BtoBメーカーのウェブ活用

グローバルなウェブ活用

グローバルなウェブ活用

グローバルなウェブ活用の目的は主に、脆弱な販売・サポートチャネルの補完と、本社コントロールでのブランド訴求となる。

海外売上比率が40%と言っても、それは日本以外の国での売上を積み上げた数字であって、1ヵ国あたりの売上規模は、当然日本のそれと比べて小さい。当然ながら、各国におけるリアルの販売・サポートチャネルは、日本並みに整備されている訳ではない。リアルのチャネルの強化が重要である事は言うまでもないが、勝手の効かない海外では時間も費用もかかるし、急ピッチに拡大する市場では、その成長速度にチャネル整備が追いつかない。そこで24時間365日、どこからでもアクセス可能なウェブサイトが重要な役割を果たすことになる。事業の歴史が浅く営業網の充実していない国や広大な国土を抱える国では、顧客がどこにいるのかわからないため、向こうから飛び込んできてくれるウェブサイトは、大変役に立つ。

なお、海外でどれだけインターネットが使えるのかを疑問に思う向きもあるかもしれないが、電気や水道、鉄道・道路といった大工事が必要な旧来のインフラに比べ、既存インフラに手を加えることで整備出来るインターネットは、普及のスピードが格段に速いため、各国間の差はすぐに縮む傾向にある。アジアにリアルの販売・サポート網を整備するには少なくとも数年を要するが、ウェブを通じて充実した情報を提供することならば、数ヵ月後にでも始められるのである。

ウェブサイトの見た目や操作感、そしてコンテンツが与える印象が企業のブランドを表現するものだとすれば、本社からのブランドコントロールを効かせやすいのもウェブサイトの特徴だ。サイトの構造やデザイン、コンテンツについては、本社から供給もしくはガイドライン提示することで、一定の品質を確保することが出来る。日本の裏側のブラジルサイトであっても、その出来はいつでも瞬時にチェックすることが可能なので、目も行き届き易い。また、看板やカタログなどのリアルメディアでのブランド表現は、一度作成してしまったものを作り直すには手間やコストがかかるが、ウェブサイトの場合、相対的には低コストでやり直しが効く。BtoB企業に多い本社集約型のウェブ運用ならば、本社の一存で変更することも可能だ。

そもそもウェブサイトには、時空の制約を受けないという特徴がある。また、情報配信先が広範囲であればあるほど、リアルメディアと比べたコストの優位性は際立つ。どこにいるかわからない顧客を見つけ出す、低コストで本社の意思を反映し易いこのメディアを上手く活用すれば、海外でのリアルのコミュニケーションチャネルの整備の遅れを大きく埋めることが出来るのである。

グローバルウェブの類型

BtoBメーカーのグローバルウェブの類型は、大きく2種類に分けられる。売上が数千億円規模の場合、本社が一元的に管理していることが多い。各国の売上規模からして、それぞれにしっかりしたサイトを維持する体制を作ることが難しいこともあるが、BtoB企業の製品はBtoCと異なり、世界共通仕様であったり、ローカル仕様があっても大きな違いがないために、日本で一括して製品データを管理・供給しやすいことが背景にある。提供すべき情報が国内外でほとんど変わらなければ、ウェブサイトそのものは1つで、それを多言語展開することになるが、この形は、地域ごとに仕様や型番、名称が異なるBtoCではあまり見られない。

一方、売上が五千億円を超えてくると、各国での事業規模も大きくなってくるので、個々のサイトを持つ必要性が出てくる。このローカルサイトのあり方には、欧米と日本のコーポレートガバナンスの違いが反映されており面白い。

欧米企業の海外展開はトップダウンによる本社コントロールの下で進められるが、ウェブサイトでも同様で、ローカルサイトも本社の強いコントロールの下に置かれていることが多い。翻って日本のメーカーの海外展開では、製品の品質が良いために、本社があれこれ言わずとも、自然に市場に受け入れられてきた側面がある。その結果、日本企業では、様々な事を現地任せにする傾向が強い。そしてウェブサイトも現地任せとなっているため、その品質はかなりばらついている。これはデザイン面の事だけでなく、コンテンツのバリエーションや深さ、機能、操作感、そして更新の頻度などを含む。ばらつきが即低品質ということではないのだが、各国のウェブサイトは、それぞれのウェブ担当者のスキルと意欲に依存しており、品質の継続性についてはやや不安定と言えるだろう。

第1回 ウェブ活用の現状と可能性
第2回 企業購買プロセスのウェブ化(1)
第3回 企業購買プロセスのウェブ化(2)
第4回 BtoCウェブサイトに学ぶ
第5回 連結視点とグローバリゼーション

記事のPDF版はイントリックス株式会社で提供しています

※この記事は、社団法人日本産業広告協会(IAAJ)の発行する月刊誌『産業広告』に掲載の連載を、著作権者の許諾を得て転載しているものです。

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