企業ホームページ運営の心得
ツイッター成功事例の裏を読む。デルの成功事例はたった2千円

Twitterの商用利用その前に……成功事例を別角度から見ると違った事実が見えてきます
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百伍十八

ツイッターで企業も変わるか

※注釈:通常売価1,000円の商品をセール時1,500円に設定すると、30%OFF価格は1,050円となり実際は50円の値上げとなります。

全品30%引きというセールを見て「お得」と無条件で飛びつくのは危険です。表示売価が通常売価より50%高ければ実際は値上げだからです。単純にこの方法を用いると法に触れますが、「国内産」と表記している「鶏肉」を、「●●産若鶏」とすれば通常売価が変わったとしても違法と断じるのは難しくなります。

都合の良い数字、情報を組み合わせる「情報加工」は書籍、雑誌、テレビなどの常套手段で、見つける度に「上手いなぁ」とニヤリとしてしまいます。それは今「大ブレイク中」のツイッターでも。今回は商売視点で、ツイッターに見る数字の背景を探ります。

ちなみにブロイラーと呼ばれる「食肉用の鶏肉」の大半は、臭みが少なく肉質が柔らかく、なにより「育てる期間(コスト)」が少なくてすむ「若鶏」です。

デルの成功事例を解き明かす

ツイッターの成功例で真っ先に挙げられるのが、ツイッター経由で2年間に300万(米)ドル売り上げたパソコン通販の「デル」です。しかし、300万ドルの成功も、総売上と比較すると途端に色褪せて見えてきます。

米国デルの2009年度通期(2008年2月から2009年1月まで)の売り上げは約611億ドル。前年度もほぼ同じ水準でしたので、ツイッターの成功例が話題になったのとほぼ同時期の売り上げは1,222億ドルとします。するとツイッターによる売り上げはわずか0.002%となります。これは年間1億円の売り上げしかない中小企業に置き換えれば、年間2千円ちょっとの売り上げが増えただけに過ぎません。またビジネス視点でみれば、著名企業である点や、ツイッター利用者が顧客となる「パソコンメーカー」であることと成功の因果関係を無視できません。もちろん「2,000円の売り上げ増加にも取り組む営業姿勢」は注目すべきですが。

成功伝説につく尾ひれ

続いて見かける成功例が、米国ニューオリンズのピザ屋「ネイキッドピザ」の事例です。ツイッター特集の週刊ダイヤモンド(2010年1月23日号)によると、年間2,000ドルから3,000ドルの広告費を使っていたのをツイッターに切り替えたところ、開始初日の売り上げのうち15%がツイッター経由となり、1か月後には68.8%の客がツイッターを見て電話をかけてきたとあります。開始初日からピザ屋の「ツイート(投稿)」を「地元客」が知っていたという不思議な記事です。

看板を書き換え、ツイッターのアカウント入りチラシを配布したなどの「事前準備」が仮にあっても触れないことで、ツイッターの手柄話を際だたせる「情報加工」です。

また、広告費の上限3,000ドルとは年間約27万円、つまり月に2万2,500円ほどです。広告業界に伝えられる「目安」として、適切な広告費は売り上げの3%という説があります。そこから逆算すると「ネイキッドピザ」の月の売り上げは75万円弱と推測されますが、肝心の「売り上げ」が伸びたという記述はありません。

宅配とニューオリンズピザ

さらに日本の感覚からみれば「ネイキッドピザ」の広告費は少なすぎます。日本の宅配ピザの場合、一店舗当たり最低でも月平均2~3万部のチラシを使用します。「メニューチラシ」を新聞に折り込むと最も安い都内でもB4版で1枚約3円かかり、ポストに投函するポスティングは同額かそれ以上の単価で、さらに印刷代が別途必要です。するとどれだけ安く見積もっても、月に10万円、年間で120万円の広告費がかかります。ドル換算では1万3,000ドル以上となり、ニューオリンズのネイキッドピザとは1万ドル以上もの開きがでます。この広告費の違いがビジネスモデルに与える影響は深刻です。

……すでにお気づきかも知れませんが、食文化も含めた環境が違う日本の宅配ピザとニューオリンズのピザ屋を単純比較することも無理な話。本節は「ネットビジネス」を論じる際に、こうした「地域性」を棚上げして記事をまとめていることへのオマージュです。

もともと注目されていた商品

次は日本国内に目を向けます。ツイッターのヘビーユーザーなら誰もが知っている「ドロリッチ」。グリコ乳業のチルド飲料のシリーズ名で、「ドロリッチなう」というつぶやきからヒットとなったとネット関係各所で報じられています。しかし、私がこの名前を知ったのは経済番組で、番組名は失念したのですが、味の特徴を伝えるユニークなネーミングが消費者のこころを掴んだという切り口でした。また「日本食糧新聞」によれば、発売当初から好評だったことが伺えます。

同じく国内では、冷凍食品の「加ト吉(現在はテーブルマーク)」も並び称される成功例です。ツイッター上で「うどん」に関するつぶやきを見つけては積極的にコミュニケーションをとったことが話題となり、6,000人の「フォロワー」を作ったといいます(@KATOKICHIcoltd)。なるほどツイッター的には成功といえるでしょう。

しかし、どちらの記事にもビジネス成功指数といえる「売り上げ」や「粗利」、「増加顧客数」が記されていません。もちろん、認知向上やブランディングといった中長期的な戦略を紹介する記事だというのならば否定しませんが。

本当の全部を言わない

ツイッターで「マスゴミ」という単語を見かけます。ゴミのようなマスコミという蔑称で、偏向報道や情報操作を指してのことです。「マスコミはウソばかり」という極端な発言も珍しくありませんが、正しくは自説の展開に都合の良い情報をチョイスして「記事」を練り上げることが多く「本当の全部」を言わないだけです。自社の論調に都合の良い情報を採用する傾向があり、これは朝日新聞と産経新聞を読み比べるとご理解いただけることでしょう。

「ネット」も同じです。ツイートやブログも趣味嗜好から無意識に情報を取捨選択しており、別名「ソーシャルフィルター」と呼ばれることも。「情報加工」により隠された「本当」を見つけるコツは「数字」です。数字は状況設定や、切り取り方で姿形を変えますが、解き明かし並べ直すことで別の角度から見た「事実」が見えてきます。

本稿執筆直前、スーパーマーケットの精肉コーナーで、鶏肉の表示価格が前日と違うことに気がつき、「事実(ネタ)が見えた」とニヤリと笑う私がいました。

今回のポイント

都合の良い数字だけが採用される。

掲載されている数字の「背景」に注目する。

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