WebサイトのBCPとクラウド型CMS 〜震災や事故でもサイトを動かし続けるために〜

Webマネジメント・センターによる集中管理とBCP対策 | 最終回

Webマネジメント・センターの役割とそのBCP対策について解説
WebサイトのBCPとクラウド型CMS ~震災や事故でもサイトを動かし続けるために~

Webマネジメントのさらなる管理強化のために

大企業を除けば、Webマスターは基本的に一社に1人存在するかどうか、さらに言えば、兼任されている場合がほとんどでしょう。複数のグループ企業によって構成される場合でも、グループ全体を管理するような組織体系を設けている企業は少なく、一社に1人Web担当者が存在していることがまだまだ多いです。これは、一社に1つのコーポレートサイト単位でWeb担当者が配置されるという発想です。配置といっても専業者ではなく、グループ企業の場合はほとんどが他の業務との兼任ではないでしょうか。

また、2010年の調査データ(パワー・インタラクティブ)によると、サイトの更新業務を外注しているのは約3割、つまり残り約7割の企業は社員で管理していることになります。グループ企業といえども、全体比率では社外の人材に任せることはあまりないようです。しかし、そのままで本当に良いでしょうか。

そこで提案したいのが、組織を横断してWeb担当者がサイトを管理していく、Webマネジメント・センターの立ち上げです。

余談になりますが、計算センターなど、●●センターというのは30年以上前から存在していました。人事・経理センターなども存在しましたが、当時はグループ企業内であっても、人事や会計などの管理部門を共有することはグループ内のセクショナリズム的にも進めにく、経営層には抵抗があったものです。

しかし、Web担当者を共有することのリスクはほとんどありません。そもそもWebで公開される内容は、公開情報なので隠しておく必要がありません。また、Webサイトから得られるアクセス解析データなどを共有できるようになれば、顧客満足度やCVRの向上、営業アプローチの効率化など、グループ企業としての強みを生かせるでしょう。

一般的にWebサイトの運用管理にはそれなりのスキルが必要なので、グループで専任部隊を設置し、専念させることにより、個々の企業は本来的な業務(コアコンピタンス)に集中できるはずです。このようにWebマネジメント・センターを立ち上げることにより、会社にとってもWeb担当者にとっても、良い環境を作ることができます。

Webマネジメント・センターの実現へ

Webマネジメント・センターを実現するに当たっては、以下の施策が重要になります。

  1. 複数のサイトを一元管理できるマルチテナント方式のCMSを採用
  2. プライバシーポリシーなどの各種ポリシーの統一
  3. 有事対応などのルール化・HTMLベースでのマニュアルの共有化

それぞれの詳細を説明していきます。

1. 複数のサイトを一元管理できるマルチテナント方式のCMSを採用

グループ企業それぞれのコーポレートサイトを、異なったCMSなどの環境で管理することは管理効率上あまりよくありません。ドキュメント、コンテンツの共有化、サイト間のリンク誘導など、複数のサイトを1枚岩のように連携し管理するためには、1つのCMSで複数のCSSを管理でき、それぞれに管理権限を設定できるマルチテナント方式(複数の企業、ユーザーで利用できる方式)のCMSが効率的です。これはOSS系のCMSや、小規模サイト向けのCMSではほとんど実現されていない機能であり、エンタープライズ系のCMSならではの機能だといえます。

グループ会社のサイトを効率よく管理するには、それぞれに権限を設定し、複数のサイトを一元管理できるマルチテナント方式のCMSが必要

2. プライバシーポリシーなどの各種ポリシーの統一

各社のサイト間をWeb利用者が行き来する場合は、各種ポリシーの統一をする必要があります。なぜなら、サイトを訪れる利用者はどこからどのページがどの会社のポリシーで適用されるかなど、常に見ているわけではないからです。グループ会社の関係を知っているとも限りません。

サイト間を移動するたびに個別のポリシーに対して利用者の確認をとらなければならない場合は、使い勝手は著しく落ちてしまいます。そのため、大きな作業がともないますが、ポリシーは統一することが好ましいでしょう。ただし、同時に情報を管理するWeb担当者に対しても、情報閲覧の権限設定や利用範囲の徹底など、責任を明確にする必要があります。

3. 有事対応などのルール化・HTMLベースでのマニュアルの共有化

これはWebマネジメント・センターにとって必須の機能ではありませんが、管理を集約した後、Webサイトをより生かすための施策になります。グループ各社の統合的マルチテナントWebサイトとして存在するために、有事の際はグループの社員が、モバイル環境や他人のPCを使って情報を共有・閲覧できるように、あらかじめ対応ルールを決め、BCP対策マニュアルなど有事用の社員向け対応コンテンツを準備しておく必要があります。

有事の際は回線事情が悪化するため、Word(doc)やPDFのような容量の大きいコンテンツではなく、シンプルなテキスト形式のコンテンツが良いです。それらの有事用のコンテンツを簡単なIDとパスワードで閲覧できる環境を用意しておくことが大切です。

Webマネジメント・センターのBCP対策

Webマネジメント・センターの基本は一極管理ですが、BCP対策の基本原則の1つにシングルポイントを作らないことがあります(第1回参照)。一極管理を進めれば管理効率は上がりますが、Webマネジメント・センターが停止すれば、Webサイトの管理システムが停止してしまうようでは問題です。そこで重要なのは、Webマネジメント・センターの配置先を複数個所に設置し、それぞれのサイト障害、活動停止時を想定した、組織構築と習慣的な予行練習が必要です。

有事を想定し、対策と予行演習を行うことが重要

BCP対策としてクラウドCMSが有効なことは第3回で述べているため、あえてこの場では説明しませんが、3.11の東日本大震災でも停止した仙台市内データセンターは1か所もありませんでした。これが日本のデータセンターの堅牢性が証明された1つの事象となりました。

一般的な企業の拠点内に設置したWebサーバーよりも、データセンターに預けたWebサーバーの方が、BCP対策としても万全なケースが多いでしょう。しかし、上図のとおりクラウドCMS自体がシングルポイントになっている場合があるため、想定外の事態に備え、クラウドCMSのBCPオプションなどを活用し、クラウドCMSが有事の際に遠隔リカバリできるようにするべきです(たとえば、筆者が所属する鈴与シンワートではこのようなBCPオプションを提供しています)。

企業サイトのBCP対策はこれから

最後に、Webマネジメント・センターおよびクラウドCMSの今後の進化について述べておきます。

これだけ世のなかでインターネットが普及し、活用されているなかでもWebサイトを取り巻く環境は他の情報システムと比べるとまだまだ見劣りしています。基幹業務システムやメールサーバーは企業の業務を直接運営するものであるため、BCP対策も含めて、しっかりとしたシステム環境で運営されつつあります。一方でWebサイトは企業の顔であるにもかかわらず、老朽化したPCで社内の環境に設置されていることも多いようです。

特にグループ企業においては、コーポレートガバナンスの観点からもマルチテナント型CMSをツールとして統合管理と効率的運用を目指しているところも増えてきています。今後はさまざまなクラウドCMSに、遠隔地のバックアップ復旧などBCP対策が盛り込まれてくるのではないでしょうか。

◇◇◇

4回にわたり、BCP対策とクラウドCMSをテーマに連載してきましたが、いかがでしたでしょうか。このコラムを書こうと思ったきっかけは、3月の震災時に、あらゆる情報網が寸断され、とりあえず帰宅するか、その場で待機するしかない状況のなかで、「誰でも閲覧できるWebサイトで情報を発信していたら」と思ったことです。

有事なので、社員に対するメッセージをWebに記載してもよいですし、有事用の書き込みの伝言板もあらかじめ用意しておけば、もっと混乱がなくて済んだように思えます。これだけ活用されているインターネットですが、WebサイトについてはBCP対策がほとんど考えられておらず、次の改善点はそこにあると思います。BCP対策としてコストも安く、手軽であるため、ぜひ実践していただきたいと思います。みなさまのBCP対策に少しでもお役にたてれば幸いです。

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