企業ホームページ運営の心得
ステルスマーケティング、それは古典的手法

「食べログ」に不正投稿がニュースになりましたが、古くからあるマーケティング手法です
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の弐百四十八

知恵袋よ、おまえもか

年始早々、飲食店情報クチコミサイト「食べログ」に不正投稿が行われていたと報じられ、テレビのワイドショー番組では多くの特集が組まれました。組織的にクチコミを投稿し、アクセス数を急増させることで店舗への注目を集めるものです。これらを「裏技」と称して販売している業者があり、実際に行列ができた店舗もあったようです。

続いて「ヤフー知恵袋」へのやらせ投稿を業者に依頼したとレストラン運営会社が告白し、さらに美容外科のクチコミでもやらせが発覚したからさあ大変。クチコミ投稿サイトの運営側からすればたまったものではありません。これがまかり通るとすれば、サイト自体の信頼度が揺らいでしまいます。

しかし、語弊を怖れずに言えば、実に古典的なマーケティング手法です。そして完全に自発的で利益をまったく得ない発言を「クチコミ」とし、思惑に誘導された結果を「やらせ」とするなら、マーケティングの現場において「やらせ」はメジャーな手法です。

今回、一般消費者の視点でお読みいただくと腹が立つこと請け合いです。

古典的な手法

「食べログ」でのいわゆる「不正」とされる手法はネットが普及する以前からあるものです。喫茶店やレストランなど人の集まる場所で、声高に店の(良い)噂を触れ回る「クチコミ」は「昭和時代」からあります。アクセス数の急増は、「サクラ」による「行列」を作ることで通行人の耳目を集める手法と同じで、一時はラーメン屋の開店で多用され、「サクラ」を得意とするコンサルタントやマーケティング会社は、いまでも元気に暗躍しています。

道義的には「やらせ」と非難されることでしょうが、それが「罪」になるかというと立件は困難です。法律の専門家ではないので「現場」で身につけた一般論に過ぎませんが、「良い噂」は営業妨害の類に問うことはできませんし、利点を触れ回る行為のすべてを取り締まるとしたなら「広告」のすべてが対象となりかねません。「嘘」の情報で騙したという点については、法律より上位の存在がグレーゾーンの住民を庇護します。

法より強い存在

「嘘」とは事実に反することです。しかし、「雰囲気が良かった」「美味しかった」、さらには「ウエイトレスが可愛かった」はすべて「主観」による評価です。好みは十人十色で、それを「嘘」と断じることは法をもってしても困難です。それは日本国憲法にある「思想信条の自由」に抵触する可能性があるからです。また「発言をするな」と禁ずるなら「表現の自由」と別の憲法が立ちはだかります。もちろん憲法は法律に優先します。つまり、当該関係者が「嘘」と告白しない限り主観的表現を「嘘」とするのは難しいのです。

続いて「サクラ」も基本的には同じで「並びたいと思う個人の気持ち」をだれが否定できるでしょうか。仮に「行列」が「恒常的」に行われていれば、行列している土地の管理者や周辺住民の訴えで、解消させることはできるかもしれませんが、強制力を強めれば、まともに商売をして繁盛している店に累が及ぶ可能性が出てきます。

あのバーガーショップが

「サクラ」「行列」と聞いて「ピン」ときた読者もいるでしょう。企業批判が目的の本稿ではないので企業名はすべて省略しますが、有名ハンバーガーショップが新製品発売時に行列を作るために、金を払って「サクラ」を雇い、人気の証である「行列」を作ったのではないかという疑惑です。行列に並んだ「アルバイト」は1000人と報じられ、マーケティング会社を通じて人材派遣会社が募った呼びかけには

楽チン! 新商品を並んで買って、食べるだけのお仕事

と謳っていたといいます。

コトが明るみになりバーガーショップは「モニター調査」だったと釈明。「モニター」とは「やらせ」や「サクラ」の温床であることはマーケティング……広告、宣伝の世界の常識です。

属性の違うサンプルの意味

アルバイトを募集した人材派遣会社はマーケティング会社から300人分の有効データをとるために1000人分が必要だったと指示されたといいます。モニター調査の場合、オタクやアンチなどの極端な意見を省くために一定数の「余分」が必要です。しかし、単独店舗の調査で1000人のモニターが入店した場合、その「客でない客の数」が調査結果を歪める可能性が生まれます。

またこの日は祝日で、繁華街のファストフード店はカップルに家族連れ、友人同士のグループ客で賑わいます。バーガーショップの「発表」によれば、当日の来店者は1万5000人で、そこに1000人もの来店属性(動機)が異なる金で雇われたサク……モニターを投入した調査結果に、すこし悲しい響きを持った、懐かしいフレーズが脳裏によみがえります。

サクラでしょうか、いいえ、マーケティング

海外では違法の国も

これらは「舞台裏」からみた日常風景です。これが「ネット」で起こらないわけがありません。そして「やらせ」や「サクラ」を利用し、事実を隠したままに宣伝することを、

ステルスマーケティング

と呼びます。手法については次回に詳しく紹介しますが、欧米諸国では規制され、特に英国では「違法」とされているものが、日本では「グレー」の境界にあり、まだまだ元気に活用されています。

「クチコミ」を信じていた……という消費者にとっては裏切られた気持ちになるかもしれません。しかし、これが現実です。そして今後も、こうした不正な投稿がなくなることはないでしょう。「食べログ」のように、業者が介入している組織的なものは「企業間の話し合い」で解決することが可能で、そちらの面から解決がもっとも手早い方法で、クチコミを信じる利用者の利益保護につながります。しかし、「主観」が絡む以上、個人レベルの「やらせ」を規制するには限界があるのです。

残念ながら日本では「やらせ」の抑止力は「良心」しかありません。その良心の発露として、ネット広告業界を中心に「クチコミ」へのガイドラインを提唱し、WOMマーケティング協議会などが啓発活動を行っています(クチコミは強要されるものではなくあくまで自発的なものであり、金銭や物品の提供などがあった場合には事業者との関係を明示することが推奨されています)。

今回のポイント

やらせとマーケティングとの線引きは良心……か

クチコミの不正利用を100%排除することは不可能

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