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“アクティブサポート”は名前で損をしている。顧客満足度向上に効くその基本とは?/ドコモ・ドットコム主催セミナーレポート

セミナー「実践者が語る、やってみてわかったアクティブサポートの反響と効果」をレポート
河野 武 氏

「アクティブサポート」というと顧客サポートの話だと思われがちだが、アクティブサポートの本質は顧客満足度の向上にあり、既存の「サポート」の枠で考えられる範囲を超え、マーケティング的な側面も含めて企業にとって大きな価値を提供する施策なのではないだろうか。

そんな感想をもったのは、4月20日に開催されたソーシャルメディア活用マーケティングセミナー「実践者が語る、やってみてわかったアクティブサポートの反響と効果」。

アクティブサポートのコンサルティングサービスを提供する株式会社ドコモ・ドットコム主催のセミナーで、書籍『Twitterアクティブサポート入門』の筆者でありアクティブサポートに関して国内第一人者であるsmashmediaの河野武氏と、サイボウズとアスクルの現場でアクティブサポートを担当する実践者が講演した。

その内容をレポート形式でお届けする。

アクティブサポートとは、
「ソーシャルメディアを使って“接客”をバージョンアップ」すること
~40分でわかるアクティブサポート(河野 武 氏)

さまざまな会社でさまざまな立場を経験してきた河野氏が、サポート・マーケ・広報・経営の経験がある立場からみて「大切だ」と思ったのがアクティブサポートだとして、アクティブサポートの基本的な考え方を解説した。

×サイレントマジョリティ ○インビジブルマジョリティ

「サイレントマジョリティ」という言葉がありますが、本当はそんなものは存在しない。実際には「インビジブルマジョリティ」がいるだけ。

まず河野氏は、ブログ・ソーシャルメディア時代の消費者について解説した。

「大半の物言わぬ消費者」を意味する「サイレントマジョリティ」という言葉があるが、実際には企業からその声が見えないだけで、その人は周りの知人には感想や意見を伝えている。だから、「サイレント」なのではなく「インビジブル(透明)」なのだ。そして今、そうした声がブログやソーシャルメディアでインターネット上を流れている。

本当にサイレント(意見や感想を言わない)なのならば、そうした層が抱えている不安や不満に対して企業が積極的にできることはない。しかし、単に企業から見えていないだけならば、それを見えるようにしてアプローチできるようにすればいいのではないか、それがアクティブサポートなのだ。

アクティブサポート=接客のバージョンアップ

河野 武 氏
河野 武 氏

河野氏は、「アクティブサポートとは、ソーシャルメディアを使って“接客”をバージョンアップすること」だという。

従来のサポートは「パッシブ(受け身の)サポート」であり、消費者が企業にコンタクトをとってくるのを待つしかなかった。

しかし、疑問や不安、ときには不満を抱えている消費者をソーシャルメディア上で発見し、そうした人たちに企業自らが能動的に直接語りかければ、問題解決や改善を図ることができる。それがアクティブサポートなのだ。

使い方がわからない」のようなことから、「店舗に行きたいが道がわからない」「店員の対応が悪かった」「届いた商品に問題がある」などの問題まで、ソーシャルメディアを検索すれば、問題を抱えている人を見つけられ、コールセンターに届かないような小さな不満まで把握・解決できるのだ。

また、アクティブサポートで実現できるのは、問題解決だけでない。より顧客と企業の距離を近くして、顧客のロイヤルティを向上させることもできる。

たとえば、「使ってみてよかったよ」と製品に良い評価を表している人を見つけてお礼を言う。満足している声は、コールセンターにはなかなか入ってこない情報なので、アクティブサポートならではの施策だ。

また、何らかの要望の声を拾って「製品開発チームに伝えます」と伝えることで、要望に耳を傾けていることを知ってもらったり、なんとなく「使ってみようかな」とつぶやいた人に有益な情報を提供して一歩前に進んでもらったり、「これ欲しい」という声に「いいですよね、私も自宅で使っていますが、こういう風にいいですよ」と同調したりということもできる。

アクティブサポートとは、単なる「サポートをソーシャルメディア上で積極的に行うこと」ではなく、これまでは行えなかった次元での顧客対応(接客)を、主にソーシャルメディアを活用して行うことなのだ。

そうした観点から考えると、アクティブサポートは企業規模や業種に関係なく実施する価値があるものだと考えられる。

アクティブサポート5つの目的

河野氏は、アクティブサポートを行う理由、逆の観点からいうとアクティブサポートで達成する目的を5つに分けて解説した。次の5点だ。

  • 顧客を理解する
  • 離反する顧客への対策
  • 顧客満足度の向上(クチコミの促進)
  • 広報(風評管理)
  • 「伝わらない問題」の解決

それぞれについて説明していこう。

  • 顧客を理解する

    ソーシャルリスニングで消費者の発言を「ポジティブ」「ネガティブ」に分析するツールもあるが、河野氏は「そのポジ・ネガのレポートを見て、そこから何かアクションできますか?」と問い掛けた。

    たとえばTwitterでは「おもしろい」「つまらない」「わからない」といった漠然としたツイートが多く、その情報だけでは企業は何もアクションできない。しかし、そのツイートに対して「何がおもしろかったのか」「何がわからないのか」を問いかけて聞くことで、具体的なアクションにつなげられる形に顧客の問題を特定できるのだ。

  • 離反する顧客への対策

    問い合わせをするわけでもない「使い方がよくわからない」「この店はこういう問題があるのではないか」といったツイートも見られる。

    何もせずに放っておけば、その顧客は「よくわからない」「何となくいやだ」と感じたまま、物言わずに去っていってしまう。大半の顧客は、「(企業に対しては)何も言わずに(でも周りの知人には言って)去っていく」ものなのだ。そして、その不満の原因が勘違いや誤解であることも多々ある。

    しかし、使い方がわからないのならば、操作方法やわかりやすい説明を提示したり、勘違いや誤解を正したりできれば、そうした顧客が離れていくのを防げるのだ。

  • 顧客満足度の向上(クチコミの促進)

    商品やサービスを気に入っている(満足している)人に対して、企業からお礼を伝えられれば、さらにその人の満足度が高くなり、さらに良い口コミを広げてくれる可能性が高くなる。

    河野氏は、「口コミ促進のための“仕組み”はいろいろあるが、そこに注力しすぎると“ステマ”の方向に行く。そうではなく、目の前にいる当人の“良かった”の思いを高め、まわりに伝えようと思う気持ちの元を高める、そこにフォーカスするのがソーシャルメディアマーケやクチコミマーケの肝であるはず」と、口コミの本質を説く。

    多くの顧客は、ちょっとしたつぶやきに企業が反応するとは思っていないため、サプライズな対応や迅速な対応ができれば、それが感動を生み、満足度を高め、結果としてRTなどのクチコミになるのだ。

  • 広報(風評管理)

    何か問題があったときに、単に対応するだけでなく、そのことがちゃんと伝わるようにすることも、アクティブサポートの力だ。

    たとえば、ソフトウェア製品の利用規約にプライバシーへの配慮が足りないなどの問題があった場合など、今はすぐにそれが話題になり、追求の声が「まとめ」や「ブログ記事」などの形で作られてしまう。

    もちろん、問題があれば企業はそこに対応する。この場合は利用規約を修正することだろう。

    その先がアクティブサポートの出番となる。迅速に利用規約を修正したことを、問題の声を挙げている人たちに積極的に伝えるのだ。そうすることで、当人が矛先を収めるだけでなく、修正を知らずに続いている指摘の声に反論し、まとめ記事やブログ記事を修正してくれることにもつながる。

    実際に現場を担当した経験があり、さらに現在も多くの炎上をウォッチしている河野氏の「ネガティブな情報も、真摯に対応すればポジティブになる」という表現には、説得力が感じられた。

  • 「伝わらない問題」の解決

    少しわかりづらいが、「マーケティングコミュニケーションの足りない部分を補う」効果だととらえるとわかりやすい。

    テレビCMにしても広告にしても、多くの広告・宣伝の目的は「興味関心をもってもらうこと」であり、伝えられることは限られている。価格・購入できる場所・材料・安全性など、多様な情報を消費者にすべて伝えるのは難しいだろう。

    中には能動的にそうしたことを検索してくれる人もいるが、ほとんどの人はそこまではしない。

    しかし、たとえば「この商品、安全性はどうなんだろうね」といったツイートを拾って適切に情報を提供すれば、既存のマーケティングコミュニケーションで伝えきれない点を補足できるのだ。

    そうしたつぶやきをしている人は、すでに興味をもっている人なので、正しく伝えられれば、コンバージョンへの後押しをできる。つまり、マーケティングコミュニケーションの効果を最大化できるのだ。

河野氏は40分のセッションで具体的な例を多数挙げながら、こうしたことをわかりやすく解説した(ここではかなり詳しくレポートしているが、実際にはもっと多くの情報が伝えられていた)。

現場を知り、実践している河野氏ならではの充実したセッションだった。

サイボウズとアスクルによる
「やってみてわかったアクティブサポートの反響と効果」

その後、ドコモ・ドットコムの瀧島氏、サイボウズの野水氏、アスクルの岩崎氏と大石氏が、消費者の現状やアクティブサポートの実践についてそれぞれ解説し、最後に改めて河野氏が登壇した。

この記事ではすべてを詳細にレポートすることはしないが、それぞれのセッションについて要点を紹介しておこう。

マーケティング的視点から観たサイボウズのアクティブサポート大図解!
(サイボウズ株式会社 野水 克也 氏)

サイボウズ株式会社 野水 克也 氏
サイボウズ株式会社 野水 克也 氏

サイボウズでは、社長・副社長をはじめ、社の各スタッフがそれぞれソーシャルメディア上で活動しており、そのフォロワー数の合計は公式アカウントのフォロワー数よりもはるかに多い。

同社ではサポートとマーケの境目を自由に動き回れる「軟式アカウント」を中心にソーシャルメディア上で活動しているのだが、その背景にあるのは、「マニュアルにない例外対応を受けたときや、仕事だけではない愛情を感じたときなど、予想以上のサービスを受けたときに感動が生まれる。そのために、マニュアルを整備して公式アカウントで対応するよりも、個別対応や軟式アカウントでの対応のほうが効果が出る」(野水氏)という考え方。

1日あたり50件~100件の対応をしており、各スタッフは対応前に他のスタッフが対応していないかチェックしてから行動しているのだという。

ソーシャルコミュニケーションには炎上や情報漏洩などのリスクがあるが、上場企業としてのIR系の社員教育をベースとして社員の理解を深めている。

同社がそうしたソーシャルメディア上での活動をするベースにあるのは、「マスではなくソーシャルメディア上での情報流通量がブランドを決める」という考え方だ。

アクティブサポートの実現
(アスクル株式会社 岩崎 淳 氏、大石 いづみ 氏)

アスクル株式会社 岩崎 淳 氏
アスクル株式会社 岩崎 淳 氏
アスクル株式会社 大石 いづみ 氏
アスクル株式会社 大石 いづみ 氏

Twitterアカウントでは、当初はその目的として「販促」を想定していたが、試行錯誤の結果、目的を「アクティブサポート」へと転換。

公式アカウント「@askul_cr」は、「アスクルお問い合わせセンターで働いている女性社員がゆるく対応する」というペルソナを設定し、2名(他業務との兼務)体制で、交代でアカウントを運用。原則として全件に対して1時間以内での返信を行っている。

Twitterアカウント運用は、お問い合わせセンターの対応ガイドラインに沿っているのだが、それだけでなく、「親しみ」をプラス。「問題を解決する」「ファンになってもらう」ことを目的として運用している。

運用上の留意点として定めているのは、次の2点。

  • 常に迅速に対応し、拡散の防止に努めること
  • 不満の投稿を無視しないこと

対応上の留意点としては、次の点を定めている。

  • 対応を望まない人には対応しない(以前の対応履歴から、対応を望んでいるかを判断)
  • お客さまの背景を読む(まじめな対応、やわらかい対応、以前の対応を踏まえた対応)
  • 公開されていることを常に意識する(イレギュラーな対応はDM・電話・メールに切り替える)
  • 担当に権限・裁量を与え、自己判断で行えるようにする(最低限のコンプライアンスは保つ)

スマホ×SNSのトレンドとドコモ・ドットコムが提供するアクティブサポートについて
(株式会社ドコモ・ドットコム 瀧島 一郎 氏)

瀧島 一郎 氏
株式会社ドコモ・ドットコム 瀧島 一郎 氏

アクティブサポートの舞台となるのはソーシャルメディアだが、その利用の伸びと時を同じくして、スマートフォンの普及も伸びている。

2012年3月のドコモ・ドットコムの調査によると、スマホ普及は全国平均で25%。普及の高い東京や滋賀では27%、普及の低い地方でも19%であり、すでにスマホはキャズムを超えている

スマホとソーシャルメディアは親和性があり、その双方の利用の伸びによって世の中はますます「つぶやかれる」状態になり、企業にとって価値のある顧客とのコミュニケーションの場となる。

そうしたことを背景に同社が2011年11月に提供し始めたアクティブサポートのコンサルティングサービスでは、「耳を傾け」「話をする」「支援する」、そしてその情報を分析・フィードバックするサービスを提供しており、全体のプロモーションや、社内の運用やルールや教育などもワンストップで行うことを解説した。

アクティブサポートにコンサルティングが必要な理由
(河野 武 氏:再登壇)

アクティブサポートを開始するのは、さほど難しいことではないのだが、アクティブサポートを適切にちゃんと行うのは、実は簡単なことではない

  • 企業から突然話しかけられることを望まない人もいる
  • 丁寧な話しかけ方をすると、よそよそしく感じられてしまう場合もある

といった相手を理解し、適切に行動しなければいけない状況や、

  • 対象ツイートをしっかりと読まず、ツイートの本題から外れたテンプレート対応をしてしまう
  • 過去のツイート内容や前後のコンテキストを読まずに、なれなれしいツイートをしてしまう
  • 相手の状況にかかわらず、全ツイートがテンプレートのコピペでの謝罪(しかもフォームへの誘導)
  • アクティブサポートはがんばるけれども、メンション(「@」付きで話しかけられること)はスルーしている

などのミスの例を挙げながら、アクティブサポートに必要な資質や、組織としてアクティブサポートを行う際の体制などに関して解説した。

◇◇◇

ドコモ・ドットコムでは、このセミナーの全登壇者のスライドと講演映像を抽選で50名にプレゼントするキャンペーンを実施している。より詳しく知りたい方は、そちらに応募してみるといいだろう。

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