はじめての中国EC “どうすりゃいいんだ?”指南

「それって本物?」から入る中国人

「それって本物?」から入る中国人

佳子が出くわした値切り交渉の場面は中国で日常茶飯事に見受けられる。現在は値切りで下げられない分を共同購入という形でより安価で商品を手に入れる消費者も現れ始めた※1。より安くを求めて値切りまくる中国人の商習慣を紐解くと、購買心理の底に根付く性悪説が見えてくる。

性悪説とは、中国の思想家である荀子が唱えた人間の本性に対する主張、「人の性は悪なり、その善なるものは偽(ぎ)なり」(『荀子』性悪篇より)から来ており、中国人の購買行動に大きく影響している。自分が購入しようとしている商品の真偽を疑い、商品から感じる価値と価格が見合うまで値切り、合致すれば購入する。交渉は市場やデパートなどだけでなく、実はECでも行われてり、ネット上で「交渉」の場をいかに作れるかが成功するキーになってくる。

チャットとアリペイでECでも

売買する相手の顔が見えず、商品の品質や真偽がわからないECが中国で成立し、2011年には約8兆7000億まで成長が見込まれている巨大な市場規模になった背景には、チャットシステムの導入がある。ECに商品を掲載している企業側と顧客が、チャットを利用して商品の情報や価格の交渉を行っている。この交渉の可否が売上に非常に影響しており、インターネットができる環境なら常時買い物ができるECだが、チャットを受けつけている時間帯が最も売上が多い。チャットといっても各店舗で受け付けている時間帯があり、それ以外では店舗側と直接交渉することができない。時間別に売上の動向を調査しても、チャットができない時間帯は数がほとんど伸びず、オンタイムになると数字が急激に伸び始める傾向にある。実店舗と同じように売り手がしっかり接客し、買う側が納得しないと購入にはつながらない※2

商品の真偽については、ユーザーの評価、口コミを判断材料にしており、他人がどのくらい買っているのかという情報を非常に重要視している。たとえば、タオバオでは、商品の過去の販売実績やレビュー、既購入者のIDなどをすべて公開している。サイト内で、

  • 商品情報の正確性
  • サービスの態度
  • 配送の迅速さ

といった商品の評価項目と、

  • 返金処理時間
  • 店舗によるルール違反
  • 返品トラブル

といった企業の評価項目を設置し、ユーザーが点数をつけて累計し数値化して閲覧できるようにしている。そうした評価結果は顧客への印象だけでなく商品検索結果の順位や広告出稿可否に影響してくる。顧客同士もBBSを通じて商品や店舗の情報交換を活発に行い、購入検討者の購買行動を促す施策を行っている。

チャットによって購入に至っても、性悪説が影響し店舗側は「本当に支払ってくれるのか」、客側は「支払っても商品を送ってくれるのか」と互いへ疑念を持ち合う。これを解消したのが、中国最大手の決済サービスであるアリペイだ。アリペイでは、消費者がアカウントを登録することで専用口座を取得、入金し口座に資金をストックさせる。サイトで購入が決定すると支払う金額が口座内で凍結される。凍結されたという連絡が店舗側にいくと品物が客に送られ、店側に入金されるという仕組みだ。

チャットとアリペイが性悪説の中国においてEC普及に多大な貢献をしているのだ。

ECで売れる秘訣は「へりくだる」こと

日本の売買では「お客様は神様です」という思想の元に商売がなされ、店員が顧客に“へりくだる”シーンが見られる。

一昔前の中国のリアルな商売の場では、共産主義社会下での人民の平等や、モノがあまり無かった時代にできた習慣の残滓から、客と店側の立ち位置がほぼ対等か、むしろ売り手のほうが、強気な対応だった。現在は、中国も共産主義的資本主義になりモノも充実したことで、強気な態度の店員は減った。しかし、大手百貨店などの店員ではいまだに強気な接客が見られる。

一方、ネットの世界ではリアル店舗よりも日本の店舗に似た顧客をたてる接客方法が進んでいる。チャットのやり取りで“へりくだる”シーンが見られ、特に売れている店舗は“へりくだる”化が進んでおり、顧客は自分が上の立場として扱われる快感ゆえに店舗のファン、リピーターになっていくという傾向がある。顧客対応の進化は、リアルよりもネットのほうが進んでいると言える。

ネットユーザーが4億5000万人までに膨れ上がり、今後も広がり続ける中国EC市場において、サイト構築やプロモーション、興味を引くレイアウトや商品ラインナップはもちろん重要だ。しかし、基本はリアル店舗と同様に、接客の質が売上を左右するのだ。

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