【小説】CMS導入奮闘記――吉祥寺和男の挑戦

RFPがすべての始まり――吉祥寺が犯した失敗/【小説】CMS導入奮闘記#4

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コラム大月のCMS評価
CMSではクリエイティビティや柔軟性は損なわれてしまうのか

物語の中で銘光社の社長である大月は、CMSに対するネガティブな意見をいくつか述べている。ここで、その意見の内容を具体的に検証しておこう。

フォーマットをあらかじめかっちり決めて、そこに情報を流し込むってやつだろう

CMSとは、確かにある程度のフォーマットをあらかじめ決めておくものだが、なぜそれが必要かを考えることが大切である。たとえば、社内の各部署がまったく異なるコンテンツ制作体制や情報更新フローのもとでウェブサイトの運用を行えば、企業としての統一したブランドイメージをウェブサイトで構築することは困難になる。

フォーマットをある程度決めて、トーン&マナーを揃えることで、ウェブサイトで伝えるイメージ、メッセージ、コンセプトなどを統一していくこと。それがCMSの大きな目的のひとつである。

そう考えれば、大月の指摘は、むしろポジティブな事実としてとらえられるべき内容と言えるだろう。

クリエイティビティはなくなるし……

広告的、アート的なクリエイティビティが求められるページについては、CMSを用いない方がいいのは事実である。物語の中で吉祥寺も決断しているように、キャンペーンページやマス広告と連動したコンテンツなどは、CMSでの運用から外されるケースが少なくない。

しかし、「ウェブサイトにおけるクリエイティビティとは何か」ということについては、意識的である必要がある。ウェブサイトのクリエイティビティ、すなわち創造性や独創性は、グラフィックやデザインなどの「見た目」やアイデアのみに限定されるものではない。わかりやすいユーザーインターフェイス、スムーズな導線、メニュー構成といった「使いやすさ」もまた、ウェブサイトのクリエイティビティにおける重要な要素である。「クリエイティビティがある」ことと、単に「かっこいい」ことはイコールではないことを常に念頭に置いておきたい。

運用のルールはガチガチになるし……

多くの企業は、運用のルールの不在とそれがもたらす混乱に頭を悩ませている。CMSは、そういった「ぐちゃぐちゃ」の状態を解決するためのツールだ。CMS導入によってウェブサイトの運用ルールができ、それによって現場の作業負荷が下がり、情報発信もスムーズになる。また、サイトの更新内容の共有、引き継ぎといった作業が格段に楽になり、担当者が変わっても運用が停滞することはなくなる。

したがって、CMSがもたらすルールにはプラス面の方が圧倒的に多いと考えるべきだ。もちろん、ルールは「ガチガチ」であるべきではない。ウェブサイトに関するすべてをCMSのルールのもとに統合しようとするのは、必ずしも正解だとはいえない。

金をかけて導入したところで、本当に使いこなせるかどうかもわからん代物だよ

CMSを導入したものの、うまく使いこなせていないというケースは確かにある。たとえば、先に述べたように、CMSに過剰な要件を求め、ルールを厳格にしすぎると、運用体制はしばしば破綻する。

ストーリーにもあるように、重要なのは、目的とCMSの機能のマッチングであって、目的に応じたCMSを選定し、それを目的解決のために使うというのが正しいCMS活用のスタンスである。また、現実的な運用ルールをつくることが大切で、たとえば「社内の全部署、全社員がサイトの更新を必ずCMSで行う」とか、「5人の承認がないと情報をサイトにアップすることができない」といったルールによって、CMSが無用の長物になってしまうことがある。身の丈に合わないCMSを選び、身の丈に合わない運用を行おうとすれば、大月が言うように、CMSは「本当に使いこなせるかどうかもわからん代物」になる可能性が高いということだ。

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