ゼロ円でもできる!? 省コストユーザビリティ向上術
カードソートで楽々情報アーキテクチャを実現

『カードソート』は超ローテク手法だが、議論に行き詰まった設計チームに一筋の光を与えてくれるだろう。
ゼロ円でもできる!? 省コストユーザビリティ向上術 ~ディスカウント・ユーザビリティ入門 発想転換、“ディスカウント・ユーザビリティ”のススメ

情報整理のテクニック「カードソート」

オンライン書店「アマゾン」は、本・コミック・雑誌、DVD・ミュージックといった10個のトップレベルカテゴリに分類されている。さらに、たとえば和書ならば、文学・評論やノンフィクションなど20以上のカテゴリに分類されており、この分類はさらに細分化されていく。

このように情報の階層構造を持っているのはWebサイトだけではない。コピー機も携帯電話もDVDレコーダも、ほとんどのユーザーインターフェイスは階層型メニューを採用している。もし、論理的な情報構造を持たず、機能や情報が無秩序に画面に配置されていたらユーザーは大混乱に陥るだろう。

しかし、階層構造を作る作業は、暗礁に乗り上げてしまうことが多い。どこに情報を配置すればよいのか、設計チームの意見が集約しないのだ。たとえば、オンライン書店でWebサイト設計に関する書籍はどのカテゴリに入れればよいのだろう? 科学・テクノロジー? コンピュータ・インターネット? それともアート・建築・デザイン?

そんなときに役立つ手法が『カードソート』だ。情報を書き込んだ紙のカードをユーザーに分類してもらうという超ローテクな手法だが、議論に行き詰まった設計チームに一筋の光を与えてくれる。

ユーザビリティ人名図鑑(その4)
ルイス・ローゼンフェルド
図2 ルイス・ローゼンフェルド
情報アーキテクチャ入門
図1 『情報アーキテクチャ入門』(オライリー・ジャパン、著:ルイス・ローゼンフェルド/ピーター・モービル、訳:篠原稔和他)

ルイス・ローゼンフェルド

Webデザインに図書館情報学を応用した情報アーキテクチャの先駆者。彼の『情報アーキテクチャ入門』(オライリー・ジャパン、著:ルイス・ローゼンフェルド/ピーター・モービル、訳:篠原稔和他)はWeb開発者のバイブルの1つ。コンサルタントとして活躍する一方、出版業も手がけている。

クローズド・カードソート

カードソートには大きく分けて『クローズド』と『オープン』という2種類の方法がある。

クローズドは「見出しのあるカードソート」とも言う。カテゴリ名がある程度決まっているときに、そのカテゴリ名の有効性を検証し、コンテンツをそれらのカテゴリにどのように割り振ればよいか検討するために実施する。

まず、色付きのカード(ポストイットなど)に「製品一覧」「会社概要」といったカテゴリ名を書き込み、ホワイトボードなどに貼り付ける。次に、コンテンツの名称や簡単な説明を白いカードに書き込んで、このカードをユーザーに渡してカテゴリ名の下に貼り付けてもらう。そのときに、ユーザーがなぜそのカテゴリに分類したのか、なるべく理由を話しながら作業をしてもらおう。

意味不明のカテゴリ名があればユーザーはすぐ指摘してくれるし、設計チームの想定とまったく異なるコンテンツばかり配置されれば、ユーザーがカテゴリ名の意味を誤解していることがあきらかになる。また、区別が付きにくい2つのカテゴリ名があれば、1つのコンテンツをその2つのカテゴリのどちらに配置すればよいのか、ユーザーは悩むことになるだろう。

コンテンツを書いたカードの動きも重要なデータだ。ある程度カテゴリ名の完成度が高ければ、大半のコンテンツカードはすぐに行き先が決まるだろう。しかし、なかなか行き先が決まらなかったり、いったん配置されたカテゴリから他のカテゴリに移動させたりするカードもあるだろう。

最後まで行き先が決まらないカードがあるということは、現在のカテゴリ名では情報構造全体をカバーしきれていないと言える。カードの行き先が変わるということは、独立であるべきカテゴリの間に何らかの関係性が残っているのかもしれない。

複数のユーザーにカードを分類してもらってその結果を集計すれば、同じカテゴリに配置されるカードと、複数のカテゴリに分散するカードがあきらかになる。これらのデータを総合的に分析して、改めてカテゴリ名を調整したり、複数のカテゴリから同じコンテンツにアクセスできるようにクロスリンクを張ることを検討したりすればよい。

クローズド・カードソートのイメージ図
図3 クローズド・カードソートのイメージ図

オープン・カードソート

オープンは「見出しのないカードソート」とも言う。カテゴリ名が決まっていないまったく白紙の状態で、ユーザーにコンテンツ名を書いたカードを自由に分類してもらうのだ。そして、カードのグループ分けが終わったら、それぞれのグループに自由に名前を付けてもらう。この一連の作業から、適切な情報構造に関するヒントを見つけ出すことが目的だ。

クローズドのカードソートが設計チームのアイデアの検証と改善を目的としているのに対して、オープンは非常に探索的な手法だ。

クローズドの場合は、どのカードがどのカテゴリに何回配置されたかという定量的なデータが簡単に得られるが、オープンの場合は、ユーザーによってグループ分けとそのラベリングの結果はまちまちになってしまう。オープンではユーザーの行動と発話などの定性的なデータの分析が中心だが、ある程度定量的な分析も行える。

定量的な分析手法の代表は「クラスター分析」だ。クラスター分析は、距離行列(非類似度行列)を使って、空間上の距離が近いサンプルを順番に結合して、クラスター(房)を形成する多変量解析手法だ。クラスター分析を行うとデータの階層構造を示す「樹形図」というグラフが作成されて、Webサイトのサイトマップの原型のようなものが得られるのだ(なお、クラスター分析を行うには統計解析ソフトが必要)。

もう1つの分析手法は、ユーザーが付けたラベルを名寄せするという方法だ。同じような意味を持っているラベルを1つにまとめれば、集計結果が簡単に得られるようになる。

たとえば、あるユーザーが商品に関するさまざまなコンテンツをグループ化して「製品情報」というラベルを付けたとしよう。別のユーザーは、同じようなグループに対して「ラインアップ」というラベルを付けるかもしれないし、「プロダクト」というラベルを付けるかもしれないが、これらのラベルは同値だと判断することにする。そうすれば、ユーザーによってまちまちだった分類結果が、かなり集約してくるのだ。

オープン・カードソートのイメージ図
図4 オープン・カードソートのイメージ図

新しい手法:デルファイ・カードソート

オープン・カードソートでは重要なヒントは得られるものの、そのままサイトマップが完成する訳ではない。オープンとクローズドを繰り返し実施して、少しずつ精度を上げていくのが理想的ではあるが、それでは時間がかかりすぎる。そこで新しく考案されたのがカードソートにデルファイ法を組み合わせた手法だ(この手法に関する論文(英語)のリスト)。

デルファイ法とは、主に専門家に対して意見の収集とフィードバックを繰り返すことで、将来予測を行う調査手法である。

デルファイ・カードソートは以下の手順で行う。

  • まず原型(シード)を作る
  • ユーザーに順番に任意の変更を加えてもらう
  • 結果がおおよそ収束するまで続ける

オープン・カードソートで数十枚から100枚のコンテンツカードをソーティングするのは、かなりの労力を要するが、デルファイでは「シード」があるのでユーザーの負担が軽減できる。また、オープンではユーザーの個々の結果は多様になってしまうが、デルファイでは極端な変更ではなく調整にとどまることが多い。そのため結論を得ることが比較的簡単にできる。

デルファイ・カードソートはユーザーに参加してもらうことを前提としているが、設計チームの議論のツールとしても有効だ。専門家同士でも情報構造の議論は収斂しないことが多いが、この手法を使ってメンバーが順番にサイトマップに変更を加えれば、意外と迅速に意思統一が図れるものだ。

デルファイ・カードソートのイメージ図
図5 デルファイ・カードソートのイメージ図
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連載内容
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