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HCD-Net通信
「人間中心設計(HCD)」を効果的に導入できるよう、公の立場で研究や人材育成などの社会活動を行っていくNPO団体「人間中心設計推進機構(HCD-Net)」から、HCDやHCD-Netに関連する話題をお送りしていきます。

HCD-Net通信
人間中心設計(HCD)はプロセスであり手段ではない(コンセント長谷川氏インタビュー)/HCD-Net通信 #25

Webサイトに人間中心設計を導入すると、どのような効果があるのでしょうか。
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Webサイトに「人間中心設計」を導入すると、どのような効果があるのでしょうか?
どんな人が人間中心設計を身につけるといいのでしょうか?

人間中心設計」とは、Webサイトを訪れるユーザーに注目し、ユーザーの体験を軸に、Webサイトを設計・改善するプロセスです。

2011年は、人間中心設計(HCD)に対する意識が高まり、大手のWebサイト制作会社のなかでも何社かが人間中心設計の導入を始めた年でした。

そしてHCD-Netには、そうした人間中心設計を行っている人を認定する「人間中心設計専門家」資格認定の制度があり、第3期となる今年の専門家の受験応募の受付を12月20日(火)に開始しました。

そこで今回は、いつものHCD-Net通信とは方向を変えて、こうした人間中心設計を導入することの効果についてのインタビューをお届けします。

話を伺ったのは、株式会社コンセント代表/インフォメーションアーキテクトの長谷川 敦士氏(HCD-Net理事)。コンセントは、企業のコミュニケーション設計や、サービス設計・商品開発支援までを手がけるコミュニケーションデザイン会社。3名のHCD-Net認定 人間中心設計専門家が在籍しており、Web業界でも人間中心設計を推進しています。

人間中心設計は、全体を見渡すプロセス

● 「人間中心設計」という言葉は、まだまだ一般には浸透していないのが現状です。その考え方を、かんたんに紹介してください。

長谷川 敦士 氏
株式会社コンセント 代表
/インフォメーションアーキテクト

ユーザーをきちんと知るところから始めて、それに対する問題解決としてデザインを行い、評価して、さらに改善する。そういったことを、プロセスとして回していくことです。

ユーザー観察、ユーザーのモデルづくり、デザイン、評価など、ひとつひとつの手法はすでに多くの方が実践していて、それぞれに関する情報も世の中に広がってきています。そうした個別の要素を上手くつなぐプロセスが人間中心設計なのです。

人間中心設計は“プロセス”だという点が重要です。個別の施策ではなく、企業がユーザーを中心にしてモノを改善していく“プロセス”を導入するのです。人間中心のプロセスができてしまえば、たいていの人はうまくやってくれると思っています。

「より良いユーザー体験を与える」「ユーザビリティを上げる」といったことを実現するためには、最終的なデザインやモノを作るところだけに努力を費やしても、うまくいかないことが多いものです。そうではなく、最終的なモノに至るまでのプロセスを追求していくことでユーザー体験やユーザビリティを改善でき、そして、そのプロセスを継続的に回す活動が、結果的に企業の価値、資産になっていくのだと考えています。

● 「個別の要素をどうつなぐか」という点を、もう少し詳しく教えてください。

たとえば、「SEO」や「ソーシャルメディア活用」。Webを使ったコミュニケーションやマーケティングの観点では重要なことです。しかし、SEOやソーシャルメディア活用は、あくまでも手段に過ぎません。それらがどうして必要なのか、何を達成するためにそれらを行うのかを考えなければいけないのです。もちろん、全体を見渡したうえで必要なのであれば、きちんとやるべきです。しかし、部分を主体としてものを考えると、おかしくなってきます。

Webサイトの活動全体を見通せるものとして、人間中心設計があるのです

どんな企業でも使える予算は有限ですし、Web担当者の時間はもっと限られています。となると、そうした制限の厳しいリソースを、Webサイトのどの部分にどう配分するかを考える必要があります。その際に、まず活動全体を見渡せるプロセスがないと、そもそも良くしていけないのです。

コンセントでは、人間中心設計をデザインアプローチの土台に置いています。Webのデザインに限らず、紙のデザインや製品デザイン、サービス設計など、さまざまな案件がありますが、どんな仕事でも、人間中心設計の考え方を導入しているのです。そうすることでビジネスの効果も良くなりますし、ユーザーに良い経験を与えることにも寄与していると考えています。

ユーザーの思考の流れに即してWebサイトをつくる

● 企業Webサイトにおいて、人間中心設計はどのように役に立つのでしょうか。

Webサイトといっても、サービスサイトなのかコーポレートサイトなのかによって、人間中心設計の適用の仕方も変わってきます。

サービスサイトを運営しているならば、「自社サービスのユーザーに、どういった価値を提供するか」を考えていると思います。人間中心設計は、マーケティングのプロセスと言い換えてもいいくらい普遍的なプロセスです。いわゆる効果改善のPDCAサイクル自体が、人間中心設計のプロセスとほとんど同じになっています。

たとえば、ある新しいサービスコンセプトが決まったとします。それを単純な形でWebサイトの中に組み込んでデザインするのではなくて、一度、ユーザーを考えて、ユーザーを観察して、ユーザーを正しく理解して、ユーザーの思考の流れに即して、新しい機能をどう見せていくか想定します。それによって、実際作られるサイトの効果も上がります。

● コーポレートサイトの場合はどうでしょうか。

コーポレートサイトはそこまでゴールの設定が厳密でないケースも多いと思います。とはいえ、たとえばユーザビリティを改善したいと思っている企業は多いでしょう。コーポレートサイトのユーザビリティ改善を考えたとき、大規模にリニューアルをしようとすることも多いかと思います。しかし、人間中心設計のプロセスで進めると、ユーザビリティ改善を要素分解して進めることになります。今、どういうところがユーザーに不利益を与えているのか、どこを改善すれば良くなるのか、そのためにはどうしたら良いか。そのなかで、ユーザーにとって意義のある改善を優先して進めるのです。

サイトを作り直す「アクション」だけを見ると、だれかが何かを判断して、だれかが実際にそれをサイトに反映させる行為がありますよね。人間中心設計を導入するということは、そういう具体的な行為をどういうプロセスの中に位置づけるかの問題なのです。つまり、Webのプロジェクトマネジメントです。こういった思想が、人間中心設計に含まれているのです。

コンセントのプロジェクトマネジメントには、すべて人間中心設計のコンセプトが入っているものにしたかった

● 長谷川さんは肩書きとして「HCD-Net認定 人間中心設計専門家」を名乗っていますね。

名刺に「人間中心設計専門家」と印刷されている

実務の中では、どうしてもビジネス中心のデザインだったり、デザイナー中心のデザインだったり、あるいは技術中心のデザインだったりになりがちなものを、いかにユーザーを主眼に考えるか、というアプローチを実践できる専門家だと自認しています。

名刺の肩書きにもそのように入れているのですが、それによって、これまでは人間中心設計という文脈にいなかった人にも興味を持ってもらうきっかけとなり、「プロジェクト推進やビジネスに活かせるデザインプロセス」であると説明することもあります。

● コンセントには、長谷川さんのほかにもHCD-Net認定 人間中心設計専門家が在籍しているということですが、どんな仕事をしている人なのでしょうか。

僕を含めて3人、認定を受けている者がいます。その中のひとりは、プロジェクトマネジメントをする人間です。ユーザビリティエンジニアとかIAとかUXデザイナーとかそういうポジションではなく、いろいろなプロジェクトのマネジメントをする立場の人間なんです。

プロジェクトは、マーケティングもあれば、広告宣伝もあれば、企業内のガバナンスの改善もあります。そういうプロジェクトに参加する、直接にはデザイン業務に関わっていないような人にこそ、人間中心設計を理解して、プロジェクト設計をやってもらいたいと思っています。

● プロジェクトマネージャーの方が人間中心“設計”の認定資格をもっているというのは興味深いですね。

HCD-Netの人間中心設計専門家の認定では、マネジメントの能力をすごく重視しています。専門知識だけではなくて、その専門知識を実際のプロジェクトにどう活かしたかを重視しているのです。個別の専門知識はもちろん大切ですけれども、企業にとってより重要なのは、個別の専門知識ではなくて、それらを統合して、どうプロジェクト化するかなのです。

先ほどふれた彼は、現在はプロジェクトマネージャーをしていますが、その前にはユーザビリティテストやデザインを経験してもらっていました。

人間中心設計専門家の資格が向いているのは、彼のような「経験として専門性を積み上げてきて、今、プロジェクトマネジメントを実際の業務として行っている人」ですね。

● ユーザーを中心に考える人間がマネジメントすると、プロジェクトがもっとうまくまわる?

そうです。彼はプロジェクトマネジメントチームのリーダーです。その人間が人間中心設計をきちんと理解している。コンセントで行うプロジェクトマネジメントには、すべて人間中心設計のコンセプトが入っているものにしたかったんです。プロジェクトのクオリティもより向上するし、リスク回避にも役立つし、個別のスキルもより有効活用できるようになるのです。もちろん、クライアント企業さまへの提案にも人間中心設計のコンセプトが入っています。

● 人間中心設計というと、モノを改善する能力に注目が行きがちに思うのですが、プロジェクトマネジメントにも大きな効果があるのですね。

人間中心設計専門家は、個別のユーザビリティテストとか、そういうものに携わる方も多いと思います。しかし、最も力を発揮するのは、プロジェクト設計をする立場になったときだと思います。

個別の専門知識を持った人をいかに活かすか、それがプロジェクト設計です。プロジェクト設計がまずいと、いかに専門知識を持った人がいたとしても活かせないんですね。さきほども「手段」の話をしましたし、「手段と目的を取り違えるな」という言葉はよく聞きますよね。専門知識自体はあくまで手段であって、ビジネスにおいては、どのプロセスをとるか、の方が重要度が高いのです。

適切なプロセスさえあれば、個別の専門知識を持った人は、そのプロセスの中でベストを尽くす、という流れにもっていけます。プロセス自体が、あるいはプロジェクト設計自体がナンセンスだと、結局、プロジェクトメンバーの頑張りで何とか解決する、という状況になってしまいます。

あくまでも人間中心設計はプロセスです。実際のプロジェクトでは、予算やその他リソースの都合といった制約があります。そうした制約のなかで、人間中心設計の考え方に基づいて、プロジェクト自体を適切な方向に導いていくことになります。

たとえば「ペルソナ」はそれ自体は非常に良い手法なのですが、通常の企業サイトでフルスペックのペルソナを作るのは“やり過ぎ”のことが多いんですね。きちんとリサーチしたペルソナを本格的に作るのにはかなりの工数がかかってしまうものです。だとすると、そのリソースを他の作業に回すほうが良いケースも多くある。もともとマーケットを正確に定義できないんだったら、そこに時間をかけないで、仮説で進めて、プロトタイピングをさっさと行って、検証して、仮説を直していく、という風にペルソナを使った方がいい場合も多いのです。

そういった点でも、プロジェクトマネージャーにこそ人間中心設計専門家が必要だと思うんですね。

ユーザビリティやユーザエクスペリエンスの専門家でなくても、「このプロジェクトは何かおかしい」「この進め方は少しおかしい」と思うことがある人は、人間中心設計のプロセスに興味をもってみると良いのではないでしょうか。

取材・文・撮影:人間中心設計推進機構(HCD-Net) 専門資格認定委員会 羽山 祥樹
協力:株式会社コンセント

人間中心設計専門家の受験応募が12月20日(火)より開始

人間中心設計推進機構(HCD-Net)は人間中心設計専門家の認定を行っています。今年の受験応募が12月20日(火)より開始しています。

人間中心設計(HCD)やユーザー調査、IAなど、ユーザーエクスペリエンスに関わる業務に携わっている方は、ぜひ受験ください。

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