CMS導入活用ガイド

連載ステップ式! CMS活用 はじめの一歩
CMSの費用対効果(ROI)をKPIで体感しよう!

清水 誠 2009/5/27(水) 10:00 (7) この記事をはてなブックマークに追加(24) 印刷用印刷用
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ワークフローそのものを見直そう

ワークフローの導入により、制作スタッフだけでなくレビュー者の効率も改善されたかどうかを検証してみよう。どれくらい短時間でレビューから配信までを行えるようになったのか?

たとえば、レビューと承認、配信までのワークフローを次のように設計すると、ワークフロー全体のリードタイム(所要時間)はさらに3つに細分化できる。

ワークフローの所要時間は3段階に分類できる
図4 ワークフローの所要時間は3段階に分類できる

実は、CMS導入によって直接的に時間が短縮されるのは、(3)の「承認が終わってから配信されるまでのリードタイム」のみだ。承認後に自動で配信が行われるため、ここの時差はほぼ消滅する。また、今まで紙ベースでレビューと承認を回していた場合は、物理的な移動にともなう時間がなくなる分、(2)が若干短縮されるが、その他の作業に関してはCMSを導入したからといって短くなるわけではない。CMSへのログインやレビュー結果入力などの画面操作が必要になるため、導入後しばらくの間は以前よりも時間がかかるようになる。

リードタイムを短縮するためには、ワークフローそのものを綿密に再構築する必要がある。リードタイムを長くする要因(つまり改善の余地)は、次のようなものがある。

  • タスクの着手が遅れる
  • タスクの所要時間が長引く
  • タスク中に待ちが発生する
  • タスクが終わったのに次のタスクへの通知が遅れる

このような遅延要因を回避するため、たとえば下記のようなワークフローにすれば、リスクを減らし、管理を強化できる。

再構築されたワークフロー
図5 再構築されたワークフロー

工夫1制作者がすぐに作業に着手できるように、Webディレクターやプロジェクトマネージャがワークフロー開始の手続きを行うようにする。

工夫2突然レビュー依頼がメールで届いても時間の確保ができずにレビューの着手や実施が遅れることがある。制作の進捗を日々確認しながら、レビュー依頼できる日程がわかり次第、レビュー者に予定日時を事前連絡するようにする。この部分もワークフローに含めて自動化する、という方法もある。

工夫3レビュー者が1人しかいないと、不在や緊急対応中などのときはレビューが遅れがちとなる。予備のレビュー者を事前に設定しておく。

工夫4複数のレビュー者がレビューを行う場合は、最初に誰かがレビューを完了させた時点でレビュー完了とみなす。レビュー着手だと、後で着手したレビューに追い越される場合がある。レビュー内容の重要度に応じて、最初の2人がレビューを完成した時点にしてもよい。

実は、このワークフロー再構築は、CMSを導入しなくても実施できる。CMS導入は、コンテンツ管理に関わる仕事の方法を見直すキッカケでしかないのだ。

効率改善の結果としての知的生産性のKPI

単純作業が自動化され、効率が改善される結果、スタッフやより高次元の頭脳ワークにより多くの時間を使えるようになるはずだ。図のとおり、関係スタッフの労働時間を合計してみると、全体的にはあまり変化は見られないが、その質が変化していることが分かる。

労働時間における作業種別の内訳
図6 労働時間における作業種別の内訳
単純作業と頭脳ワークの比
図7 単純作業と頭脳ワークの比

資産蓄積のKPI

CMS導入の結果、コンテンツやテンプレートが、使いまわせる情報資産として組織のなかで蓄積されていく。この、生産ではない資産に関しても数値化をしておきたい。

  • テンプレートの数と利用頻度
  • アセットの数と再利用率

これらの指標が増加する結果、上記の効率や生産性がさらに改善されることになる。

また、コンテンツオーナー(ビジネスユーザー)が直接コンテンツの投入や編集を行えるようになる、という変化もある(ただしそれを実施するかは組織による)。

  • ビジネスユーザーが編集したページ数の合計
  • 上記(ビジネスユーザーが編集したページ数の合計)÷ビジネスユーザーの合計人数

管理が強化される結果としてのKPI

CMSによって、以前は無法状態だったコンテンツがより強固に管理される。効率や生産性だけでなく、管理の強さも数値化し、日々の推移を追いかけておく必要がある。

  • 誤情報の発信回数
  • コンテンツオーナー判明率
  • アーカイブ化(公開期間を終了し取り下げ)されるコンテンツの量
  • 希望スケジュール遵守率

総合的なKPI

最後に、上記の効果をトータルで計るための指標を紹介しておこう。

  • 運用費÷売り上げ
  • 運用費÷マーケティング費

さらに、資産が蓄積されて管理が強化される結果、次にリニューアルを行う場合にプロジェクトの費用対効果が改善されるはずだ。下記のようなKPIにも変化が見られるかもしれない。

  • リニューアルのコスト÷対象ページ数合計
  • リニューアルのリードタイム÷対象ページ数合計

今回はCMS導入の結果としての各種のKPIを紹介したが、それぞれの指標は単体で意味をなすわけでなない。複数の指標の相関関係を見ながら考察し、その結果をそえてレポートするようにしないと、数字が一人歩きして誤解を生むことがあるので注意したい。

また、導入の前後でKPIを比較するためには、導入前にKPIの設定と測定を行っておく必要がある。リードタイムや労働時間など、各スタッフの稼働に関するKPIを取得するために、工数管理(タイムトラッキング)やプロジェクト管理のソリューション導入も検討したい。Excelを作って地道に記入してもらう方法もあれば、Web上の無料サービスを使うという方法もある。

最後に、KPIは導入前後で比較するだけでなく、毎月観測し、マネージャや経営者間で共有できるような体制とプロセスを作っておくとよい。CMS導入を提案するときは、そこまでコミットしてみてはどうだろうか? 説得力が増すだけでなく、要件とゴールが明確になるため、CMS導入プロジェクト自体がスムーズに進行するようになるだろう。

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清水 誠(しみず まこと)

IA/CMS実践者。1995~2004年まで凸版印刷・Scient・RazorfishにてWebプロデュース・IA・UI設計・調査のコンサルティングに従事した後、事業者側へ転身。ビジネス・テクノロジー・デザインの融合によるイノベーションを実現すべく、日系ベンチャーの情報システム部門や外資消費財企業のマーケティングコミュニケーション部門において、IT(ECM、CMS、DAM、ナレッジ管理、カラーマネジメントなど)を活用した改善をリードした。2008年からは楽天において、Web最適化(SEO・アクセス解析・多変量解析)の標準化と全社展開を推進中。1995年国際基督教大学卒。
サイト:実践CMS★IA

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