企業のためのソーシャルメディア・マーケティング入門

3. ガイドラインの策定

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3. ガイドラインの策定

Twitterなどを利用したソーシャルメディア・マーケティングでは、コミュニケーションの主体が従業員個人に帰結するので、従業員のソーシャルメディアに対するリテラシーの底上げも重要です。近頃は日本企業でも、従業員に向けたソーシャルメディア・ガイドラインを策定している企業も少ないながらも増えてきています。

「ソーシャルメデイア・ガイドライン」とは、従業員個人のソーシャルメデイアでの振る舞い、マナーや禁止事項(たとえば会社の機密情報は公開してはいけないなど)を定めるもので、就業規則と同様に罰則をともなう行動規定に近いガイドラインを定めている企業もあります。ソーシャルメデイア・ガイドラインを設けることによって、社内のリテラシーの向上と、個人のソーシャルメディア上の活動に対するリスクヘッジにもなります。

日本企業のTwitterでの代表的な炎上例としては、UCCの事例が有名です。UCCでは、2010年2月にキャンペーン告知をbotによって多数のユーザーに行ったことが原因で炎上しました(Twitterでのキャンペーン告知に関するお詫び)。しかし、その後のすばやい対応が評価されたという一面もあります。

Twitter以外のソーシャルメディアを見ると、次のような炎上例があります。

  • 吉野家の「テラ豚丼」
    2007年12月に、吉野家のアルバイト店員が「テラ豚丼」と称する大盛り豚丼を店内で作る様子を撮影して「ニコニコ動画」で公開し、店員に対するモラルやリテラシーが問われ炎上しました。

  • 三洋「INFOBAR 2」
    2007年、三洋では、子会社の鳥取三洋電機の工場で携帯電話「INFOBAR 2」の検査を担当する派遣社員が「欠陥品をそのまま流している」などとmixi日記に書き炎上しました。※その後、事実無根であったことを発表

  • ケンタッキー
    ケンタッキーでは、元アルバイト店員が「店内でゴキブリを揚げた」とmixi日記に告白し、批判コメントが殺到し、掲示板やブログなどに転載されて騒ぎは広がりました。※その後、事実無根であったことを発表

これらは有名企業による炎上例ですが、ソーシャルメデイア・ガイドラインをきちんと策定していればこのような惨事にならなかったはずです。企業のガイドラインは、法務、広報、人事、教育、マーケティング、サポートなど、さまざまな部門と横断的に連携して策定していく必要があり、なかなか大変かもしれません。しかしながら、多くの部門を巻き込んでガイドライン策定をしていくなか、ソーシャルメディアに対する会社としての総意を形成する過程も重要だと思います。

だからといって、ガイドラインさえあれば成功するというものではありません。ガイドラインは、あくまで企業とその従業員がソーシャルメディアを利用するのを手助けするものです。企業としてソーシャルメディアでどんなコミュニケーションをしたいのかという目的と戦略に基づいてガイドラインを決めるべきです。企業理念や戦略がしっかりと共有されているのであれば、1からガイドラインを作る必要はなく、自然とガイドラインに取り入れる内容も決まってくるはずです。場合によっては、通常の業務規約からソーシャルメディアに関連する項目を抜粋し、一部編集するだけでもいいかもしれません。逆にいうと、全体戦略を明確に定めずにソーシャルメディア・ガイドラインだけを作ることには意味はないでしょう。

なお、現在ではいくつかの企業がソーシャルメディア・ガイドラインを公開しています(ソーシャルメディアポリシー/ガイドラインの国内実例まとめ+策定者向け情報)ので、これらを参考にするのもいいでしょう。また、御社で使えるオープンライセンスのソーシャルメディア・ガイドラインとして、シックス・アパートではソーシャルメディア利用ガイドラインを公開しています。企業の状況や文化にあわせて中身は変えていく必要はあると思いますが、自社のソーシャルメディア・ガイドライン策定の一助になればと思います。

4. 数値目標の設定

企業としてソーシャルメディアを活用するなら、ビジネス目標が必要です。これは目的によって変わってきます。たとえば、販促目的なら、「Twitter経由の売上」「Twitter経由の資料請求数」が目標になります。採用目的なら「Twitter経由の人材確保」の効果などが考えられるでしょう。

ただし、Twitterにおける数値目標の設定は正直に言って、そんなに簡単ではありません。ただ少なからず言えるのは、よほどのことがない限りTwitterを始めてすぐに効果は出ないということです。2~3か月で目に見える効果が出るとは思わずに、始めるなら1年は絶対に続ける、という覚悟は持ちましょう。

では、実際にTwitterマーケティングを行ううえで、分析対象となる数値を挙げてみます。

  • フォロワー数 例:12月までに1000フォロワーを獲得

    真面目に取り組んでいればフォロワーは徐々に増えるものですが、企業アカウントでフォローを増やす施策としてよく挙げられるのが次の3つです。

    1. フォローしてくれたユーザーには必ずフォロー返しをする
    2. twinaviなど、Twitter情報サイトの企業公式アカウントに登録する
    3. 自社や自社製品についてつぶやいているユーザーを積極的にフォローしに行く

    とはいえ、企業の知名度はもちろん、つぶやく内容がフォロワーにとって有益かどうかが一番重要です。一方的な営業トークは炎上の原因にもなりかねません。自分がやられて嫌なことはしないというのは、ソーシャルメディア上でも同じです。

  • Twitter 経由からのサイトへの流入数 例:Twitter経由の注文を毎月10件以上獲得

    TwitterなどでPR活動や販促活動を行う場合の指標として、サイトへの流入数(自社サイトでのコンバージョン数)は無視できないものとなるでしょう。140文字以内のつぶやきを通して、いかにリンクをクリックしてもらうか、次のようなテクニックが挙げられると思います。

    • RT(返信)されやすいように、余裕をもった文字数でつぶやく
    • 短縮URLを使う
    • つぶやく内容は、ユーザーの目を引くものにする(釣り要素は重要ですが、コンテンツとかけ離れた煽りや嘘はいけません)

    短縮URLはbit.lyが最も一般的です。bit.lyにアカウントを登録しておけば、短縮URLを通してどれだけのリンクがクリックされたかすぐに見ることができるのも便利です。2010年の夏には、Twitter公式の短縮URLサービスの開始が予定されています。

bitlyの分析画面
bit.lyでは作成した短縮URLがどれくらいアクセスされたかを調べられる
  • Twitter上での会話の総量 例:自社製品に関するツイートを1年で倍に増やす

    自社や自社製品に関するキーワードがどれだけつぶやかれているか、という数値です。企業が気づかないところでユーザーはどんな噂をしているのか、Twitterを通して覗き見ることができてしまうのが、Twitterの怖いところでもありメリットでもあります。会話の総量は、企業が積極的に情報を発信し、積極的にユーザーとコミュニケーションすることで増やすことができます。

    自社製品について、どれだけつぶやかれているかを調べるには、商用の分析ツールを利用するのもいいですが、まずは手軽に利用できるTopsyHootSuiteなどの無料ツールを使うといいでしょう。

◇◇◇

以上、企業のTwitter導入において、具体的に何から着手すればいいのかわからないという疑問や、社内調整や体制構築、従業員のリテラシー向上、そして効果測定について解説しました。

次回は、実際に運用するようになった時に使うと便利な厳選Twitterツールを紹介していきたいと思います。

企業アカウントの管理が驚くほど楽になる、Twitter運用ツール7選(第3回)

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