衣袋宏美のデータハックス

4象限マトリクス分析はロングテールなWebの実データではビックリの結果になる [アクセス解析tips]

4象限マトリクスを使ってロングテールデータを実際にプロットしてみると……。
衣袋宏美のデータハックス

コンサルが多用する4象限はわかりやすいが…

4象限マトリクスというのは、横軸、縦軸をそれぞれの中心点で交差させた図表のことだ。図1は直帰率を縦軸、入口回数を横軸にとってWebサイトの現状と改善方法を説く際に使われる4象限マトリクスである。コンサルタントが好んで使うことが多い。

たとえば図1は、Webサイトのページを「入口となる回数が多くて直帰率が高いページ」「入口となる回数が多いが直帰率は低いページ」「入口となる回数が少ないが直帰率が高いページ」「入口となる回数が少なく直帰率も低いページ」の4つに分類して、それぞれのページに適切な対策を施すことで、サイトを理想的な状態に持っていこう、というわけだ。

直帰率と入口回数から入口ページの改善施策に結びつける
図1:直帰率と入口回数から入口ページの改善施策に結びつける

上図では、「入口となる回数が多い(たくさんの人が訪れている)が、直帰率が高い(すぐに帰っている)」右上の象限をまず改善することが重要であることが一目でわかる。ここの直帰率を下げることが最も効率のよい改善施策だ。「入口となる回数が少ない(訪れる人の数は少ない)が、直帰率が低い(来た人をつかまえている)」左下は入口回数を増やすようにすることも重要であることを説いている。非常に納得のいく説明である。この分析と施策自体には文句のつけようがない。

また図2は、「入口回数」を「検索件数」に置き換えたもので、基本的に図1と同じことを言っている。これも言っていることは素晴らしい。

直帰率と検索件数から検索フレーズの改善施策に結びつける
図2:直帰率と検索件数から検索フレーズの改善施策に結びつける

実際、多くのセミナーやコンサルティング、指南書で同様の事が繰り返し書かれている。さてこういう分析方法と改善策を聞いた皆さんは、よいことを聞いたと思うだろう。しかし自分のサイトですぐ実際にやってみることはあまりないのではないか。

しかし、実際にデータをプロットしてみると、サイトの性質によっては、特にサイト全体のデータを対象としてそのままプロットするだけはうまくいかない場合もあるのだ。

ロングテールな指標はそのままでは4象限に当てはめられない

ロングテールデータ」のところでお話ししたように、入口ページや検索フレーズのデータは、ロングテールになっているデータである。ロングテールということは、下位は団子状態、上位は少ししかばらけてないというデータだ。こういったデータをサイト全体からもってきて4象限にプロットすると、恐るべき偏りが一目瞭然となる(図3)。

ロングテールデータの入口回数と直帰率の分布例
図3:入口回数と直帰率の分布

このサイトはトップページの入口回数が最も多く、直帰率が非常に低い優秀なサイトであるため、通常問題とされるような「入口となる回数が多くて直帰率が高いページ」(右上)がそもそも存在しない。図4のように横軸を対数スケールにすれば、少し問題部分を浮き彫りにできる。しかし右上にプロットされた10程度のランディングページにもいろいろと事情があって、そんな簡単には改善できないかもしれない。

入口回数と直帰率の分布
図4:入口回数と直帰率の分布(横軸だけ対数グラフにしたもの)

さて困ったものだ。Webサイトの分析に当たって、我々はこの4象限マトリクスというツールをどう活用すべきなのだろうか?

セグメント、ベンチマーク、トレンド志向でいこう

こういった場合に威力を発揮するのが、セグメントであり、ベンチマークであり、トレンドだ。

まずはセグメントから始めよう。つまり、サイト全体のデータを4象限にプロットするのではなく、あるセグメントのデータに限定してみるのだ。どのようにセグメントするのが良いかはサイトの性質によるので、今まで何回もお話ししてきたセグメントの解説を参照してほしい。

ECサイトであれば、商品によってWebページのアクセスのボリュームもコンバージョン率もピンからキリまであるだろう。であれば、商品別にセグメント分けをして、それぞれの中で4象限にプロットしてみてはどうだろう。複数ブランドの情報ページがある企業サイトで、すべてをごっちゃにして優劣をつけても仕方ないので、ブランド別にセグメントするなどしてからこの4象限マトリクスを活用しよう。

またその上で相対的な位置関係を知りたいなら、平均からの乖離を見るベンチマークを使ってみるのも手だ。直帰率ならば図3の例(縦軸でのデータのばらつき)を見てもわかるとおり、べき乗則にのっとった分布をするわけではないので、偏差値的な見方をしてもそれほど悪くはない。これこそ、自社の平均(セグメント化した上でだが)と比較してどうかという相対的比較から考察を巡らせることが重要だ。

図6は、参照元別の直帰率を自社サイト平均と相対的に比べてどうかを示したGoogle Analyticsの出力例である。

グーグルアナリティクスの参照元ドメイン別の直帰率
図5:グーグルアナリティクスの参照元ドメイン別の直帰率(サイト平均との比較)

余裕があれば、これらの位置関係が時系列でどう変化しているのかを見ていくことができれば、さらによいだろう。

まとめ

  • コンサルが多用する4象限はわかりやすい
  • ロングテールな指標そのままでは4象限は使えない
  • セグメント、ベンチマーク、トレンドを組み合わせてうまく分析しよう
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