企業ホームページ運営の心得

Facebookの苦戦と世界に誇るべき和製SNS

Facebookが日本市場をのみ込む日は来るのか、ミヤワキ流の角度で迫ります
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の弐百弐十八

正直な日経新聞

7月31日の日経新聞一面に「フェイスブック『開国』迫る 7億5000万人の『世界世論』」と大きな記事が掲載されました。フェイスブックの「スマホ参入か?」という噂を皮切りに、世界中に広がっていく過程を描写し、いまやグーグルを脅かす存在となったと紹介します。そして日本では「和製SNS」の「mixi」が普及の壁になっていることに触れ、「だが」と転じて「就活に有利」という「噂」をもとに優位であるかのように話を結びます。

噂ではじめ噂で結べるなら、どんな「世論」を構築することも可能です。「これだから日本のマスコミは」と非難するのではありません。都合の良い事実の断片をつなぎ合わせて、噂や予想でコーティングするのは文章表現の1つで、コンテンツでも使えます。好意的に解釈すれば「近未来への道標」ということです。

はてさて、日経新聞が示すように、フェイスブックが日本市場をのみ込む近未来は訪れるのか。これより、新聞風に書いていた「フェイスブック」をWeb風に「Facebook」としミヤワキ流の角度から実相に迫ります。

舌の根も乾かぬうちに

Web業界はTwitterの不発(「世界が変わる」ほどの旨味がなかったこと)を忘れ、Facebookの盛り上げに必死ですが、同じ朝刊の7面にはこんな記事があります。

東アジア 地場SNSが健闘する フェイスブックに対抗

日本ではmixi、韓国では「サイワールド」、中国では「QQ」や「人人網」など、地場SNSの普及率がFacebookを上回ることが紹介され、ロシアやベトナムも加えた「Facebookが苦戦している地域」の世界地図が掲載されています。一面であおり、7面で軌道修正。これはスマホの出荷台数が携帯市場の半分を超えたとあおりながら、商品面でDRAMの下落の理由としてスマホやタブレット端末の不調を語るのと同じ、日経新聞の得意技です。どちらに転がってもよい「記事のリスクヘッジ」といったところでしょうか。さすが経済新聞です。

ツイッターはどこに行った

7面の記事では日本国内でFacebookは苦戦している理由の1つを、日本のWeb世界の「匿名性」とします。実名のFacebookより匿名のmixiが好まれるというものです。正しい指摘ですが、もう少し考察を深めてみましょう。

Twitterがブームになり始めたころ、やはり同様の議論がありました。そして「世界を変える」や「革命」といった大仰な言葉が接続された書籍が多数刊行され、どれも実名によって「つながる」メリットが強調されました。Twitterでの実名礼賛と、mixiのそれは寸分違わず、いまFacebookへと受け継がれています。

私が当時からTwitterを「dis」って(冷静にブームだと指摘しただけですが)いたのは、mixiでいつかみた光景だったからです。かつてmixiも実名登録が喧伝されましたが、いま、mixiで実名をどれだけ見るでしょうか。同じくTwitterも、サブアカ、裏アカ(サブアカウント、裏アカウントの略)を広言しているユーザーは珍しくありません。そもそもmixiの実名性が喧伝された当時から「偽名アカウント」は横行していたのです。

仮名社会日本

どうして日本人は「匿名」を好むのでしょうか。それは日本には「匿名」、いや「仮名」を使い分ける文化があるからです。

会社では係長、家庭ではパパ、大学時代の友人はファーストネーム、さらに竹馬の友からはへんちくりんなあだ名でいまも呼ばれるなど、いくつもの「仮名」をもつ日本人は多いことでしょう。また、自分を表す言葉も「僕、俺、自分、パパ、わたし」とTPOで使い分けます。つまり、自分の所属する属性により自然と「仮名」を使い分けているのです。

しかし、Facebookでは実名1つしか使えません。つまり、多元的な人格とコミュニティをナチュラルに行き来できる日本人にとって、1つのキャラクタ(あるいは世界観)しか持てないFacebookは窮屈すぎるのです。

本当の活用術

昨年指摘したようにFacebookは海外向けチャネルとして有効です。そして国内においても、特定の層には有用なネットツールです。ヒントは冒頭に紹介した日経新聞にあります。

「有名大学(在学または出身)、ホワイトカラー」

今年一月以降にFacebookを使い始めた人の属性で、米国で普及した素地が日本にもできつつあると語ります。わたしの街角リサーチと重なります。Facebookに登録している知人の9割が大卒です。有名大学ばかりではありませんが、こうした層をターゲットにしたビジネスならFacebookがはまることでしょう。具体的にはセミナーや、コンサルティング、あるいは自己啓発などです。また、比較的知的水準が高い(だろう)ことから、著者や編集者にとって未来の読者を開拓できる可能性もあります。

ただし、登録はしても「非IT系」の知人は、登録後、2~3か月で休眠状態となっており、ホワイトカラー(ネット在住者)と加えるのがいいでしょう。

開国から輸出へ

最近、Facebookをやめた知人(大卒)から興味深い話を聞きました。システム上、友人の友人が公開されることへの懸念から、アカウントを停止したというのです。友達の友達はみな友達ではなく、自分とのつながりがばれることによって、「友人」に与える不利益を想像してのことです。

実害があったわけではありませんが、こうした「気遣い」もまた日本人らしさです。たとえば、私の友人が楽天市場に務めていたとすれば、彼とのつながりを「友人」として公開することに、『楽天市場がなくなる日』という本の著者として、私の方がためらうことでしょう。日本での本格的な普及をFacebookが狙っているのなら、こうした「日本人的」な性格へのローカライズが普及の鍵ですが、同記事にはFacebookの創業者 マーク・ザッカーバーグの言葉が挙げられています。

透明性の高いネットが世界を変える

すると「仮名」という「和風」は、Facebookに馴染まないということでしょうか。しかし、冒頭の「開国」という見出しは自虐的です。視点を変えれば、偽名を黙認したことで、ハンドルネームという「仮名」でのコミュニケーションは可能だと実証したのが「和風SNS」です。つまり肩書きや経歴、性別に人種すらも越えた次元での「相互理解」という人類の夢を実現できる可能性があると、自国生まれのサービスを持ち上げ気味に応援するのが「グローバルスタンダード」なんですがね。

今回のポイント

Web業界の喧噪ほどFacebookは流行っていない

匿名か実名かではなく「仮名社会」という文化がある

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