Web担当者なら知っておきたいドメイン名&DNSの話
新gTLDの基礎知識――社名もトップレベルドメインにできるようになる? | 第4回

2012年1月に申請受付が開始される「新gTLD」について解説
Web担当者なら知っておきたいドメイン名&DNSの話

上司:これまでドメイン名とDNSについて説明してきたが、もうすぐ(2012年1月)新gTLDの申請受付が開始されるのを知っているかい?

部下:新しいgTLDですか?

上司:ドメイン名に関する国際組織でgTLDを増やす計画が承認されたんだ。技術的・財務的な要件を満たす組織なら、新しいgTLDの創設を申請できるそうだ。うちの会社としてはどう向き合う必要があるんだろうな。

部下:うちの会社名でトップレベルドメインをつくることもできるってことですか?

上司:そうだ。ただ、押さえておくべきポイントがいまひとつわからなくてね。ちょっと調べてみてくれないか。

部下:はい、もちろんです!

知っていると一歩差がつくドメイン名のいろはを、それを支えるDNSの仕組みの解説も交えながらお伝えしている本連載。今回は、2012年1月の申請受付開始を目前に控えた「新gTLD」を取り上げます。

2012年1月に新gTLDの申請受付が始まります。gTLDは、ドメイン名に関する国際組織の「ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)」が最終的な管理責任を担っており、今回の計画もICANNにおいて承認されたものです。新たに創設するgTLDの数に上限を設けず、技術的・財務的な要件を満たす組織であれば申請可能になったことで、国内においても大手企業などで申請検討が進められているようです。

とはいえ、

初耳だけど、何か検討しないといけないのか

という方もまだまだ多いのではないでしょうか。そんな方のために、新gTLDについて押さえておくべきポイントを紹介していきます。

gTLDのおさらい

新gTLDの話に入る前に、gTLD(generic Top Level Domain:分野別トップレベルドメイン)についておさらいしておきましょう。gTLDとは、「.com」や「.net」をはじめとする「特定の国や地域によらないトップレベルドメイン」であり、2011年12月現在で運用開始準備中のものを含めて「22種類存在する」ことは本連載の第1回でお伝えした通りです。

gTLDはさらに「スポンサー付き」と「スポンサーなし」の2種類に区分でき、スポンサー付きのgTLDを用いたドメイン名の登録は特定の業界や分野の関係者に制限されます。具体的には博物館用の「.museum」や旅行関連業界用の「.travel」などがスポンサー付きに該当し、特段の登録制限のない「.com」や「.net」がスポンサーなしに該当します。

実は、gTLDを増やすこと自体は今回が初めてではありません。gTLDを増やすことは、gTLDの最終的な管理責任を担うICANNのミッションの1つでもあることから、これまでに2回にわたって追加創設がなされてきました。

gTLD創設の歴史
黒はスポンサーなし、赤はスポンサー付きのgTLD。2003年の申請受付タイミングでの追加創設はスポンサー付きに限られた
http://www.icann.org/en/registries/listing.html

ただし、過去2回の追加創設は審査基準や手順を作り出すための試験的な意味合いもあり、創設するgTLDの数やスポンサー有無に関する制限が設けられていました。一方、3回目に当たる今回はこれらの制限がなく、初めて幅広い対象にとって申請・創設の機会が設けられることになります。

新gTLDとは

gTLDの創設に向けては過去の2回と同様、登録管理事業者(レジストリ)として創設を希望するgTLDを受付期間内にICANNへ申請し、所定の審査をクリアする必要があります。なお、今回の受付期間は「2012年1月12日から同年4月12日」となっており、審査をクリアした新gTLDが世の中で用いられるようになるのは2013年頃になる見込みです。

現時点(2011年12月12日)では、次回以降の申請受付タイミングがどのように設けられるかは明示されていませんが、ICANNは先日都内で行った新gTLD周知イベントの場で、申請受付タイミングは今回に限らないので十分な時間をかけて必要性を検討してほしいと呼びかけを行っています。

「gTLDの創設」と「ドメイン名の登録」はどう違う?
gTLDにおけるドメイン名登録の流れ

「gTLDの創設」=レジストリに

gTLDを創設するということは、そのトップレベルドメインの登録管理事業者である「レジストリ」になるということです。gTLDの場合、レジストリは大きく以下の役割を担います。

  1. 登録されたドメイン名のデータベースを一元的に管理する
  2. それらのドメイン名がインターネット上でアクセスできるよう、トップレベルドメインのDNSサーバー(詳細は第3回を参照)を運用する

「ドメイン名の登録」=ユーザーとして利用

ドメイン名の登録は、レジストリが登録管理を行うトップレベルドメインをいちユーザーとして利用する形になり、gTLDの場合、ドメイン名の登録はレジストリに直接申請するのではなく、ICANNの認定を受けた事業者「ICANN認定レジストラ」に対して申請します(ICANN認定レジストラ)。

たとえば、自社名のgTLDを創設し、そのgTLDを用いたドメイン名で自社のWebサイトを展開するという場合、その会社は創設したgTLDの「レジストリ」であり「ユーザー」でもあることになります。

※上記はgTLDの場合であり、ccTLDの登録サービスの形態はレジストリごとに異なります。

企業の申請目的として考えられるもの

新gTLDの申請を行う企業としては、大きく「ブランディングへの寄与を目的とする企業」と「ドメイン名サービスの提供を目的とする企業」の2つが考えられます。

  1. ブランディングへの寄与

    1つ目のブランディングへの寄与は、「自社名のgTLDの創設を申請するケース」などが該当します。英数字のみ(ASCII文字)であれば3文字以上、日本語などそれ以外の言語を含める場合は2文字以上で構成される文字列が新gTLDとして申請可能であり、これを満たせば自社名やブランド名でも問題ありません。本サイト「Web担当者Forum」を例に取れば、「.webtan」や「.web担」という文字列での申請が考えられます。

    グローバルレベルも含め、自社が運営するWebサイトや社員用メールアドレスのドメイン名すべてを自社固有のgTLDで展開できるようになることから、コーポレート・コミュニケーションなどにも役立つと見られています。

  2. ドメイン名サービスの提供

    2つ目のドメイン名サービスの提供については、自社利用に留めず「有料サービスとして一般からの登録獲得を目指し、gTLDの創設を申請するケース」などが該当します。

    こちらは、「.music」や「.love」のような文字列での申請が考えられます。「.com」や「.net」のような幅広い支持を集めるgTLDを世の中に提案することができれば、提供者側にとってはビジネスチャンスとなりますし、ドメイン名活用意向を持つ一般ユーザーにとっても魅力的な選択肢が増えることになると見られています。

申請のハードル

冒頭で「技術的・財務的な要件を満たす組織であれば申請可能」と記しましたが、そのハードルは必ずしも低いとは言えないのが実際です。

申請にまつわる要項は、ICANNが公開する『New gTLD Applicant Guidebook』にまとめられており、申請を希望する企業は352ページ(2011年9月21日最新版)に上るこの英文ドキュメントをまず読み込むことになります。同ドキュメントの中からいくつか留意が必要な事項を以下にピックアップします。

  1. 申請費用として185,000米ドルが必要
    ※1米ドル78円と仮定して、およそ1,450万円
  2. 運用開始後は年間25,000米ドル+αが必要
    ※1米ドル78円と仮定して、およそ200万円
  3. 申請書においては50に上る項目の記載が必要

1~2はICANNに対して支払うことになる費用に該当し、申請・運用にまつわる人的コストやシステムコストは含みませんが、レジストリとして登録管理を行うトップレベルドメインのDNSサーバーの運用や、登録されたドメイン名のデータベース管理についても考える必要があります。また、2に記した「+α」はドメイン名の新規登録や更新の数によって追加支払いが必要になるとされているものです。3については技術や運用に関する項目の他、コストや資金調達などの財務に関する項目も含まれます。

押さえておくべきポイント

金額・手続きだけ見ると、多くの企業にとって気軽に申請判断できるとは言いづらく、これらの費用・コストをブランディングへの寄与度(価値換算)や見込まれる収入と比較するなどの十分な検討が必要になるでしょう。

なお、「申請しない」と判断した場合も引き続き注意は必要です。「自社名やブランド名のgTLDが第三者に申請されるケース」や「他社が有料サービスとして登録受付を開始した新gTLDで、自社名やブランド名のドメイン名が第三者に登録されるケース」があり得るためです。

前者については、ICANNが定めるプロセス及び期間に則って異議申し立てを行う必要があります。また、後者については権利保護の目的ですべての新gTLDレジストリに提供が義務付けられている、「Trademark Claims service(商標クレームサービス)」などを利用して防衛を図ることになります。あらかじめ自社の商標を「Trademark Clearinghouse」という商標データベースに登録しておけば、同サービスを利用することで、第三者によってその商標を侵害するドメイン名登録がなされようとしている際に通知を受けることができます。

このように、自社以外の新gTLD創設の動きを注視していく必要があることも忘れずに意識しておきましょう。

おさらいクイズ!

最後に、今回の記事のポイントをクイズでおさらいしておきましょう。

問題

Q 以下の一文の(1)と(2)に当てはまる組み合わせとして正しいのは、次のA・B・Cのうちどれでしょう。

1ドル78円で換算した場合、新gTLDの申請費用として約(1)円、運用開始後も年間約(2)円+αの支払いがICANNに対して必要になる。
  1. (1)=100万、(2)=50万
  2. (1)=1,000万、(2)=100万
  3. (1)=1,450万、(2)=200万

クイズの答え

正解は「C」です。

ICANNが公開する『New gTLD Applicant Guidebook』(2011年9月21日最新版)によれば、新gTLDを申請するための申請費用として185,000米ドル、運用開始後も年間25,000米ドル+αの支払いがICANNに対して必要になります。実際には、申請・運用にまつわる人的コストやシステムコストがこれに加わることになります。

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