BtoBメーカーのウェブ活用

BtoBメーカーのウェブ活用が進まない理由

BtoBメーカーのウェブ活用が進まない理由

ただし残念ながら、日本のBtoBメーカーのウェブサイトを見渡すと、制約のない情報発信にせよ、機能提供にせよ、その特徴を存分に活かしたウェブサイトはあまり見当たらない。先述の営業マン重視のカルチャーもその一因だが、その他にもいくつかの理由がある。

1つには、長期的なウェブ戦略が存在しないことが挙げられよう。これはBtoB、BtoCを問わない問題だが、ウェブ活用のプレゼンスが企業の中で急速に上がる中、ウェブ担当者は日々のメンテナンスに精一杯で、自社の事業にウェブをどう絡ませていくのかということを、じっくりと考える余裕がないのが実情だ。

2つ目に、主管部署の問題がある。ウェブサイトは1990年代半ばから企業に使われるようになった新しいメディアだが、社外と広くコミュニケーションできる側面が広報に近いと解釈されたことから、コーポレートコミュニケーション系の部署が主管していることが多い。結果的にどちらかと言うと、IRをはじめとするコーポレートの情報配信やブランディングに絡む施策が中心で、いかに多くの人に見てもらうか、即ちアクセスを集めることに力点を置いている傾向が見られ、個々の製品情報提供のあり方については、事業部に任されている状況がある。

3つ目に、企業のウェブ活用の議論が、依然、購買プロセスの前工程に偏っていることが挙げられる。つまり、ウェブサイトに顧客を呼び込む施策については、検索エンジン対策やリスティング/バナー広告、CGM(Consumer Generated Media:インターネット上の口コミメディア)と他メディアとの連携など、様々な方法が議論されている。しかし、ウェブサイトに来た顧客に製品のことを深く知ってもらうためにどのようなコンテンツや機能を掲載するかについては、それほど話し合われていない印象がある。特に双方向性機能については、製品のデータベースが必要になるケースもあるなど、コスト的にも期間的にも負担がかかるため、こうしたサイト内でのおもてなし施策よりも、比較的低予算で短期に実施が可能な呼び込み施策に力を入れがちとなる状況がある。

ウェブ活用に向けて:ロードマップづくりからはじめよう

このように、BtoBメーカーのウェブ活用は様々な理由から、まだ発展の初期段階にある。だが、グローバルな競争の激化に加えて景気の出口が見えない今、多くのBtoBメーカーでは、これまでのような営業体制を維持できなくなりつつあり、効率化への要請は強まるばかりだ。

一方で、ウェブサイトの社会的プレゼンスは高まり、何を調べるにもまずはウェブから、という行動パターンが定着した。BtoBメーカーにおいてもファーストコンタクトはウェブ経由という状態になりつつある。呼び込み策だけでなく、ウェブサイトそのものの充実化を真剣に考えるべき時期に来ているのではないだろうか。

ただし、ウェブサイトの多様な特徴全てを一気に活かすことは現実的ではない。まずは顧客の検討・購入プロセスを整理し、それぞれの施策がウェブでも可能なのか、ウェブでやるとすればどんな形態がありうるのかをチェックされたい。日本産業広告協会が提唱するBtoBの購買プロセスモデルであるASICA(Assignment/Solution/Inspection/Consent/Action)や電通のAISAS(Attention/Interest/Search/Action/Share)などを参照すると良いだろう。ウェブで従来と同品質の情報伝達ができるならば、顧客にとっての選択肢を増やす意味で実施すれば良いし、施策によっては、これまでのメディアを上回る、もしくは不可能だった品質が可能になるケースもあるはずである。先述のように、購買プロセスの前半におけるネット施策は広く検討されているため、後半、つまりウェブサイトに呼び込んだ後にどのようなコンテンツ・機能を提供できるのか、徹底的に洗い出してみたい。

次に、リストアップされた各施策に、効果や実現性、コストなどで優先順位を付け、中長期のロードマップに落としてみよう。企業内で現実性をもって受け入れられるためには3ヵ年程度の計画に収めることが良かろうが、全施策を実施し、全社に根付かせるためには5年から10年はかかるというのが、筆者の感覚である。いずれにせよ、こうしてロードマップに可視化することができれば、社内の関係者にウェブの可能性と、それを活かし切るには時間がかかるということを理解してもらうことが出来る。

企業内でのウェブの存在感は確実に向上しているが、そのスピードに人員増が追いついていないのが実態だ。そのため、ウェブ担当者はどうしても緊急度の高い、日々のメンテナンスに集中せざるを得なくなる。長期的にウェブをどう活用するのかを徹底的に考えてみる必要性を感じつつも、そうなってしまっていることだろう。自社の事業にウェブがどこまで使えるのか、ロードマップに落とす作業を通じて、徹底的に考え抜いてみることをお勧めする。

第1回 ウェブ活用の現状と可能性
第2回 企業購買プロセスのウェブ化(1)
第3回 企業購買プロセスのウェブ化(2)
第4回 BtoCウェブサイトに学ぶ
第5回 連結視点とグローバリゼーション

記事のPDF版はイントリックス株式会社で提供しています

※この記事は、社団法人日本産業広告協会(IAAJ)の発行する月刊誌『産業広告』に掲載の連載を、著作権者の許諾を得て転載しているものです。

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