インタビュー

40種以上のアルゴリズムで顧客体験を最適化するレコメンドツール「Adobe Recommendations」/アドビ システムズ+オムニチュア

2011年2月に日本で提供開始されたRecommendationsについて担当ディレクターのケビン・リンゼイ氏に聞いた

ウェブ解析ツール「SiteCatalyst」やA/B・多変量解析テストの「Test&Target」などを提供するオムニチュアをアドビ システムズ社が買収したのは2009年のこと。ウェブ最適化のアプリケーションがAdobe Online Marketing Suiteとしてアドビ製品に加わり、2011年2月にはOnline Marketing Suite製品群のうち、すでに米国で提供されていたレコメンデーション製品「Adobe Recommendations」が日本でも提供開始された。

プロモーションのために来日した米国アドビ システムズ社 コンバージョンプロダクトマーケティング担当ディレクターのケビン・リンゼイ氏にその概要を伺った。

尾辻マーカス氏に聞いた、アドビとオムニチュアの合併ついては「アドビはもうクリエイティブだけの会社じゃない オムニチュアがジョインした意味とその将来像」の記事へ。

TEXT:柏木恵子

40以上のアルゴリズムで商品やコンテンツの自動レコメンドを実現

編集部● Adobe Recommendationsはどのようなものですか。

アドビ システムズ社 ケビン・リンゼイ氏
アドビ システムズ社
コンバージョンプロダクトマーケティング担当ディレクター
ケビン・リンゼイ氏

リンゼイ● Adobe Recommendations(アドビ レコメンデーションズ。以下、Recommendations)は、マーケティング最適化の部分を担うOnline Marketing Suiteのアプリケーションの1つで、レコメンデーションによってコンバージョンの最適化を実現するものです。最適化の際に、ビジネスメトリクスやKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)をもとにした設定を行うことができるのが特徴です。これによりシーンごとの適切な関連づけを行います。

日本での製品リリースと同時に、エディー・バウアー・ジャパンのサイトでの導入事例をご紹介していますので、すでに稼働しているサイトをご覧いただけます。米国ではすでに150社ほどに導入いただいていて、導入サイトではコンバージョンやAOV(Average Order Value:平均発注額)が上昇しています。大部分はECサイトですが、それ以外にメディアやB2Bサイトでの採用もあります。

Recommendationsを含めたアドビ製品を使うことのベネフィットは、アドビ全体の戦略であるコンテンツ制作とカスタマーエクスペリエンス管理、オンラインマーケティング最適化のためのソリューションが網羅されており、連携されることです。

編集部● 何を基準にレコメンデーションするかの方式として、行動データをもとにする方法やコンテンツの関連性をもとにする方法がありますが、この製品で利用できる関連性の仕組みにはどのようなものがありますか。

リンゼイ● いろいろな関連性が用意されているので、状況を見ながらどのような関連性を利用するのか、状況を見ながら変えていくことができます。必要なのは、その場に応じたレコメンデーションを行うということです。トップページには売れ筋を表示するのが普通ですが、ユーザーの行動パターンを把握しているならそれに応じたコンテンツを表示します。

エディー・バウアー・ジャパンのECサイト。商品詳細ページやカートページなどによってレコメンデーション(赤枠部分)を最適化して表示をしている

たとえば、買い物をしているECサイト訪問者に対して、商品を選んでいる段階ならば、見ている品物と同種類の品物を「こういうものもありますがいかがですか」という形で見せます。この場合に、「この分野の人気商品はこれです」とか「この品物を見た人は、最終的にこれを買った人が多いです」といったレコメンデーションができます。

あるいは、すでに買う物を決めて支払いに移ろうとしている場合には、カートのページでまた同じような品物を見せては迷うだけですから、ここでは「一緒にこれもあると便利ですよ」とか「これを買った人は、これも一緒に買うことが多いですよ」というレコメンデーションをすることで、クロスセルにつなげることができます。そのページで何を達成したいのかによって、レコメンデーションを表示するアルゴリズムを変えるわけです。40通りほどのアルゴリズムを備え、自社で重要視している指標を使うことができます。

しかし、適切なレコメンデーションを行うには、基礎となるデータが必要です。そこで、アドビのオンラインマーケティングソリューションの中核的な製品であるウェブ解析ツールが力を発揮するわけです。たとえば「人気商品」を定義するためには、最も多く売れた商品や最も閲覧回数の多い記事はどれなのかを知る必要がありますが、Recommendationsは解析ツールの持っている統計情報をもとにアルゴリズムを組むわけです。

たとえば、売れ筋の商品をレコメンデーションするために、マーケターが販売情報を収集してシステムに入力する必要はなく、解析ツールがすでに蓄積している情報のうち、販売数に基づいてレコメンデーションするように指示すればいいのです。レコメンデーションの解析ツールは、過去2か月分ぐらいの履歴を参照できるので、「この商品を見た人は過去にこんな商品も見ています」といったレコメンデーションもできるわけです。こうした、洗練されたレコメンデーションができるのは、ウェブ解析の多様な統計情報を利用できるためです。

Recommendationsで利用できるレコメンデーションのタイプ(一例)
レコメンデーション使用例表示ページ例
Similar items
(類似商品)
この商品を見た人はこんな商品をよく見ています商品ページ
Alternative items
(代替商品)
この商品を見た人はこんな商品を買っています商品ページ、eメール
Complementary items
(補完商品)
この商品を買った人は一緒にこの商品も買っていますショッピングカート、精算ページ、eメール
High Affinity items
(相性の良い商品)
あなたにおすすめの商品はこちら商品ページ、精算ページ
Searhed items
(一緒に探されている商品)
この商品を買った人はこんな商品を探しています検索結果ページ
Most Popular items
(ベストセラー)
このカテゴリのベストセラー商品トップページ、商品ページ、eメール

マーケターの目的に合わせて最適化できる

編集部● レコメンデーションのチューニングをサイト管理者が自分で行うのは難しそうですが。

リンゼイ● いえいえ、簡単ですよ。レコメンデーションを表示する部分さえ用意いただければ簡単に始めることができますし、アドビがお手伝いすることもできます。解析ツールの情報と連携してレコメンデーションするので利用すること自体は難しくありません。もちろん、アドビにレコメンデーション機能の運用そのものを委託したいというお客様もいらっしゃいますが、当社のトレーニングを受けて自社でやっていくお客様もいます。

最初から複雑な使い方をするのではなく、まずは何を買うか選択する商品ページに「これまでに最も売れたものをレコメンデーションとして表示する」というようなシンプルな形で始めればいいのです。そうして、少しずつ自社の事情に合った、ページごとに最適なレコメンデーションを、仮説を立てながら導入していけばいいわけです。不安なら、トラフィックのうちランダムに選んだ10%にだけにレコメンデーションを導入するといったテストをすることもできます。

編集部● それは、テストツールのTest&Targetと連携してということですね。

リンゼイ● もちろん、連携すると強力なテストを行えますが、Recommendations単体でもテスティングの機能をもっていますので、簡単なテストならTest&Targetは必要ありません。

編集部● ECサイト以外ではどのような利用が考えられますか。

リンゼイ● B2Bやメディアのサイトで、コンバージョンの最適化によるリード生成やコスト削減に利用することもできます。実は弊社のサイトにも導入されていて、ホワイトペーパーやウェビナー(ウェブセミナー)をレコメンドするようになっています。この事例を見た人はこのホワイトペーパーをどうぞ、これを読んだ方はこちらのウェビナーをどうぞ、というものです。ホワイトペーパーのリストを表示して紹介するのと違うのは、見ているユーザーの行動に合わせて、レコメンドする内容が動的に変わるという点です。

弊社のようなソフトウェア会社がオンラインサポートをする場合、ページ滞在時間は短い方がいい。お客様はトラブルに見舞われてサイトを訪問されているわけですから、滞在時間が短くなるように最適化されたレコメンデーションを表示するようにします。一方、メディアサイトなどでは、興味がある記事をじっくり読んでもらうことが目的で、ウェブの滞在時間は長い方がいいですよね。だから、長く滞在してもらうための最適化をしたレコメンデーション、たとえば人気度に応じた記事を表示するようにすればいいということになります。

ウェブページのパーソナライズのためのテクノロジーはここまで洗練されました。オムニチュアの強みはコンテンツ最適化について、「プラットフォーム」「解析」「最適化」と各レイヤーの製品を網羅して揃えていることであり、これまで取り組んできたサイト解析のデータを利用して洗練された最適化が可能だということです。

編集部● 他のアドビ製品、たとえばScene7などと連携することもできるのでしょうか。

リンゼイ● 今のところRecommendationsと連携するのはSiteCatalystとTest&Targetのみですが、今年中にはScene7との連携も予定しています。レコメンデーションのエリアに表示するコンテンツとして、Scene7から配信されるダイナミックイメージなどを使えるようになります。

オムニチュア事業本部 本部長 尾辻マーカス氏(左)、ケビン・リンゼイ氏(右)

データを分析して1人ひとりに最適な体験を提供
Webカスタマーエクスペリエンスの向上がCVR改善につながる

インタビュー直前の2月23日に開催されたアドビの2011年の事業戦略説明会において、インタビューにも応じてくれたオムニチュア事業本部長の尾辻マーカス氏は、今回発表されたRecommendationsが担うパーソナライゼーションがWebカスタマーエクスペリエンスの向上につながり、ビジネスの成功において非常に重要であることを話している。

一般的に、Webを訪れた人は3秒以内にランディングページに探している情報があるのか判断し、ないと判断するとすぐ戻るボタンを押して去っていく。いかに、最初の印象で探しているものがあるとアピールすることが重要です」と話す尾辻氏は、優れたエクスペリエンスを提供することが、CVRを上げることにつながり、ビジネス的に重要であるとした。なかでも関連性のあるコンテンツを効率的に見せるという2つのこと、すなわちパーソナライゼーションが重要になる。

マスマーケティングが主流の現代でパーソナライゼーションを可能にするには、測定可能で簡単に変えられるというインターネットの特性を活かすことが重要になる。何をベースにパーソナライズしていくかについて、尾辻氏は「たとえば、既存顧客なのか新規なのかといったサイトの行動。既存顧客の場合は、新規顧客向けのプロモーションは無駄になるため、既存顧客であれば、購入履歴に基づいてカスタマイズしていく。その他に、地域などの環境要素、参照元の情報、週末なのか平日なのかといった一次的な変数、オフラインの変数ではCRMなどと連携する」と説明した。このようなデータを取得して、予測可能なプロファイルを築き、それぞれの個人に対して優れた体験を提供することが重要になる。

Adobe Online Marketing Suiteによる最適化のサイクル

SiteCatalystやDiscoverなど、Webの分析ソリューションからスタートしたオムニチュア。尾辻氏は、「取得したデータをいかに使うかが重要であり、データを使って広告を最適化し、連動した形でサイトのコンテンツも最適化する。さらに、蓄積したデータを次のキャンペーンやマーケティング戦略に活かしていくというサイクルが重要だと考えています」と話し、顧客1人ひとりとの関係を強化していくためのツールとして、新たにRecommendationsがOnline Marketing Suiteに加わったことを説明した。

アドビ システムズ 株式会社
  • 代表者:代表取締役社長 クレイグ ティーゲル (Craig Tegel)
  • 資本金:1億8,000万円(2010年9月30日現在)
  • 設立:1992年3月27日
  • 従業員数:260名(2010年9月30日現在)
  • 事業内容:コンピュータソフトウエアおよびサーバ・ソリューションの販売支援・マーケティングならびに製品サポート
  • URL:http://www.adobe.com/jp/
  • Adobe Recommendations
  • Adobe Online Marketing Suite
用語集
CVR / Discover / KPI / オンラインマーケティング / キャンペーン / クロスセル / コンバージョン / レコメンデーション / 訪問 / 訪問者
この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

robots.txt
ロボット型の検索エンジンが自分のページを登録しないようにするためにサイト管理者が ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]