幸 氏(株式会社インフォバーン)
    ・河野 武 氏(コミュニケーション・デザイナー)
  • クロージングノート
    ・林 雅之 氏(株式会社マーケティングエンジン)

INBOUND MKTG 2013 TOKYOで語られたインバウンドマーケティングのヒント

有料イベントのためその内容を子細に伝えることはしませんが、イベントで語られた話のなかから、いくつかの気づきとなるポイントを紹介しましょう。

  • B2Bの業界でインバウンドマーケティングを実践している企業では、旧来の営業的なスタイルと比べて「顧客が来てくれる」効果が実際にあり、売上につながっている。(パネルディスカッション1)

  • 信頼できるコンテンツに触れた顧客は、営業がコミュニケーションする時点でこちらを理解して信頼してくれている状態になっている。(清水氏)

  • コンテンツはセールスのためというよりも、その前段階の醸成のため。コンテンツから結果に結びつくまでに半年~1年などの時間がかかる。(パネルディスカッション1)

  • 会社を挙げてブログなどでコンテンツを作り出していくには、ガイドラインの整備、コンテンツ執筆時点では会社に所属していた人が退職したあとでもわかるようにする公式アカウント一覧、スタッフがコンテンツを作成するモチベーションを高める編集会議などの環境が大切。(関氏)

  • 数字を追いかけなければいけない環境の場合は、まずは購買に近いリード獲得を目的にしたコンテンツマーケティングを行い、それで成果を出して社内の理解を得てから、少しずつその前段階のニーズへとコンテンツを広げていくといい。(栗原氏)

  • どんなコンテンツを作るかは、顧客の悩みやニーズをキーワードグループに分けて考えると考えやすい。(清水氏)

  • メールでは「売上÷メール配信数」という指標で見るといい。売上だけだとリストを強引に増やす動きになりがち。(鈴木氏)

  • 課題があることに気づいていない人に対して、課題に気づき、その解決策があることを知ってもらうという醸成にコンテンツは役立つ。(上田氏)

  • メールでもWebでも「クリックされた」データだけでなく、「クリックされなかった」ことを見ていくことで気づくことも多い。こうしたクリックされなかったことなど含めたさまざまなデータを「デジタルボディランゲージ」と呼ぶ。(パネルディスカッション2)

  • データの母数が少ないB2Bでは、セールスへの反応などの定性データと組み合わせて仮説を検証するべき。(上田氏)

  • リードナーチャリングというと難しそうだが、要は「こっちを向いてほしい人」を知り、その人向けの話題を介して興味をもってもらうことが大切。(上田氏)

  • 企業の都合でメールを送るのはアウトバウンド的だが、顧客の都合(行動やタイミング)に応じてメールを送るステップメール的なコミュニケーションはインバウンドマーケティング的。(パネルディスカッション2)

  • マーケティングメールは1通目や2通目は見てもらえるが、そこで自分に合わないと判断されたら、それ以降のメールは開いてもらえなくなる。ユーザーにとって価値ある情報をいかに簡潔に伝えるかが大切。(谷井氏)

  • クリエイティブでは企業が伝えたいことやブランド感を訴求するよりも、ユーザーが見たい・欲しいものを訴求する。いまはその精度を高めていくのが大切な時代。(水野氏)

  • マーケティングに夢中になると差別化を進めたくなるが、ユーザーが本当に求めるもの(ど真ん中)が希薄になってしまわないように注意が必要。(水野氏)

  • 「情報提供は客観的であるべき」という一般的な認識があるが、現実的には主観と客観のバランスが大切。オウンドメディアでは、腹を割って自分の考えていることをさらけ出してユーザーと一緒に考えてもらったり、隙を見せたり弱みを見せたりというという姿勢が適切な場合も。(増田氏)

  • ソーシャルメディアで使う表現で、同じ記号でも「★」と「☆」では受け手が感じるフィーリングが違う。デザインでも同様で、ちょっとした違いで受け手が感じるものは大きく変わる。(河野氏、水野氏)

  • 「自分が書きたいコンテンツ」を作るのではなく、「ユーザーが読みたいもの」を作ったり、場合によっては「自分が読みたいもの」を作って仲間を増やしていく方向で考える。(河野氏)

  • 「ユーザー」というのは姿のない人ではなく、どこかに存在する人。(水野氏)

◇◇◇

このイベント「INBOUND MKTG 2013 TOKYO」は、今回だけでなく、今後も継続して開催されていく模様です。

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