企業ホームページ運営の心得
オーマイニュースが教えてくれる素人の限界

プロと素人ビジネスの境界線はどこにあるのか。CGMのビジネスモデルのリスクとは
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百十七

広告依存型ビジネスの限界

市民参加型メディアを謳い2006年に創刊した「オーマイニュース(2008年9月にオーマイライフに変更)」が4月24日に閉鎖します(サイト閉鎖のお知らせ)。オーマイニュースはお隣の韓国で始まった情報サイトで、訓練されたいわゆる記者ではない「市民記者」による投稿記事が売り物でした。3月末の閉鎖発表から1か月後の完全閉鎖(一部機能の停止ではなく)は、市民記者4500名(同社社長の挨拶より)を抱えるサービスとしては唐突です。それだけ切羽つまっていたということでしょうか。

報道では閉鎖の理由を「広告依存型ビジネス」の限界と指摘し、最大手であるグーグルの成長にも陰りが見えてきたと不安を煽ります。しかしそれは「収入」からしかビジネスを見ていません。限界という表現なら「素人ビジネス」のほうが的確でしょう。

素人礼賛宗教

素人ビジネスと私が呼ぶのは、ブログやSNSのように素人の参加で成立する、いわゆるCGM(Consumer Generated Media)のことです。偶発的な成功例は今後も現れるでしょうが、ビジネスプランに「素人作品」を組み入れるリスクが露呈したということです。

書籍『グーグルとウィキペディアとYouTubeに未来はあるのか?』ではアマチュアによる成功例を都合良くつなぎ合わせて持ち上げるアメリカIT業界の思想を「アマチュア崇拝カルト」と指摘します。素人礼賛の背景にはヤフー創業者のジェリー・ヤン&ディビット・ファイル、グーグル創業者のサーゲイ・ブリン&ラリー・ペイジなどの「素人なりあがり伝説」があります。しかしポール、ジョン、ジョージ、リンゴのビートルズも生まれたときからプロではなく、全国ロードショーとなった「秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE 2 ~私を愛した黒烏龍茶~」のFROGMANは島根県在住の無名クリエイターでした。しかし、「商品価値」があるものをビジネスの世界は放置してくれません。

換金するための「最適解」

「商品価値」という視点から見れば「素人礼賛」は幻想です。人気ブログは書籍という商品になり、路上ミュージシャンも詩人も絵描きも料理人も、商品価値を持つ存在は「プロ」になっていくからです。ここから「素人」でビジネスを成立させる難しさが見えてきます。ユーチューブやニコニコ動画も営業的には苦戦しています。

素人ビジネスにはもう1つの意味も含まれています。

そもそも広告型ビジネスとは景気に左右され、不況で下ぶれするのは当然です。しかし、ビジネスを支えるのはスポンサー(広告主)だけではなく、物販による利益、ファンクラブなどの会費、さらには「投資家」や「パトロン(後援者)」と様々な集金方法があります。ビジネスモデルとは「商品価値」を換金するための「最適解」に過ぎず、「広告」だけがすべてと盲信するのは「素人の商売(ビジネス)」です。

ちなみにIT界では「投資家」や「パトロン」からの集金にやたら長けている人が「ネットビジネス」を語るので厄介です。「物販」では使えないことが多いので。

10円玉の使い方

実は私も過去に「素人礼賛」しており、拙いブログやメルマガの文章を「味」と開き直っていました。学生時代の執筆経験は「反省文」ぐらいで、新聞記者や大学教授のようにお上品なものは書く気もなく、その技術もありませんでした。そんな私の発行するメルマガが編集者の目にとまり著作の執筆を依頼されました。入校し編集者が校正し戻ってくる原稿を見て衝撃が走ります。「少し手を加えました」と注釈があり、前後を入れ替えて要点が整理され、「てにをは」を精査することで論旨がくっきりと浮かび上がります。編集者のプロの仕事に打ちのめされました。

拙文を「商品」に変えたのはプロの編集力です。大胆に手を加えられる「校正」にイラッとしたこともあります。しかし、しばらく時を置いて読み比べると原文の「独りよがり」が鼻につき、そのとき敗北を認めました。以来、「打倒編集者」を胸に秘め、本稿でも足かけ3日をかけ筆力のなさを時間で補い「商品」にするために苦闘しています。こんな文章ですが。

端役にも個性

プロは「商品」として仕事に向き合います。

会社員時代の頃に、最上級の肉品質を表すA5の神戸牛を提供する焼き肉屋の広告を手がけました。肉の写真撮影はプロのカメラマンに依頼します。レイアウトを指示するとカメラマンはファインダーを覗き何度かシャッターを切り、首をひねります。おもむろにズボンのポケットに手を入れ小銭を探すと10円玉を何枚か手に取り、皿の下にいれて肉の傾きの「角度」を調整します。肉眼で見るとわずかな違いでも「仕上がり」に大きな違いを生むとこだわります。

現場に立ち会い、仕上がりを見てプロの仕事に納得しました。デジカメが普及したことで素人でも「綺麗」な写真が撮れるようになりましたが、クライアントは「旨そう」に見える写真を期待しており、そこに情熱を傾けるのがプロカメラマンの仕事です。

ボーダーラインを曖昧にする

Web担のマンガ原作「Web担当者 三ノ宮純二」の執筆に入る前の話です。作画の牧岡先生との打ち合わせで、萌絵のキャラクター、鈴木部長が三ノ宮に意地悪をする理由を質問されます。喫茶店のイメージ、三ノ宮と萌絵の関係、萌絵と鈴木部長の関係……などの細かな設定が求められます。端役も「生きている」ということを知りました。これもプロの仕事の一端です。

プロを賛美礼賛し、素人のすべてを否定するものではありません。駄文を書く新聞記者もいれば、鋭く世相を斬るブロガーもいます。しかし、プロにはプロたる理由があり、一方では素人だからできることもあります。そしてネットで素人とプロを隔離することはナンセンスです。それはネットが「ボーダーラインを曖昧にする」ことに長けており、素人だけ、プロだけと区切ることが「古い」と考えるからです。たとえば産経新聞の「イザ!」や、本サイトのように「読者投稿」と、プロの書き手との混在がサイトの活力を生み出すようにです。

オーマイニュースは素人ビジネスの限界を示唆してその「歴史」に幕を下ろします。

♪今回のポイント

素人「だけ」ビジネスの成功例はとても少ない。

商品価値があるものは素人でいさせてくれない。

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