Web解析のためのKPI大全
アクセス解析ツールに「魔法の解決策」はない | KPI大全 第1章

KPIとは何か、KPIをどのように定義するか、KPIをどのように利用するか、KPIを誰が担当すべきか

The Big Book of Key Performance Indicators
By Eric T. PetersonWeb解析のためのKPI大全
エリック・T・ピーターソン 著
株式会社デジタルフォレスト 訳

アクセス解析は、一筋縄ではいかない。プログラマーとして、コンサルタントとして、アナリストとして、私は長らくアクセス解析の業界に身を置いてきたが、この事実に何度も直面してきた。インターフェイスをいくら良くしても、詳しい説明をいくら増やしても、データを理解する時間を誰もとろうとしない。ましてやデータを活用しようなどとは思いもよらない。ところが、すべてのオンラインビジネスにとって、Webから得られるデータが重要であるという事実は、日々くりかえし証明されているのだ。いったいどうしたら、より多くの人が、Webから得られるデータに興味を持ってくれるだろうか?

どうしたら、もっと「わかりやすく」できるだろうか?

古典的な「アクセス解析」は、分厚いワークシートの束と何枚ものスライドに、普通の人にはわからない技術的な専門用語が満載されているものだ。アクセス解析ツールのベンダーは、「弊社のツールは大変簡単ですから、御社の社員全員が使いたくなりますよ」と誠実そうな顔で言ってくるだろう。しかし残念ながら、それが本当になることはほとんどない。こうした考え方がもとで、企業は「適切なインターフェイス」と「適切なレポート」を求めて、ベンダーを頻繁に変更することがよくあるのだ。

オンラインビジネスで働いているほとんどの人にとって「適切な」インターフェイスとは、注釈付きのエクセルシート、スライド、メールのことだ。また、ほとんどすべての人にとって「適切な」レポートとは、彼らの仕事が成功するものであり、それ以上でもそれ以下でもない理解可能な言葉で書かれているものだ。前者は、すでに広く普及している。後者は、業種、業態、人によってさまざまに使い分けられるべきである。ほとんどの人が、アクセス解析ツールを使って実際に分析をしてみようとは思わないというのは、本当のことなのだ。

そこで、あなたにできることは何だろうか?

私からの個人的な提案として聞いてほしい。アクセス解析ツールと格闘して「魔法の解決策」を探しまわる代わりに、KPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)と、それを使った解析ノウハウを活用することをお勧めしたい。私の長年の経験と、多くの研究から考えると、KPIを適切な人が、組織全体で正しく活用すれば、見栄えの良いインターフェイスやグラフなどよりも、インターネットがビジネス全体に対していかに大きなインパクトを与えているかが、はるかによくわかるのである。企業が最初に、ビジネスのゴールと、それを満たすための訪問者の行動を定めてしまえば、KPIはおのずと明確になる。「適切な」KPIレポートを社内の全員が手にしたとき、全員が同じ土俵の上に立ち、アクセス解析への投資効果を存分に活用できる。

本書は、KPIに関するすべてを記したものである。KPIとは何か、KPIをどのように定義するか、KPIをどのように利用するか、KPIを誰が担当すべきか。アクセス解析に対する投資効果を最大化したいと本気で思うのであれば、どうか本書を最後まで読み進んで頂きたい。

本書はなぜ生まれたか

私は1990年代後半からアクセス解析業界に身を置いてきたが、直感的にビジネスの改善に役立つデータがあるとわかっていながら、そのデータにアクセスできなかったり、どう理解していいかわからないという企業の苛立ちと困惑を共有してきた。アクセス解析は非常に有効であるにもかかわらず、いまだに簡単だという人には会ったことがない。

幸いにも、私はコンサルタントとして、企業がKPIを設定するのを助けてきたが、KPIを使用することで人々がデータを使って意思決定しようとする態度に変わっていくことを見ることができた。これは、データの中に埋もれているすばらしさに目を残しつつも、芸術家集団が税理士集団に変わっていくようなものだ。

KPIを使用して成功した経験から、私は前著となる、“Web Analytics Demystified”(Celilo社)および『Web解析Hacks オンラインビジネスで最大の効果をあげるテクニック & ツール』(O'Reilly社)の2冊を書き上げ、数々の論文をJupiterResearchで発表した。KPIに関して書いたことで、KPIはトピックとして話題になり、ベンダー・コミュニティの立場の人たちの間でも興味の対象となった。多くの人々がKPIについて語るようになってわかったことは、実はKPIについてしっかり書かれたものはなく、私の著書やベンダーの書く記事、アクセス解析フォーラム(Web Analytics Forum at Yahoo! Groups)に投稿される記事などが散在しているに過ぎないということである。

商機を掴んだと思った私は、早速本書『KPI大全』の執筆に取り掛かった。本書を(流行した『Purple Cow』や『Who Moved My Cheese?』といった本のタイトルをもじって)『紫色のデータの牛』とか『スプレッドシートはどこへ消えた?』と名づけようかとも思ったが、それは気取りすぎていて、押し付けがましくてよくないと思えた。今のところこの「大全」が小さいながらもKPIというテーマについてすべてが書かれたガイドブックでありたいと思っている。どうか、私の持っている著作権を大切にして本書を安易に友達とかにコピーさせたりしないでほしい。それどころか、私の娘が医科大学に通い、父親のように徹夜で執筆する日々をおくらなくてすむように、著者を応援してほしいと友達には伝えてもらいたい。

本書の形式について

何度も書き直しができるように本書は電子媒体という形式をとることにした。出版したら変わらない前著2冊と違い、私はこの本を時間とともによくしていきたいと思っている。とりあえずは、3ヶ月周期で改訂版をアップしようと考えている。もちろん、購入していただいた方は、無料でアップデートできる。

あなたにKPIに関する経験などがあれば、ぜひ聴かせてほしい。あなたからすばすばらしい事例やアイデア、考察をいただいたら、次以降の版の中でそれを反映すべく、できるだけ努力しよう。

KPIとアクセス解析ベンダー

KPIについての具体的な説明の前に知っておくべきことは、KPIを使う能力はアクセス解析ツールの機能に左右されるということだ。本書でKPIの算出のために使用するデータは、ほとんどのアクセス解析ツールから取得できる。しかし、一部のデータ(特にセグメントごとのKPIに関するもの)は、より高機能なツールでないと取得できない。データの取得方法がわからない場合は、ベンダーに直接問い合わせることをお勧めする。あなたの話がまったく理解できないようなベンダーには、ぜひとも本書の購入を促して頂きたい。

スクリーンショットについて

本書で使用する画像は、日本における翻訳を手がけたデジタルフォレスト社のWeb解析ツール“Visionalist”のものを主に使用している(一部、開発中画面を含む)。

Visionalist:www.visionalist.com
※Visionalistは株式会社デジタルフォレストの登録商標です

CookieとKPI

主要なアクセス解析ツールでは、1回の訪問で複数のページを見たり、1人の人が何回も訪問したり、ということを、cookieを使って判別している。残念なことに、一般の人はcookieをブロックしたり削除したりするが、これはcookieに依存した解析の精度を低下させてしまう。cookieの是非に関する議論は本書の領域を超えるが、cookieのブロックや削除がKPIに及ぼす多大な影響については言及しておきたい。

  • cookieのブロック ―― 訪問者がcookieを無効にしている場合、「セッション」や「訪問」に関連する指標に影響が出る。アクセス解析ツールは、cookieが無効の場合に、精度は下がるがcookieを使用しない方法で、1訪問中の連続したページビューを判別するものもあれば、単にすべて別々の訪問としてカウントするものもある。これが最も影響する指標は「1訪問当たり平均ページビュー」で、ページビューは正しく集計される一方で、正確な訪問数は集計できなくなってしまう。
  • cookieの削除 ―― 訪問者が手動で、またはアンチスパイウェアによって自動的に、cookieを削除すると、「訪問者」に関連する指標に影響が出る。cookieの削除が行われると、すでに認識されているリピート訪問者が、新規訪問者として扱われてしまうため、短期的にはそれほど影響はないが、長期的には大きな影響を及ぼす。これが最も影響する指標は「1人当たり平均訪問数」で、cookieが削除されるたびに、リピート訪問であっても「新規訪問」として扱われてしまう。

データ収集にかかわるリスクについて各指標の説明のところで述べるかわりに、以下に3つのアドバイスを記しておこう。

  1. 解析ツールのベンダーと、cookieの最適な利用方針について相談すること。

    ほとんどのベンダーは、cookieのブロック・削除の影響を軽減するために、ファーストパーティcookieの使用を推奨するだろう。できるだけ、ベンダーのアドバイスを受け入れることを勧めるが、ベンダーがcookieに関連する問題を理解していないなら、違うベンダーに替えたほうがよい。

  2. ファーストパーティcookieを使用し、できるだけ短期間の解析を行うことで、cookieに関連するリスクを最小化すること。

    私は日別・週別にKPIの計測をするよう勧めている。KPIを頻繁に確認することによって、訪問者がcookieの消去を行う可能性が減るからである。

  3. cookieのブロックや消去に過剰なストレスを感じないこと。

    あなたがcookieの消去が行われることがあると認識しているだけで、その問題を理解していない他の企業よりも、はるかに有利である。さらに、KPIは変化に焦点をあてているので、KPIを使うことは、cookieのブロックや削除による影響を軽減する賢い方法である。

cookieに関連する問題の対処法や代替案については、前著『Web解析Hacks』のHack 15、16、17をご覧いただきたい。Hack 15はcookieを利用してデータの精度を上げる方法について、Hack 16はファーストパーティcookieについて、Hack 17はcookieの代替案について書いてある。同書の詳細は以下のURLから:www.webanalyticsdemystified.com

著者について

私はどういうわけかアクセス解析に熱中している。私はこれまでこのトピックについて3冊本を書いている。“Web Analytics Demystified”(Celilo社)、『Web解析Hacks オンラインビジネスで最大の効果をあげるテクニック & ツール』(O'Reilly社)、そしてもちろん本書『Web解析のためのKPI大全(The Big Book of Key Performance Indicators)』である。また、Yahoo Groups内のWeb Analytics Forumのモデレータとしてコミュニティを支援しているし、膨大なアクセス解析関連のサイトや記事のリンク集を私のサイト上で維持している。最近では“Web Analytics Wednesday”という、アクセス解析の専門家が集う交流会も立ち上げた。私の活動について、詳しくはサイト(Web Analytics Demystified)をご覧いただきたい。

参考になる資料

本書はKPIに関する解説書の完全版ではあるが、KPIに関する唯一の本というわけではない。あなたがKPIにもっと関心があるのならば、以下に挙げる資料も参照して頂きたい。

書籍

2005年に私と17人の優秀なアクセス解析の専門家が書いた『Web解析Hacks オンラインビジネスで最大の効果をあげるテクニック & ツール』は、KPIを広範にカバーする本としてお勧めである。第7章「KPIと戦略レポート」では、本書で解説する内容とほぼ同じ指針が書かれている。『Web解析Hacks』は、良い評判をいただいており、O'Reilly社のおかげでAmazon.comを含む世界中ほぼどこの書店でも入手できる。

もう一冊は、私の処女作“Web Analytics Demystified: A Marketers Guide to Understanding How Your Web Site Affects Your Business”である。この本はWebサイトの計測と解析に関する、すばらしい入門書である。カスタマーライフサイクルの各段階(リーチ、獲得、コンバージョン、リテンション)ごとに最適な計測方法を検証し、KPIを追跡することが重要であるということを説明している。この本はAmazon.comのほか、この本から名づけた私のウェブサイトWeb Analytics Demystifiedで購入できる。

これらの良書に加えて、多くのアクセス解析ベンダーが当該の内容の資料をダウンロード提供している。

Webサイト、人物、組織

私のWebサイトには、KPIに関連する注目すべきWebサイト、人物、組織を載せている。

  • ZAAZ社 ―― ZAAZの人々は、KPIを本当にうまく活用している。ZAAZのアナリストの一人であるJason Burbyは、ClickZ Networkにコラムを書き、そこでKPIのことをよく取り上げている。
    [www.clickz.com/author/profile/1063/jason-burby]

  • Bryan Eisenberg ―― 同じくClickZ Networkに記事を書く1人、Bryan EisenbergもKPIに関する著者として有名であり、KPIの利点を詳しく説いている。彼は、アクセス解析業界における実力者であり、Web Analytics Association(WAA)の共同設立者の1人でもある。
    [www.clickz.com/author/profile/1066/bryan-eisenberg]

  • Web Analytics Association ―― WAAは、2005年にBryan EisenbergとJim Sterneによって設立された。この団体は、アクセス解析やKPIに関するあらゆる情報や教育を、これらに関心のある人々に対して提供している。
    [www.webanalyticsassociation.org]

  • Jim Sterne ―― Jim Sterneこそ、その影響力からアクセス解析の父というべき存在である。彼はBryan EisenbergとともにWAAを設立する以前から、Webマーケティングやアクセス解析に関する本を十数冊世に送り出してきた。その中には、この業界におけるバイブルとも言える“E-metrics: Business Metrics for the New Economy”も含まれる。彼は毎年非常に興味深い仲間を集めて“E-metrics Summit”をカリフォルニア州サンターバーバラと、英国のロンドンで主催している。
    [www.emetrics.org]

  • Jim Novo ―― “Drilling Down: Turning Customer Data into Profits with a Spreadsheet”をはじめとする数々の本の著者、Jim Novoは、Jim Sternの良き友人である。KPIの権威であるNovo氏のWebサイトは、一読の価値がある。
    [www.jimnovo.com]

  • Web Analytics Forum ―― Yahoo! Groups内のWeb Analytics Forumは、私が“Web Analytics Demystified”を出版した2004年に立ち上げたもので、世界各地の1000人以上のプロのアクセス解析アナリストが質問と回答を繰り返している。参加は自由、無料である。
    [groups.yahoo.com/group/webanalytics/]

これ以上の情報については、私のサイトを見ていただきたい。この本を購入したみなさんは、KPIに関するさらに多くの情報にアクセスできるはずである。

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