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パーソナルな体験の提供を支えるClient Context機能

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パーソナルな体験の提供を支えるClient Context機能

Adobe CQ5.5で強化された機能の中で最も注目したのが、コンテンツの配信対象を切り替えるための「Client Context(クライアント・コンテキスト)」という機能である。

Client Context機能で女性のペルソナに対して、表示したいコンテンツを確認

これは以前のバージョンで「Clickstream Cloud」と呼ばれていた機能をさらに拡張したもので、サイト訪問者の年代や性別、アクセスしてきた時間帯、過去に閲覧し興味を示したコンテンツ、流入時の検索キーワードや参照元サイト、ブラウザの種類、さらには地域情報など、SiteCatalystで取得したデータを元に、自由にペルソナ(ターゲット訪問者像)を作成できるものだ。

そして、作成したペルソナに対して、表示対象の画像コンテンツを画面上にドラッグ&ドロップしたりテキストを入力したりしながら、表示する最適なページコンテンツを決めていくのだ。この一連の作業でターゲティング設定が完了し、条件に合致したユーザーがアクセスした際には先ほど設定したコンテンツが表示されるようになっているというわけである。

また、Test&Targetを使ったターゲティングも同じように行える。現在進められているAdobe Insightとの連携によって、SiteCatalystで取得したオンライン上でのデータだけでなくオフラインのデータも対象とできるようになるため、サイトを訪問してきた顧客ごとに、よりレリバンシー(関連性)の高いコンテンツを提供できるようになっていくことだろう。

もちろん、Adobe CQを使ったパーソナライゼーションは、PC向けサイトだけでなくマルチデバイス対応しているため、スマートフォンやタブレットなどサイト訪問者の利用しているデバイスに応じて表示を変えられる。Adobe CQの管理画面からContext Cloud上で対象のデバイスを選択すれば、実際の表示イメージを見ながら簡単にコンテンツを設定できるのだ。

スマートフォン向けサイトのパーソナライズコンテンツ設定画面。プレビューでスマホでの表示を確認しながら設定できる

また、Adobe CQはWebページだけでなくメール配信に関してもプレビュー機能を備えており、さまざまなメールフォーマットにも対応している。Digital Marketing Suiteにはメール配信機能が実装されていないため、実際にはResponsysなどのメール配信サービスと組み合わせる必要があるが、このようなサードパーティツールとの連携が行える点も同社の大きな強みといえる。

さまざまなメールフォーマットに対応した作成機能

スマホ向けアプリ作成やコマース対応の強化も

さらに今回のバージョンアップでHTML5ベースのiOS/Androidアプリ作成が可能になった点も大きな特徴である。これは、昨年買収した旧Nitobi社のPhoneGap技術を取り込んだものだ。

PhoneGapはクロスプラットフォーム・モバイルアプリケーションの開発フレームワークであり、HTML5+CSS+JavaScriptのみで各プラットフォームに対応するアプリケーションを実装できる。PhoneGapの持つライブラリを利用することで、OSごとに異なる言語で開発を行う必要もなく、また、カメラ、GPSなどの機能もドラッグ&ドロップで簡単に追加できるようになっている。

iPhone用アプリ(iPhone向けサイトではなく)のタイトルをAdobe CQで変更している画面

この他にも、「Creative Suite」「InDesign Server」「Adobe Scene7」との連携によるデジタルアセット管理(DAM)も強化されており、今後はCreative Cloudとの連携も予定されている(2012年の下半期に提供開始)。また、キャンペーンサイトやマイクロサイト向けの「Adobe CQ Cloud Manager」(ベータ版)やマルチチャネルコマースのソリューションである「hybris」との連携によりコマース機能とWEM機能が統合されたプラットフォーム(ベータ版)も発表された。これらのサービスは今年5月にロンドンで開催されるAdobe Digital Marketing Summit EMEAで正式版が発表され、5月末にリリースされる予定である。

パーソナライズは手段。いかにユーザーを魅了できるかが鍵

ジェネラルセッションで紹介されたデモでは、アクセスしてきたユーザーの住む地域(気温の寒暖)に応じて推奨する商品カテゴリを切り替えるという比較的わかりやすい内容だった。日本でいえば、同じアパレル系のECサイトでも、春先の季節、北海道からのアクセスにはアウターを見せ、沖縄からのアクセスならばシャツを見せるように自動的に切り替わるといった感じだと考えるとわかりやすいだろう。

そうした例はわかりやすいものの、実際には、サイトの種別・ビジネス形態によってレリバンシーの高いタッチポイントとしてのサイトやアプリを実現する難易度は大きく異なってくるはずだ。

たとえば不動産の物件情報サイトで考えてみよう。

賃貸物件を探していたユーザーがその時点では問い合わせなどを行わず後日来訪してきた場合に、あらためて地域や路線などの選択から始めさせる仕様のサイトが多いだろう。しかしそれでは、実店舗になぞらえていえば、同じ店舗なのに行くたびに違う担当者がでてきて、毎回一から希望条件を伝えていくようなものだ。1LDKを探していたユーザーが次には3LDKで調べるといったように短期間で希望条件が変更することは少ないと思われるので、物件の検索条件をユーザー自身が登録していなくても、前回と同様の条件に合致する物件を表示したり、前回訪問時から新しく登録されている物件があれば新着情報として優先的に表示したりするといったように、「情報探索の手間の削減」と「条件に近しい情報の推奨」という要素があってはじめて、レリバンシーがありユーザーにとって魅力のあるサービスになるといえるだろう。

Adobe CQを使えば、そうしたことを実現する作業部分は簡易化されるのは間違いない。しかし、システムを使えば、それだけでパーソナルな体験を提供できる環境が整うわけではない。システムによって得られるものは、あくまでもスタート地点に立つという程度でしかない。

パーソナライズに関して、コクラン氏は次のように言っている。

パーソナライゼーションを手にしたマーケターは、消費者の求めている体験を、必要な時に、必要なタイミングで届けられるようになります。相手に合った体験を提供することによって、より顧客を魅了できるようになるのです。

パーソナライゼーションは目的ではなく、あくまでも手段にすぎない。どうすれば顧客をより魅了できるのか、知恵を絞るのがマーケターの仕事となるのだ。

  • どのようなデータを成功指標とすべきか
  • 必要なデータをどのように測定すればいいのか
  • どのようなペルソナを用意するのが望ましいのか
  • どのようなシナリオが顧客にピッタリくるのか

そして、どのようなコンテンツを提供することが、そのペルソナ、すなわち、ネットの向こう側にいる生きた人間である顧客にとって有益であり、レリバンシーのあるものになるのか。

これらを考える力、そのために顧客を理解する力、そしてパーソナルな体験を提供できる力が、今後の企業のデジタルマーケティング力を測る1つの指標となってくるのだろう。

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