企業ホームページ運営の心得

HTML5リフォームにご用心。bタグ上等! 原理原則とリアル

10年振りのバージョンアップとなるHTML5が注目されていますが、対応を急ぐ必要はありません
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百九十伍

※本稿はWeb担当者の現場においての心得やノウハウを提供することを目的としており、HTML教条主義者がお読みになると不快な症状を訴える場合がございます。あしからず。

bタグはなくなるか

あるホームページ教室では「bタグ」がSEOに効果があると教えているといいます。bタグ(要素)とは文中の「太字(Bold)」を指定するものです。これを聞いたネットの住民がツイッターで否定します。理由はこう。

bは修飾タグだし、そもそも太字の指定はCSSで行え。それに「HTML5」になると、使えなくなる

なるほど、修飾タグとは「見栄え」を指示するもので、論理的に「強調」を意味するものではないというのは「正論」ですし、修飾はCSSで指定するほうが表現力や保守からも便利です。しかし、現実は正論だけでは成り立たちません。世に出ている優れたコンテンツの多くで、重要と思われるキーワードが「太字」で修飾されていれば検索エンジンはbタグを重視することでしょう。検索エンジンは「文法テスト」の教師ではありません。そして現時点での私の経験則からbタグはSEOに有効です。

10年振りにバージョンアップ

現在一般的に使われているホームページを表現するための言語「HTML4」は1997年に定められたのですが、動画や音声といったマルチメディアや各種技術の進化によって、新しい「標準」が求められるようになりました。それが現在策定中の「HTML5」です。ちなみにHTMLに続く数字はバージョンナンバーで、今のHTML4は1999年に発表されたHTML4.01が最新です。

HTML5の仕様策定を進めている標準化団体のW3Cでは、仕様を草案の段階で発表(英語原文日本語訳)しており、そのなかでbタグの取り扱いが変わることをもって「使えなくなるのではないか」という説が流通しているのですが、草案にはb要素の用法が書かれています。未確定なものを断定的に語る姿は昭和の子供にとって懐かしい風景で、五島勉さんとノストラダムスのコンビを思い出します。

グーグルの大好物

HTML5では「コンテンツの構造化」に力点が置かれています。構造化とはコンテンツの中身を細分化し、論理的役割から区分し明示することです。情報雑誌の「ラーメン特集」のページを例に挙げれば、企画名は「ヘッダー」で、ラーメンの紹介が「メインテーマ」、営業時間などの「付随情報」、最新トレンドといった「豆知識」に、雑誌名や執筆者を「フッター」と区分します。

理系技術者が好む発想であり、これは「すべての情報をインデックスする」ことを目指すグーグルが喜ぶ方向性です。コンテンツを正確に小分けできるようになれば、情報の種類ごとに分類が可能となり、的外れなカテゴライズや、連続性のない情報といった「ノイズ」を排除したデータベースを実現できるからです。しかし「構造化」は技術者の夢であっても、制作者も含めた利用者の便利とは限りません。

中身を置き去りにした空論

HTML5では制作者が「文書構造」を意識することが求められ、遵守するには「編集者」なみの技能が不可欠となります。同じ文章でもHTML5で追加されるとされる要素「section」と「article」では、コンテンツのなかでの「意味」が異なり、先ほどのラーメン特集なら前者が「ラーメンの紹介」、後者が「豆知識」と話題に応じた「情報の仕分け」をいちいち制作者がしなければならないということで、厳格な記述を強制すれば制作を断念する人も増えることでしょう。それは結果的に利用者の便利を損ないます。

もっとも、教条主義者が望む世界は訪れることはないのでご安心ください。それは「center」や「font」など、10年以上前から「廃止」が叫ばれていたタグが今でも使えることからも明らかです。そして、すでに作ったコンテンツ、今作っているページならHTML5をそれほど気にすることはありません。「ブラウザ」はHTML4を相当期間サポートしつづけることでしょうし、W3C自身が「後方互換」を定義しています。これは過去に作られたコンテンツをブラウザが見られるようにしなさいということです。

ハイブリッドもディーゼルも一緒

その理由はあきらかです。1995年のウィンドウズ95の発売より普及した「インターネット」も、すでに15年が経過し、ホームページにブログ、ツイッター、フェイスブックと膨大なコンテンツが公開されています。新しい「標準」によって過去のコンテンツという資産が利用不可能となれば、「技術ありき」の本末転倒です。整理整頓された中身の薄いコンテンツより、乱雑でも有用な情報が詰まったコンテンツを利用者は求めているのです。次世代のブラウザで以前のコンテンツが利用できないのであれば、多くの人が旧世代のブラウザを使い続けるだろうことは明白です。

そもそも、ホームページビルダーやブログ、CMSといった「制作支援ソフト」を利用している人はHTML5をさして気にすることはありません。なぜなら制作支援ソフトがHTML5をサポートするのを待てばよいだけだからです。文章の内容を強調したいときには、bタグではなく、強調を意味するemやstrongを提案してくれることでしょう。ディーゼルエンジンでもハイブリッドカーでも、電動自動車でも「運転」は同じであるように、HTML5に対応した制作支援ソフトの使い方を覚えれば何の問題もありません。

技術者とWeb担当者の境界線

Google Analyticsにも使われている「JavaScript」を使うなという時代がありました。21世紀になってからの話で、セキュリティ上、好ましくないとされていたのです。また、tableタグの過激な排斥運動から「表」で処理すべきものをCSSで表現しているページを見たことがあります。そしていまHTML5に走り始めています。技術者は極端に走り、新しさに盲目的で、実際の現場をおろそかにしがちです。

マルチメディアに対応したHTML5が普及することでさまざまな表現が可能になることでしょうし、仕様にそって論理的に記述すことで、音声ブラウザでも正しく読み上げられるといったメリットもあるでしょう。しかし、乗り換えなかったからといって、過去のコンテンツが否定されることはないのはすでに述べた通りです。そして、HTML5はまだ「準備中」です。つまり、bタグはまだ使えます。なにより、日々の業務に終われる中小企業のWeb担当者に、「文脈を読み取って論理的なHTMLを書く」という作業を課すことは現実的ではありません。一度限りのコンテンツ修正なら、私は「font」や「center」を使うことを躊躇しません。教義に殉死するつもりはさらさらなく、未来ではなく現在の作業効率と費用対効果を優先しますので。

最後に、今後起こるだろう問題提起をして筆を置きます。

これからはHTML5です。HTML4は作り替えなければなりません

まるで「リフォーム詐欺」、ご注意ください。

今回のポイント

HTML4のままでもブラウザが対応する。

未来の心配はそこそこに現在を優先する。

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