中小企業のための失敗しないWebシステム発注・開発
発注先の情報はリサーチ&ヒアリングシートで効率よく収集、最低10社は比較検討/第2回

効率よく開発会社をリサーチ&ヒアリングするためのテクニックや注意点を解説
宇野健人(ユーザラス) 2013/3/1(金) 8:00 tweet21このエントリーをはてなブックマークに追加 印刷用
中小企業のための失敗しないWebシステム発注・開発プロジェクト成功の可否は“システム開発会社の選定”にある

Webシステム開発の受託側と発注側の両方に長年携わってきた筆者が、本当にあった失敗事例やつまづきやすいポイントを紹介しながら、Webシステム開発の知識や経験が浅い担当者が、自社に最も適したシステム開発会社を見つけ出すための正しい道筋を、全5回に分けて解説する。

開発会社の「できます!」を真に受けてはいけない

開発会社の「できます!」を真に受けてはいけない

専門学校の運営会社「英々グループ」の谷さんは、eラーニング導入プロジェクトのリーダーを任されることになった。ITの知識や経験に自信がない谷さんは、過去に取引があったWeb制作会社YOROZU制作に相談。

営業担当から「できます!」と威勢のいい回答を得た谷さんは、同社に発注することを決めた。

しかし、納期近くになって、YOROZU制作が期日通りに納品できないことが判明。実は同社はこれまでeラーニングの開発実績はなく、オープンソースを使って開発に着手したものの、予定通りにいかなかったのだ。

結局、納期の大幅遅れで最終的に納品されたシステムは、非常に使い勝手の悪いものだった。改修のため、他の開発会社を探したところ、低価格なASPサービスや、教育機関のeラーニング開発で多数の実績がある開発会社のことを初めて知る。もっと初期の段階で話を聞いておけばよかったと悔やむのであった。

※社名や登場人物は架空のものです。
Webシステム開発全体の流れ
第2回は「開発会社のリサーチ・ヒアリング」を解説

前回はシステム開発会社に発注する前に、発注者として最低限押さえておくべき「予算規模」「スケジュール」「成果」などを解説した。Webシステム開発の成功のカギは、発注会社の選定フェーズにあると話したが、どのように選定すればいいのだろうか。

発注経験のない企業の担当者にとって、システム開発会社のリサーチやヒアリングはかなり手間がかかる作業だが、ここで手を抜くとかなりの確率で開発会社選定を失敗する。第2回となる今回は、効率よく開発会社をリサーチ&ヒアリングするためのテクニックや注意すべき点を解説する。

成功のためにリサーチ&ヒアリングは入念に

冒頭の事例のように、新規プロジェクトの発注先を検討する際に、既存の取引先にまず声をかけるケースは少なくない。お互いの社内事情を理解し、担当者も知った仲であれば仕事は進めやすいかもしれないが、大きなリスクも含んでいる。

  1. 複数の開発会社のリサーチを行っていない

    谷さんのように既存の取引先に声をかけ、「できます!」という言葉を鵜呑みにして、他社のリサーチをまったくせずに早々と発注先を決めてしまうのは失敗のリスクが大きい。

    システム開発は、究極的には人手と時間をかければ作れないことはないので、とにかく仕事がほしい開発会社の営業マンは、何にでも「できます!」と答えてしまう場合も少なくない。しかし、それが発注者の満足できるレベルで対応できるかどうか、ライバル企業に勝てる品質になるかどうかはまったくの別問題だ。

  2. 候補の開発会社へのヒアリングが不十分

    システム開発会社というのは、それぞれ「得意な分野」「経験のある業界」「受ける予算の規模」などが各社によってまったく異なっている。各社の特徴は、一般的にオープンになっている情報ではないし、メーカーの製品のように目で見て確認することはできないので、比較検討することがとても難しい。しかし、このプロセスが手薄だと、最終的に正しい会社選定を行うことができない。

  3. 既存取引先への偏重評価

    IT関連の知識や経験に自信がない人は、できれば気心の知れた既存取引先に頼みたいと、内向きになりやすい傾向がある。実際、既存取引先を「うちの会社のことをよく知っているから」「説明が省けて楽だ」というような名目で、安易に選定することもよく見受けられる。しかし、あくまでそれは「自社の事情を理解している」というアドバンテージの1つに過ぎない。

    新たに開発することになるシステムが、これまで既存取引先に任せていたものと異なる領域になるのであれば、一度リセットして、同じ土俵で開発会社を比較検討すべきである。

リサーチ(ロングリストの作成)
最低10社から30社程度をリストアップ

では、具体的にどのような流れで、システム開発会社を探していけばよいのだろうか。リサーチとヒアリングそれぞれのポイントを見ていこう。

まず、広範な情報収集として、さまざまな情報源を使って広く浅くリサーチを行う。実際にコンタクトを取るかは別として、最低でも10社以上、できれば30社程度のロングリストを作るつもりで、ネットで検索したり、社内外の知人から情報収集したりする。展示会やセミナーで担当者に直接会ったり、もちろん既存取引先に声をかけるのも悪くはない。

ネットで効率的に候補企業を探したり、比較したりするには、システム開発会社の検索サイトやIT製品の比較サイトなどが役に立つ。また、多数のITサービス企業が一挙に集まる展示会などがあるので、こういったサービスや機会をうまく活用することで手間がだいぶ省けるだろう。

一例だが、たとえば以下のような情報サイトがある。

開発会社のリサーチに役立つ情報源

  • システム開発会社の検索サイト
    • 発注ナビ

      手前みそではあるが、筆者が運営する「発注ナビ」では、Webシステム、ECサイトなどカテゴリ別に開発会社を検索できる。各社の得意分野、予算規模の記載に加えて、実名の開発実績、顧客のクチコミ、社員などの紹介もあり。

    • さぶみっと!ホームページ制作マッチング

      Web制作案件に特化したビジネスマッチングサイト。会員登録をすると、Web制作会社へ匿名で見積を依頼できる。Web制作やWebマーケティングに関する商品やサービスの検索もできる。

  • IT製品の比較サイト
    • キーマンズネット

      企業向けIT製品のスペックや導入事例を検索し、資料請求ができるIT製品選びの総合情報サイト。IT製品の比較も可能で、最新ITニュースや特集記事など役立つ情報コンテンツも充実。

    • Find-IT

      さまざまなIT製品やサービスを検索し、問い合わせができるビジネスマッチングサービス。基幹系、情報系アプリ、サーバーなどハード機器の検索もできる。

  • ITサービスの展示会
    • リード エグジビション ジャパン

      「Web&モバイルマーケティングEXPO」「スマートフォン&モバイルEXPO」など、ITサービス企業が多数参加する展示会を定期的に開催している。

    • 日経BP社のeXpolink

      日経BP社が主催・共催するイベントの情報ページ。大型イベント「ITpro EXPO」のほか、スマホアプリやソーシャルサービス、クラウド、ビッグデータなど、幅広いテーマの展示会やセミナーを定期的に開催している。

リサーチ先をリストアップするにしても、多くの情報があり何に注目すればいいのか、経験がないと難しいものだ。そこで、偏りがなく幅広い視点で効率よく比較検討をするための参考となる、ロングリスト作成シートを用意したので活用してもらいたい。

ロングリスト作成シート(社名はすべて仮名)
価格:高
(従業員100名以上)
価格:中位
(従業員10名~100名)
価格:低
(従業員10名以下)
スクラッチ開発
  • AAAシステム株式会社
  • Nパートナーズ株式会社
  • クリエイトリサーチ株式会社
  • 佐藤IT設計株式会社
パッケージ製品
  • スターテック株式会社
  • ビジネスラボ株式会社
  • Nパートナーズ株式会社
  • インターボード株式会社
オープンソース
  • ワンスタイル株式会社
  • Web21株式会社
  • リアルワークス株式会社
  • ファンダメンタル株式会社
ASP
  • クロスユーザー株式会社
  • デジタルコンフォート株式会社
コンサルティング
  • UKコンサルティング株式会社
  • グローバルプランニング株式会社

「従業員数」は価格帯を調べるのに便利な指標

前述で紹介したロングリスト作成シートは、縦軸に開発の方法を置き、横軸に価格帯で松竹梅に分けてマトリックスを作っている。ポイントは、価格帯を把握する代用の指標として「従業員数」を置いていることだ(システム開発の価格はオープンにしている会社がほとんどいないため、ロングリスト作成の段階ではわからないことが多い)。

一般的に、システム開発会社への発注価格は従業員数が多ければ多いほど高く、少なければ少ないほど安くなる傾向がある。スケールメリットが効くASPサービスと、個人のスキルやネームバリューに依存しやすいコンサルティングは例外だが、ある程度の手間や工数をかけて開発していくものは、従業員数と価格が比例している

さらに、「従業員数」はネット検索や会社パンフレットなどから簡単に情報を取りやすい。一見平凡だが、意外と便利な指標であり、選定初期のヒントとして使うには役立つのだ。

ヒアリング
候補5社に直接面談、提案依頼は3社以上を目指す

リサーチによって、10社~30社のロングリストが作成できれば、そこから最低5社以上に面談をしてヒアリングを行う。価格帯や開発方法に偏りなく、いろいろな会社をチョイスして話を聞くのがよい。たとえば、ロングリストの「価格中位で、各カテゴリに1社ずつ話を聞いてみよう」というように、基準を決めると動きやすいだろう。

ここでのゴールは、自社の要件に100%マッチする必要はないものの、「ここはゆずれない」というポイントを明確にし、得意分野や強み、具体的な開発実績、予算規模などが適している会社を絞り込むことだ。そして、ここなら間違いないだろうという確信を持てる会社を3社以上を見出し、その3社のなかから、その後のオリエンや提案依頼などのプロセスを経て、最高の1社に絞り込むことになる。

以下の表は、開発会社のヒアリング内容をまとめるヒアリングシートの例だ。左側のピンク色の列が自社の内容で、A社からC社のヒアリングした内容をまとめて比較すると、どこの会社が自社の要件をより多く満たしているかが明確になる。会社パンフレットやホームページなどには載っていない、生の情報を得るため、粘り強く行っていこう。

開発会社ヒアリングシート
開発会社ヒアリングシート、強み領域、実績、費用、体制、業界・業務、企業継続性
リサーチ(ロングリスト)で把握すべき項目、ヒアリングで把握すべき開発会社の仕様・基礎能力、オリエンテーションを経た実際の提案内容
リサーチ、ヒアリングなどで把握すべき情報・基準

リサーチ&ヒアリングは開発成功の肝になる重要プロセス

開発会社の選定スタート、広範なリサーチ・開発会社のリストアップ、社内外の知人、既存取引先、展示会参加、ネット検索など(10~30社)、10社以上をリストアップしたか?、個別のヒアリング・開発会社の絞り込み、得意分野や業界、実績、予算規模を聞いて絞り込み(5~10社)、3社以上に詳細な提案を依頼できるか?、提案依頼書(RFP)作成へ
開発会社のリサーチ&ヒアリングのまとめ

もし、5社以上ヒアリングをして、提案依頼を行う会社が3社まで獲得ができなかったら、その前段階のリサーチが不足していたということになる。もう1つ前のプロセスに戻って、開発会社のリサーチとリストアップを再度行う。

リサーチとヒアリングは時間も労力も多くかかることではあるが、何百万円、何千万円の投資の成功のカギを握る会社選定の肝となるプロセスだ。ここで失敗をしてしまうと、後でリカバリーすることが非常に難しい。手間を惜しまず、自社にフィットしそうな会社を慎重に絞り込んでいこう。


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