ヤマハはなぜソーシャルメディアと相性が良かったのか? ~ソーシャル&エンゲージメント座談会

「ソーシャルメディアと企業かかわり」「エンゲージメント」に関する座談会
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ヤマハ、NECビッグローブ、ロフトワークの3社の担当者が行った座談会の様子から、企業の担当者が「ソーシャルメディアと企業かかわり」「エンゲージメント」にどう取り組むべきかのヒントとなる情報をお届けします。

この座談会は、ロフトワークがNECビッグローブとの共催で開催している、全5回にわたる無料セミナー「Webエンゲージメントセミナー」の第2回目セミナー(2010年11月9日)を前に、「ソーシャルメディアプラットフォーム」をテーマに行ったものです。

座談会では、企業はソーシャルメディアとどう向き合うべきかについて意見交換を行いました。参加者は次のとおり(敬称略)。

  • ヤマハ株式会社の鞍掛靖氏(11月のセミナーではゲストスピーカーを務める予定)
  • NECビッグローブ株式会社の山本隆範氏
  • 株式会社ロフトワークの諏訪光洋
  • (モデレータ)Web担当者Forum編集長 安田英久

オウンドメディアを軸に長期的な視点で取り組むべきエンゲージメント

安田 近年、企業活動におけるソーシャルメディアの重要性が増してきており、その対応に関する話題が多くなってきていますが、みなさんはどのように考えられていますか?

鞍掛靖氏 ヤマハ株式会社 国内営業本部 営業企画部 WEB・IT推進室 室長 兼 eヤマハ室 CGMプロジェクト リーダー
鞍掛靖氏
ヤマハ株式会社 国内営業本部 営業企画部 WEB・IT推進室 室長 兼 eヤマハ室 CGMプロジェクト リーダー

鞍掛 今は、お客様が外部のサイトからダイレクトに商品ページにアクセスできる時代です。昔のWebサイトの作りをそのまま続けていれば、自社サイトのPVは伸びていきません。この点を無視できなくなってきたことは、解析の数値からも明らかで、具体的な施策の一環としてソーシャルメディアへの対応も必要になってきたということでしょう。

当社の場合、パソコン通信の時代からフォーラムを開設するなど、早くからコミュニティへのかかわりが活発だったこともあり、そういうところでのユーザーの声は開発部隊もすごく意識しています。つまり、お客さまの反応に耳を傾ける文化がソーシャルメディア以前から根付いている。ただ、ソーシャルメディアの場合は、お客様が築いている世界に企業がどう入り込んでいくかという難しいテーマがありますから、理解の土壌はあっても、実際にソーシャルメディアに関して誰がどういう役割を担うのかまでは、まだ明確にはなっていません。

オウンドメディア

企業が各種メディアをどう扱うかの考えとして提唱されている「トリプルメディア」の1つ。トリプルメディアとは、以下の3種類のこと。

「オウンドメディア(オウンメディア)」: 自社が所有するメディア、つまり自社サイトなど。

「ペイドメディア」: 広告費などを支払って利用するメディアのこと。

「アーンドメディア」:ソーシャルメディアとのかかわりや広報活動を通じて獲得するメディアのこと。

諏訪 自社サイトのPVが伸びないというお話が出ましたが、オウンメディアって、最初のうちは費用対効果が非常に低いんですよね。でも、必ずブレークスルーするポイントがある。だからこそ、企業はオウンドメディアを軸に、もっと長期的にエンゲージメントに取り組む必要があると思います。そのうえで、オウンドメディアでは聞けない部分をソーシャルメディアでカバーしたり、オウンドメディアで発信しきれない情報にTwitterを活用したりするなど、ソーシャルメディアも育てていかなければなりません。

ヤマハの場合は、インターネットというバーチャルな世界だけでなく、ライブハウスやスタジオ、音楽教室など、リアルなコミュニティの場も大量に持たれています。ネット以前から「ソーシャル的なもの」を持ち、顧客との対話を大事にしながら、いろんなコミュニティを核にビジネスを発展させてきたという、製造業としてはかなり特異なモデルだといえるでしょう。もともと消費者との距離が近いという意味では、ソーシャルメディアへの取り組みもやりやすそうです。

山本 確かにそうですね。普通の企業では、「ソーシャルメディアって一体なんなのか?」という説明がまず難しい。場所がインターネットになっただけで、結局は社会だったりコミュニティだったり、要するにマーケットだと考えればわかりやすいわけで、そこに対して何をするかは企業活動とイコール。でも、そういう理解がきちんとされるどうかは、企業の特質によっても変わってきます。おそらく、全然理解できない人たちもいるでしょう。

オウンドメディアに求められるのは“ハブ”としての役割

Web担当者Forum 編集長 安田英久
Web担当者Forum 編集長 安田英久

安田 オウンドメディアだけを考えていてもうまくはいかないし、ペイドメディアの論理でソーシャルメディアに踏み込んでもうまくいかない。トリプルメディア時代において、オウンドメディアはどうあるべきなのでしょうか?

鞍掛 オウンドメディアにおいては、プロモーションももちろん大事ですが、それ以上に重要なのが商品情報です。もっと具体的に言えば、正確な情報ときれいな写真がたくさんあって、それらがきちんとお客様の目に届く状態になっていること。これはソーシャルメディアにはできないことです。そのうえで、オウンドメディアにソーシャルの声を取り込む仕組みを作っていく。こうやって、オウンドメディアを“ハブ”にしていければいいですね。

諏訪光洋氏 株式会社ロフトワーク 代表取締役
諏訪光洋氏
株式会社ロフトワーク 代表取締役

諏訪 当社のコーポレートサイトでは、社内でコラムを書いてアップすると、そこに記事に対するツイートが自動的に入ってくるような仕掛けを実現しています。そうすると、執筆した人間のモチベーションも自ずと上がりますし、同時に、我々が社内でやっていることが確実に資産になっていく実感もあります。小さいことではありますが、うまく行っているケースではないでしょうか。

短期的や成果を急がずに普段の企業活動をそのまま実践

安田 社内の理解というハードルもありそうですが、一方で費用対効果をどう捉えるかというテーマがあります。これも難しいですよね。

山本隆範氏 NECビッグローブ株式会社 ビジネスサービス事業部 部長
山本隆範氏
NECビッグローブ株式会社 ビジネスサービス事業部 部長

山本 当社ではソーシャルメディアの効果測定ツールを提供していますが、「このツールを導入すれば効果が測定できます」と断言してしまうと、その測定結果が経営判断に直結してしまう恐れがあり、場合によってはうまくない。ツールを利用して効果測定することに意味がないというわけではないのですが、使い方を誤ったり、上層部がそれだけを見て判断してしまうと、うまくはいきません。実際、ソーシャルメディア関連でうまくいかないパターンに、そうしたケースが多く見られます。それだけ短期的かつ単純にソーシャルメディア対応の成果を評価するのは難しいと言うことです。

鞍掛 うまくいかないパターンで思い出したのですが、当社は2000年にコミュニティサイトを立ち上げたことがあります。自分たちが演奏した楽曲を公開できるというサイトだったのですが、容量の増大に伴いコストの壁に直面しました。ページビューや会員数は順調に伸びていたのですが、コストに見合う具体的な成果が生み出せず、方向転換を余儀なくされました。

諏訪 「1回いくら」と設定して確実にペイすることを目指す世界とは、ソーシャルメディアは明らかに違いますから、ペイドメディアのルールとか測定方法をそのまま当てはめることもできません。オウンドメディアにいくら費やすべきなのかというところも、明確になっていないのが現状でしょう。

安田 なるほど。あと一つ、これも多くの企業担当者の関心事だと思うのですが、企業がソーシャルメディアの活用を進める上でガイドラインは必要でしょうか。

山本 ガイドラインがなくても、企業理念や行動規範などの遵守が大前提にある。その上で、普段の企業活動でやっていることを、そのままソーシャルメディアで実践すればいいのではないでしょうか。構造をどうするかとか、管理をどうするかといった部分でのルール化は重要ですが、ソーシャルメディアでやることは、何も特別なことではないと思います。

鞍掛 当社の場合、店舗が集客目的でやるTwitterと事業部がサポート目的でやるTwitterとでは全然違いますから、そもそもひとまとめにするのが難しい。一番大事なことは、ソーシャルメディアに関わる人間が集まって、ノウハウを共有し合うこと。実際に当社ではワーキンググループを開催し、勉強会や意見交換を行っています。その際に、能動的にソーシャルメディアに関わっている人間が核になることが重要です。未経験者が集まって興味本位で「やりましょう!」というのでは、絶対にうまくいきません

ソーシャルメディアへの取り組みはサポートの現場から?!

安田 最後に、セミナータイトルにもある「エンゲージメント」という観点で、ソーシャルメディアとの向き合い方について考察するとどうでしょう。

鞍掛 少し話がそれますが、当社のコールセンターの定例会に参加すると、担当者のお客様に対する思いがものすごく熱いことに驚かされます。強いメンタリティを必要とされる大変な仕事ですが、みんな本当に一生懸命なのです。これこそがエンゲージメントであって、ソーシャルメディアへの取り組みは、実はマーケティングからではなく、サポートの現場からではないかと思います。

諏訪 さすが、長年顧客との対話を大事にしてきたヤマハならですね。基本的にエンゲージメントが実現できていて、それが確実にヤマハというブランドの信頼につながっている。それから、エンゲージメントは顧客向けだけではなく社内向けにも言えることで、先ほどワーキンググループの話があったように、この点でもヤマハの取り組みは参考になります。

山本 改めて企業はどうやって向き合うべきかという話に立ち返ると、少なくとも現時点では、そこに明確な答えはないような気がします。各企業の立ち位置によってソーシャルメディアとの関わり方の度合いは変わってきますし、企業の分類の仕方についても方法論がありません。今後、その辺りの議論を深めていけるといいのではないでしょうか。

安田 きっと3年後にはソーシャルメディアも全然違う形になっているのでしょうし、今の時代のエンゲージメントのあり方を探るのはよしとしても、すべてを1つの枠の中に当てはめてしまうのは難しそうですね。要は、お客様の顔がきちんと見えている人には、そこで何をすべきかがわかるということでしょうか。

11月のセミナーでは、より実践的なお話が聴けそうですね。本日はありがとうございました。

第2回Webエンゲージメントセミナー
Eng.2 ソーシャルメディアプラットフォーム
~企業自らがリードするソーシャルというメディア~
  • 開催日時: 2010年11月09日(火) 14:00~16:30 (13:30開場・受付開始)
  • 主催: NECビッグローブ、ロフトワーク 共催
  • 場所: ゲートシティ大崎 ウエストタワー 地下1階 ルームD
  • 対象: 業種・企業規模を問わず、マーケティングに興味のある企業、Webサイトリニューアルや、導入を直近または将来的に検討している企業
  • 参加費: 無料
  • 定員: 50名
  • 詳細情報や申し込みhttp://www.loftwork.jp/seminar/2010/20101109_biglobe2.html
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