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Twitterは感染症の流行を未然に検知するシステムになる

TwitterやFacebookは、伝染病の「流行」を防ぐプラットフォームになる。

いつもと変わらぬ火曜日の午後、カリフォルニア郊外では、学校を病欠した16歳の少女ジェニーが、ぼんやりとベッドに座って鼻をすすりながらFacebookを見て回っている。

ちょうど同じころ、約3200キロメートル離れたシアトルでは、大学を中退した野心的な22歳の青年ケビンがTwitterで喉の痛みをぼやいている。

やはり同じころ、地球の反対側では、ロンドンに住む40歳のシングルマザーが風邪薬を買おうと、携帯電話でグーグル検索をして最寄りにあるBootsドラッグストアの場所を調べている。

200年前の人が今の地球を見たとしたら、まったく別の星に見えるはずだ。文化の変容と技術の進歩により、僕らの目に映る光景は著しく変化してきた。

そうした変化のうちのごく一部を占めているのが、ソーシャルメディアと検索エンジンの利用というわけだ。

すでに生活に入り込んでいるソーシャルメディア

日を追うごとに、十代の若者たちはFacebookを利用する親たちについて文句を言うようになり、親たちは自分たちのネットを使った社会生活に干渉する子供に対して不満をこぼすようになっている。喉の痛みや鼻水といった小さな出来事も、洪水やハリケーンといった大きな出来事も、親子で共有している。ネットを使ったコミュケーションは僕らの生活に入り込み、今では仕事や教育、エンターテインメントにまで深く組み込まれるようになった。

でも、どうしてこんなことが起きたんだろう? はっきりとはわからないけれど、いくつかのパターンが認められる。

Twitter、グーグル、Digg、Facebookといった企業の場合、それはカリフォルニアに集まった一握りの企業家たちから始まり、彼らの発想が「バイラル」になって、世界中に広がった。パターンの1つを示すのが、この「バイラル」(viral)という言葉で、バズワードにもなった。この言葉は一般的に、概念や技術がウイルス(virus)のように拡散する様子を表現するときに使われる。「ウイルスのような拡散」という表現がすばらしいのは、指数関数的な広がりを表しているからだ。いったんバイラルな状態が始まると、ネズミ算式に増え続け、もはや何者にも止められなくなってしまう。

Viral is a thing that happens, not a thing that is
Faris Yakob

バイラルは、発生するものであり、存在するものではない
ファリス・ヤコブ

この記事を書くきっかけになったのは、この「バイラル」というバズワードに大いなる皮肉がこもっているのに気付いたことだ。というのも、ソーシャルメディアや人気のあるハイテク企業にバイラルな性質があるからこそ、逆説的に、僕らは本物のウイルスやパンデミック(感染症の大流行)のバイラルな蔓延を防げるだろうと思ったのだ。

これは別に新しい考え方ではない。多くのワクチンは、来たるべきウイルスと戦う不活性のウイルスにほかならないんだから。

感染症を流行前にみつける地球規模のシステム

2006年、感染症を大流行の前に特定できる新しい地球規模のシステムを提唱したラリー・ブリリアント博士という人が「TED賞」を受賞した。ブリリアント博士(Brilliant、つまり頭脳明晰という姓は本名で、作り話ではない)は、地球から天然痘を根絶させることに成功した功績で世界的に知られる人物だ。TED賞を受賞したシステムのヒントになったのは、カナダにある「Global Public Health Intelligence Network」(GPHIN)というシステムの潜在力だった。GPHINは、ウェブクローラーとウェブアナライザから成るシステムで、ウェブベースのコンテンツを調べ回って「熱」「咳」「疲労感」「病気」「インフルエンザ」といったキーワードのトレンドを探り出す。この方法を利用して、GPHINは、他のどのシステム(世界保健機関が使用しているシステムも含む)より6週間も早く、SARS発生の兆しを検知することに成功した。関係者たちは迅速な対応を見せて、発生地域を隔離し、世界的な大流行を未然に防止できたんだ。ブリリアント博士は後に、これが可能になった理由として次の2つを挙げている。

  1. 早期発見
  2. 迅速な対応

ブリリアント博士は、こうしたシステムの構築を提唱して間もなく、新しく創設されたGoogle.orgのエグゼクティブディレクターに就任した。この新たなグーグルの慈善事業部門には、グーグルの利益全体の1%が資金として提供された。ブリリアント博士は、こうしたリソースを活用して、早期発見システム「Google Flu Trends」を構築した。このシステムは現在、インフルエンザの流行を予測するために利用されている。ブリリアント博士は、彼自身が提唱したシステムを構築し、世界はこのシステムのおかげで以前より良い場所になったんだ。

さらに優れた病気の流行感知を……

残念なことに、話はここで終わらない。ブリリアント博士はその後グーグルを離れ、別のプロジェクトに関わることになった。GPHINとGoogle Flu Trendsは命を救い続けているけれど、それらは氷山の一角に過ぎない。グーグルは今や、成長を続けるリアルタイムウェブに君臨する新しいライバルたちに遅れを取っている。TwitterやFacebookの近況アップデートは、更新されるそばから古い情報となり、グーグルのインデックスはその速度についていけない。僕らは、マイケル・ジャクソンの死でそうした現象を目の当たりにしたし、今後もまた同じことを目撃するだろう。

ソーシャルメディアは、世界の歴史において最も優れた早期発見システムになる可能性を秘めている。従来のどの検索エンジンよりも高速かつ機敏で、ユーザーデータへのアクセス能力もすぐれている。Facebookには、誰が病気にかかっているかを知るのに必要なデータがあるだけでなく、これらの罹患者と誰が最も接触しやすいかを予測するのに必要なデータもある。Twitterには、同じような予測をするのに役立つデータがある(ただしTwitterのユーザー同士は、Facebookのユーザー同士に比べて物理的に一緒に過ごす時間が短いため、やや正確さに欠ける)。さらに、携帯電話や無線LANサービスを使ってどこからでもアクセスして更新できるという利点が加わる(モバイルアプリを使ってFacebookにアクセスしているのはFacebookユーザーの12%に過ぎないのに対して、Twitterリクエストの90%はAPIリクエストが占めている)。

これら2つのソーシャルメディアプラットフォームは、それ自体の機能によって、普通の人々がリアルタイムで症状を報告することを可能にしている。この報告を受けて、疫学者や統計学者といった専門家たちは脅威を特定でき(早期発見)、同じコミュニケーション経路を通じて、大流行する前にウイルスを隔離する最善の方法を協力者たちに指示できる(迅速な対応)だろう。こうした理論上のシステムに、他のソーシャルメディアプラットフォームや最新の検索エンジンの機能が追加されるとしたら、専門家たちは、リアルタイムで地球規模のコミュニティを指揮できる史上初のシステムを手にすることができるかもしれない(Diggで記事を読んでいる人の多さや、Google Adsenseの広告を毎日目にする人の桁外れな多さを考えてみよう)。

理論や予測は役に立つけれど、口頭で交わした契約みたいなもので、そのままでは絵にかいた餅に過ぎない。僕らにとって幸運なことに、この理論上のシステムは今日では現実のものになりつつある。人々はすでに、FacebookTwitterで自分の症状を報告している。同様に、疾病の専門家たちや協力者たちはすでにソーシャルメディアを活用し、救援活動を組織化している。これらのプラットフォームを監視する非政府系の統一システムは現時点では存在しないが、必要な要素はすべて、しかるべき場所に配置されている。

ブリリアント博士は、感染症の大流行を予防するには早期発見と迅速な反応という2つの段階が必要だと述べていた。ソーシャルメディアは、博士が想像できなかった程度にまで第一段階(早期発見)を達成している。さらにすばらしいのは、人々がこのために一切コスト負担を強いられていないことだ。

世界は、インターネットと並行して変化しつつある。君が今度「無意味な」近況アップデートについて誰かがこぼしているのを聞いたときは、時間をかけてこのことを説明してあげよう。ソーシャルメディアは、僕ら個人個人から力を得るものであり、それゆえに、君には望ましい変化を生み出す能力があるんだ。

◇◇◇

更新:記事を公開してから、コメント欄で実に健全な議論が交わされたので、ここで紹介したいと思う。意見を寄せてくれたオリーブラッジに感謝。

誤った警告はどうする? ソーシャルメディアでは、まともな情報の中にたくさんのノイズが混じるだろう。良いアイデアと同じように、悪いアイデアもウイルスのように拡散する。妄想や誤った情報がメディアやネットに蔓延してしまうんだ。

それなら、医療専門家たちは、誤った情報やノイズがたくさん入り込がちなシステムをどう使えばいいのだろう? 鍵になるのは、こうした限界を認識することであり、それを考慮してシステムを設計することだ。GPHINが大成功を収めたのは、だれかが「咳」という言葉を書き込んだらその都度メールを保健機関に送ったからではない。集積した情報を使って本当のトレンドを把握したからこそ効果的だったんだ。医師をはじめとして、本物の生きた人間がそういう情報に目を通し、それに掘り下げて調べる価値があるかどうかを判断する。普通に予想すると、このようなシステムのフロントエンドは、関連性のある投稿をすべて表示するTwitter検索のようなものになるだろう。ただし、これはフロントエンドの見かけの話であって、内部の仕組みはまた別だ。むしろ僕は、より正確な情報を表示するという点ではGoogle Flu Trends(集積情報)が勝っていると思う。Google Flu Trendsでは、トレンドを地域別に表示でき、ソーシャルメディアの助けを借りれば、社会的なグループ別でも表示することもできるようになるからだ。

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