Web解析のためのKPI大全
KPIにようこそ | KPI大全 第2章

良いKPIとは、明確な定義、適切な表現形式、期待値、行動への扇動を持ち合わせたもだ。

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The Big Book of Key Performance Indicators
By Eric T. PetersonWeb解析のためのKPI大全
エリック・T・ピーターソン 著
株式会社デジタルフォレスト 訳

第1章で述べたように、KPIは、大きくてみにくいエクセルシートや、複雑なアプリケーションソフトはいやだと通常の会社が思っていることへの回答となる。KPIについての考え方をひとことでいうならば、技術的データを収集し、それをビジネスに適した言葉で表現するということだ。

  • KPIは、生データではなく、比率、パーセンテージ、平均で表現される。
  • KPIは、円グラフや棒グラフではなく、タコメーター、温度計、赤信号(など何か意図を示すもの)
  • KPIは、ただの表ではなく、その時々の状況や、変化を強調する。
  • KPIは、ビジネス上の重要な行動につながる。

適切なKPIはすべて行動につながるという最後の項目こそ、最も重要な点である。大切なので繰り返して言うが、『適切なKPIはすべて行動につながる』のだ。乱暴な言い方をすると、「指標が急に動いたり、想定外の動きをしたときに、メールや電話で知らせたり、助けを呼びにいったり、という行動をおこさせるものでなければ、それはKPIと呼ぶに値しない」ということである。

KPIとは何か

これらを念頭に置きながら、詳しく見ていってみよう。KPIとは、なるべく多くの情報を伝えられるようにデザインされた数字である。良いKPIとは、明確な定義、適切な表現形式、期待値、行動への扇動を持ち合わせたものである。

  • KPIの定義

    KPIは常に割合、比率、平均や百分率(%)の形をとる。生データのまま、ということはない。生データはアクセス解析レポートの説得力を増すことはできるが、それだけでは判断のしようがない。以下の例を見るとわかるように、生データはKPIほどは有効ではない。

    たとえば、ある月曜日に1万件の注文があったとしよう。これは一見、すばらしいように思える。しかし、その前の週には10万件の注文を受けていたとしたら、決して良いとはいえないだろう。さらに、かなりのお金をかけて獲得した100万人の訪問者の中から獲得した注文がたったの1万件だったらなおさらである。

    このように、文脈がなければ、1万という数字はただの数字にすぎない。良いとも悪いともいえないのである。つまり、これだけでは何も教えてくれないのだ。これがKPIは常に比率や平均であるべし、という主張の根拠である。だが、KPIレポートから生データを除外すべきだ、というわけではない。生データは、レポートに意味づけをし、議論を促すためには、むしろ必要なのだ。私が言いたいのは「生データはKPIではない」ということだけである。

    KPIは、比較されたデータをうまく要約するようにできている。本書を書く前には、多くの人々が「どのデータの比較に意味があるのか」という議論に多くの時間を費やしていたが、本書の定義を読むだけで、かなりの時間を節約できる。

  • KPIの表現形式

    KPIで最も大事なことは「見せ方」(時間経過に伴う変化をどう強調するか、閾値に基づく警告をどう発するか、など)だと言いたいのは山々だが、実際にはそうではなくて、「価値のある行動につながるかどうか」のほうがはるかに重要だ。しかし、KPIレポートを読む側からすれば、色やビジュアルをうまく盛り込んだレポートの方により興味をひかれるということには、多くの企業が気づいている。以下の2つの表を見比べてほしい。

    図1 その週と前の週の値を表示する一般的なKPIレポート
    図1 その週と前の週の値を表示する一般的なKPIレポート
    その週と前の週の値に加え、変化の方向を示す記号、変化率、目標値、達成率、警告メッセージを表示するKPIレポート
    図2 その週と前の週の値に加え、変化の方向を示す記号、変化率、目標値、達成率、警告メッセージを表示するKPIレポート(注意すべき指標にはアンダーラインを引く)

    サイトの問題点を簡単に、一目で把握できる2つ目の例の方が、望ましいスタイルである。警告メッセージはなかったとしても、下向きの矢印と赤字(赤は世界共通で「危険」を示す色)を使うだけで、注意を払うべき指標が明確になる。

    KPIレポートを作成するときは、以下のチェックポイントを押さえよう。

    • 指標が常に時系列に沿った比較になっていること。
      KPIの値は、年齢や電話番号などの「固有値」を除いて、1期間の値だけで表示してはならないKPIの報告を受ける人が「昨日のデータ」「先週のデータ」などの過去の値を覚えていることはありえない。「先週の今日」「昨日」「先週」「先月の今週」などを組み合わせて、過去と比較してどのようになったかが明確に分かるようにしよう。

    • 太字は「良好」網掛けは「注意」アンダーラインは「危険」。最も悪い事を示すなら「二重のアンダーライン」。エクセルを使っているなら、「条件つき書式」を使って分かりやすい書式使いをしよう(カラー印刷が可能な職場なら、色使いで表現するなど自由にカスタマイズしよう)。

    • 数値が好転していれば「↑」、悪化していれば「↓」。数値の状態は、色だけでなく、好転しているか、悪化しているかを簡単な矢印で示し、さらなる文脈が読み取れるようにしよう(たとえば、太字の赤かつ、赤の下矢印がついていたら、急激に悪化している、ということ)。

    • 変化は「変化率(%)」で表現する。通常、KPIには「期待値」が設定されるが、その期待値がどこかを、KPIレポートの読み手がわかるようにしなければならない。そして、もし時期をまたいだ比較をするのであれば、少々手間をかけて、計算をしよう。簡単におさらいをすると、
      ({今期の値}-{前期の値})÷{前期の値}={前期~今期の変化率}
      となる。

    • 閾値(ボーダーライン)を設定し、警告を発する。指標の色分けをする際に、実際に得られた数値や比率と事前に設定した閾値とを比べて、警告を発するようにしよう。たとえば、「注文コンバージョン率」が5%悪化していたら「やや注意」、10%なら「注意」、20%を超えたら「警告」というように。

    • 目標値を設定し、達成度をレポートに盛り込む。 KPIを使うにあたり、目標値を設定することはとても大事だ。同時に、その目標の達成度を計測し、しかるべき人に報告することも必要だ。それにより、もし指標が目標値から大幅に離れていたら、警告を発することができる。

    以上のことを考慮して、本書で記述するKPIの説明は、すべてエクセルシートと連動して理解できるようになっている。うまく活用すれば、表を作る時間は短くてすむのだ(表2を参照)。あなたは必要なデータを入力し、閾値を設定し、誰にでもわかるように注釈を加えて、あとは軌道に乗せるだけでいい。

    それだけで、まわりから尊敬の念を集められるだろう。

  • 想定される結果

    KPIレポートの表現上のポイントは、目標値を設定し、それにどれだけ近づいたかを議論することである。指標をただ追うだけの仕事ではないのである。

    逆に、毎月毎週の継続的な改善プロセス(測定、レポート、分析、最適化)のために使ってこそ、KPI(と本書)は真価を発揮する。Webサイトを最適化する唯一の理由は「ビジネスの改善」である。単に測定するだけでは意味がない。設定した目標に向かって、たゆみなく努力しよう。

    目標を達成できなくても、目標を定めることにより、人々の目はKPIに向かわざるをえなくなる。次のレベルに行きたいと思うのなら、高めの目標値を(ただし、現実的な範囲で)設定して、それが達成できれば、四半期ごとにボーナスを出そう。自由になるお金は、多くの人々にとって目標値へのインセンティブとなる。

  • 行動

    KPIに対する反応は、すぐに対応するかほっとして胸をなでおろすかのいずれかでしかない。ただ無表情でみているだけではいけない。「この数値が10%改善したら、誰を誉めるか?」「この数値が10%悪化したら、誰を叱りつけるか?」を自問自答してみてほしい。どちらの問いにも明確な答えが出せないのであれば、それはKPIではなく、ただの測定値である。

    世の中にはただのデータであれば、すでにあふれているほど多くある。多くの人々が必要としているのは、意思決定に役立つデータである。生データだけしか提供できないのであれば、問題の中に埋もれているに過ぎない。しかし、明確な行動を促すデータを提供すれば、解決策を提示することになる。あなたがすでに後者をやっていれば、それはとてもすばらしいことだ。

    本書で説明している指標は、とても優れていて役に立つ数値だ。本書では、さまざまな文脈のなかで、それぞれの指標に基づいてどのような行動を起こすべきかを述べたので、読者のかたたちはいまどんな行動をとることが可能かを常に意識してもらえると思う。もし、「このKPIに対しては、他の行動も取りうる」というアイデアがあれば、ぜひ聞かせていただきたい。

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