Web解析のためのKPI大全
オンラインショップ向けKPI | KPI大全 第4章-1

KPIはそもそも、巨大なオンラインショップのために設計されたものだ。

The Big Book of Key Performance Indicators
By Eric T. PetersonWeb解析のためのKPI大全
エリック・T・ピーターソン 著
株式会社デジタルフォレスト 訳

サイトの類型別KPI

KPIに関して最もよく聞かれる質問は、「どのKPIを使えばいいのか?」である。そしてその答えは、「時と場合によりけり」である(Jim Sterneの言葉)。幸いにも、コンサルタントに何千ドルという予算を割く代わりに本書を購入したのは、KPIの活用に踏み切ろうとしているからだろう。私は、KPIを活用しながらオンラインビジネスを展開するいくつもの企業とともに、彼らのビジネスの改善に寄与する指標について考えてきた。そこで今、「あなたに必要な指標は何なのか」という議論を始めることにしよう。実際のビジネスにおいてどのようにKPIを使うべきかという議論は、あなたにはもちろん、私にとっても有益な議論である。この章では、組織のどのポジションにある人がどの指標を参照する必要があるかを、4つの主なサイトの類型(オンラインショップ、コンテンツ(広告)サイト、マーケティングサイト、サポートサイト)ごとに見ていくことにする。

注意すべきは、単一のビジネスタイプのみで構成されるWebサイトはほとんどないということである。ほとんどのWebサイトでは、上記の中の1つの類型を主とし、補足的に別の類型を用いていることが多い。たとえば、オンラインショップの場合。オンラインでの販売がWebサイトの主な機能であるが、同時にカスタマーサポート機能も必要であるし、訪問者を惹きつける読み物的なコンテンツを持ち、さらにマーケティング機能も果たすことが多い。とはいえ、これら4つの類型それぞれに適したKPIをすべて使わなければならない、と言っているわけではない。しかし、以下に述べるそれぞれのKPIに関する解説を熟読し、あなたの組織にとってどのKPIが妥当かを決めることは、強く勧めたい。

第2章で「全社員にすべく同じKPIレポートを送ってはいけない」と書いたのを覚えているだろうか。この議論は、Webサイトの運営・マーケティング・営業をそれぞれ異なった部署が担当している場合に、特に当てはまる。私が思うに、ほとんどのWeb管理者は、バナー広告が効果をあげているかどうかにはほとんど関心がないし、同様にCEOは個々のフォーム完了率には本当に無関心である。一般的傾向としては、以下のようになる。

  • 経営層 ―― 経営層は、中核事業の方向性と収益に直結するトップラインのKPIを3~5個参照すべきである。

  • 中間管理職層 ―― 何か問題があったとき、経営層から最初に質問されるのが、中間管理職層である。そのため、経営層と同じ指標を見ておくと同時に、難解な専門用語に惑わされないようにしながら、それらの指標に関してより詳しい情報を把握しておくべきである。

  • 実務担当者 ―― 実務担当者は、華々しい肩書きを持っているわけではないが、相応の責任は抱えている人々である。通常、実務担当者はアクセス解析ツールを直接操作し、理解する必要がある。経営層・中間管理職層と同じ指標を見ておくと同時に、現場作業に結びつく細かな指標も把握しておくべきである。

以下に記述するKPIのリストは、ビギナー企業向けの単なる「お勧め」であることに注意してほしい。自分たちのビジネスを行う上で重要な指標を明確に把握している人が社内にいて、その人が私の勧める定義・表現形式・想定される結果・行動のすべてを理解し、それに忠実であるならば、以下の記述は読み飛ばし、あなた方自身のアイデアを使用すれば良い。

オンラインショップ向けKPI

KPIはそもそも、巨大なオンラインショップのために設計されたものだ。コンバージョンこそすべてであり、サイトの収益がまさに現実の利益であり、小さな改善が大きな効果を生み出す。規模が小さく、商品の単価も低いサイトの場合は、日別のKPIレポートを勧めている(土日の分は月曜にまとめて集計する)。オンラインショップ向けKPIのほとんどが、収益とコンバージョンに焦点を当てていることは想像のとおりである。

経営層向け

オンラインショップの経営層には、以下のKPIを勧める。注文コンバージョン率購入者コンバージョン率平均注文額(AOV)1訪問あたり平均収入。あなたが特に、日々のWebサイトの運営に関わっているなら、上記に加えて、コンバージョンあたり平均コスト購入者満足度分布をチェックすることも有効である。

  • 注文コンバージョン率・購入者コンバージョン率

    オンラインショップ向けKPIの中でも最も多く参照されるのが、この2つの指標で、あたかも聖杯のように扱われることが多い。その価値に疑う余地はないが、一方でコンバージョン率は容易に操作できるので、批判的な目で値を見る必要がある。信じがたいかもしれないが、たとえばコンバージョン率を下げようと思えば、1億円の広告費を払って、Yahoo!やAOLのトップページなど、不特定多数を呼び込むような所に広告を出せばよい。逆にコンバージョン率を上げるには、広告を一切出さないという方法がある。リピート購入者が、新規購入者よりも高い確率でコンバージョンするとすれば、新規獲得をしなければ、既存の訪問者がコンバージョン率を押し上げる。とはいえ、この2つのコンバージョン率は、オンラインショップにとってはすばらしい最重要指標であり、注意深く観察する必要がある。

  • 平均注文額(AOV)

    多くの場合(少なくとも十分長い期間で見れば)、平均注文額は安定して推移するものである。日別の推移を見て、平均注文額の変化がないかを確認する一方で、ゆっくりとした上昇・減少にも注意する必要がある。顧客が購入する商品の種類が変化したり、アップセル・クロスセルの効率が変化したりしたとき、この指標に現れてくる。

  • 1訪問あたり平均収入

    Jim Novoは、この指標を「KPIのおばあさん」と呼ぶ。1訪問あたり平均収入は、成熟したオンラインショップ全体の健全さを、一目で比較できる値で提供するからである。この指標は、マーケティング、販促、サイトデザインのすべてを、「訪問から収入を得ることができたか」という1つの質問に、効率よく集約する。この指標は、インターネットマーケティングの努力の質を測る指標として、注意深く観察するべきである。キャンペーンが不適切な訪問者を呼び込んでいても、これらの訪問者が平均的訪問者よりも小額の購入をしていれば、コンバージョン率にはインパクトを及ぼさないが、平均注文額と1訪問あたり収入は、それに連動して悪化する。

    注文コンバージョン率、平均注文額、1訪問あたり平均収入は、オンラインショップの「緊急停止ボタン」指標である。すなわち、意図しない急激な値の減少があれば、経営層は「緊急停止」の号令をかけて、問題が発見され、把握され、可能ならば解決されるまで、一切をストップさせる必要がある。これが常に現実的な行動とは限らないが、言いたいことはわかるだろうか。注文コンバージョン率が20%も低下していたら、「なぜこんなことが起こったのか」を誰かに問い質さずにはいられないだろう。

  • コンバージョンあたり平均コスト

    この計算を行うために入力すべきデータは複雑かつ多様ではあるけれども、コンバージョンあたりのマーケティングコストには注目する必要がある。これらのコストはマーケティングの手法によってさまざまだが、コストの合計や平均から目を離さないことが、ビジネスの賢い経営方法である。

  • 購入者満足度分布

    購入者満足度という重要な要素を理解するには、それを計測するしかない。外部の分析ツール(Foresee Results、Usability Sciences、OpinionLabがこの手の計測ができるかもしれないベンダーである)を使っているとすれば、経営層はそれらのツールが分析する、高満足購入者率・低満足購入者率に注目するべきであろう。

中間管理職層向け

オンラインショップの中間管理職層向けには、以下の指標を勧める。問い合わせに対する平均反応時間新規対リピート訪問者比新規訪問者コンバージョン率・リピート訪問者コンバージョン率新規購入者・リピート購入者の収入比率トップページと主要なキャンペーンのランディングページにおける粘着度。もちろん、中間管理職層は、経営層が参照する指標も、同様に把握しておく必要がある。

  • 問い合わせに対する平均反応時間

    オンラインショップにおける問い合わせに対する平均反応時間は、オンラインの業界で闘っていく気概を計測する指標として利用できる。オンラインショップの購入者は、問い合わせのメールにすばやく返信があることを初めから期待していないことが多く、手助けを求めるメールが、インターネットのブラックホールに消えていってしまうことにも慣れている。だからこそ、購入者に喜びと驚きを与えるチャンスがあり、購入者満足に良いインパクトを与えることができるのである。問い合わせに対する反応時間を、組織の上層部にも伝えることで、全員がメールに対するすばやい返信の必要性を認識できる。

  • 新規対リピート訪問者比

    この指標を見ることによって、訪問者の構成比率を容易に知ることができ、マーケティング努力を評価できる。新規訪問者獲得のマーケティングに力を割けば割くほど、この比は大きくなるべきである。また、多くの場合、最も価値の高い訪問者はリピート購入者であるため、この比が大きすぎることはあまり望ましくないだろう。この値が非常に大きいということは、サイトに戻ってきてくれる訪問者がほとんどいないということだからである。若干の季節変動を考慮に入れつつ、訪問者構成については注意深く観察をしよう。

  • 新規訪問者コンバージョン率・リピート訪問者コンバージョン率

    多くのオンラインショップでは、新規訪問者よりリピート訪問者の方が、高い確率でコンバージョンすることが見込まれる。訪問者がWebサイトやブランドにより親近感を覚えると、より購入行動を取りやすくなるからである。中間管理職層は、この2種類のコンバージョンを注意深く追跡し、訪問者獲得努力に関して、適切な目標値を設定できるようにしよう。

  • 新規購入者・リピート購入者の収入比率

    平均注文額の補完的指標としてこの指標を追跡することは、顧客の購入行動に関するイメージをより鮮明に描くのに役立つ。サイト全体の平均注文額が少々減少しているのを見て、経営層が混乱をきたすことはしばしばある。このとき、優れた中間管理職層はレポートの中で、AOVは若干減少しているけれども、新規購入者への販売は全体的に好転しており、購入サイクルも短くなり、サイト全体の収益性は向上している、ということを報告できるのが望ましい。

  • トップページと主要ランディングページの粘着度

    もし、1訪問あたり収益が減少していたら、この指標をチェックしてみると良い。主要ランディングページや訪問者のターゲティングに変化があると、粘着度が大幅かつ意図せずに減少してしまうことがあり、それが収益に結びつかない訪問を増やしている可能性がある。このKPIを参照しておくことで、1訪問あたり収益や注文コンバージョン率が下がったとき、経営層からの質問に答えることができる。特に、トップページの粘着度が低下しているとき、どこを直すべきかについては、少なくとも明確にわかるのである。

実務担当者向け

ここまで述べてきたすべてのKPIに加え、実務担当者向けには、以下の指標を勧める。検索経由の購入コンバージョン率短間隔訪問率カート完了率精算完了率キャンペーンタイプごとの注文コンバージョン率結果0件検索率成果なし検索率クリック深度分布。

  • 検索経由の購入コンバージョン率

    十以上の商品数を取り揃えたオンラインショップの場合、顧客が欲しい商品に迅速にたどり着けるよう、購入を支援する検索システムをサイトに入れておくことが必要であろう。このような検索システムを持っている場合、検索経由の購入コンバージョン率を必ず計測し、訪問者が検索システムを機能的に使っているかどうかをチェックするべきである(図14)。

    図14 HomeDepot.comで「テープ」を検索したときの例
    図14 HomeDepot.comで「テープ」を検索したときの例

    通常この計測のためには、訪問者をセグメンテーションする。基本的に、訪問中に一度でも検索を利用した人を「検索者」としてセグメンテーションし、検索者に対して注文コンバージョン率を計算する。検索システムが優れていれば、購入行動を繰り返し誘発できるため、このKPIを追跡することは重要である。逆に、検索経由の注文コンバージョン率に一定以上の減少が見られたら、検索性能や検索結果表示に、何らかの問題が発生している可能性がある。

  • 短い前回訪問間隔率(低リセンシー率)

    単価の高い商品を販売している場合、この指標を計測することで、販売数が増加するか、横ばいか、減少するか、という傾向を把握するのに役立つ。Jim Novoによれば、前回訪問間隔は、購入者が再び購入するかどうかを測るのに、最も有効な指標であるという(Drilling Down: Tutorial on Recencyを参照)。これが正しいとすると、訪問者の訪問間隔が短い(すなわち最近Webサイトを訪問してくれた訪問者の割合がより大きい)ほど、彼らが商品を購入する傾向が大きいということである。変化しやすいこの指標を注意深く観察し、訪問者の傾向を把握するようにしよう。

  • カート完了率と精算完了率

    注文コンバージョン率の補完的指標として、何らかの指標の悪化が、ショッピングカートや精算のプロセスに起因していないかをすばやく調べることで、相当な時間の節約になる。100%とは言い切れないが、購入者コンバージョン率が減少しているのに、カート完了率と精算完了率が横ばいであれば、原因がWebサイト自体ではなく、マーケティング努力の方にあることが明確にわかる。逆に、ショッピングカートや精算のプロセスにわずかでも機能的な変更を加えたら、この指標を注意深く観察し、変化がないかどうか確認しよう。

  • キャンペーンごとの注文コンバージョン率

    経営層向けのコンバージョンあたり平均コストの補完的指標として、この指標をチェックすることで、勝ち組のキャンペーンと負け組のキャンペーンを区分できる。十以上のキャンペーンを同時並行的に展開している場合(よくあるケースだが)、KPIレポートにすべてのキャンペーンについての指標を載せるのは、実用的ではない。この場合、実施コスト、重要度、注目度などが最も高いキャンペーンに絞るのが良い。個々のキャンペーンで分類する代わりに、メール広告、キーワード広告、バナー広告、RSSフィードなど、キャンペーンタイプで分類して、コンバージョン率のKPIレポートを作ることもできる。たいていの場合、個々のキャンペーンレベルの細かさでは、アクセス解析ツールから直接は取得できず、KPIレポートの段階で工夫する必要がある。

  • 結果0件検索率と、成果なし検索率

    検索経由の購入コンバージョン率をレポートするなら、同時に結果0件検索率も盛り込むほうが良い。良い仕事をしていれば、このKPIは減少して0に近づくだろう。可能であれば、成果なし検索率も同時に追うと良い。これら2つの数字が突然上昇している場合は、どの語句が検索結果ゼロ・検索成果なしに陥っているのかを発見し、訪問者の関心に合わせて、検索インデックスを改良しよう。

  • クリック深度

    繰り返して言うが、コンバージョンと収入の問題を診断する際、これらのデータがすべてクリックという行為に基づいているということに注意する必要がある。「極めて多くの人が、極めて少ないページしかクリックしていない」という状況では、コンバージョンが生まれる可能性は非常に低いだろう。特に、「低クリック訪問」の区切りとして設定しているクリック数が、精算プロセスに必要なクリック数よりも少ない場合は、この指標が実際のコンバージョン傾向を測るのにぴったりの計測方法になる。この指標は、計算が簡単なのは良いが、一方で改善するための行動を取るのは難しい。たいていの場合、オンラインショップでこの値を改善するには、言葉の選択やナビゲーションシステム、検索性能などを変更する必要がある。

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