企業のためのソーシャルメディア・マーケティング入門

1. マーケティング型(調査・分析)目的:Twitter上のクチコミを調査目標例:自社製品に関する意見を集めて新製品の開発に役立てる

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1. マーケティング型(調査・分析)
目的:Twitter上のクチコミを調査
目標例:自社製品に関する意見を集めて新製品の開発に役立てる

もっとも敷居が低い活用方法で、企業の公式アカウントを開設する必要もありません。自社製品に関するキーワードをTwitterで検索して、ユーザーの発言を眺めてみたり、競合他社はどのような形でTwitterを活用しているのか調べてみたりする使い方です。Twitterでの発言をベースにした定性的、定量的な調査は非常に有用だと思いますし、Twitter上の発言に耳を傾けるだけならすぐに始められます。自社の発言が引き金となる炎上やネガティブ反応などのリスクもありません。

  • メリット
    そのときどきのユーザーの本音の感情を表した、生の声を聞けるのが最大のメリットです。Twitterアカウントを開設する必要がなく、すぐに始められ、好きなときにやめられるため手軽に活用できます。

  • 注意点
    日本のTwitterでは、月間1億以上のツイートがあり、そのなかから自社のマーケティングに役立つ情報を集め、分類してデータ化するのに手間がかかります。情報を効率よく集めるためには、ツールを使いこなす必要があるでしょう。

既存のマスメディアに対するソーシャルメディアの最大のメリットは、ユーザーの本音に対して手軽、かつ直に触れることができる点です。まずはここからスタートしてみることをオススメします。

2. PR型
目的:製品やサービス、ブランドの認知を向上させる
目標例:1年間でフォロワー数を1000人にする

このパターンも運用の敷居は低い方だといえるでしょう。自社のサイトの更新情報やブログの最新記事を、自動でTwitterに転載するだけのものも含まれます。ひたすら自社サイトの更新情報をbot(自動プログラム)のように自動配信するだけであれば運用の手間はありませんし、炎上することもありません。

  • アカウント例
    このパターンの最たる例が日本IBM広報(@IBMJapan_PR)のアカウントです。自社のPR情報の配信に徹し、問い合わせは受け付けないこともプロフィールに明記しています。

  • メリット
    自動プログラムなどを利用した一方通行の情報配信なら、企業の公式アカウントとしてそれほど運用の手間を考えずに始められます。公式アカウントを開設したいけど、リアルタイムにコミュニケーションをする余裕がないといった場合の手段として、検討してみるといいでしょう。

  • 注意点
    一定のフォロワー数を集めるのに苦労します。Webサイトに多くの人を集めていたり、多くのメルマガ会員を獲得しているなら、それらのつながりを有効活用するといいでしょう。

Twitterのつぶやきを自動で配信するのか、人の手によって配信するのかは企業のポリシーによってさまざまですが、人の手による更新は人間味があり好まれやすい傾向にあると思います。しかし、一方通行のコミュニケーションが基本のPR型は、(特に企業規模が小さくなればなるほど)フォロワーを増やすまでにかなり苦労すると思われます。

3. 販促型
目的:キャンペーンや新製品の情報を告知して販売や来店につなげる
目標例:Twitter経由で10万円を売り上げる

販促を目的とした自社のキャンペーン情報を配信するのもよく見られるパターンです。製品情報やセールス情報をつぶやいて、自社のサイトや店舗に誘導することを目的とします。販促を目的としたTwitterを使ったキャンペーンは、「フォロワー限定!10%オフ!」や「アカウントをフォローしてお題に返信してくれたら○○プレゼントキャンペーン!」、「このツイートを見て1時間以内に来店したらビール1杯無料」など、さまざまな取り組みが見受けられるようになりました。

  • アカウント例
    販促型のパターンで成功している有名な例として、米国のデル(@DellOutlet)はTwitter経由のみで650万ドルを売り上げたという神話があります。店舗誘導の例では、同じく米国のピザ屋「NakedPizza」がTwitter経由で売り上げを拡大した事例が有名です。

    日本の店舗誘導の例としては、飲食店の豚組(@butagumi)が注目されています。公式と店長の個人アカウント(@hitoshi)を使い分け、来店客の10%がTwitter経由だといいます。

  • メリット
    キャンペーンに参加したユーザーから、そのフォロワーの間にまでキャンペーンが広がっていくため、認知拡大や新規フォロワーの獲得も期待できます。Twitterのリアルタイム性を生かし、タイムセールや急な予約キャンセルの穴埋めなどの告知に利用している企業もあります。

  • 注意点
    成果をあげるには、一定のフォロワー数が必要になるでしょう。また、一時的な盛り上がりで終わってしまうことがあるため、ユーザーとファンの関係を築くようなコミュニケーションも欠かせません。そのためには、ユーザーからの質問や疑問に誰がどのように対応するのか、社内で運用方法を決めておくべきです。

4. コミュニケーション型
目的:Twitter上でコミュニケーションを行いブランド力やロイヤリティを高める
目標例:1日に10人以上と会話して、フォロワー数を1年で2倍にする

ユーザーとの対話を積極的に行うパターンで、最も個人アカウントでの使い方に近く、人間的な活用方法です。企業が、自社の製品や事業に関連するユーザーの発言に対して積極的に話しかけていって議論をしたり、担当者のキャラを全面に出したつぶやきを発したりするなど、いかにユーザーに受け入れられるかがポイントだと思います。

  • アカウント例
    担当者のキャラを全面に出したパターンで有名なのが、冷凍うどんで有名なテーブルマーク(旧 加ト吉)のTwitterアカウント(@KATOKICHIcoltd)で、自社製品に絡めたオヤジギャグをつぶやき、それがフォロワーから受け入れられる結果となりました。ユーザーとのコミュニケーションも積極的に行っています。

    BtoB企業の例では、Webサイトのユーザーインターフェイス専門会社のビービットのアカウント(@beBit_Japan)が、毎週木曜の夜7時にユーザビリティに関するクイズをつぶやき、質問・回答ごとにフォロワーから寄せられた模範解答・珍回答・そして正解ではなかったけど興味深い回答などを報告し、ユーザーとコミュニケーションをとっています。

  • メリット
    つぶやきを眺めるだけのマーケティング型と違い、ユーザーと直接コミュニケーションすることによって、能動的に生の声を得られるのが特長です。また、直接コミュニケーションできるので、ファンの関係を築くチャンスがたくさんあります。その他にも、意見や感想はもちろん、思いがけない発見があることでしょう。

  • 注意点
    コミュニケーション型をうまく進められるかどうかは、担当者のTwitterコミュニケーション能力と熱意に大きく依存します。無理にユーザー同士の会話に入っていこうとすれば、不快感を与えてしまう恐れもあります。また、会話を継続して行うため、担当者の負担が大きくなりがちです。明確な数値目標をつくりづらいのも難しい点です。

5. サポート型
目的:Twitterで直接ユーザーをサポートする
目標例:Twitter上のサポートで顧客満足度を向上させる

Twitterを通して、ユーザーの問い合わせ対応を行う活用方法です。サポート対応できる専任の担当者が必要なため、最も工数と手間がかかるパターンだと思われます。サポート型にも、ユーザーから直接質問がきたものに対して返信していくパターンと、同社のサービスや製品に関して困っているユーザーや、不満を持っているユーザーに対して自ら話しかけて問題解決に導いていく、アクティブサポート(日本ではsmashmediaの河野武さんが提唱しだした言葉だと思います)のパターンがあります。

  • アカウント例
    アクティブサポートの例として、ブックオフオンラインのアカウント(@bookoffonline)があります。

  • メリット
    アクティブサポートであれば、メールや電話の問い合わせでは見えてこない、独り言のような不満や疑問までキャッチできるでしょう。質問に対する返信のみのパターンでも、ちょっとした疑問や悩みを受けやすくなります。フォロワー同士がサポートしあうような、コミュニティを形成することもできます。

  • 注意点
    フォロワーが増えてくると、対応しきれないほどの問い合わせが来る可能性があります。企業の公式アカウントである以上、問い合わせに対するユーザーの期待感も高いはずですから、見逃してしまうことがないよう、しっかりとした運用体制を作ることが大事です。

シックス・アパートでは、製品のサポートは有償で行っているため、製品に関するサポートはしない方針をとっており、プロフィールにもそのように明記しています。

◇◇◇

Twitterの企業の活用方法の分類は諸説あるのですが、大きくわけて5つの活用方法を事例とあわせて紹介しました。

もちろん、これらの型にきっちり当てはめる必要はなく、「とりあえずTwitterは調査のみにしておこう」とか、「我が社はPRとサポートをやろう!」など、これらのパターンを自社の事情に合わせてどのように組み合わせ活用していくか、事前に決めておくことが大切だと思います。

Twitterはあくまで手段の1つでしかありません。企業活動の一部でしかないので、コミュニケーションをするにしても、従来からある企業ブログやSNSとどのように組み合わせるのか、または差別化をしていくのか。企業でのTwitterの位置づけをどうするのかを決めるためにも、目的と目標を明確にしましょう。

次回は、ソーシャルメディア・マーケティングを実施するにあたって必要なステップや担当者に必要なスキルなどを書いていきたいと思います。

企業がTwitterで失敗しないための導入4ステップ+3指標(第2回)

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